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年上攻めと年下攻めは何が違う?|BLの主導権と「受けの自由度」を比較

違うのは性格ではなく、年齢差によって行動へ加わる意味

第1回では、私が苦手だったのは年下攻めそのものではなく、相手の意思を押し切る強引さと、攻めを強く見せるために受けの人格まで変えてしまう描き方だったことを整理しました。

第2回では、年下攻めには、成長型だけでなく、ハイスペック型、世話焼き型、見守り型、執着型など、さまざまな人物がいることを確認しました。

では、年上攻めと年下攻めは、そもそも何が違うのでしょうか。

以前の私は、その違いを主導権が動く方向として説明しようとしていました。

年上攻めは、最初から持っている主導権を受けへ委ねる。

年下攻めは、最初には持っていなかった主導権を獲得していく。

これは、年齢差が二人の力関係へ強く影響する作品では、一つの典型として当てはまります。

しかし、年下だから最初に主導権を持っていないとは限りません。最初から落ち着きがあり、仕事も生活も安定している年下攻めもいます。反対に、年上でも不器用で、受けに日常を支えられている攻めもいます。

年齢は性格を決めません。主導権の所在も、攻受だけでは決まりません。

それでも年齢差には意味があります。

同じ「待つ」「支える」「甘える」という行動でも、年上がするのか、年下がするのかによって、読者が受け取る魅力が変わるからです。

今回は、年上攻めと年下攻めの性格を決めつけるのではなく、年齢差が同じ行動にどのような意味を加えるのかという視点から比較してみます。


年齢・性格・攻受・主導権は別の要素

比較する前に、四つの要素を分けておきます。

  • 年齢:二人のうち、どちらが年上・年下か

  • 性格:強引、温厚、堅物、世話焼き、俺様など、その人物の性質

  • 攻受:性的な役割や、作品内で示されるカップリングの位置

  • 主導権:告白、会話、生活、危機、性、関係の選択など、場面ごとに誰が動かすか

この四つは重なることもありますが、本来は同じものではありません。

年上攻めだから経験豊富で、年下攻めだから未熟とは限りません。

面倒見がよく、落ち着いて相手を見守る年下攻めもいれば、不器用で受けに生活を支えられている年上攻めもいます。

性格や能力、二人の主導権は、年齢だけでは決まりません。

そのうえで、作品の中で年齢差が強く意識されている場合には、同じ行動でも次のような意味が加わりやすくなります。

これは性格の定義ではなく、年齢差を物語に使ったときに生まれやすい意味の違いです。


面倒見のよさは、年上だけのものではない

年上攻めには、経験があり、受けを支える人物が多いという印象があります。

しかし、面倒見のよさそのものは年齢と関係ありません。

生活能力が高く、年上の体調や忙しさにいち早く気づく年下攻めもいます。感情を大きく表に出さなくても、困っている相手を放っておけない堅物な年下攻めもいます。

年上攻めが世話を焼けば、これまでの経験から相手の負担を先回りして減らす包容力として見えやすい。

年下攻めが世話を焼けば、「年下だから守られる側だろう」という印象を覆す頼もしさや、相手を本気で助けたいという気持ちとして見えやすい。

行動は同じでも、年齢差によって色が変わります。

ここで重要なのは、世話を焼くことが相手の力を奪っていないかです。

相手ができることまで取り上げ、「俺がいなければ何もできない」と扱うのか。

相手の強さを知ったうえで、抱えきれない部分だけを支えるのか。

私が惹かれるのは後者です。

これは年上攻めでも年下攻めでも変わりません。


「待つ」姿にも、違う魅力が生まれる

私が年下攻めに求めていたものの一つが、相手が決めるまで待てることでした。

ただし、待つことも年下攻めだけの特徴ではありません。

年上攻めが待つとき、そこには、自分の経験や立場を使えば相手を動かせると分かっているからこそ、あえて急がない自制が見えます。

年下攻めが待つときには、年上の人生や判断を軽く扱わず、相手自身が答えを出すことを尊重する姿勢が見えます。

どちらも相手の意思を大切にする行動ですが、年齢差によって見える魅力が違います。

そして、普段は待てる人物が、本当に失いたくない場面でだけ前へ出る。

その瞬間には、単なる強引さではなく、「ここまで相手を見てきた人物が、それでも伝えなければならないと決めた」という説得力が生まれます。

私が好きな年下攻めは、常に主導する人物ではありません。

年上を尊敬し、静かに見守り、必要なときだけ相手を助けるために動ける人物です。


「受けの自由度」は、年上攻めの専売特許ではない

ここでいう「受けの自由度」とは、受けが反論し、拒み、自分で考え、男性としての存在感を保ったまま行動しても、二人の関係や攻めの魅力が崩れない幅のことです。

私は以前、年上攻めの方が最初から立場を安定させやすいため、受けの自由度も高くなりやすいと考えていました。

確かに、年齢や経験が攻めの説得力を補っている作品では、受けが強くても年上攻めの存在感は揺らぎにくいことがあります。

しかし、受けの自由度は年齢だけで決まるものではありません。

