四十八日目 おみやげ
物心ついたときにはもう、染み付いていた。
出張から帰ってきた父に群がる兄妹。
私は必ず一歩引いて立っていた。
それでも父は必ず言うのだ。
「おみやげは杏樹から選びなさい」と。
末っ子で、最初に選ぶ権利があるんだと、他の兄弟を説き伏せる父。
文句を言いながらも、私のことをじっと見つめる兄妹の瞳。
私はいつも姉さんや兄さんが欲しくなさそうなものを選んでいた。それは私にとって無意識だった。
*
「杏樹、おはよう」
自席に座っている私に声をかけたのは、美玲だった。
「おはよう」
挨拶を返すと、彼女はまだ来ていないクラスメイトの席に腰をかける。
「んで、どうだったの?」
「何が」
分かっているけど、私はつい聞き返す。
「山本くんのこと」
そう、私は昨日の帰り、美玲と歩いているところを同じクラスの山本くんに呼び出されたのだ。
「……好きだって言われた」
「やっぱり!」
美玲は嬉しそうにニヤニヤとした。
「それで、何て返したのよ」
「分からないって」
美玲は、眉根を寄せ、訳がわからないと言う風な顔をする。そして私に言った。
「はっきり答えてあげないと可哀想だよ」と。
曖昧に頷いた私は、ふと小さいときに父からもらったおみやげのことを思い出した。
私だって知りたいよ。
自分がどうしたいのか。
でも、今更手にすることはできないんだ。
自分が手放したおみやげはもうどこかへ行ってしまった。
