二十五日目 バス
今日、私たちは旅に出る。
「ねぇ、マリィ本当にいいの?」
不安そうに揺れるロゼの瞳。
私は少しでも彼女の気持ちを軽くしたくて、ギュッと握る手に力を込めて言った。
「当たり前じゃない。私たちはずっと一緒だって約束したんだから」
しっかりと繋いだ手と手。
バスの中でも、ロリータを身にまとった私たちの存在は浮いていた。
*
私とロゼが出会ったのは、ロリータ好きが集まる集会だった。
原宿の一角のスペース。
前々から興味のあった"お茶会"に、私はお気に入りの白ロリータを着て出かけた。
でもあと一歩、集会場のドアを開ける勇気が出ない私に声をかけてくれたのがロゼだった。
「お茶会の方ですか?」
「はい、そうなんです……うわぁ」
後ろから声をかけられ、振り向いた私は、ロゼのことを見て一目で恋に落ちた。こんな美しい人がいるのかと。
黒を基調としたロリータに身を纏う彼女は、まるで私と正反対のテイストだけれども、だから
こそ強く惹かれた。
「あの、すっごくお似合いです。綺麗」
私の感想を、ロゼは微笑んで受け止めてくれた。
「ありがとう。……私たち、まるで双子みたいね」
「え?」
私が聞き返すと、ロゼは言った。
「ほら、私は真っ黒であなたは真っ白。黒と白で対のオセロみたい。私はあまり着ないテイストだけれど、甘ロリっていうのかしら。あなたによく似合ってるわ。素敵よ」
そう言うとロゼは私の手をとって、集会場に一緒に入ってくれた。
それが私たちの出会い__。
話をしているうちに、私たちは同い年で、都内の同じ高校に通っていることが分かった。
それからというもの、クラスは違ったけれど、私たちは空いた時間を見つけては互いに会いに行き、お昼休みには、中庭で共にお弁当を食べるほど仲良くなった。
ロゼは私の無味乾燥な人生を照らす光だった。
しかし、逆にロゼは私のことを太陽だと言った。そして自分はその光を受けないと輝けない月だと。
そう言った彼女の横顔はどこか寂しそうで、私はただ見つめることしかできなかった。
でも今なら言える。
もしあなたが月ならば、私はそこに刻まれるうさぎになりたい。
ずっとそばで、触れられる距離で、あなたを感じていたい。
人がまばらになるバスの中。
私とロゼの行先は、きっと、天のみが知っていた。
