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運命の相手に出会えないままに

いつかは会えるものだろうと思っていた。
だいたいみな合う相手があって、うまくかみ合って
日々を送っていくみたいだ。

だけどなぜだか自分だけ相手がいない。
伸び上がって探してみたけど出会えない。
きっと近くにいるはずなのにどうしても出会うことができなくてもどかしい。

そんな思いで日々を送っていると我が身が病んできた。病院で治療を受ける。

そうやって半世紀が経ち、また病院に連れて行かれた。なにやら不穏な会話が聞こえる。

まさか…!だんだん意識が遠のき何も感じられない。
鈍った感覚のまま根底から揺り動かされるような
衝撃を受ける。

これで全てが終わりなのか?
とうとう、運命の相手に出会えないままに生涯を
終えるのか。残念無念。


はい、抜けましたよ、
と歯医者はあまり綺麗ではない奥歯をカチンと音を立てて台に置いた。

私の奥歯は不憫なやつだ。
たまたま噛み合うべき相手の歯が後ろから親知らずに捕まって生えてくることがなかった。

歯として出てきたものの相手がいなかったため、
空しく伸びてしまった。
生えてこない相手の上の肉に当たって痛いので
どうせ噛む役に立っていないのだし、と抜歯した。

埋もれている歯の上の肉が噛まれて痛むことも
なくなり、今は亡き歯のあったところは治った。
運命の相手はいなくなったことも知らずに
下の奥歯は今も埋もれたままである。

一度も何も噛まずにただ伸び続けて虫歯になって
抜かれた歯には気の毒だったが、
私の生活の質は向上した。


あまりに不憫な奥歯の生涯を擬人化して文章にしてみたが、たまたま独身の筆者の生涯とは何の関係もないはずだ、たぶん。


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