年下攻めにも、観察力、忍耐、生活能力、決断力、誠実さがあります。年上受けの強さを認め、奪わずに支えられる人物なら、受けが男前なままでも十分に成立します。

反対に、年上攻めであっても、受けを無力にしなければ頼もしさを示せない人物なら、受けの自由度は低くなります。

つまり問題は、攻めが年上か年下かではありません。

攻めの魅力が、受けの弱さに依存しているかどうかです。

受けが言い返してもいい。仕事では攻めより有能でもいい。危機では受けが攻めを守ってもいい。最後に関係を選ぶのが受けでもいい。

それでも攻めの魅力が失われないなら、二人はどちらかを弱くすることで成立しているわけではありません。

私は、そのような関係に説得力を感じます。


主導権は、一人が持ち続けるものではない

恋愛にある主導権は一つではありません。

  • 先に好意を自覚するのは誰か

  • 先に告白するのは誰か

  • 会話を動かすのは誰か

  • 生活を支えるのは誰か

  • 危機で判断するのは誰か

  • 相手の感情を先に読むのは誰か

  • 身体の距離を主導するのは誰か

  • 最後に関係を選ぶのは誰か

すべてを同じ人物が担う必要はありません。

普段の会話や仕事では年上受けが主導し、生活では年下攻めが世話を焼く。

危機では年上攻めが前に出るけれど、攻めの弱さに最初に気づくのは年下受けかもしれない。

恋愛を始めるのは攻めでも、最終的に関係を選び直すのは受けかもしれません。

受けが関係全体の舵を持ったまま、特定の領域だけを攻めへ委ねる形もあります。

受けが何も決められず、攻めに従うだけなら、私には流されているように見えます。

けれど、自分で考えたうえで「この人になら任せられる」と選んだのなら、それは受け自身が主導権を使った結果です。

攻めが主導する場面があることと、受けの主体性が消えることは同じではありません。

主導権を細かく分けて見ると、年上攻めと年下攻めのどちらでも、二人を対等に描けます。


典型としての「委ねる年上攻め」と「認められる年下攻め」

年齢差が二人の力関係へ強く影響する作品では、次のような対照が生まれやすいと思います。

年上攻めは、すでに持っている経験や余裕を、受けのためにどう使うかが見せ場になる。

何でも自分で決めるのではなく、相手が選ぶ余地を残す。普段は支える側の人物が、好きな相手の前でだけ不安になり、甘え、余裕を失う。

そのため、年上攻めでは、強い人物が主導権を受けへ委ねることに色気が生まれます。

一方、年下攻めでは、年上の中にある「後輩」「守る相手」「子ども」という認識を、どう変えていくかが見せ場になりやすい。

成長によって信頼を得る人物もいれば、最初から持っていた能力や誠実さを年上が見直す場合もあります。

そのため、年下攻めでは、「年下」という枠を越え、対等な恋愛相手として認められることに高揚が生まれます。

ただし、これはあくまで典型的な楽しみ方の一つです。

年上攻めが必ず主導権を持って始まるわけでも、年下攻めが必ず主導権を獲得する物語になるわけでもありません。

年齢差がほとんど力関係に影響しない作品もあれば、最初から年下攻めが面倒を見る側として関係の中心にいる作品もあります。

典型を属性の定義にしないことが大切です。


違うのは、主導権そのものではなく、その意味

年上攻めと年下攻めの違いは、どちらが強いか、どちらが主導権を持つかではありません。

違うのは、同じ行動や主導権の持ち方に、年齢差がどのような意味を加えるかです。

年上攻めの世話焼きには、経験からくる包容力が見えやすい。

年下攻めの世話焼きには、年齢の印象を覆す頼もしさや、相手を本気で助けたい気持ちが見えやすい。

年上攻めが待てば、自分の力を使いすぎない自制になる。

年下攻めが待てば、相手の人生と判断を尊重する敬意になる。

そして、どちらの関係でも、攻めの強さを成立させるために受けの人格を弱くする必要はありません。

受けが反論し、自分で選び、男性としての存在感を保ったままでも成立する攻めに、私は魅力を感じます。

以前の私は、年上攻めと年下攻めの違いを、主導権が動く方向だけで説明しようとしていました。

けれど今は、年齢は主導権を決めるものではなく、主導権の持ち方へ別の物語を与えるものだと考えています。

そのうえで、私自身が年上攻めに惹かれやすい理由も、はっきりしてきました。

最初から持っている強さや経験。その人物が好きな相手の前でだけ余裕を失い、甘えたり、必死になったりする姿。

受けを支えながら、同じ受けに振り回される関係。

次回はいよいよ、私が大好きな年上攻めの話です。

余裕や包容力だけではない、優しく主導しながら、受けにも甘える年上攻めの魅力について、思いきり自分の好みから掘り下げてみます。


シリーズ一覧

第1回:「年下攻めが苦手」の正体は、年齢ではなく「強引さ」と受けの描かれ方だった
第2回:年下攻めはなぜ人気?BLで支持される5つの理由
第3回:年上攻めと年下攻めは何が違う?|BLの主導権と「受けの自由度」を比較(今回)
第4回:私が年上攻めに惹かれる理由|優しく主導して、受けにも甘える男(公開予定)

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