アレ観た報告#86 【ワーキングマン】
今月は一体何本の映画を観たのか、自分の記憶のアーカイブをひっくり返して調べてみたところ、たったの3本しか観ていないことが判明いたしました。毎日のように映画を貪り喰っていたあの頃の俺は一体どこへ行ってしまったのでしょうか。
しかも、その少ないラインナップの内訳を見てみると、1本が映画館で観た『ザ・マリオギャラクシー・ムービー』、そしてもう1本がプライムビデオで観た『リターン・トゥ・サイレントヒル』という、見事なまでにゲーム原作の映画ばかりという偏りっぷり。どんだけお前はゲーム好きなんだって話ですし、30代の脂ぎったおっさんが何をやっているんだという話ですが、これに関しては完全に否定はできません。
ちなみに、今回ご紹介する『ワーキングマン』も、先の『リターン・トゥ・サイレントヒル』と同じくプライムビデオでの視聴でございます。つまり俺は今月、プライムビデオで2回だけ映画の再生ボタンを押しただけなのだ。
ここで一つの恐ろしい事実に気がついてしまいました。俺は毎月、Netflix の月額料金をしっかり引き落とされているというのに、今月は1回も Netflix を起動していません。ログインすらしていない。まさに、汗水垂らして稼いだ貴重なお金をドブにそのまま投げ捨てたようなものであります。こうして俺は、自分が気づかないうちにどんどん貧乏になっていくのかもしれないな、と深夜に一人で震えております。皆様はこの件についてどのようにお考えでしょうか。
こんな時は誰かのおすすめを
先ほど、観たい映画を自力で探す気力さえもないという哀れな話をパチパチとキーボードで叩きましたが、そんな満身創痍の時は、四の五の言わずに誰かのおすすめ映画をそのまま観るに限ります。
今回は、俺の友人で無類の洋画好きであるアリストテレスくんが「『ワーキングマン』が面白いぞ」と言っていたので、「じゃあそこまで言うなら観てみようじゃないか」ということで視聴ボタンを押しました。おそらく、もし彼からのリコメンドがなければ、本作は自分の人生において絶対に、100%交わることがなかった映画だったかもしれません。
この手の骨太なアクション作品が嫌いってわけでは決してないんだけれども、やっぱりそれぞれ皆様の中にも「映画の好み」の固定観念ってのがあるじゃないですか。俺の場合だと、放っておくとすぐに血飛沫が舞うホラー映画だとか、人間のドロドロした嫌な部分を描いたサスペンスだとかのジャンルに脳死で指が動きがちで、こういう直球ストレートなバリバリのアクション映画ってのは、なかなか自発的に観ようとはしないんですよね。
しかし、それでは表現者としても、いち映画好きとしてもダメなんですよね。世の中に星の数ほど、それこそ銀河系の星の数ほど存在している映画ですから、せっかく生を受けてサブスクという便利な道具がある現代に生きているんだから、たくさん観たいじゃないですか。
今の俺みたいに、「映画は観たいんだけれども、脳みそが疲弊していて何を観たらいいのかさっぱりわからない」って時こそ、他人のおすすめ作品をそのまま受け入れる絶好のチャンスです。こうやって自分の凝り固まった趣味の殻を破り、映画の知識が広がると言えば少し大袈裟に聞こえるかもしれませんけれど、普段は絶対に足を踏み入れない映画ジャンルの大冒険が始まるんじゃないかって、俺は本気で思っています。
同い年で男同士の友人として、あいつのことを正面から大絶賛して褒めちぎるというのは、男のプライド的にも本心としてはあまりやりたくはないんですけれども、悔しいことにアリストテレスくんの映画の知識の引き出しは、かなり高いレベルにある方だと思います。
そりゃあ、世の中の三度の飯より映画が圧倒的に好きで、年間数百本を何十年も欠かさず観ていますみたいな、怪物級の映画オタクの皆さまと比べてしまえば話は変わってきますけれども、俺みたいな中途半端で、自分の好きなジャンルだけに引きこもっている自称映画好きとは違って、彼は素晴らしい。
何が素晴らしいって、彼は俺が「映画を意識してたくさん観よう」と思い立つずっと前、まだ世の中に Netflix やプライムビデオといったサブスクリプションサービスが1ミリも定着していなかった時代から、レンタルビデオ店に足繁く通い、文字通り泥臭くたくさんの映画、特に洋画を浴びるように観てきた男なのです。間違いなく俺よりも映画の知識の歴史は深いですし、その審美眼は信用に値する。
そこは大人の男として素直に認めようじゃありませんか。自分の映画の知識を高めるためにも、これからも彼のおすすめ映画はプライドを捨ててどんどん観ていこうと思います。
