2027 横浜 国際園芸博と、グリーンシティ
世界の人口の半数以上が都市に集中する中、資源の枯渇、生物多様性の損失、そして住民の健康や幸福への脅威は増大の一途をたどっています。このような背景から、自然の力を活用して都市のレジリエンスと生活の質を高める「グリーンシティ」という構想が、国際的な都市開発アジェンダの中心的なテーマとして重要性を増しています。この世界的潮流の中で、2027年に横浜で開催される国際園芸博覧会(EXPO 2027)は、持続可能な都市の未来像を世界に示すための重要なプラットフォームとなり得ます。単なる園芸の祭典に留まらず、人と自然の新たな関係性を模索し、サステナブルな社会モデルを具現化する絶好の機会です。今日は、このEXPO 2027が掲げるサステナビリティ戦略を皮切りに、それを承認した国際園芸家協会(AIPH)のグリーンシティスタンダード、そして、その都市周辺も視野に入れた国連食糧農業機関(FAO)のグリーンシティ・イニシアチブ、そして、ネイチャーポジティブに向けてのIUCNの都市と生物多様性のインデックスなど、グリーンシティを整理した重要な国際標準を整理しましょう。それぞれの思想的背景、構造、アプローチの違いを明らかにすることで、各アプローチの独自性と役割を浮き彫りにします。今日も楽しんでいってくださいね!
1. EXPO 2027 横浜:イベント実装を通じたサステナビリティの具現化
EXPO 2027は、そのテーマ「幸せを創る明日の風景」をサステナビリティ戦略全体の根幹に据えています。これは単なるイベントスローガンではなく、一人ひとりの幸福感が深まる社会の実現を目指すという、理念的な指針です。その戦略基盤として、承認機関であるAIPHの「サステナビリティ・ポリシー」を尊重することが明記されています。「幸せを創る明日の風景」というテーマの通り、個人のウェルビーイングや幸福感を社会の中心に据える人間中心の幸福論的アプローチです。人と環境との関わりの中で、一人ひとりが幸福感を深める社会風景の創造を目指します。
2者の関係の簡単な整理▼AIPHグリーンシティ構想とGREEN×EXPO 2027
【関連資料】
・2027年国際園芸博覧会 サステナビリティ戦略
・AIPHグリーンシティスタンダード
EXPO 2027の戦略は、テーマを具現化するための4つのサブテーマによって構成されています。
自然との調和: 日本の里山にみられる共生の知恵を活かし、グリーンインフラの実装などを通じて、サステナブルで安全な都市の土台づくりを提案します。
緑や農による共存: 緑や農を介して人々が社会・生活基盤に積極的に関わる「グリーンコミュニティ」のあり方を提案します。
新産業の創出: 花き園芸・農の高付加価値化や異業種連携を通じて、時代の先駆けとなる新たな価値を創造する産業の創出を目指します。
連携による解決: 多様な主体が参画する横断的なシステムを構築し、世界的な課題解決に貢献します。
EXPO 2027の戦略の最大の特徴は、イベントの計画、建設、運営、そしてレガシー創出という具体的な実行フェーズに焦点を当てた、実践的な行動計画である点です。生物多様性、脱炭素、廃棄物、人権、労働など12の分野にわたり、具体的な目標とそれを測定するためのKPI(重要業績評価指標)が設定されています。これにより、EXPO 2027は、特定の国際イベントを通じて持続可能な社会の具体的なモデルを提示し、その成果を可視化することを目指しています。
国際園芸家協会(AIPH)は、国際園芸博覧会を承認し、開催都市に永続的な緑のレガシーを創出することを推進する国際機関です。その中核的なツールが「AIPHグリーンシティスタンダード」であり、「都市が緑化の取り組みを計画、測定、改善するための明確で実績のあるフレームワークを提供する実用的なツール」として位置づけられています。
このスタンダードは、以下の6つの基本原則に基づいています。
植物中心性 (Plant-centricity): 都市の課題解決において、植物、生物多様性、グリーンインフラが果たす中心的な役割を優先します。
包括性と協調性 (Inclusivity and collaboration): 政府、産業界、地域社会間のパートナーシップを促進し、多様なステークホルダーの関与を奨励します。
グローバルな枠組み、ローカルな行動 (Global frameworks, local action): 世界的な持続可能性アジェンダと整合性を保ちつつ、各地域の文脈を尊重する柔軟なツールを提供します。
