【W杯の名物】なぜメキシコサポーターはピンチの時に「歌って、泣かないで」と大合唱するのか?
サッカーワールドカップ北中米大会
スタジアムをひときわ鮮やかに、そして陽気に染め上げるのがメキシコ代表のサポーターたちです。巨大な帽子「ソンブレロ」やルチャリブレ(プロレス)のマスクを被り、スタジアムをまるでお祭りのように変えてしまう彼らには、ピンチの時こそ、全員で肩を組んで歌う特別な歌があります。
それが、メキシコの第二の国歌とも呼ばれる名曲「シエリト・リンド(Cielito Lindo)」です。今回は、スタジアムを震わせるこの歌に込められた、メキシコ人の熱い人生哲学をご紹介します。
1. スタジアムに響く
「愛しい人、歌って泣かないで」
メキシコ戦を観戦していると、必ずスタジアム全体から大合唱が沸き起こる瞬間があります。彼らが歌っているのは、この曲のサビの部分です。
¡Ay, ay, ay, ay, canta y no llores,porque cantando se alegran, cielito lindo, los corazones.
(アイ、アイ、アイ、アイ、
歌って、泣かないで。なぜなら歌えば、
愛しい人よ、心は晴れるのだから)
「シエリト・リンド」とは、直訳すると
「美しい小さな空」ですが、メキシコでは「愛しい人」「私の可愛い人」という親愛を込めた呼びかけとして使われます。
もともとは古い失恋の歌なのですが、現代のメキシコ人にとっては全く違う意味を持つようになりました。
2. 災害の苦難も、W杯のピンチも
歌で乗り越えるこの歌の最大のキーワードは、"Canta y no llores"(歌って、泣かないで) というフレーズです。
メキシコの人々は、人生における大きな試練に直面したとき、この歌を歌い合います。
例えば、メキシコで大地震が発生し、多くの人が不安に包まれた避難所や救助活動の現場でも、誰からともなくこの歌が沸き起こり、人々を勇気づけました。
サッカーのスタジアムでも全く同じです。
チームが先制されてピンチの時、あるいは激戦の末に勝利を掴み取りたい時、サポーターたちは「泣いている場合じゃない、歌って心を燃やそう!」と、お互いを、そしてピッチの選手たちを鼓舞するためにこの歌を叫ぶのです。「シエリト・リンド」の大合唱だけでなく、メキシコサポーターの応援は世界中で愛されています。彼らがスタジアムに持ち込む「陽気な文化」には、以下のようなものがあります。
マリアッチの楽団:スタジアム周辺には、トランペットやギターを持った伝統楽団が現れ、試合前からお祭り騒ぎが始まります。
ソンブレロと覆面:伝統的な大帽子や、カラフルなプロレスのマスクを被ったサポーターでスタンドが埋め尽くされます。
スタジアム・ウェーブの起源:観客が順番に立ち上がるお馴染みの「ウェーブ」。実は1986年のメキシコW杯で世界中に広まったため、海外では「メキシカン・ウェーブ」と呼ばれています。
《おわりに》
私たちが彼らの歌から学べることどんなに厳しい状況でも、うつむかずに前を向く。
メキシコサポーターがスタジアムで響かせる「シエリト・リンド」は、単なるサッカーの応援歌ではありません。
それは「どんなに苦しいときも、笑顔と音楽を忘れずに生きていこう」という、彼らの人生の哲学そのものです。もし次のワールドカップでメキシコの試合を見る機会があれば、ぜひ耳を澄ませてみてください。画面越しからも、彼らの「歌って、泣かないで」という熱い魂が伝わってくるはずです。
今日は、ネオからメキシコサポーターの大合唱を、読者のみなさまへお届けしました。
勝っても負けても、サッカーがくれる喜びや、人と人がつながる温かさは変わりません。一緒に、この歌を楽しんでいただけたら嬉しいです。
