エラ・ラングレー「Choosin' Texas」
いつの時代もダンスが歌に物語を添える
誰かに自分の愛する人をうばわれるというテーマは、音楽、映画でよくあります。またそのきっかけがダンスというのも定番の一つ。現代でもダンスの種類は変わりつつも同じような内容の曲は多く、失恋だけでなく恋愛という恋の予感もダンスがキーになる曲も多いです。
ちょうど現在、アメリカのカントリーミュージック界では素晴らしい躍進を遂げているカントリー女性シンガーがいます。エラ・ラングレーはまだ26歳という若さで今年はカントリーだけではなくポップの分野でも全ての賞を受賞すると言われているシンガーソングライターです。
少し前までアメリカンアイドルやThe Voiceからデビューしてカントリー歌手になる若手が多かった中で、彼女は20歳でナッシュビルに移りストリーミング中心に、特にTikTokなどで人気が出てソニーミュージックナッシュビルと契約を結び、まさに現代のリリースの仕方で成功をしていると言えるでしょう。彼女のフルアルバムはカントリーチャートとカントリーエアプレイで同時に1位を獲得した初めての歌手としてさらに評判をあげ、いろいろなシンガーとコラボレーションすることで爆発的にヒットしています。つい先日私が記事にあげたビルボード「Billboard Women In Music 2026」でも受賞していますね。
彼女の曲は、どこかフォーク、古いカントリーの影響を受けているようなサウンドが多く、そのおかげでか幅広い世代に好かれている歌手です。今回のヒット曲は、テキサスにいる女の子に思いを寄せている自分の彼氏のことを歌っている「Choosin' Texas」です。
カントリーが好きな人ならすぐわかる単語が散りばめられた歌詞です。
ツーステップ←カントリーダンス
カウボーイ←牧場に従事してる人も多いけどそのスタイルをする人も多い、フォートワース空港に降り立った時にカウボーイハットの人多いな!と昔思いました
ジャック(ダニエル)←ご存じの方も多いでしょうがお酒の名前でテネシー州を母体とするお酒のメーカー
「アマリロ・バイ・モーニング(Amarillo by Morning)」←ジョージ・ストレイトのヒット曲、彼はテキサス出身で現在も人気が高い
Lone Star State←テキサス州のテキサス共和国であった頃の国旗
カントリーの色々な曲の中でも、あえてテキサスとテネシー、米南部を感じとれる単語を散りばめた楽曲になっています。
それから、彼女がいるのに、彼がツーステップを部屋で踏んで何か他の女性を思い出してる、、と、多分テキサスに好きな人がいると匂わせる歌詞(ツーステップのダンスだから)で、案の定、テキサスに二人で行ったらテキサスの(多分昔馴染みの)女の子に彼氏を取られちゃった(戻っちゃった)という内容。
もちろん具体的に誰に取られた、、ということではなく、もしかしたら、彼がやっぱりテキサスで暮らす方がイキイキしてるから、テネシー州じゃダメなのね、、という意味でもありますね。まあ、日本で暮らす私からしたら、テネシー州でもカントリーダンスしてるし、テキサスもテネシーも米南部なんだけど、、と思ってしまいますが、要するに、生まれ育った土地がやっぱりよかった、、、ということなのかもしれません。
この曲をコンサートでエラが歌い出すと会場中のファンがこぞって歌い出す映像や、テキサスだよ!いや、テネシーだよ!という会話をSNSで見ることから何かしら対立させる歌詞は盛り上げるのにいい材料でもあるのかもしれません。
とにかく彼女の曲は現在記録的な1位を更新しています。若い世代の配信にうまくハマったという見方や、どこか適度に哀愁がある曲は幅広い世代で誰が聞いても心地よい面があることや(元気が良すぎても悲しすぎても人の心には負担になるのでちょうどいい塩梅の曲だった)、土地名が出てくることは愛着を持たせることや、カントリーダンスにハマりやすいテンポであることなど理由は幾つでもあげられますが、歌詞の内容を考えると、若い世代には今の彼ら自身の恋愛に重なり、上の世代にとっては過去の自分の経験を思い出せる何か、、の歌になるのかもしれませんね。
また販売戦略としても、最初にMVを出し、歌詞付きを出し、その後ヒットし始めた頃にあえて内容に合わせたプロモーション用のビデオを出しています。長く人に興味を惹きつける手法をしっかり入れているのもヒットの理由の一つです。私もこの曲は自分のライブで歌いますが綺麗なメロディーで好きな歌詞です。
(8/19追記)最新の話題で言うと、アメリカで人気のテレビ司会者ジミー・ファロンの番組「ザ・トゥナイト・ショー」で俳優マシュー・マコノヒーがブルーグラスバンドを引き連れて “Choosin’ Texas” を歌いました。こうやって他ジャンルの人が曲を取り上げることでさらに人気が継続しますよね。
本日の記録:2000年代以降、1人の女性アーティストによる1年でビルボードHot 100の1位を獲得した最多週数の記録を保持。 2026年に1位を18週獲得し、2003年にビヨンセが樹立した17週の記録を上回りました。
ところで、ダンスが恋愛の分かれ目を表すというと、どこかで聞いたことがあると思ったら、「Tennessee Waltz」のような内容ですね。
