私たちが本を読み、語り合う理由——知識は、人に優しくなるためにある。
私が13歳で、親の仕事の都合でアメリカに渡った時のことです。
当時、当然ですが英語もろくに話せず、不安でいっぱいの毎日を過ごしていました。中学生のころは目の前のことに必死すぎてあまり気づきませんでしたが、ハイスクールに入ってから、ふと感じたことがありました。
それは、「言葉のおぼつかない私に対して、優しく接してくれるクラスメイトにはある共通点がある」ということでした。
彼ら・彼女らは、だいたいがよく本を読んでいて、大人の話にもちゃんと耳を傾け、常に何かしらの「学び」をしているような子たちだったのです。
そのときに、体感として腑に落ちました。
「ああ、知識というのはひけらかすため(マウントを取るため)にあるんじゃないんだ。いろんなことを知っている・知ろうとする姿勢にあるからこそ、自分とは違う境遇にいる他者への想像力が働き、人に優しくなれるんだな」と。
限られた人生の中で、想像力を広げる手段
もちろん、実際に自分の目で見て、様々な体験をすることほど素晴らしいことはありません。
けれど、私たち人間に与えられた時間やリソースには限りがあります。世界中のすべての人に会って話を聞くことも、あらゆる場所を訪れて文化を直接肌で感じることも不可能です。
だからこそ、私たちは本を読むのだと思います。
本を開けば、会えないはずの遠い国の人々の暮らしや、異なる文化の背景を知ることができます。さらに、今の社会の現状を深く理解するためには、過去の歴史を知ることが大きな手掛かりになります。歴史を学ぶためにも、本を通じて先人の言葉に傾聴することが欠かせません。
読書とは、限られた時間の中で「他者への想像力」を限界を超えて広げてくれる、最も身近で強力なツールなのです。
一人で黙々と読むだけでは、知識は血肉になりにくい
ただ、ここで一つ壁があります。
素晴らしい本に出会い、一人で黙々と読んで「なるほど」と感心するだけでは、その知識はなかなか自分の血肉にはなりにくい、ということです。
本を読んだ直後は分かった気になっても、日常生活に戻ると忘れてしまったり、無意識のうちに自分の都合のいいように解釈してしまったり。本から得た知識を、本当の意味で「人を思いやる教養」にまで昇華させるには、どうしても少しプロセスが足りないのです。
だからこそ「ブッククラブ」という場が活きる
そこで私が強く価値を感じているのが、本について誰かと語り合うこと。私が主催している洋書ブッククラブのような場です。
ディスカッションと聞くと、「白黒はっきりした意見を戦わせる場」「自分の知識や正しさを披露する場」と思う方もいるかもしれません。ディベートのように、相手を言い負かすことを想像される方もいらっしゃるでしょう。
でも、ブッククラブは全然違います。
より重要なのは、本を読んで自分の心に「ふわっ」と現れた得体の知れない感情やモヤモヤを言葉にして、シェアすることです。
自分の持っている思い(意見、心情、疑問)をポンとテーブルに置いてみる。
仲間の考えを聞き、自分の考えとのギャップや共通点を探る。
新しい視点のコメントに「いわれてみれば確かに。そんな考え方は思いつかなかった」と思いを巡らせる。
そこには心理的安全性があり、自分の発言によって人間性をジャッジされることはありません。立派な自己紹介をしなくても、同じ本について語り合うだけで、その人の性格や価値観、歩んできた人生の背景までがふんわりと見えてきます。
他者との意見交換を通じて、自分とは違う視点に触れる。このプロセスこそが、本で得た知識を自分の血肉にしていく大切な作業なのだと思います。
「結論のない状態」に耐え、考え続ける姿勢こそが教養
ディスカッションでは、意見が混在したままでも、むりやり一つの結論を出す必要はありません。全員が自分と反対意見だったとしても、喧嘩や国際交渉ではないので、気にする必要もありません。
実は、この「結論のないあいまいな状態」のまま、課題に対してより良い方向に向かうように考え続ける姿勢こそが「教養」の正体なのではないかと、最近よく考えます。
多様な文化や人々のおかれる境遇を知り、思いやりのある言動ができること。
その素地となるのが、古典・文学・専門書などの本を読むこと。そして、他者との対話を通じて知識を血肉にしていくプロセスです。
これらがあると、一人で黙々と考えるだけでなく、人間社会の一員として、少しずつ「よりよい社会」に貢献できるような人に近づける気がします。
ハイスクール時代、英語が喋れなかった私に優しくしてくれた、あのクラスメイトたちのように。
知識は、人を思いやり、人に優しくなるためにある。
そんな思いを胸に、これからも本を読み、仲間たちと語り合っていきたいなと思っています。
最後に少しお知らせです
私が主宰している「English Library Café」の洋書ブッククラブは、こんな思いもありながら企画しています。
ネイティブのファシリテーターをお迎えし、課題の洋書について英語でディスカッションを行うプログラム(有料)を毎月開催しています。「英語でディスカッション」と聞くと少しハードルが高く感じるかもしれませんが、先ほど書いたように、正解を出したり相手を言い負かしたりする場所ではありません。
結論のないモヤモヤも歓迎の、心理的安全性の高い温かいコミュニティですので、ぜひ安心してご参加ください。
現在(7月10日時点)、8月のプログラムの参加者を絶賛募集中です!どんな本を読むのか、どんな雰囲気なのか、ぜひ一度サイトをのぞいてみてくださいね。
👉 https://www.englishlibrary.jp/#CurrentPrograms
また、公式メルマガにご登録いただくと、プログラムの割引情報など、ちょっとお得なお知らせが届く……かもしれません!洋書を読み切るモチベーションが欲しい方、同じ本を読む同志と語り合いたい方、お待ちしております。
👉https://englishlibrary.jp/#mailinglist
では皆様、まだどこかでお会いしましょう👋
