成瀬「心と言葉の英文法」レクチャーシリーズ014「心の英文法」名詞認識(6)名詞認識の三層構造 特定/不特定→可算/不可算→単数/複数
英語の「心の仕組み」がわかる!
成瀬がユーチューブで展開しているレクチャーシリーズ(約10分ビデオ40本)のテキストバージョンです。同シリーズでは英語の認識・思考の特性からセンテンスの構造までのすべてを解説しており、英語の心と言葉の仕組みの全容を知ることができます。ユーチューブビデオにはタイトルに提示しているURLからアクセスできます。
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「名詞認識」の6回目の講義をはじめます。今回のテーマは、名詞認識の三層構造について実例を挙げながら具体的に説明します。この3つの認識判断プロセスを無意識に行えるほどに自分の心に刷り込んでしまえば、もう英語の名詞認識で悩む必要はなくなるでしょう。

「名詞認識の三層構造」とは、「心の英文法」の英語の名詞認識に関するつぎの仮説のことです。すなわち
「英語の世界ではすべての名詞用法に対して、次の3つのステップの認識判断を必ずおこなう」
というものです。この仮説は数十年前に私がつくりだしたもので、一般の英文法書には載っていません。ただ、この仮説をつくりだしてそれを自分で実践しはじめてから私の英語名詞表現力は大きく改善しました。また私の生徒さんにこの仮説を説明すると、ほぼ必ず生徒さんの英語名詞表現力が大きく改善します。ですから実践という観点からみて、この仮説は非常に有効です。皆さんも、実践の場でぜひ活用してください。

それではここから、英語名詞認識の3つのステップをひとつずつ見ていきましょう。
まずステップ1の認識判断はその名詞は「特定」か「不特定」か、です。
「特定」できると判断した場合には、theやその他のdeterminer、決定詞をその名詞の前につけます。「不特定」つまり特定できないと判断した場合には、その段階では、なにもしません。ただしこれらはすべて最終形ではありません。最終形はそのあとの判断が終わってからのものになります。
例をみてみましょう。ここに本があるとします。bookです。このbookを特定できると判断した場合には、基本的にはtheをつけて表現します。このtheを敢えて日本語に訳せば、「あの例の…」といったところです。あるいは、もっと具体的に特定できると判断した場合には、her book, Yamada’s bookなど、その他のdeterminerを前につけます。
たとえば、ここに”I like reading the book.”というセンテンスがあるとします。the bookとあるからには、書き手は「あの例の」本をすでに知っており、特定できると判断をして、それにあわせて表現をしています。
ただしこれだけでは、読み手のほうが「あの例の」本を特定できるかどうかはわかりません。もし文脈のなかで「あの例の」本についてすでに述べられているのであれば、読み手もその本のことが特定できるので問題はありません。しかし、ただ唐突にthe bookと出てきたのだとすると、突然「あの例の本を読むのが好きです」といわれるわけですから、読み手としては困惑するだけです。
以上から分かることは、
I like reading the book.でのtheの使い方が「正しい」「正しくない」といった議論には意味がない
ということです。
ここで
重要なことは、書き手がtheに伴う特定/不特定の感覚を正しく認識したうえで、このセンテンスを用いているのか
にあります。
なお一般的に日本人の英語ライティングにはtheが使われ過ぎているといわれています。どうやら私たちは名詞に何もつけないとなんだか不安に感じるようです。

ステップ1の「特定・不特定」の判断を終えたのち、
ステップ2の認識判断として「可算/不可算」という判断
と表現に移ります。図にするとこのようです。
この「可算か不可算か」つまり「数えられるか、数えられないか」いう判断は、私たちにとってかなりやっかいなしろものです。
学校文法の「普通名詞や集合名詞であれば数えられる」「抽象名詞や物質名詞や固有名詞だから数えられない」といった判断基準があてにはならないことは、すでに説明したとおりです。
そもそも日本語では名詞に可算・不可算の区別はありません。中国語にもありませんし、世界語としてつくられたエスペラント語にも可算・不可算の区別はありません。可算・不可算の区別は一部ヨーロッパ語の特性にすぎません。また、それがあるからといって何か大きなメリットがあるわけでもありません。それでも英語が世界共通語のもとになったことで、私たちはそうした認識にある程度付き合わなければなりません。まあ、やっかいなことです。
では、
ある名詞が可算か不可算かが実際にどうやって決まるのかというと、それは「認識のあり方」で決まります。
つまり、これは数えられると認識すれば、可算です。数えられないと認識すれば、不可算です。それだけのことです。

ステップ2として「可算・不可算」を判断したのち、その語を「可算」だと認識判断すれば、
ステップ3として「単数か複数か」という判断
に移ります。「不可算」だと認識判断した場合には、「単数か複数か」という判断はしません、というよりもできません。図にするとこのようです。
こうして、
特定・不特性、可算・不可算、単数・複数という3つの認識判断のステップを踏んで、最終的な表現がきまります。
ここで取り上げたbookの場合、特定・可算・単数であれば、the book, her book, Yamada’s bookなど、特定・可算・複数であれば、the books, her books, Yamada’s booksなど、特定・不可算であれば、the book, her book, Yamada’s bookなど、不特定・可算・単数であればa book、不特定・可算・複数であればbooks、そして不特定・不可算であればbookです。
なお、特定・可算・単数と特定・不可算とが同じかたちをしていますが、これは特定・可算・単数でthe a bookというかたちが認められていないためです。その結果、最終的には、英語の名詞の表現は5つのタイプに分かれます。the book, the books, a book, books, bookの5つです。そしてそれぞれのかたちが、特定・不特定、可算・不可算、単数・複数という認識判断を、そのなかに含んでいます。
いかがだったでしょうか。次の講義では、名詞認識の三層構造に関して、別の例を挙げて更に詳しく説明します。
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【確認テスト】
問1
本レクチャーでは、英語の名詞認識判断の「特定/不特定」「可算/不可算」「単数/複数」の三層の認識・判断を、“book”という語を例として説明しました。これと同様のその他の例を、いくつか挙げてみてください。
