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【片想い文芸部】星【600字小説】

星がずいぶんと近くに見えて綺麗ねえ

という、イリヤの呆けたような声が、妙にハッキリ聞こえたのを今更思い出した。

もう声は聞こえない。
背負った身体が少し前に一度ずしりと重くなって、ああ死んだのだな、と思った。人は死ぬと力が抜けてその分重たくなるのだ。
それから、イリヤを背負ったまま、どこをどう歩いて来たのか、わからない。
星は見えない。
星なんて見えるわけがない。
暗いトンネルの中、歩いても歩いても外に抜け出せない迷路のような場所だ。
イリヤが見た星は、なんだったのだろう。
それにしても、死んだのなら捨てて行ってもいいのではないだろうか。
冷静な頭ではそう思うのに、どうしてだか捨てられない。
ドーン、と地響きのような音がして地面が揺れた。パラパラと小石が天井から落ちてくる。ここもいつ崩落するかしれない。
何ヶ所か、すでに通り抜けられなくなっている場所があった。
この土地では戦争がずっと続いていて、それが当たり前で、毎日自分が生き延びられればそれだけでよかった。それなのに、どうして今になって背負った彼女を捨てられないのか。
もう彼女は死んでいるのに。
ドーンとまた爆発音がする。
今度はもっと近いな、と思った途端、目の前の壁が炎と共に吹き飛んだ。
イリヤが背中から落ちる。

(ああ、しまった)

彼女の身体を抱き寄せるのを優先した、無防備な僕の身体はイリヤごと炎に呑まれていく。
その炎から散る火の粉が、キラキラと星のようだった。



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#片想い文芸部

片想い文芸部さん、二回目の参加です。
相変わらず「片想い文芸部」という企画に全力で寄りかかって書いております(その自覚があります)。

今回のお題は、月or星でした。


星を選んでおきながら、その星が比喩というのはちょっといただけない感じですが、スパークする火の粉のイメージが抜けずにこういった物語になりました。

夏はいつも以上に平和について考えてしまいますね。
ことの大小を問わず、すべての暴力の根絶を願います。

先だってダガー賞翻訳部門を受賞された王谷晶先生のスピーチから少々引用を。

リアルの暴力が溢れている世界では、フィクションの暴力は生きていけません。歴史が物語っています。

歴史は繰り返す。
人の心が変わらないから。
それをここ最近とても感じます。
繰り返す歴史をちょっとでもいいから底上げしていきたい。

以前、参加させていただいた際の提出物はこちら


※見出し画像はみんなのフォトギャラリーからお借りしました。

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