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「土中環境」に救われた話

 私は子どもの頃から自然に対して罪悪感があった。

 授業で習ったのか、本を読んで知ったのか覚えていないが、人間が自然環境を壊していることは小学生くらいには知っていた。
 工場排水で川は汚すし、アスファルトを敷いて地面の下の環境を壊すし、工場の排気ガスで空気を汚す。
 いや、それどころか私が生活するだけで、電気を使うし、生活排水が出るし、自分が住んでいる家はかつて動物や植物がいたところだったわけで、そこを潰して住んでいる。
 私がただ生きているだけで、自然環境を壊していることに加担しているのに罪悪感があった。そして人間はいるだけで自然環境を壊すので、人類なんて滅べばいいんじゃないかと思うこともあった。子どもの頃で純粋だからこそ、そう思っていたのだと思う。

 その罪悪感は子どもの頃ほど強烈ではないにしろ、大きくなっても心の中でずっとくすぶっていた。「人間は地球にとって害悪だ」という思いがずっとあった。


 そんな気持ちを持っていたから、「林業は山の保全をする仕事だ」と言われて林業をやりたいと思ったのだろう。「罪滅ぼしができる」とも思っていた。
 しかし、実際に林業の世界に飛び込んで見ると、思っていたのとは違った。
 たしかに山を保全することもできるが、林業が「業」である限り、人間の都合が付きまとう。利益を上げることを考えざるを得ない。収益が発生しないと「業」にならない。山の保全だけでは「業」にならない。しかも悪質な林業事業体は、山の木を伐るだけ伐って、その後の手入れもせずに逃げる。そうなると山の保全どころか、直接的な自然破壊だ。

 山の保全はしたい。でも食っていくためにそんなきれいごとだけでは無理。
 そういう葛藤の中出会ったのが「土中環境」という本だった。

 「土中環境」は環境改善の理論を伝える本だった。詳しくは上記note及び同書に任せるが、この本を読んで一番感動したのは「山や川に適切に手を入れることで、自然のままに環境が再生するのよりも早く自然環境を再生することができる」ということが書かれていたことだ。つまり、人が手を加えた方が、自然環境にとってより良い変化が起きることもある、ということだ。
 今まで私は、人間は自然環境を破壊することしかできないので、人間ができるのは自然への負荷を減らすことくらいだと思っていたが、自然への働きかけ次第で、自然本来の力以上に再生を促すことができることを知って感動したのだ。
 「人類も生きていていいかもしれない」と冗談でなく思った。偉そうな話だが、人類を少し見直した。

 そして人類を見直す、ということは取りも直さずその人類の一員である私自身も見直すことにつながった。

 私は自分に対して否定的な感情を抱きがちだが、その原因の一つに自然への罪悪感があったように思う。「私が生きているだけで、殺してしまう命がある。迷惑をかけてしまう命がある」という思いが、自分に対するネガティブな評価を抱く一因になっていた。

 しかし、「土中環境」で示されている方法を私が実行すれば、私自身も自然環境をより良くするための直接の働きができることを知った。今まで「殺すこと」しかできなかった私が、「活かすこと」もできるかもしれない。それは私にとって大きな希望であり、救いだった。

 
 正直、お金の問題は解決していない。上記の環境改善の取り組みにしても、その活動をしている人がそれだけで食っていける仕組みはない。私は「金を稼ぐ」ということについては絶望的なほど才がないので、その仕組みを作っていくことは私には無理だ。
 今の私の関わり方は、仕事を休んで手弁当でそうした活動に参加している形だ。
 しかし、それでも関わっていきたいと思っている。

 私がもし、環境改善の取り組みに関わらなくなってしまったら、私はまた「殺すだけ」の人間に戻ってしまう。それは私には耐えられない。そんな状態に戻ってしまったら、子どもの頃に思っていた「滅べばいい」が自分に向かってしまうかもしれない。それはたぶん、避けた方が良いように思う。

 飯を食っていれば身体は維持できるが、自分に対して肯定的な気持ちを全く抱けないと心は維持できない。私にとって肯定的な気持ちを養う手段の一つに環境改善活動がある。人によって、自分に対して肯定的な気持ちを養う手段、方法は様々だろう。私にとってはこれだったというだけのことだ。

 
 環境改善の技術について、私はまだまだ未熟なので学ぶ必要がある。
 8/1に土中環境の著者 高田宏臣さんが徳島の篤林家の山を見ながら実地に学ぶセミナーがある。そこでさらに学び、実践に生かしていきたい。

https://zibatsu.jp/info/event/tokushima


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