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【イベントレポート】バンクーバー×福岡、イノベーションはどこから生まれるのか?ー海外移住者はなぜ福岡に集まるのか? 番外編

2026年8月7日、天神・あすみん。この夜の会場には、日本・カナダ・ポーランド・ジョージア・イギリス・ロシア——ひとつの部屋に、これだけの国と背景が集まりました。ナシテフクオカにとって初めての、CoLive Fukuokaとの本格コラボレーション。そして、初めての「英語回」です。

いつもは日本語で進むナシテフクオカを、今回はあえて英語をメインに開きました。理由は、テーマにあります。「バンクーバー×福岡、イノベーションはどこから生まれるのか?」——世界を移動しながら働く人たちと、福岡のローカルが同じテーブルにつくとき、何が生まれるのか。それを確かめる夜でした。

ゲストは、バンクーバーの連続起業家・工藤博樹さん

メインゲストは、カナダ・バンクーバーを拠点に活動する連続起業家の工藤博樹さん。IBM Japanでのプロジェクトマネージャー、INSEADでのMBAを経て、Locondo、MerryBizを創業。FinTech協会の設立にも関わり、いまはバンクーバーからクリーンテック/クライメートテックのグローバルコミュニティを育てています。

工藤さんの問いは、とてもシンプルでした。「いまは、世界のどこでも会社を作れる時代。東京でも、福岡でも、ニューヨークでも、サンフランシスコでも。それなのに、なぜ、ある街はイノベーティブで、ある街はそうでないのか?」

イノベーションが生まれる街の、6つの条件

工藤さんは、答えを一方的に語るのではなく、参加者に問いかけながら進めました。「イノベーションって、そもそも何だと思いますか?」——会場からは「何かと何かの掛け算」「二つの分野を統合すること」「既存のものを、より速く・安く・効率的に」といった声。iPhoneも、実は画面も電話も既にあったものの組み合わせ。Amazonは製品そのものではなく「届け方」を変えた。回転寿司もウォークマンもカラオケも、日本発のイノベーション。そして福岡発の例として、日本初の国産車をつくった矢野特殊自動車や、TOTOのウォシュレット、明太子——身近なところにも、イノベーションは眠っています。

その上で工藤さんは、イノベーションが起きる街に共通する6つの要素を提示しました。人材、技術、資金、文化、マインドセット、そして「共有の場(コモンスペース)」。人が偶然に出会い、アイデアをぶつけ合い、チームを組める場所。これが、意外なほど決定的なのだと。

1930年代のシリコンバレーは、ただの農地だった

工藤さんは、シリコンバレー、パリ、バンクーバーを例に、この6要素を読み解いていきます。

なかでも印象的だったのが、シリコンバレーの「はじまり」でした。いまでこそ世界の技術の中心地ですが、1930年代のパロアルトは、ただの農地とぶどう畑。製造業など何もなかった。優秀なスタンフォード大学の卒業生たちは、仕事を求めて東海岸へ出ていってしまう。それに危機感を持った一人の工学部の教授が、学生たちにこう促します。「工学を学ぶだけでなく、会社を創りなさい」。そこからヒューレット・パッカードが生まれ、人材が地元に残り、循環し始め、やがてあのシリコンバレーになった——。

パリの例も鮮やかでした。2017年以前はスタートアップもほとんど生まれなかった街が、Station Fという巨大な拠点——銀行もVCも法律事務所も学校も、すべてが一本の建物に集約された「出会いの場」——を得て、いまやユニコーンを37社も抱える街に変わった。工藤さんが繰り返し強調したのは、この「コモンスペース」の力でした。「人材もアイデアもある。でも、出会わなければ、チームは組めない」。

そして、その"昔のシリコンバレー"の写真に、私たちは糸島を見た

この夜をひとつに貫いたのは、Colive Fukuokaの大瀬良さんがふとこぼした一言でした。

スクリーンに映る、1930年代のパロアルトの農地の写真。その風景に、いまの糸島が重なって見えた、と大瀬良さんは言いました。しかも糸島には、九州大学の新しいキャンパスがある。かつてのスタンフォードが、シリコンバレーの種になったように。

「未来のシリコンバレーは、ここ——福岡かもしれない」。会場の空気が、少し変わった瞬間でした。工藤さんが語った"過去のシリコンバレー"と、これから私たちが話す"福岡のこれから"が、この一言で一本につながったのです。