データに基づく意思決定 (Data-driven decision-making): 測定可能な指標を用いて進捗を追跡し、改善の機会を特定します。
継続的な改善 (Continuous improvement): 都市や環境の進化するニーズに対応するため、学習、革新、適応を促進します。
リーダーシップとコミットメント (Leadership and commitment): 都市が持続可能性への献身を示す、大胆で積極的な措置を講じることを奨励します。
AIPHのアプローチは、「人々の暮らしの中に植物の地位を向上させる」ことをミッションとし、植物がもたらす気候変動への強靭性、健康、生活の質の向上といった具体的な便益を重視する、植物中心の実践的アプローチです。植物を都市インフラの重要な資産として位置づけます。特定のイベントに限定されず、世界中のあらゆる都市が普遍的に適用できるプロセス指向の標準(スタンダード)を提供することに主眼を置いています。その策定プロセスは、専門的な研究(Research and expertise)、多様な関係者の関与(Stakeholder engagement)、そして実証実験(Pilot testing)といった厳格な方法論に支えられており、これによりAIPHは都市緑化の「質」を担保する国際的な基準設定機関としての役割を担っています。
すなわち、AIPHが「標準化」したものを、EXPO 2027が「実行」がわかります。特にEXPO 2027は、これらグローバルな理念と基準を具体的に実装するハブとして機能し、その価値を最大化するポテンシャルを持っています。EXPO 2027はいわば「生きた実験室(Living Laboratory)」といえます。
AIPHが「標準」を提示: AIPHのグリーンシティスタンダードは、EXPO 2027が目指すべきサステナビリティの「質」に関する普遍的な基準を提供します。これにより、EXPOの取り組みに国際的な「正当性」と「品質保証」が与えられます。
EXPO 2027が「実装(Do)」を体現: EXPO 2027は、AIPHの基準やFAOの理念を、大規模な国際イベントという具体的な形で実践し、その成果と課題を世界に可視化する役割を担います。理論を現実に落とし込むことで、その有効性を証明します。
EXPO 2027のサステナビリティ戦略(49ページ)に示されたグリーンインフラ実装イメージは、AIPHスタンダードが提唱する「植物中心性」の理念を具現化するものです。会場に実装される「クールヒートトレンチ」や「卓越風」の活用といった技術がもたらす温熱環境改善効果を実測することで、AIPHの「データに基づく意思決定」原則に貢献する貴重な実証データを提供できます。
2.AIPHグリーンシティ標準とFAOグリーンシティ原則を比べる
ところで、AIPHだけではなく、FAOもグリーンシティの原則を出しています。第1回国際グリーンシティ会議が、2025年10月14~15日 に、イタリア、ローマで開催されました。AIPH(国際園芸生産者協会)のアプローチは、「植物」そのものを都市インフラの核として再定義することに対して、FAO(国連食糧農業機関)のアプローチは、「食料システム(アグリフードシステム)」と「都市・農村の連携」を軸に据え、特に外部ショックに対する都市の強靭性(レジリエンス)と食料安全保障の確保に重点を置いています 。
2者の関係の簡単な整理▼グリーンシティ国際基準の比較

2.1.AIPHグリーンシティ標準
AIPHは、園芸分野における数十年の経験知 を集約し、都市の緑化を従来の「美的な後付け(aesthetic afterthought)」 から、都市機能の中核を成す「必須インフラ(essential infrastructure)」 へと転換しようと試みています。そのための戦略的ツールが「AIPHグリーンシティ標準(AIPH Green City Standard)」です。
AIPH標準は、特定の植栽技術を指導するマニュアルではなく、本質的に「ガバナンス主導型(governance-driven)」のフレームワークである点が最大の特徴です。この標準は、「8つの主要な都市主導プロセス(eight key city-led processes)」を通じて都市の緑化ガバナンスを評価します。AIPH標準は、都市が自らの緑化に関する「強みと弱みを体系的に評価する」ための診断ツールとして機能します。
