『地獄銭湯 Restored Edition』をプレイした感想と考察。怖さの正体は、幽霊だけじゃなく“逃げ場のなさ”だった
※エンディングまでのネタバレありです。
チラズアートのゲームって、怖いものを真正面から出してくる作品ももちろん多いけど、
**『地獄銭湯 Restored Edition』**はそれに加えて、働く場所そのものがじわじわ腐っている感じが本当に嫌だった。
最初は「銭湯で働く和風ホラーなんだな」くらいの気持ちで入ったのに、進めるほどに、ここはただの職場じゃないし、ただの怪談でもないと分かってくる。
番台に座って客をさばいて、掃除して、ボイラーも見て、やっと終わったと思ったら、そこから本番みたいな怪異が始まる。
日常業務の疲れに、呪いが重なってくる感じが本当に上手い作品だった。
最初の印象。怖いというより、働きたくなさすぎる
このゲームは、2022年版『地獄銭湯』をフルリメイクした作品で、グラフィックや演出だけじゃなく、ストーリーにも変更が入っている。
主人公のまいなは、田舎町の銭湯に住み込みで働くことになり、受付、清掃、ボイラー管理などをこなしながら数日を過ごしていく。
ホラーゲームだけど、かなりしっかり“仕事”をやらされるのが特徴で、そこが逆に怖さを底上げしている。
個人的にかなり効いたのは、
怪異が起きる前から、もう普通に環境がしんどいこと。
客は変だし、住み込みという条件もどこか胡散臭いし、大家は親切そうなのに妙に距離が近い。
ゲームが始まってすぐ、「ここに長くいたら駄目な場所だな」という気配がある。
それなのに、仕事は回るし、生活は続くし、簡単には逃げられない。
この“嫌な現実”の積み重ねがあるから、幽霊が出た時の怖さがただの演出で終わらない。
ストーリー整理。これは“銭湯に出る幽霊”の話じゃなく、もっと根の深い話だった
物語は、まず前任のスタッフらしき人物が、大家に誘導された先で長い黒髪の霊に殺される場面から始まる。
その後、視点は新しく銭湯で働き始めたまいなへ移る。
まいなが働き始めてから、銭湯や町では少しずつ異常が増えていく。
閉店後の浴場で聞こえる声、繰り返される会話、異様な客、そして見てはいけないものを見てしまった感覚。
進めるほど、怪異が“偶然そこにいる”のではなく、まいな自身に向かってきていることが見えてくる。
終盤で明かされる真相はかなり重い。
昔、大家は銭湯で働いていた桜子(ようこ)に執着し、地下室に監禁した。
桜子は双子を妊娠していたが、そのまま地下で出産し、出血多量で死亡する。
大家はその後、桜子の霊に取り憑かれ、それを祓うために“桜子の子どもを、桜子が死んだ年齢と同じ24歳で焼き殺す”という方法にすがる。
そして、まいなはただのバイトではなく、桜子の娘・えれな本人だった。
双子のもう一人が、指名手配ポスターにも出てくるとおる。
ここがすごく嫌で、すごく良かった。
まいなが巻き込まれたんじゃなくて、
最初からこの場所に呼ばれていたんですよね。
怖い場所に迷い込んだ話じゃない。
ずっと昔に始まった悪意の続きを、自分が受け取りに来させられていた話。
それが分かった瞬間、このゲームの息苦しさが一段階深くなる。
登場人物考察。誰が一番怖いのかを考えると、人間に戻ってくる
まいな / えれな
表向きは、新しい生活を始めようとして銭湯に来た主人公。
でも真相を知ると、彼女はただの被害者ではなく、この呪いの中心にいる当事者だったと分かる。
しかも本人はそれを知らないまま働かされていた。
何も知らないまま、自分を殺すための舞台で接客していたという構図が本当に残酷。
桜子 / ウブメ
この作品の“化け物”側に見える存在。
でも掘るほど、ただの怨霊として片付けられない。
桜子は大家の執着で監禁され、地下で双子を産んで亡くなり、その後ウブメになった。
子どもを想う存在だからこそ、呪いはただの殺意ではなく、母性と怨念が絡みついた形になっている。
だから終盤は、単純に「倒して終わり」にならない。
大家
このゲームの芯にいる加害者。
幽霊より先に、この人間の歪みが全部を始めている。
桜子への執着、監禁、そして呪いを終わらせるために子どもを焼こうとする発想。
怪異が派手でも、最後に一番ぞっとするのはこの人の“理屈の通し方”かもしれない。
自分が蒔いたものを、自分以外の命で精算しようとするところが最悪だった。
とおる
最初は不穏な存在として見せられるけど、終盤で意味が反転する人物。
指名手配ポスターの不気味さも相まって、「危ない側の人間か」と思わせておいて、実際にはまいなの双子の兄として呪いの中にいた。
このゲーム、見せ方が本当に上手い。
怪しいやつほど真相側にいて、まともそうなやつほど危ない。
神主
終盤で真相を明かし、まいなを導く存在。
全部を救えるわけじゃないけど、ここで初めて物語が“怪談”から“因縁”に変わる。
