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「店を閉じる経営判断」

「店を閉めるのは、逃げだ」

開業してから10年間、ずっとそう思っていた。

石垣島で5店舗6業態の飲食店を経営しています。 先日、そのうちの1店舗を閉めることを決めました。

迷いはなかった。 「やっと決められた」という安堵でもない。

撤退ラインを事前に持っていたから、判断はすっきりしていた。 ただそれだけの話です。

でも、飲食店経営をしている人の多くは、この「撤退ライン」を持っていない。 だから迷う。ズルズル続ける。気づいたときには傷が深くなっている。

この記事では、私が5店舗を経営する中で実際に持っている「2つの撤退基準」と、今回の閉店判断のリアルを書きます。


「閉めたら負け」が一番危ない

飲食店を閉めるとき、一番の敵は赤字じゃない。 「閉めたら負け」という思い込みです。

「もう少し頑張れば、お客さんが戻ってくるんじゃないか」 「ここで閉めたら、これまでの投資が全部無駄になる」 「スタッフに申し訳ない」

この気持ちは痛いほどわかる。 5店舗やっていれば、調子がいい店ばかりじゃない。

でも、「もう少し」が半年、1年と続いて、気づいたら運転資金が底をつく。 そうなったら閉める店は1つじゃ済まなくなる。

撤退ラインを持たない経営は、ブレーキのない車で走っているのと同じ。 踏むかどうかは別として、ブレーキがないと安心してアクセルを踏めない。


私が持っている「2つの撤退基準」

5店舗を経営する中で、私は2つの撤退基準を使い分けています。

基準①|通常型:収益と将来性で判断する

これが原則。 ほとんどの店舗は、この基準で判断すべきです。

具体的には、以下の数字を見る。

  • 営業利益が3ヶ月連続で赤字 → 黄色信号

  • 6ヶ月連続で赤字 → 撤退検討を開始

  • 打ち手を3つ以上試しても売上が戻らない → 撤退判断

数字だけじゃない。将来性も見る。

立地の変化、客層の変化、競合の出店。 「この先3年、この場所で勝てるか?」を冷静に考える。

感情で判断すると、必ず遅れる。 数字は嘘をつかない。

基準②|応援型:人で判断する

今回の閉店は、こちらだった。

閉めた店は喫茶シタハク。 正直に言うと、収益を追求する店舗ではなかった

「自分がやりたい」と手を挙げたスタッフがいた。 そのスタッフを応援するために続けていた店だった。

喫茶店は黒字にはできる。 でも、飲食店として収益性を高く実現するのは難しい業態です。 客単価と回転率に、構造的な限界がある。

それでも続けていたのは、「この人に任せたい」という判断があったから。

店は「箱」じゃない。**「人」**です。 人が抜けたら、箱だけが残る。

そのスタッフが辞めることになった。 その時点で、私の中の撤退ラインに触れた。

迷いはなかった。


「どう閉めるか」で、次の一手が変わる

撤退を決めた後、もう一つ大事な判断がある。 閉め方です。

選択肢は大きく2つ。

1. スケルトン返し(原状回復) 内装を全部壊して、借りたときの状態に戻す。 原状回復費用の相場は1坪あたり3〜5万円。10坪でも30〜50万円が飛ぶ。

2. 造作譲渡 内装・設備をそのまま次のオーナーに引き継ぐ。 原状回復費用がゼロになる上に、譲渡料として投資の一部を回収できる。

私は造作譲渡を選んだ。

閉める店に追加でお金を払うのか。 それとも、お金を回収して次に回すのか。

この差は、次の一手に直結する。


4店舗になって、何が変わるか

5店舗から4店舗になることを「縮小」と思う人がいるかもしれない。

違う。 集中です。

4店舗体制になることで得られるものは明確だった。

  • リソースの集中: 石垣島のドミナント戦略に、人・時間・お金を注げる

  • 収益性の向上: 喫茶業態の構造的な限界から解放される

  • 次の展開への余力: 新しい事業の立ち上げが控えている

閉めることは「マイナス1」じゃない。 次の「プラス」のための判断。

10年やってきて、喫茶店で黒字は出せた。 でも収益性を高くすることの難しさも知った。

その学びがあるから、次の業態選びに迷わない。


まずやること:撤退ラインを紙に書く

「うちの店は大丈夫」と思っている経営者こそ、今やるべきことがある。

撤退ラインを紙に書くこと。

難しく考えなくていい。 「営業利益が○ヶ月連続で赤字になったら、撤退を検討する」 これだけで十分です。

書いておくだけで、判断の速度が変わる。 書いていないと、追い詰められてから初めて考えることになる。 その状態で冷静な判断はできない。

ブレーキは、走り出す前に確認するもの。 走ってから探すものじゃない。


まとめ

1. 撤退ラインは「走り出す前」に決めておく。追い詰められてからでは遅い

2. 撤退基準は2つある。収益×将来性の「通常型」と、人に紐づく「応援型」。自分の店がどちらかを把握する

3. 閉め方は「造作譲渡」を第一に検討する。閉める店にお金を払うか、回収して次に回すか。この差が経営の選択肢を変える

4. 閉めることは縮小じゃない。集中。「マイナス1」ではなく、次のための判断


飲食以外の業態にも初めて挑戦します。 その記録を、これから書いていきます。


久貝直哉 石垣島・沖縄で飲食店を10年、5店舗×6業態を経営。 中小企業診断士/行政書士試験合格。

週3回更新(火・木・土)

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