というわけで、この文章を読んでいるであろうアリストテレスくん、次のおすすめ作品を今すぐ LINE で俺宛てに送ってください。いつでも待っています。あ、そうそう、これだけ映画好きを公言しておきながら大変わがままかつ恥ずかしながら、俺はあの超有名作『メイズランナー』をまだ観ておりません。近いうちにちゃんと観ておきますよ。あとは伊織もえさんの画像もたくさん添付しといてください。
『ワーキングマン』の世界
さて、前置きが大変長くなってしまいましたが、今回観た『ワーキングマン』の話を、電光石火のスピードで、かつ俺の絶対的な掟である「ネタバレ禁止主義」の元、書いていこうと思います。
・タイトル:ワーキングマン
・制作:イギリス・アメリカ
・公開年:2026年(日本版公開)
・上映時間:116分
・プラットフォーム:Prime Video
物語の主人公は、元イギリス海兵隊特殊部隊員のレヴォン・ケイド。彼は現役時代、それはそれは優秀で、上層部からも一目置かれるほどの冷徹かつ完璧な隊員であったのですが、仕事に没頭し過ぎた結果、彼のカミさんが、最愛の、まだ幼い娘を残して自ら命を絶つという最悪の悲劇が起きてしまうのです。
最愛の妻を失った絶望を受けて、彼は血塗られた戦いの日々から完全に身を引くことを決意。現在はシカゴの片隅で、建設現場の現場監督として地道に働いています。それはまるで、かつて海兵隊特殊部隊員として人の命を奪っていた頃の、狂気に満ちた過去の自分を完全に消し去るかのように、黙々と泥にまみれて働く日々でした。
そんなある日、平穏だったはずの彼の日常が、ガラガラと音を立てて崩れ始めます。レヴォンを雇っている建築会社の社長にはジェニーという娘がいるのですが、彼女が友人たちと街へ飲みに行った日の夜、忽然と姿を消してしまいます。どうやら、ただの家出ではなく、何者かの凶悪な手によって誘拐されてしまったようなのです。
普通の映画や現実であれば、あとは警察の有能な捜査にすべてを任せて、娘が無事に帰ってくるのを神に祈りながら待つのみであるはずですが、なぜか今回の事件、警察がまともに動いてくれないのです。露骨に取り合ってくれない。不自然なほどに組織が沈黙しているのです。
警察のその冷淡な対応に完全に絶望した建設会社の社長は、「娘を救い出して合流できるのは、お前しかいない」と、レヴォンの過去の経歴を知った上で、彼に頭を下げて頼み込んでくるのです。
しかし、先ほども書いた通り、現役時代に自分の仕事のせいでカミさんを亡くし、それを受けて戦いからは完全に身を引いたレヴォンですから、当初はその依頼を頑なに拒みます。「俺はもう、あの世界には戻らない」と。
ですが、彼自身にも、命に変えても守りたい愛娘がいます。社長の、親としての狂いそうなほどの辛さと絶望が、我がことのように痛いほどよくわかる。しかも、社長家族とは普段から家族同然の深い付き合いをしてきた仲でもあります。じっと泥臭く考え抜いた後、彼はついに、過去の「戦神」としての自分を呼び覚まし、ジェニー救出へ向けて孤独な戦いへと身を投じるのでした。もうこの導入だけで、白飯が3杯は食えるほどの王道っぷりです。
最強おじさんの無双劇
救出作戦の第一歩として、レヴォンはジェニーが最後に姿を消した疑惑のバーへと調査しに向かいます。そこで、一見ただの従業員の面らをしながら、裏で客とヤバい麻薬の受け渡しをしていた怪しいバーテンダーを発見。
ここからのレヴォンの手際の良さが、まさにプロの犯行そのものです。バーテンダーの車に音もなく GPS を取り付け、泳がせて自宅を特定。バーテンダーが自分の家で完全に油断してくつろいでいるところに、まるで幽霊のように音もなく侵入し、一瞬で拘束して拷問にかけるのです。
しかし、尋問の途中で、タイミングが悪いことにバーテンダーの悪仲間たちが大勢家にやってきてしまいます。多勢に無勢、映画のセオリーで言えばかなりまずい状況、大ピンチであるはずなのですが、そこは元特殊部隊の最強おじさんです。焦る素振りすら見せず、あっさりとその場にいた全員を的確に射殺してしまうのであります。強すぎる。
彼らが転がした遺体を冷徹に観察すると、共通するとある不気味なタトゥーが彫られているのを発見します。レヴォンはその遺体のタトゥーから、奴らが単なるチンピラの集まりではなく、街の裏社会を牛耳るとんでもない組織の人間たちであり、どうやらその巨大な組織が、ジェニーの失踪に深く関係していると察するのです。
この組織の一体何がヤバいのか、そして、なぜ市民の味方であるはずの警察が、この事件に対して一切取り合ってくれなかったのか?その驚愕の裏事情と、レヴォンが魅せる怒涛の反撃の全貌は、是非本作をご自身の目で観て、確認してみていただきたいのであります。
まぁ、一言で言ってしまえば、皆様が大好物の「最強おじさんの無双アクション映画」ですよ。
