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5才からはじめるプリンセス入門④|第三章 婚約者との初対面、そのまえに

前章で、情報の集め方を学びました。

「ねぇねぇ、おしえて?」と「三方聞き」です。

これで、あなたは婚約者についての情報を、ある程度、つかんでいるはずです。

  • まだ6才

  • 犬を3匹飼っている

  • 乗馬が下手

  • ピーマンが食べられない

  • 池にはまって叱られた

……ずいぶん、かわいいですね。

ここで、5才のあなたが陥りがちな、最大の罠について、お話ししておかなければなりません。

情報がそろうと、人は、会う前に相手を好きになります。

これを、プリンセス用語で「妄想ブースト現象」と呼びます(いま、わたしがそう呼ぶことにしました。前章の「三方聞き」に続いて2つめです)。

妄想ブースト現象は、こう進みます。

第一段階:情報収集 「ふーん、犬を3匹ね」

第二段階:脳内補完 「犬を3匹も飼ってるなんて、やさしい子かも」

第三段階:物語化 「わたしが行ったら、犬たちもきっとなついてくれて、お庭でいっしょに遊んで……」

第四段階:相手を好きになる 「あの人、わたしの運命の人かもしれない」

第五段階:初対面 「……え?」

ここで、現実に出会います。

多くのプリンセスが、この第五段階で、人生最初の挫折を経験します。

悲しいことですが、情報から想像した相手と、本物の相手は、だいたい別の生きものです。

念のため書いておきますが、これは現代社会でも起きます。

SNSで2ヶ月やりとりして、会ったら「……え?」となるやつです。

5才で経験しておくと、大人になってから同じ失敗をしなくてすみます。

得です。

では、どうするか。

会う前に、期待値を1割にしておきます。

これが、プリンセスの基本姿勢です。

  • 「犬を3匹飼ってる」→ 犬に餌をあげさせられてるだけかもしれない

  • 「乗馬が下手」→ 馬から落ちて毎回泣いてるかもしれない

  • 「池にはまって叱られた」→ そういう子かもしれない

このくらい低く見積もっておくと、会ったときに、

「あ、わりとまともだ」

と、こちらが勝手に好印象を持てます。

期待値を下げるのは、相手のためではなく、自分のためです。

5才には、ちょっと早い人生訓ですね。

でも、大丈夫です。
この本を読んでいる35才のあなたには、ちょうどいいはずです。

さて、期待値が適切に下がったところで、いよいよ、初対面の準備です。

初対面で、プリンセスがやるべきことは、ひとつだけです。

相手を、よく見ること。

……当たり前すぎて、拍子抜けしましたか?

でも、これができません。

なぜか。

初対面の場で、多くのプリンセスは、自分がどう見られているかに意識を奪われます。

  • ドレスは変じゃないかな

  • 髪型、崩れてないかな

  • おじぎ、ちゃんとできてるかな

  • 笑顔、引きつってないかな

これ、全部、自分のことです。

相手のことを、1ミリも見ていません。

ここで、昨日の復習をしましょう。

覚えていますか。

「使えないと思われている」は、最強のポジションです。

初対面の場で、相手はあなたを見くびっています。
「ただの5才のお姫さまだ」と思っています。
絵本みたいに、お人形みたいに、かわいらしく座ってるだけだと思っています。

これが、最大のチャンスです。

相手が油断している間に、こちらは相手を観察し尽くします

  • 目線はどこに行くか

  • 手はどう置いているか

  • 誰の前で姿勢が変わるか

  • 何を言われたとき、一瞬、止まるか

これを、ドレスのことを考えているふりをしながら、やります。

ええ、5才には、ちょっと高度です。

でも、プリンセスは、5才からやるのです。

だからこの本を、5才から読んでいるのです。

初対面で得た情報は、一生ものです。

その場で相手が見せた、ほんのわずかな素顔。

それを覚えておけるかどうかで、この先5年、10年、20年の関係が決まります。

まとめます。

初対面の準備は、こうです。

  1. 期待値を1割まで下げる

  2. 自分のことを考えるのをやめる

  3. 相手を、観察し尽くす

  4. 観察したことを、誰にも言わない(重要)

4が、特に重要です。

初対面のあと、つい、侍女にしゃべりたくなります。

「あの人、なんか目線が落ち着かなくてね」 「手の組み方がね」

しゃべった瞬間、全部、無駄になります。

情報は、使うまで、持っておくものです。

5才で、ここまでできたら、もう半分、女王です。

次の章では、ついに、「初対面、当日」 です。

ドレスの色の決め方(ここでやっと出てきます)、 最初の一言の選び方、 そして、「だまって微笑む」の本当の意味について、お話しします。

今日のところは、ここまで。

イチゴ、ちゃんと食べましたか?

え、まだ食べてない?

……困りましたね。

イチゴは、プリンセスの基礎体力です。
食べないと、三方聞きの集中力がもちません。

急いで食べてきてください。わたし、ここで待ってます。

……。

……戻ってきましたか?

よし、では、次の章で、会いましょう。

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