【農業】地方創生における酪農の可能性
先日、YouTubeで地方創生について議論する動画を見ました。2014年に当時の石破大臣(現首相)が地方創生を開始して11年が経ったということで、現状の整理とこれからのあり方が議論されています。
1. 国家主導の地方創生の限界
地方創生政策が始まってから11年、しかし地方からの人口流出や経済の衰退に歯止めがかかっていないのが現実です。合計特殊出生率は低下し、東京圏への転入超過はむしろ拡大傾向にあります。
なぜ国家主導の地方創生には限界があるのでしょうか?
一つは「全国一律アプローチ」の問題です。地域ごとに異なる特性や資源、文化があるのに、同じ政策を適用しても効果が出ないのは当然かもしれません。
また、補助金という形で資金を配分しても、必ずしも本当に必要としている地域や事業者に届かないことがあります。さらに困ったことに、国からの支援に依存する体質が生まれ、地域自らが創意工夫して課題解決に取り組む意欲を削いでしまう可能性もあります。
官僚的な手続きの煩雑さや時間的制約も大きな問題です。片山さつき氏の指摘によれば、スーパーシティ構想のように、法律が施行されてから実際に選ばれるまで3年もかかるケースもあります。変化の速い現代において、このような遅延は政策効果を大きく減じてしまいます。
2. ホリエモンによる民間主導の地方創生
私の中で、民間主導の地方創生といえばホリエモンです。堀江氏は独自の視点と活動で地方創生に取り組んでおり、後に紹介する大樹町でも大きく地方創生に関わっています。
堀江氏のアプローチは、地域資源の再発見とエンターテイメントの活用にあります。別府温泉の「湯かけ祭り」を考案するなど、既存の温泉地という資源を新たな形で活かしています。
また、外からの視点を重視し、日本各地にはまだ知られていない魅力的な資源が眠っていると考えています。ニセコが海外からの評価で発展したように、外部からの新鮮な目で地域の価値を再発見することの重要性を説いています。
堀江氏は、地方の名物をリブランディングして新たな価値を生み出す試みも行っています。沖縄そば、帯広豚丼、安曇野わさびなど、既存の概念にとらわれない自由な発想で地域を活性化する可能性を示唆しています。
こうした民間主導の取り組みは、地域が自らの特性を活かし、柔軟なアイデアで課題解決に取り組む重要性を教えてくれます。
3. 地方を支える酪農の可能性
ここで注目したいのが、「酪農」です。一見すると地味に思えるかもしれませんが、地方創生において非常に大きな可能性を秘めています。
北海道の過疎化が深刻な地域では、酪農が地域経済の生命線として機能しています。例えば八雲町、白糠町、上士幌町などでは、酪農関連事業が重要な雇用を創出しています。
特に上士幌町では、サンクローバーという5戸の酪農家が設立した法人組織が、930頭の乳牛を37名(うち女性10名)で管理しています。1日8時間労働・週休2日制を導入し、働きやすい環境を整えています。
数字で見ても、上士幌町では酪農関連雇用が地域人口の約1%を占め、町就業人口の約5%に達しています。単なる一次産業ではなく、地域の社会インフラとして機能しているのです。
4. 大樹町の挑戦:宇宙×酪農のシナジー
北海道十勝地方南部に位置する大樹町は、人口5,300人の小さな町ですが、日本有数の酪農地域と民間宇宙港を併せ持つ町です。
この町では「宇宙×酪農」という一見かけ離れた産業の連携が進んでいます。具体的には、酪農から発生するメタンガスを回収し、ロケット燃料として活用する取り組みです。
酪農家のバイオガスプラントから発生するメタンガスを精製・液化し、ロケット燃料にすることで、環境負荷の低減と新産業創出の両方を実現しています。この取り組みにより、ふん尿処理コストをエネルギー収益に転換し、酪農家の経費を最大25%削減する効果も生まれています。
宇宙関連企業の立地が進み、2025年時点で町内に23社が進出、直接雇用者数は287名に達し、町の就業人口の5.4%を占めるまでになりました。
大樹町の「地産地消エネルギー・モデル」では、
酪農→燃料製造→宇宙産業→観光
のバリューチェーンを構築し、ロケット打ち上げ見学客が年間3.2万人を突破。町内宿泊施設の平均稼働率も75%まで向上しています。
5. 中標津町:牛の数が人を超える町
北海道根室地方の中核都市である中標津町は、もう一つの酪農による地方創生の成功例です。この町は「牛が人口を超える町」として知られています。
2025年現在、人口23,010人に対して乳用牛飼養頭数は42,934頭、なんと「牛が人口の1.87倍」という驚異的な比率を維持しています。
この町の酪農産業はどれだけの雇用を生み出しているのでしょうか?直接従事者数は951人で、就業人口の6.4%を占めています。関連産業を含めると総雇用効果は1,824人(町就業人口の12.3%)に達すると推計されています。JA中標津単体でも126名の職員を擁し、地域最大の雇用主として機能しています。
6. 地方創生は私たちの手で
ここまで見てきたように、国家主導の地方創生には限界がありますが、民間や地域が主体となった取り組みには大きな可能性があります。特に酪農という産業は、単なる一次産業ではなく、地域経済の基盤として重要な役割を果たしています。
大樹町の宇宙産業との連携や、中標津町の大規模酪農による雇用創出など、地域の特性を活かした独自の発展モデルが各地で生まれています。
私たちが考えるべきなのは、国に頼るのではなく、それぞれの地域が持つ強みを活かし、時には外からの視点も取り入れながら、自分たちの手で地域を活性化していくことではないでしょうか。
小さな取り組みかもしれませんが、地方の魅力を発信したり、若者が働きたいと思える環境を整えたりすることから始まる地方創生があります。東京や都市部の学生を受け入れる機会を増やしたり、SNSで酪農の魅力を発信したりする活動も、長い目で見れば地方創生につながっていくでしょう。
地方創生は国主導でなく、私たち一人ひとりの小さな行動から始まるものだと私は思っています。
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