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こころのシューズボックス-歩んできた日々の証-


「心は靴みたいだなー」
僕はふと、そう感じた。

靴は履き続けていれば、
靴底や踵はすり減っていく。

無茶な履き方をしていれば
穴が開いてしまったり、
ヒールが折れてしまうことだってある。

ぼくらは、これまでの道のりで
どれだけの靴を履いてきたのだろうか。
何十足もの靴を履き潰して、
たくさんの道を歩んできた。

僕だけじゃない。
誰もが皆、裸足で歩んできていない。

子どもの頃は、
お気に入りの靴を身につけて
元気いっぱいに校庭や公園を駆け回り
すぐに汚して泥だらけにした。


子どもの成長は早い。
足のサイズはあっという間に大きくなる。
つい最近まで履けていた靴が
すぐに窮屈になって
新たな靴へと履き替えていく。

靴ひもがまだ結べない子どもは、
テープ式の靴を履いていることもあれば

ぎこちないながらも
蝶蝶結びを覚えた子どもが
靴ひもの靴を履き始める。

自分がお気に入りのキャラクターが
デザインされた靴や好きな色を
自分の好みで選んで履いた。

自分でこれが良い!と思って、選んだ靴を
誰かに「変なのー」と言われても
「可愛いから良いの!」
「カッコイイもん!」
と自分の好きを優先していた。

足のサイズとともに、
デザインや色の好みも変わっていく。
動きやすさや履き心地も
少しずつ気にするようにもなっていく。

もしかすると、
靴を履き潰して履き替えていく過程は
身体の成長だけでなく
心の成長の足跡でもあるのかもしれない。
そんな気がした。


けれど、いつからなのだろう。
歳を重ねて大人になるにつれて、

自分の好きな色やデザインは二の次で
流行りのデザインや誰かの好みを
基準にして選んだり、

無難で当たり障りのない色や
コスパの良い靴を
消耗品のように選ぶようになったのは…。

大人になっても靴は履き替える。
これまでに何足もの靴を履き潰して
たくさんの道を歩んできた。

靴自体は、簡単に処分できる。
靴のデザインや色も
忘れ去られるかもしれない。

けれども、
履きながら歩いてきた中で
見てきた光景や情景は
自分の心に残っている
ような気がした。

見てきた光景や情景には、
苦い記憶や嫌な思い出が
含まれていることだってある。

とはいえ、そうした記憶や思い出にも
向き合ってよく探せば、
気づきや学びを得られたものを
きっと見つけ出せる。

そんなことを考えていたら、
“こころのシューズボックス”
あるような気がした。


幼少期に買ってもらった
お気に入りのキャラクターの靴。

小学生の頃に
駆け回っていた運動靴。

中高生の頃に
部活や習い事で履いたシューズ。

お洒落をしようと
いろいろと履いてみた
スニーカーやブーツ。

背伸びして大人っぽい
装いに合わせた革靴やパンプス。

仕事の場面で靴底をすり減らした
ビジネスシューズ。

苦い記憶、嫌な思い出も
甘い記憶、素敵な思い出も
足元にはいつも何かを履いている。

穴が開いたボロボロの運動靴。
ソールや踵が剥がれたビジネスシューズ。
ヒールがポキッと折れたパンプス。

記憶や思い出とともに
消耗させた靴が心に残ってる人も
いるかもしれない。

ただ、
どの場面で履いていた靴も、
感じてきた記憶や思い出も、
自分の足で懸命に歩んできた
“足跡と証明”
であるように感じた。

無理して履き続けて
靴擦れで血を滲ませた時。

ほどけた靴ひもに気付かずに
転びそうになった時。

窮屈な靴を履いて、足を痛めた時。

足元を気に掛けていれば、
未然に避けられたこと。

靴擦れ防止の工夫やグッズを活用したり、

ほどけた靴ひもに早く気付けたり、

きつくなってる靴ひもを緩めて、
足が圧迫されない程度に
結びなおすこともできた。

こまめに気にかけて、
手入れをしていれば
防げたことかもしれない。


気にかけた手入れが必要なのは
心や感情に対しても、同じような気がした。

自分の気持ちや感覚を押し殺して
無理をさせて酷使し続けていると、
ボロボロになったり、
ポキッと折れてしまうことだってある。

固く締め付けて窮屈になっているのなら、
軽く緩めて、息を整えれば少し楽になる。

自分の領域に土足で踏み込まれて
気持ちや感情を荒らされているなら、
大切にしているものを守るために
境界線を張って防止してみる。

“こころのシューズボックス”に詰まった
記憶や思い出の中には、
見えてなかった気づきやヒントが
隠れていることがある。


光景や情景の中で見落としていた
誰かの言葉や振る舞い方から
観点を変えて見てみると
新たな発見をすることもある。

ほんの少しでも、力んだ心と身体を
ゆっくりと緩めてみる。
そっと、優しくほぐすように…。

サンダルを履いて楽にしたって良い。
裸足を投げ出して解放的になったって良い。

擦れて薄れていった幼少期の無垢で
自分の素直な気持ちを大切にしていたことを
徐々に思い出せるように…。

少しずつ丁寧に内側を整えてゆく。


この作品にて、ちび創作大賞
カケルンさんのテーマ「こころの在処」に
参加させていただきます。


#ちび創作大賞   #こころの在処

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