【Advent企画】12/24:サンタクロース【2000字小説】
先に謝っておきます。
2000字小説、です。
ここまで410字の連載で参加させていただいておりました、
#いつきちゃんのアドベントカレンダー
企画、ですが。
主宰のお一人である、みわからすさんにお寄せいただいたコメントを鵜吞みに、甘えに甘えて字数を増やしました!!
企画の規定からも逸脱して誠に面目ございません。
いつか、余白も整えて長編にしてどこかにまとめたいなあ、という気持ちも若干込めて、勝手ながら最終日を2000字とさせていただきました。
まだ、締めを作れそうな気がしますが、アドベントカレンダー企画としては、ここまで。
お付き合いくださった皆様、誠にありがとうございました!
また、素敵な企画に参加させていただきましたこと、改めて御礼申し上げます。
ありがとうございました!!
この二人の話です。
アドベント企画、最初の話はこちら
昨日の話はこちら
それでは、最後の本編をよろしくお願いいたします。
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知り合いのジャズバーで忘年会をするのだ、とは聞いていた。
迎えに行くと言えば束縛になるだろうか、と思って、言わなかった自分を褒めていたのだけれど。
「彼氏さん、車ですよね。ソフトドリンクか何か飲みます?」
「この人が美吉くんの元彼さんかあ」
「違いますよ、もう今彼今彼! ね、美吉さん!って寝てるし」
何故か、その席に自分も巻き込まれている。
美吉からのLINEで呼び出されたものの、店の外まで洩れている華やかな空気に、気後れしながらドアを開ける。
足を踏み入れるなり、まだ何も言っていないというのに、
「あ! 彼氏さん来た! こっちです!」
と、華やかな美人に手を振られた。
彼氏さん、という言葉にうろたえるけれど、どうにか堪えて、彼女の向こうに、店のカウンターに突っ伏して眠る、美吉の姿を見つけた。
頭の上には、サンタ帽が被せられていて、いつぞやの写真はここで撮られたものだったのかと思い至る。
そのまま、あれよあれよと言う間に、俺は美吉の隣に座らされた。
「さっきまで結構大変だったんですよ、美吉くん。珍しく酔っちゃって」
と、店のオーナーだという男が意味深に笑う。
「サンタクロースが欲しいものをくれないんだそうで」
まるで謎解きみたいな言葉だ。
ぽかんとしていると、何故か俺の顔を知っていた“薫子”さんも、いかにも不満げな顔で頷く。
「ひどいサンタさんだと思いません?」
「でも、美吉さんもサンタにちゃんと欲しいものを伝えたかどうかなんじゃない?」
と口を挟んできたのは、背の高い青年で、“一誠”くんと名乗っていた。
「ええ……。サンタなら言われなくても、欲しいものがわかってるはずじゃん」
薫子さんは、不満げに口をとがらせる。
「どうかな。言わないとわからないことってあるものだよ、そういうものじゃないですか?」
ねえ、とオーナーが笑いかけてくる。
じっとり睨んでくる薫子さんに、困った顔をした一誠くん、面白そうに目を細めているオーナーに囲まれ、どうやら味方はいないらしい。
「問題は、サンタにその自覚があるかどうか、じゃないの?」
背後から声がかかる。
振り返ると、さっきまでフロアのステージに立っていたピアニストがいた。どうやら休憩のようだ。
一誠くんが慌てた様子で譲った席に、ピアニストは当たり前の顔をしてどかりと座る。
そのまま流れるように、ずいと、顔を近づけられた。
「自覚、ちゃんと持たないと横からかっさらわれるよ」
至近距離で妖艶な笑みを向けられ、たじろいでいると、後ろからぐいと身体を引っ張られる。
倒れそうになった身体はがしりと抱き止められ、驚いて顔をあげれば、いつの間にか目を覚ました美吉が立っていた。
「美吉、急に引っ張るなよ、危ない」
文句を言っても、聞いているのかいないのか。
美吉は俺の腕にしがみついたまま、ピアニストを睨んでいる。
「わー、めっちゃ恐い顔してるじゃんね」
「柳井さん、煽らないで下さい…っ」
楽し気な声を上げたピアニストは、止めようとしたらしい一誠くんの手を振り払って、今度は美吉に近づいていく。
白い綺麗な指が、美吉の額を突いた。
「かっさらわれるのが嫌なら、ちゃんと渡すもの渡さないとね、サンタクロース」
美吉に向かって、ピアニストはハッキリとそう告げると、美吉の頭に乗った帽子のふちを、ぐいっと目元に引きずり降ろした。
「ぅわっ!」
慌てた美吉を置いて、ピアニストは笑いながらステージに戻っていく。
意表を突かれたのだろう、視界をふさがれて混乱する美吉から、帽子を取ってやる。
「あーあ、頭ぐしゃぐしゃだな」
出て来た顔が、あまりにも子どもっぽい顔をしていて、思わず笑ってしまった。
からかわれたことに怒ったのか、への字口で、まだ眠いのだろう目は水気を湛えている。暖かい店内の空気と、アルコールで顔が赤くなっているから、余計に幼い。
ぼさぼさの頭を整えてやろうと手を伸ばすと、ぱしんと叩き落とされ、驚いているところに、美吉が勢いよく飛び突いてくる。
抱き止めはしたものの転びそうになって、慌てた耳元に爆弾が落ちる。
「妹尾、好き。もう一度俺と付き合って」
「へ?!」
予定外の言葉に慌てて引きはがすと、ボロボロの泣き顔になった美吉がいた。
「お前から言って来いよ馬鹿野郎。中途半端なところで勝手に満足しやがって」
と、ぐずぐずの声で文句を言われる。
「あーあ、泣かせた」
というオーナーの声で、自分たちだけじゃないことを思い出す。
「もう、美吉さん連れて帰ってください」
不機嫌と言わんばかりの薫子さんに、美吉の荷物を押し付けられる。
「最後にこれだけ言っておきます」
ぐずる美吉の頭からコートをかぶせている俺に、薫子さんが指を突きつける。
「私たち、美吉さんがだいっすきなんで。ぜーーーったいに泣かせないでくださいね」
一方的に泣かせたことなんて無いぞ、とは胸を張って言えないけれど。
しがみついてくるホカホカの固まりを抱きかかえて、俺は大きくうなずいて見せた。
