二十六日目 秘密
高校生探偵、篠宮ミカゲ。
私はこの字面で何度も男に間違えられたが、正真正銘、女である。
人は誰しも心の中に、誰にも言えない一つや二つの秘密を持っているというが、私は昔から謎は解き明かしたい性分で、物事は白黒させなければ気が済まなかった。
これを読んでいる者は、私のことを根っからの探偵だと笑うかもしれない。
しかし、これはもう私個人ではどうしようもできない問題なのである。
そして、最近、そのあくない探究心は、どうやら恋愛にも及ぶことが判明し、私は困り果てていた。
「えぇ、ミカゲ、櫻井先輩と別れちゃったの」
「うん、そうなんだ」
私の報告に、親友のエリカはとても驚いた。
それもそのはず、私が櫻井先輩と付き合い始めたのはほんの一週間前で、まだ日が浅かったのだ。
「まさか振られて……?」
気まずそうに尋ねるエリカに、私は正直に言った。
「ううん、私が振ったんだ」
「ええ? もったいない! だってあの櫻井先輩でしょう?」
櫻井カケル先輩は、文武両道、容姿端麗で学年を問わず人気がある人だった。
おまけに資産家グループの一人息子であり、人格者でもあったため、学園の誰もが彼のことを尊敬している。
そんな男性から好意を寄せられたのがつい先日。
全く接点がなく、向こうが私を認知していることにも驚いたのだが、私は学園の人気者の彼の実態に興味を持ち、二つ返事でOKしたのだった。
「思っていた人と違ったんだ」
私が率直な感想を漏らすと、エリカは神妙そうに聞いた。
「裏表が激しい人だったとか?」
「いいや、彼にはおよそ裏というものがなく実に爽やかな青年だったよ」
「だったら尚更なんで……」
エリカは、わけが分からないと言う風に聞いた。
「今回、人と付き合ってみて分かったのだが、私は人の余白に惹かれるらしい」
「余白?」
「あぁ、言うなれば、噛めば噛むほど味が出るガムのような、会うたびに新しい発見があり、そばにいるのに底が見えなくて、もっとその人のことを知りたいと思う、そんな“余白"だ」
「ミカゲ……」
エリカは呆れたようにこちらを見た。
「恋愛と事件は同じじゃないのよ? そんな一緒にいても底が見えない男なんて、碌な奴じゃないわ。安心できる相手が一番いいんだから。あぁ、もったいない」
私は反論しようとして開けかけた口を閉じた。確かにエリカの意見には一理あった。
__さて、この謎が解けるかな名探偵。
そう言って世間を騒がす指名手配犯。彼は何かと私にミステリーを突きつける。
私は彼の悪を許せない。
でも、同時に彼がなぜこんなことをするのか気になってしまう自分もいる。
神出鬼没で、飄々として、そのにこやかな微笑みからはおよそ読み取れない彼の心は、いったいどこにあるのだろう。
知りたい。
解き明かしたい。
この気持ちはまるで__
