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日本VSオランダ/残念、そこはファン・ダイク ~永遠のジェントルマン

レジェンド3部作(ロナウド、メッシ、ネイマール)の記事には、本当にたくさんの温かい反響をいただきありがとうございました!サッカーの中に宿る美学を、多くのアートファン・スポーツファンの皆様と共有できてこれほど嬉しいことはありません。

2026年ワールドカップ北中米大会が幕を開け、世界中が狂熱に包まれる今、日本代表(サムライブルー)の前に立ちはだかる大きな壁、オランダ代表。今回はこれまでの
『攻撃の天才たち』から視点をガラリと変えて、初めて『守備(ディフェンス)の美学』へと迫ってみたいと思います。

主役は、オランダの偉大なキャプテンであり守護神、フィルジル・ファン・ダイク。世界最高のセンターバックと称される彼を語る上で、どうしても外せない要素があります。
それは、思わずため息が出てしまうほどの『圧倒的な美貌と気品』です。193センチの強靭な肉体でありながら、背筋をピンと伸ばし、長い髪を結い、冷徹なまでの冷静さで相手フォワードをいなす。その佇まいは、泥まみれで戦う戦士というよりも、中世の王宮に佇む高貴な騎士のようです。美術記事を書いている私の目には、ピッチ上の彼の姿が、17世紀にヨーロッパの王侯貴族たちを魅了した同姓の天才画家、アントニ・ファン・ダイクの描く肖像画と完全に重なって見えます。世界中が注目する日本VSオランダの戦いを前に、スタジアムを一瞬にして気高き『王宮の社交場』に変えてしまう、ファン・ダイクの美しき防衛のアートを紐解いてみたいと思います。

美術史を魅了した、もう一人の美形天才画家サッカー界のファン・ダイクと同じく、かつて広大なネーデルラントと呼ばれた同文化圏のベルギー(アントウェルペン)に生まれ、17世紀のヨーロッパ美術界を席巻したのが、宮廷画家のアントニ・ファン・ダイクです。実はこの画家のファン・ダイク、数多く残されている自画像を見てもわかる通り、(下記)
美術史のなかでも誰もが認める「稀代の美形画家」でした。貴族のように端正な顔立ちと、どこか憂いを帯びた哀愁のある瞳。
彼自身がその美貌で宮廷の人々を魅了していたのです。そんな彼が得意としたのが、イギリス国王チャールズ1世をはじめとする王侯貴族たちの肖像画(ポートレート)でした。彼の描く肖像画は、どれも言葉を失うほどエレガントでした。描かれた貴族たちはみな、背筋がすっと伸び、シルクの衣服をまとい、冷徹ながらも気品に満ちた表情を浮かべています。ファン・ダイクは、人間の持つ「洗練された美しさと威厳」をキャンバスに定着させる天才だったのです。激しい戦争や政争が渦巻く時代(戦場)にあって、彼の絵の前だけには、常に静かで優雅な空気が流れていました。

 《残念、そこはファン・ダイク》
ピッチを宮廷に変えるエレガントな防衛術

宮廷画家ファン・ダイクが描いた、息をのむほど優雅で、圧倒的な威厳を放つ貴族たちのポートレート。
現代のサッカースタジアムにおいて、その名画からそのまま抜け出してきたかのような佇まいを見せるのが、オランダの守護神、
フィルジル・ファン・ダイクです。
193センチという彫刻のようなシルエットに端正な顔立ち、美しく整えられた髭、そして長い髪をきゅっと後ろで結んだその姿は、ピッチに立つだけで絵になる圧倒的なオーラ。
サッカーファンの間では、あまりの鉄壁ぶりに「残念、そこはファン・ダイク」という言葉が生まれるほどの絶対的な存在です。特筆すべきは、彼のディフェンスの「美しさ」です。ディフェンダーというポジションは、時に激しく泥まみれになり、スライディングで泥臭く相手を止める職人仕事です。しかし、ファン・ダイクの守備にその泥臭さは一切ありません。彼は背筋をピンと伸ばし、冷徹なまでの冷静なポジショニングだけで相手フォワードを追い詰め、まるでダンスのパートナーをリードするかのように軽くいなしてボールを奪い取ってしまいます。日本代表の猛烈なアタックが飛び交う戦場において、彼の一挙手一投足には、常に静かで優雅な空気が流れているのです。これこそが、画家のファン・ダイクが肖像画に宿した『気品(計算されたさり気なさ)』そのものです。どんなに激しい攻撃を仕掛けられても、自らのスタイルを崩さず、美しく、気高く、相手を圧倒する。オレンジのキャプテン腕章を巻いたこの現代の巨匠は、過酷な守備という仕事を、ため息の出るような宮廷芸術の域へと昇華させているのです。

結びー
オレンジのキャプテンが描く「気高き名画」

同じルーツを持ち、同じ名前を持ち、美術史とサッカー界でそれぞれ見る者をため息で満たす2人の『ファン・ダイク』。画家のファン・ダイクが激動のヨーロッパで優美な肖像画を残したように、サッカー界のファン・ダイクもまた、世界中が熱狂し、激しくぶつかり合う日本VSオランダという大舞台で、一人だけ気高き「静寂」と「気品」を保ち続けています。日本代表の前に立ちはだかる彼の姿に注目するとき、私たちはスポーツの激闘の中に、17世紀の宮廷画のような最高級のエレガンスを目撃することになるはずです。その気高き守備のアートから、今大会も一瞬たりとも目が離せません。

自画像 アントニ•ファン・ダイク
1620~1627Wikimedia Commons / Public Domain
時代を超えて響き合う、冷静さと威厳。
17世紀の画家ヴァン・ダイクの自画像は、
現代の守備者ファン・ダイクの姿を思わせる。

🇳🇱 本日の表紙
オランダ国旗と「美しきオレンジ」今回のアイキャッチには、守護神ファン・ダイクが背負うオランダの国旗を掲げました。赤・白・青の三色旗ですが、サッカーにおけるオランダの象徴といえば、誰もが思い浮かべるのが鮮烈な「オレンジ色(オラニエ)」です。実はこのオレンジ、画家のファン・ダイクが活躍した17世紀のバロック時代、オランダ独立の祖であるオラニエ公ウィレム1世の紋章に由来する、歴史と誇りが詰まった高貴な色彩(アート)でもあります。激動のW杯というキャンバスの上で、この伝統のオレンジをまとい、誰よりも気高く佇むファン・ダイク。17世紀の宮廷画のような最高級のエレガンスを、その美しい国旗の色彩と共にぜひスタジアムで目撃してください。
Wikimedia Commons / Public Domain

最後に

勝っても負けても相手を尊重し、誇りを持って戦う。サッカーにおいて、ジェントルマンシップ(品格、尊重、フェアプレー)という理想は今も大切にされています。
それは、「どんな環境でも人間として崩れないための“軸”」を観ている私達にも示されているようです。

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