あの名作『コマンドー』のシュワルツェネッガー大先輩みたいな、「筋肉モリモリマッチョマンの変態」とまではいかないにしても、どう考えても普通の人間が1人で行ったら一瞬でハチの巣にされて終わるような、絶望的かつ圧倒的に不利な戦いに対して、表情ひとつ変えず、なんだったら大した大怪我もせずに、スタスタと敵の防衛網を突破して立ち入っていくのです。
現実的に考えたら、「いやいや、その距離で銃弾が1発も当たらないのはおかしいだろ」とか、「なんでそんな都合よく敵の配置がわかるんだよ」といった、ツツジの密を吸うくらい簡単にツッコミどころが満載な状況ではありますけれど、でも、ぶっちゃけみんな、こういう理屈抜きの映画が心の底から大好きじゃないですか。俺は大好物です。
国家の権力や、汚い金、不条理な暴力なんかを背景にして、ただ普通に、楽しく幸せに暮らしたいだけの一般市民に対して、理不尽に悪さを働いてイキり散らかしているクズ奴らを、過去にワケありのたったひとりの主人公が、一切の容赦なく、法律の代わりに肉体と銃弾で完膚なきまでに打ちのめしていく映画。
これは映画の歴史において、何百年も繰り返されてきたベタ中のベタなプロットではありますが、やっぱりこの手の勧善懲悪のストレス発散映画は、いくら観ても、何回観ても、脳内麻薬がドバドバと出て気持ちよかったりする。
特にこの『ワーキングマン』では、主人公にボコボコにされる側である、そんな悪者たちの「クズっぷり」の描き方が非常に秀逸なんですよね。観ていて、はらわたが煮えくり返るくらいに本当に腹が立つ奴らなんですよ。画面を殴りつけたくなるくらい、同情の余地が1ミリもない悪党として描かれている。
とくに、現実に自分自身の家庭がある人や、守るべき家族がいる人がこの映画を観たら、奴らの非道な行いがより一層許せない存在に見えると思いますし、それだけに、レヴォンが奴らを容赦なく粉砕した瞬間のカタルシスは跳ね上がる仕組みになっています。
ビーキーパーとの共通点
ちなみに、本作の主演はみんな大好きジェイソン・ステイサムで、監督はあの男気溢れる映画を作らせたら右に出る者はいないデヴィッド・エアーとなっております。
この2人の強力なタッグといえば、映画ファンであればピンとくる、2024年に公開されて話題を呼んだ映画『ビーキーパー』と全く同じ組み合わせでございます。
特殊な背景や過去を持つ主人公が、自分の大切なもののために、あるいは己の絶対に譲れない信念のために、国家を揺るがすような巨大な悪をたった一人で壊滅させるハード・バイオレンス・アクションであるということ。
傷ついた法や警察といった公的な組織が全く頼りにならない絶望的な状況下において、自らの長年培ってきた戦闘スキルや、鍛え上げられた強靭な肉体だけを駆使して、強引に問題の解決を図るところなど、設定や世界観の共通点が非常に多い作品です。
なんてことを偉そうにツラツラと書いたら、あたかも俺もバッチリその『ビーキーパー』を劇場なり配信なりで視聴済みであるかのような、知った風な雰囲気を醸し出している感じがしますけれども、何を隠そう、何も隠していない俺は、なんと『ビーキーパー』をまだ観ておりません!これっぽっちも観ていない。ただの知識として語っているだけであります。この俺の中途半端で、知ったかぶりをキメる態度について、皆様は一体どのようにお考えでしょうか。
何はともあれ、日頃のストレスが溜まっていて、悪党が派手にぶっ飛ばされる姿を見てスカッとしたい方、あるいは、ジェイソン・ステイサムの鋭い眼光から繰り出される容赦のないアクションを心ゆくまで堪能したいという方には、この『ワーキングマン』は間違いなく刺さる一本だと思います。
アリストテレスくん、素晴らしい映画を教えてくれて本当にありがとう。おかげさまで、俺の凝り固まった脳みそに、程よいバイオレンスの刺激が注入されました。
映画の好みは人それぞれですが、たまにはこうして他人の船に乗っかって、全く違うジャンルの荒波に揉まれるのも悪くないな、としみじみと感じた深夜のひとときでした。さて、次こそは Netflix の月額料金分を回収するために、重い腰を上げて何かドラマでも観ようかと思いますが、結局またプライムビデオを開いてしまう俺がいるのかもしれません。
皆様も、理不尽な現実社会に押し潰されそうになった時は、レヴォン・ケイドのような最強おじさんを脳内に召喚して、心の中で悪党どもをボコボコにしながら、力強く生きていこうじゃありませんか。
■アレ観た報告 目次
https://healthy-fortnight-c18.notion.site/cd3effa420af459899c426a49a95662d
■『ワーキングマン』Prime Video 視聴ページ
https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0GR4Z67XH/ref=atv_dp_share_cu_r
