わたしが憧れたあの場所は、また誰かの憧れになる|#わたしと東京
東京は、憧れの場所だった。
テレビでしか見たことのない世界だった。
SHIBUYA109、自由が丘スイーツフォレスト…
テレビに映し出されるそれらの場所は、学校でいつも話題になっていた。
「夏休みに、原宿で買ったんだ」
そう言ってシールを見せてくれた同級生の周りには、人だかりができた。
わたしもいつか、東京に行ってみたい
キラキラと輝くシールを見ながら、そう思った。
高校2年生の冬。
「東京の大学に行きたい」と言ったわたしに、両親はこう返した。
「家から通える場所に、国立大学がある。
上京の条件は、そこを超える国公立大学に
現役で合格すること」
高校3年生の終わりに、わたしは夢をつかんだ。
もう、ここには戻らない
そう心に決めて、生まれ故郷を出た。
憧れの場所は、思ったよりもキラキラしていなかった。
SHIBUYA109で売っている服は、私には派手すぎた。
自由が丘スイーツフォレストは、想像していたよりも小さな空間だった。
原宿に行ってみたら、人が多すぎて気分が悪くなった。
東京で暮らすのも、楽ではなかった。
通学や通勤で乗る満員電車は、地獄だった。
新宿や渋谷を歩くたびに、道が複雑すぎて迷子になった。
六本木のイルミネーションを見ても、表参道を歩いても、銀座のおしゃれなレストランで食事をしても、どこか虚しかった。
わたしには、東京は合わないかもしれない
頭の片隅で、いつもそんなことを考えていた。
わたしは今、ドイツの小さな街に住んでいる。
ここでも、東京は憧れの場所。
「東京に住んでいたんだよ」
そう言うと、みんなの目がパッと輝く。
「いつか、行ってみたいと思っているんだ」
みんなから、そう言われる。
渋谷のスクランブル交差点、秋葉原のメイドカフェ…
YouTubeでしか見たことのない世界に、みんなが憧れる。
「でも東京って、色々大変で…」
そう言いたくなっても、わたしは言わない。
みんなの夢を、壊したくないから。
東京は、これからもきっと、誰かの憧れでありつづけるのだろう。
(816文字)
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