──《鳥の見ている世界》第3話──スズメたちの“そろそろかな?”に学ぶ、人生のタイミング
風がひとつ強くなるたび、河原のススキが白い波を立てて揺れていきます。あたりはまだ完全な冬ではないけれど、秋の名残りは日に日に薄れて、空気の中にそっと「そろそろだよ」と知らせる気配が混じりはじめました。

そんな季節の端っこで、スズメたちが葉の上にちょこんと並び、丸くなってひそひそと相談をしています。
「ねぇ、もう冬支度を始めた方がいいかな?」
「うーん、寒いけど、まだいけそうじゃない?」
「でも朝は羽がふくらんじゃうよ。ほら、自分でもわかるくらい。」
三羽が寄り添っている姿は、まるで小さな円卓会議。真剣なようで、どこか楽しげ。すぐ近くには羽毛がふわりと膨らんだ仲間がひとり、のんびりと風に身をまかせています。どうやら彼はひと足早く「冬モード」に入っているらしく、話し合いに加わる気配もありません。

ススキ野原に吹く風は冷たいけれど、その風の中で揺れる羽根のぬくもりを見ていると、不思議と寂しさはありません。初冬の静けさは、決して“ひとり”の気配ではなく、むしろ小さな命たちが冬へと向かおうとする準備のざわめきで満ちているのです。
スズメたちが相談しているのは、ただ寒さのことだけではありません。きっと「今年もちゃんと乗り越えようね」という、小さな励まし合い。春にまた新しい風を迎えるために、ほんの少し勇気を出し合う時間。
彼らは羽を寄せ合いながら、ため息のような小さな鳴き声を落とし、そしてまた顔を見合わせて、ふくらんだ羽根のまま笑うのです。
その姿を眺めていると、季節が変わっていくことは、決して心細いことではなく、愛しい営みのひとつなのだと気づかされます。冬がやってきても、彼らはいつものように小さく跳ね、枝に止まり、陽だまりを探しながら過ごしていくでしょう。
初冬の風の中で交わされるスズメたちの相談ごとは、そんな当たり前の幸せをそっと確かめ合う時間なのです。