説明役で終わらず、最後まで関わってくるのもよかった。
エンディング考察。3つあるけど、どれも後味が違う
この作品には3種類のエンディングがあり、
焼死エンド、 とおるエンド、 桜子成仏エンドに分かれている。
1周目は焼死エンド固定で、2周目以降に分岐が開いていく構造。
焼死エンド
まず1周目で叩きつけられるのがこれ。
逃げ切れないまま、大家の計画どおりに焼かれる結末。
ホラーゲームのバッドエンドとしても重いけど、このエンドがきついのは、
主人公が“選択を間違えた”からではなく、最初から仕組まれていた感じが強いところ。
運命に食われる感じがして、かなりしんどい。
とおるエンド
2周目で、路地のとおるとの会話で**「えれな」ですを選び、最後に102号室**へ向かうことで分岐する。
このルートではとおるがまいなを助けるが、最終的には呪いを断つために自ら燃える建物へ向かう流れになり、助かってほしかったのに助かりきらない感触が残る。
救いが見えたぶん、余計につらい。
桜子成仏エンド
トゥルーエンド。
とおるエンド到達後、タイルを4つ集めて神社のパズルを解き、へその緒を2つ集めて桜子に渡すことで到達できる。
このルートでは、桜子を倒すのではなく、桜子の痛みそのものに向き合って終わらせる形になる。
Dot Esportsの解説でも、最後のエンドは桜子に安らぎを与え、とおるとえれなが村を離れる結末としてまとめられている。
個人的にも、この終わり方が一番この作品らしいと思った。
怒りを力でねじ伏せるんじゃなくて、母としての未練をほどいていく終わり方だから。
伏線が上手かったところ
このゲーム、派手な驚かせ方だけじゃなく、あとから意味が変わるものが多い。
1. 住み込みという条件
最初はありがたい話に見える。
でも終盤まで行くと、これは親切でも好条件でもなく、逃がさないための配置だったように見えてくる。
生活と職場を同じ場所に縛るの、冷静に考えるとかなり怖い。
2. 指名手配ポスター
最初は「危ない人物がいる町なんだな」という不気味さの演出に見える。
でも後から、それがとおるであり、しかもまいなと深くつながっていると分かることで、見え方が反転する。
この“怪しいものが実は真実側”という構造が気持ちいい。
3. 地下室の存在
ボイラー室の先、地下、手記、手錠、布団。
ここで一気に怪談が現実の犯罪へ落ちてくる。
幽霊がいるから怖いんじゃなくて、幽霊になる理由が生々しすぎるから怖い。
4. ウブメの見え方
最初は敵、化け物、襲ってくるものとして見える。
でも真相を知ったあとだと、ただの怨霊ではなく、
子どもを守れなかった母親の苦しみそのものに見えてくる。
怖さの質が変わるタイプの伏線で、かなり好きだった。
実際にプレイした感想。怖いのに、妙に“働いた疲れ”まで残る
このゲームを遊び終わったあとに残ったのは、
単純なホラーのドキドキだけじゃなくて、
すごく嫌なところで現実味のある疲れだった。
客対応して、掃除して、理不尽を受けて、空気の悪い場所で働いて、
それでも逃げられないうちに、怪異まで本格化してくる。
お化け屋敷に入った感じじゃなくて、
ブラックな職場がそのまま呪いの器になった感じがある。
あと、和風ホラーとしての絵作りもかなり好きだった。
湯気、タイル、ボイラー、夜の浴場、閉店後の空気。
銭湯って本来は人を温める場所のはずなのに、この作品ではずっと冷たい。
水気の多い場所なのに、ひたすら息苦しい。
あのねじれた空気感がすごく良かった。
こんな人にはかなりおすすめ
・和風ホラーが好きな人
・幽霊だけでなく人間の執着が怖い話が好きな人
・考察できるストーリーが好きな人
・“働く系ホラー”の生活感が刺さる人
逆に、ただ分かりやすく怖がらせてくれればいい、という人には少し重たいかもしれない。
このゲームはジャンプスケアだけで押す作品ではなく、
因縁と悪意がじわじわ積もって最後に効いてくるタイプだから。
まとめ。『地獄銭湯 Restored Edition』は、湯気の奥にずっと人間の悪意がいる
**『地獄銭湯 Restored Edition』**は、
銭湯で働くという生活感のある設定を使いながら、
その奥に監禁、執着、母と子、供犠、因縁みたいな重いものを詰め込んだ作品だった。
最初は変な客が来る、怪異が起きる、というところから始まるのに、
最後にはちゃんと**“なぜここが地獄なのか”**まで辿り着く。
ただ怖いだけじゃなく、真相を知るほど痛い。
その痛さがあるから、遊び終わったあとも印象が残る。
和風ホラーが好きな人、チラズアート作品の中でも“物語の重さ”を味わいたい人にはかなりおすすめ。
びっくりして終わるゲームじゃなく、
湯気が消えたあとに本当の寒さが来るタイプのホラーでした。
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