AIPH標準が都市を支援する具体的な内容として、「明確な目標設定(Setting clear goals)」「都市緑化の体系的な概要の把握(Gaining a systemic overview)」「進捗と影響の追跡(Tracking progress and impact)」「緑化と都市計画・予算の連携(Aligning greening with city planning and budgets)」が挙げられています。これらの機能は、都市の緑化ガバナンスにおけるPDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクル全体を網羅するものであり、「8つのプロセス」は以下のような要素で構成されていると考えられます:(1) ビジョンとリーダーシップ(目標設定)、(2) 計画と統合(都市計画との連携)、(3) 予算と資金調達(予算との連携、ROI)、(4) ステークホルダーの関与(協働)、(5) 実施と実行、(6) 監視と測定(データ駆動型)、(7) 資産管理と維持、(8) 学習とイノベーション。
AIPHは、植物中心の都市インフラがもたらす便益を体系的に整理しています。AIPHグリーンシティ・ガイドラインやケーススタディ・カテゴリーに基づき、その便益は主に4つの領域に分類されます。
生態系と生物多様性 (Ecology / Biodiversity):
緑の屋根、緑の壁、アロットメントガーデン、公園、街路樹といった多様なグリーンインフラは、都市環境において多様な動植物群集の生息地(ハビタット)を提供し、都市の生物多様性を直接的に高めることに貢献します。
健康とウェルビーイング (Health and Wellbeing):
緑豊かな環境は、市民に対して心理的な利益(自然環境における安心感)と物理的な利益(日陰の提供、空気質の改善、健康的な屋外運動の促進)の両方をもたらします。AIPHは、これらの健康改善がもたらす「医療費の削減」と、それによる「経済への利益」を明確に指摘し、緑化が持つ健康便益には「計り知れない金銭的価値(immeasurable monetary value)」があると主張します。
社会的結束 (Social Cohesion):
緑や自然に満ちた環境は、人々が屋外空間で過ごす時間を増やすよう促し、結果として社会的な交流の頻度を高めます。緑の空間(例:市民農園)での共同作業などを通じてより強いコミュニティを構築することは、社会的な結束を改善し、「犯罪の社会的コストを削減する」効果にもつながると論じられています。
経済 (Economy):
質の高いグリーンインフラストラクチャは、住宅やオフィスの資産価値(賃貸・所有いずれも)を直接的に向上させます。さらに、緑豊かで魅力的な都市環境は、対内投資にとってより魅力的な立地となり、新たな訪問者(観光客)を引きつけます。これらは、都市の全体的な「競争力(competitiveness)」を強化します。
この考え方の具体例として、「AIPHワールド・グリーンシティ・アワード」の受賞事例があります。
A. 事例研究(2022年大賞):ハイデラバード(インド)「テランガナ州への緑の首飾り」
2022年のAIPHワールド・グリーンシティ・アワードにおいて、最高賞である「グランドウィナー(大賞)」に選ばれたのが、インド・ハイデラバードの「テランガナ州への緑の首飾り」プロジェクトです。
プロジェクト概要:
「Telangana Ku Haritha Haram (TKHH)」と名付けられたこのイニシアチブは、テランガナ州政府が主導する大規模な植林フラッグシップ・プログラムです。2015-16年に開始され、州の森林被覆率を当時の24%から33%に引き上げるという野心的な目標を掲げました。
成果(定量的):
このプログラムは、23億本の苗木植樹・再生を目指すもので、その規模は世界でも第3位にランクされます。FSI(インド森林調査)の報告によれば、ハイデラバード都市圏の緑被は、2011年の33.15平方キロメートルから2021年には81.81平方キロメートルへと、10年間で48.66平方キロメートルという顕著な増加を達成しました。具体的な施策には、881.5 kmに及ぶ道路沿いの多層植栽、1,087箇所の都市公園(Urban Parks)の開発などが含まれます。
AIPH基準への貢献と分析:
この事例 は、このプロジェクトが単なる環境改善に留まらず、いかに具体的な経済的・社会的リターンを生み出したかを明確にしています。つまり、ハイデラバードは単に「木を植えた」だけでなく、「植物を経済エンジンとして活用」し、測定可能な経済的・社会的価値を生み出したのです。