「Tennessee Waltz」は今から70年以上前の1948年にリリースしたピー・ウィー・キングが作曲した曲に、レッド・スチュワートが詞をつけ、ゴールデン・ウエスト・カウボーイズ版が1948年1月に、カウボーイ・コパズ版が1948年3月にリリースされ、いずれもヒットチャートを獲得した曲です。1950年にパティ・ペイジがカバーしたものが広く知られています。私もパティ・ペイジのカバーが好きです。
恋人とワルツを踊っていて、旧友が来たので恋人を紹介したら、その友達に恋人を取られてしまったというもの。ダンスにまつわる恋の歌で世界的に大ヒットし、日本でも日本語版で知られている曲です。アメリカの州はそれぞれ州の歌というのがあるのですが、この曲はテネシー州の公式に第4の州歌であり、現在までテネシー州には全米最多の14の州歌が定められているらしいのですが、テネシー州の州歌として最も有名なのはこの曲です。
そしてダンスと恋愛にまつわる歌。他には私も歌う曲で日本でも越路吹雪さんが歌った曲があります。「Save The Last Dance For Me」1960年の曲で日本語のタイトル「ラストダンスは私に」は、アメリカのコーラス・グループドリフターズの楽曲。
この曲は作詞者のドク・ポーマス自身の体験が歌になったものです。楽曲を作詞した当時、小児麻痺の影響で松葉杖をついて歩く生活をしていたので、彼女とダンスを踊ることができなかった。だから、彼女とダンスホールに行くと「どうぞ他の人と踊ってもいいよ。私はここで見ているから」と言いつつ「最後のダンス音楽になったら僕もホールの真ん中で立つから一緒に踊ってくれないか。」と、ラストダンスだけは私のために残して置いてくれ、という彼の思いが詞に込められているということだそうです。
このように必ずしも失恋の歌ではない心温まる歌詞もあります。
次の曲もそうです。
「Could I Have This Dance 」Anne Murrayの1980 年ヒット曲。
結婚式ソングとしても有名で、「この一曲だけでなく、一生あなたと踊っていたい」という愛を歌っています。アン・マレーのこの曲は1980 年の映画「アーバン・カウボーイ」の挿入歌として、全米チャートで最高位33位のヒットになりました。これからずっと毎晩私のパートナーになってもらえる?これからの人生もずっと二人でダンスしていきましょうという二人の人生をダンスを通して語っています。「アーバン・カウボーイ」のサウンドトラックからはヒット曲がとても多く、今でも人々に聴かれたりCMやテレビドラマで使われたりと、人々に愛されてる曲が多いですね。
そしてカントリー界ではこの人の曲を忘れてはいけません。
「I Just Want To Dance With You」George Straitの1998年ヒット曲です。
「君とただ、踊れたらそれだけでいい」という、素朴でロマンチックなラブソングです。「I Just Want to Dance with You」は、アメリカのカントリー歌手ジョージ・ストレイトが歌った曲で、ビルボード・ホット・カントリー・シングル&トラックス・チャートでストレイトにとって34曲目のナンバーワンシングルでありこの曲がヒットした頃のジョージの人気は本当にすごいものでした。(アメリカのフェスで彼が出てくるだけで歓声がすごかったです)ちなみに、最初に紹介したエラの歌詞に出てくる「アマリロ・バイ・モーニング(Amarillo by Morning)」という楽曲の歌手はこのジョージ・ストレイトです。ロデオの賞金稼ぎの男性が試合から試合へとその日暮らしをして、妻も彼から離れていく。次はアマリロで試合だ。明日の朝にはアマリロに着くだろうという歌です。「I Just Want To Dance With You」といい、アマリロの曲といい、どこか無骨で恋愛下手な男性を歌った歌という気がしますが、そこが多くの人に愛される理由なんでしょうか。
さて、他にもいくつか思いつくダンスにまつわるカントリーの歌はありますが、最後に2025年の12月に60歳で他界した私の大好きなカントリーバンド、ザ・マーベリックスをご紹介して終わりたいと思います。
「Dance The Night Away 」The Mavericksの1998年の曲です。
失恋した主人公が、悲しみを振り払って踊り明かそうという歌で、ラテン風味のカントリーはマーベリックスの得意とするサウンドです。新しい恋の予感もある前向きな感じの「Dance the Night Away」は、リードボーカルのラウル・マロが作詞作曲し、アルバム『Trampoline』(1998年)に収録されています。彼らの楽曲の多くは、ホーンセクションがバックを務めることが多いのですが、この曲はそんなラテン系の一曲で、マロはわずか1日でこの曲を書き上げたそうです。人生最後までツアーを行い、残念ながら他界してしまいましたが、最後の最後はベッドの周りにメンバーが楽器を持ち寄り、彼らのナンバーを囁くように歌う映像に私も涙してしまいました。彼は日本も好きだったんですよ。一度だけメッセンジャーで本人と連絡のやり取りしたことがありますが、本当に残念です。
ダンスにまつわる歌、いかがでしたでしょうか。今回はエラのヒット曲を自分のコンサートでも歌う関係で色々探していたらこのようなまとめになりました。また何かあったら書いてみたいと思います。私の歌も聴きに来てね。
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