では、福岡に足りないものは何か——クロストークへ

後半は、CoLive Fukuokaの大瀬良亮さんを迎えてのクロストーク。大瀬良さんは、かつて首相官邸で安倍元首相のソーシャル発信を担当し、世界中を旅してきた人物です。長崎の被爆三世として「平和につながる何かを、未来に創りたい」という願いを持ち、いまは福岡で、デジタルノマドとローカルをつなぐ「リレーションシップデザイナー」を名乗っています。ビジョンは「Be where you're meant to be——本来いるべき場所に、人が出会えるように」。

議論は、次第に核心へ向かいました。藤井さんが投げかけたのは、こんな問いです。「福岡でも、イノベーションは起きている。でも、言語の壁があって、それが世界に出ていかない」。せっかく良いアイデアがあっても、相談できる相手が地元の銀行だけで、その銀行にイノベーションの発想がない。だから、大きくならない——。

熊本から参加した、トロント出身の方はこう続けました。「世界一多文化と言われるトロントで育つと、"どこ出身でも、人間であることが人をつなぐ"と学ぶ。でも日本に来て感じたのは、"我々は日本人だ"という強いアイデンティティ。言語を越えて、"我々"と"彼ら"の壁になる。しかも、それは幻想なんです」。

一方で、私たちナシテフクオカは、こうも考えています。日本の独自性、その"違い"を守ることは、世界の多様性の一部を創ることでもある。守ることと、開くこと。どちらか一方ではなく、その両方を、同時に。 これは、私たちがずっと大切にしてきた視点でもあります。

「言語が壁になる」——だから、AIリアルタイム翻訳に挑戦しました

このクロストークで、まさに「言語の壁」が語られていたこと。それは、この夜の私たち自身のチャレンジと重なっていました。

今回、英語をメインにするにあたって、私たちは会場でAIによるリアルタイム翻訳を試みました。参加者がお手元のスマホでQRコードを読み取ると、話されている英語が、リアルタイムで日本語に(そして日本語が英語に)変換されて表示される——という仕組みです。

完璧ではありませんでした。専門用語や固有名詞では、うまく変換されない場面もありました。それでも、「英語がわからないから、この場を諦める」という人を、一人でも減らしたかった。言葉の壁を、テクノロジーの力で少しでも低くできないか。まさに今日のテーマである「イノベーション」を、運営自身が小さく実践してみた夜でもありました。この挑戦は、これからも続けて磨いていきます。

部屋全体が動き出した、後半のワークショップ

後半は、参加者全員によるワークショップへ。多国籍の混成チームに分かれ、「新しいことを始めるときの障壁と、それをどう越えるか」を掘り下げました。

ひとつのチームは、「恩送り(pay it forward)」を軸にした、貢献し合えるエコシステムの設計を提案。誰かに親切にされたら、別の誰かに返していく——その連鎖を、どう囲い込みなく、みんなが安心して参加できる形で回すか。無料イベントのように「参加のハードルを下げること」が鍵になる、という気づきが共有されました。

もうひとつのチームは、九州というアイデンティティに注目。『ロード・オブ・ザ・リング』の"烽火(beacon)"になぞらえ、福岡・熊本・鹿児島など九州各地に、共通のビジョンを持つ"地域チャンピオン"を一人ずつ灯していく「Beacons of Kyushu」という構想を発表しました。九州で始めて、やがて日本の他の地域にも広がるテンプレートに——。

もちろん、その場で答えが出たわけではありません。でも、これだけ違う背景を持つ人たちが同じテーブルにつき、福岡の「これから」を本気で一緒に考えた。その事実こそが、工藤さんの言っていた「コモンスペース」そのものでした。

来た人が、地元になる。地元が、世界になる。
この夜もまた、契りの始まりに。


お知らせ・つながる場所

🎧 ポッドキャスト「ナシテ福岡ラジオ」

今回のゲスト・工藤さんの人物像や、CoLive Fukuokaの取り組みは、ポッドキャストのEP09で詳しくお話ししています(日本語)。

他にも、イベントからはみ出した裏話をビデオ・ポッドキャストの形でお届けしています。イベントの予習・復習に、ぜひ✨
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次回のご案内
・8/18(月)ゲスト回(ベルリンに10年いた禅僧・星覚さん)
@あすみん ※日本語+ライブ翻訳

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・9/19(金)アフリカ×福岡 @周船寺
・10/2 オノマトペ・プロジェクト体験会(CoLive Fukuoka Day2)

主催:ナシテフクオカ(?FUK)/共催:CoLive Fukuoka

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