温州みかんエスプレッソと、まぜまぜの先の世界
なんでそいつとそいつが付き合ってんのとか、どう考えても納豆にケチャップはおかしいでしょうとか。違和感をおぼえると、人はつい口にだしたくなる。あーだこーだ言って、感想を述べて、時には自分も試せるなら試して、また、あーだこーだ言ってビールを飲むとけろっと忘れる。
結構、人は愛すべき適当さを持っている。だから革命的な出会いも生まれるのだろう。
なんてことを思ったのは、薄ら寒い雨の日だった。
その日は、朝からだるくて眠かった。でも仕事は、待っちゃくれない。カタカタパソコンに向かって、ほい終わった! とくつろいでいたら、その誘いはやってきた。
「散歩行こうよ」
という女子高生の声。
「めんどさい」だの言って断っていたけれど、娘から散歩を誘われて本気で断れる母親はいるのだろうか。私は、そんな強くないので、きっとるんるん顔で承諾した。
おたのしみタイムでの出会い
散歩中、カフェに立ち寄った。そこで「温州みかんエスプレッソ」を注文してみた。
私はみかん風味のエスプレッソコーヒーが入ったラテ的なものと思い「ミルクを豆乳にできますか」と言ったら、店員さんが一瞬かたまった。
「そういうんじゃないんですよ」と言われた。
じゃあ、どういうのなの。
と思ってでてきたのが、コーヒーとみかんジュースのカクテル的なドリンクだった。

そう本気で、名前の通りの飲み物だったわけ。
「混ぜると、飲みやすい」と言われた。
ってことは、混ぜないと飲みにくいわけ? そう言われたら、試したくなるのが人間ってもの。芸人が「押すなよ、押すなよ」と言って押されるのを待っているようなものでしょ。なんて思いながら、混ぜずに飲んでみた。
にがみと、甘みがわかれてる。
「ふへ?」
なんじゃ、この味。
しかし混ぜると、ビターさがたまらないじゃないか。
太陽が燦々と降り注ぐ日に、「あついあつい」なんて言いながら飲んだら、一気に南国へ行けそうだ。
そもそも、なんでみかんとエスプレッソ混ぜたくなったんだろう?
でもよく考えたら、どこの誰がコーヒーにみかん入れようと思ったんだろう。最初にナスやトマト、ししとうを食べた人も、かなり勇気あるよなと思うけれど、コーヒーとみかんも別に混ぜなくても生きていける代物じゃないか。
調べてみると、みかんならぬ「オレンジ」とエスプレッソを入れた「オレンジエスプレッソ」は、タイでは定番のドリンクみたい。やっぱりあたたかい国から生まれたドリンクなのね、ちょっと納得してしまった。
そういえば先日、ふいに閃いた小説のネタがあって、それを別のあたためていたネタと適当にミックスしてみたら、面白いじゃん……ということがあった。オレンジエスプレッソも、納豆とケチャップの出会いも、もしかしたら気軽な気持ちでやってみたら「案外いい感じ」からはじまったのかもしれないなあなんて、勝手に想像してみた。
はじめて口にした人は、どんな言葉を発したのだろう。私みたいに「ふへ?」と思ったとしたら、ちょっぴりうれしいなあ。
