「くつずれ」|大したことないけど、痛いものは痛い
映画『ちいかわ』を観た。
主題歌「くつずれ」を聴いて、
私も少し目がしょぼった。
大したことないからさ
そりゃなんともないけどね
空見上げて 目ショボる
なんかいつもの日じゃないや
くつずれが 痛くとも 痛くとも
歩くよ前を向いて
ネバーギブアップ
でも やっぱ 痛いからさ 痛いからさ
なんかちょっとだけ目ショボる
小さい頃、花火大会に行ったことがある。
浴衣を着せてもらって、サンダルを履いた。
それが、痛くて痛くて。
最初からずっと痛かったけれど、我慢して歩いていた。
帰り道、とうとう耐えられなくなって、
「歩けない」
と泣いてしまった。
親は激怒した。
「くつずれぐらいで」
「大げさだ」
「もうすぐ着くのに」
もうすぐ家に着くことは、私にも分かっていた。
でも、あの時は本当に限界だった。
くつずれって、なんであんなに痛いんだろう。
ほんの小さな傷なのに。
血もほとんど出ていないのに、
歩みを進めるたびに、足全体がズキズキする。
しかも、靴の中にあるから、周りからは見えない。
大怪我でもない。
だから、人にも言いにくい。
大げさにしたくないから、
表面上はニコニコ笑って歩いている。
でも、頭の中は痛みのことでいっぱいになる。
せっかくのお出かけなのに、
景色よりも、食べ物よりも、
痛い。
痛い。
そればかりになる。
心の傷も、少し似ているのかもしれない。
大したことないから。
これくらい、みんな経験しているから。
「なんともない」
と、自分にも周りにも言い聞かせる。
前を向いて歩く。
笑うことだってできる。
けれど、やっぱり痛いから、
なんかちょっとだけ、目がしょぼる。
若い頃は、背伸びをして、かっこいい靴を履いて街に出た。
先が尖っていて、ヒールも高くて。
そういう靴を履いている人が、素敵に見えた。
私も履いてみた。
でも、どれも痛くて痛くて、どうしても我慢できなかった。
他の人は普通に履きこなしているのに、
なんで私だけ無理なんだろう。
そう思った。
履いているうちに、足に馴染んでくる靴もあった。
最初から、くつずれができない靴もあった。
そういう靴は、お手入れをして、大事に履いた。
今はもう、歩きやすそうな靴しか選ばない。
昔みたいに、みんなが履いているからという理由で、痛そうな靴を選ぶこともなくなった。
だから、くつずれができることは、ずいぶん少なくなった。
それでも。
ハチワレの少し切ない歌声を聴いていたら、
合わない靴を履いて、
大したことない顔をして、
痛いまま歩いていた、
昔の自分を思い出した。
もう、その靴は履いていない。
なのに思い出すと、
なんかちょっとだけ、
目がしょぼる。
