【エッセイ】「雨とシャワー」
あの日の夜、雨が降っていた。
雨足が少しずつ弱まってきて
しとしと、と小雨が降りそそいでいる。
窓の外に映る雨空と行き交う人並みに
そっと目を移してみた。
小雨の中、傘を差す人と差さずに歩く人
どちらも半々くらいにいるように見えた。
傘を差さずに歩く人は
傘を忘れたのだろうか。
少しでも濡れないようと足早に歩く。
行き先はどこかは分からない。
家路に帰る途中なのか。
仕事先に戻る途中なのか。
パートナーとの待ち合わせなのか。
どんな理由で急いでいるんだろう?
それぞれの人生
いろんな景色や感情を抱えて歩んでいる。
その人の景色はその人の目にしか映らない。
だから、他人には見えている景色を
すべて知るのは難しい。
小雨は、気にしなければ
傘を差さなくても歩いていける。
土砂降りの雨や豪雨のように
傘がなければ歩けないこともないし、
視界が悪くなるわけでもない。
けれど、
土砂降りの雨や豪雨ほどに
びしょびしょに濡れることはなくても
小雨の中を歩けば
地味ながらもじんわりと体を濡らす。
じんわりと濡らした雨は
自分が思っていたよりも
体を冷やしている時もある。
体を冷やしたまま過ごしているうちに
風邪をひいてしまうこともある。
傘やレインコートは濡れないために、
体を冷やさないためにも
雨の日には欠かせない必需品だ。
雨に濡れて帰ることだってある。
傘を差していても濡れてしまう時もある。
体が冷えたのなら
入浴して温かいシャワーを浴びて
体を温めるのが最高だ。
湯船にゆったり浸かって、
のんびりと芯まで温める。
小雨だとしても、
傘は差した方が良いよなー。
そんなことを思いにふけていたら
ふと、頭にイメージがよぎった。
「人間関係と心にも当てはまる気がする…。」
生活している中でたくさんの
言葉の雨を浴びながら生きている。
この世に生まれ落ちてからこれまで
今この時に至る中で
さまざまな場面において
言葉の雨を浴びて生きてきた。
家族、学校、友人、職場などの
リアルで見聞きした言葉だけでなく
YouTube、テレビ、映画、SNS上などの
画面上で見聞きする言葉。
その言葉の雨を無防備に浴びている。
傘を差さず、レインコートも着ないで
ただただ雨ざらしになっている。
土砂降りの雨や豪雨のような
雰囲気や怒号には、
近づかないように。
関わらないように。と避けて
浴びないための行動は出来るかもしれない。
ただ、小雨のような言葉だとどうだろうか。
このくらいの言葉なら我慢できる。
これくらい頑張れば大丈夫。
気にしなければ何とかなる。
最初は、本当に
我慢できていたのかもしれない。
頑張ってどうにかなっていたかもしれない。
気にしないようにして
誤魔化せていたかもしれない。
小雨がじんわりと身体を冷やすように
日々の小さな言葉の雨が目立たずとも
じんわりと心を冷やしていくこともある。
少しの雨でも気になって傘を差す人もいれば
このくらい気にならないから濡れても良いと
何も気にせず過ごせる人もいる。
感覚と感性の違いは誰にだってある。
些細な言葉でも気になってしまう人もいれば
言葉にルーズで無頓着な人だっている。
言葉の雨に対する感じ方も
人によって全然違うかもしれない。
見え方も聞こえ方も変わる気がする。
体を冷やして過ごしていたら
風邪をひいてしまうのと同じように
心を冷やして過ごしていると
心も風邪をひいてしまう時もある。
風邪をひいてしまえば
動くのもしんどくなって
食べるのもツラくなる。
時には寝たいのに寝られないこともある。
では、どうすれば良いのだろう。
必要なのは
予防と予兆を把握すること
対処法を知ること
なのかなって気がする。
もしも、元気になっても
変わらず同じように過ごしていれば
びしょ濡れになって、心が冷えてしまえば
再び、心が弱ってしまうことになる。
ならば、言葉の雨を
無防備に浴びないように
傘やレインコートを身につければ良い。
自分の感情や感覚を守るための
傘であり、レインコート。
言葉の雨を拒絶するためでもなければ
誰かを傷つけるためでもない。
傘やレインコートを身に付けることで
予防できたとしても、
横殴りの雨や土砂降りのような
激しい勢いで浴びせられたら
濡れてしまうことだってある。
その時に感じた気持ちの揺れや震え
違和感や嫌悪感、痛みが予兆なんだと思う。
風邪をひく前の
寒気や喉の痛み、違和感
鼻詰まりの嫌悪感で予兆に気付くように。
風邪はこの予兆を気のせいだと
無理をすれば高熱を出して動けなくなる。
心の風邪だって同じ。
違和感や痛み、感情の揺れを
気づかぬふりして無理をすれば
心に不調をきたして、
動けなくなることだってある。
予兆に気付いたのなら
自分に目を向けてあげる。
そうしなければ体も心も
悪化することもある。
予防や予兆ができたとしても
対処法が分からなければ
どうしようもない。
体を冷やさないように
温かいシャワーや湯船に浸かって
体を温める。
布団に包まって暖かくして寝る。
必要ならば服薬もする。
心が冷えてきたら
温かい言葉のシャワーを浴びれば良い。
自分がぽかぽかするような言葉を
自分に掛けてあげられれば
少しずつ温まってくる。
自分に対して
労う言葉。
嬉しい言葉。
感謝の言葉。
優しい言葉を掛けてみる。
誰かに見られてるわけでもない。
聞かれているわけでもない。
だから、こんなこと思ってたら
変かなー、おかしいかなと
思わなくて大丈夫。
ゆったりと自分自身を
優しさの布団に包まったり
労いと温もりを溜めた湯船に浸かって
心を温めるとホッとしてくる。
自分で自分を優しくするのが
苦手な人もいると思う。
僕自身もそうだったから。
そういう場合は
動画でも本でもなんでも良い。
心がぽかぽかする内容、
気持ちがほんわかして癒される内容に
触れてリラックスする時間を作ってみる。
ギスギスとした荒んだ心を
そっとほぐしながら洗い流すように。
動物でも良いし、アニメでも良い。
音楽でも良いし、お笑いでも良い。
気持ちが温かくなる感覚が生まれるなら
なんだって良い。
安心して心地良い時間に浸ってみる。
自分に対して、
優しく労うことや感謝ができると
自分以外にも
優しく労うことや感謝の言葉を
掛けられるようになってくる。
そして、その姿を見て
誰かにとっての
傘やレインコートになる輪郭に
なるのかもしれない。
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