収入創出: 苗床の育成活動(Nursery raising activity)を通じた「女性グループの収入創出」。
雇用創出: 非生産的であった土地を緑化することによる「有給雇用の創出」。
新規ビジネス: 開発された都市緑地(Urban Lung spaces)の周辺に居住したいという市民の需要が高まり、その結果として飲食店やレクリエーション活動といった「新たなビジネス機会が創出」。
B. 事例研究(2024年カテゴリー受賞):クリチバ(ブラジル)「都市農業プログラム」
2024年のアワードでは、「都市農業と食料システム(Urban Agriculture & Food Systems)」というカテゴリーが新設され、ブラジルのクリチバ市がその初代受賞者となりました。
プロジェクト概要:
食用植物の生産に焦点を当てた、多面的な都市農業プログラム。都市の空き地(高圧電線下など、建築が制限される土地)を利用した「都市菜園(Urban Gardens)」、市民への教育・訓練スペースとして機能する「アーバン・ファーム(Urban Farm)」、そして生物多様性(特に在来種のハチ)の保全を目的とした「ハニー・ガーデン(Honey Gardens)」といった要素で構成されています 。
成果:
市内の菜園全体で月間160トンの食料が生産されています。特筆すべきは、教育施設であるアーバン・ファームで生産された余剰作物も無駄にされず、市のフードバンクを通じて社会的に脆弱な立場にある人々へ供給されている点です 。
AIPH基準への貢献と分析:
このプログラムは、AIPHが重視する複数の便益に貢献しています。(a) 食料不安の軽減と社会的公平性の促進(余剰作物の供給)、(b) 短いサプライチェーンの構築による環境負荷(温室効果ガス排出)の低減 20、(c) 都市内におけるグリーンジョブの創出可能性 、(d) 次世代への食育と環境教育 です。
2.2. FAOグリーンシティ・イニシアチブ:アグリフードシステムと強靭な都市
AIPHが園芸生産者の団体として緑化の「資産価値」の確立を目指すのに対し、FAOは国連の開発機関として、より広範な開発アジェンダに取り組んでいます。2020年に正式に開始された 「グリーンシティ・イニシアチブ(Green Cities Initiative)」は、2030年までに世界1000都市の環境改善と人々の健康・ウェルビーイング向上を目指す野心的なプログラムであり、特に都市部の貧困層へのアクセス や食料安全保障 に強い焦点を当てています。FAOによる「グリーンシティ」の定義は、「活気に満ち、包摂的で、強靭な(vibrant, inclusive and resilient)」場所であり、人々にとっても自然にとっても良い場所、とされています。AIPHが都市内部のガバナンスに焦点を当てるのとは対照的に、FAOのアプローチは以下の3点に集約されます:(1) 都市環境の改善、(2) 都市と農村の連携強化(strengthening urban-rural linkages)、(3) 気候変動や経済ショックといった外部要因に対する都市システムの強靭性(resilience)の構築。このアプローチは、相互依存的かつ補完的な「3つの柱(three pillars)」によって実行されます。
都市・周縁部の林業 (Urban and Peri-urban Forestry - UPF):
定義: 都市およびその周辺地域(peri-urban)における樹木と森林の戦略的な計画、設立、管理を指します。
役割: 微気候の調節、洪水リスクの軽減、大気・水質汚染の浄化といった、都市の「生命維持システム」として機能します。健康やコミュニティ結束への貢献も認めつつ、FAO独自の視点として、「果物、ナッツ、薪炭材の供給」といった、都市の食料システムへの直接的な貢献が明確に強調されています。
都市・周縁部の農業 (Urban and Peri-urban Agriculture - UPA):
定義: 都市およびその周辺地域における食料およびその他の農産物の生産活動です。
役割: 新鮮で栄養価の高い食料へのアクセスを改善し、都市の食料不安と栄養不良を軽減します。さらに、単なる食料生産に留まらず、「所得創出の機会」や「フードマーケットとバリューチェーンにおける地域の起業家精神」を支援するという、経済的側面(特に貧困層の生計向上)が強く意識されています。
持続可能なバイオエコノミー (Sustainable Bioeconomy):
定義: 生物資源(バイオマス)の生産、利用、保全、再生を通じて、持続可能な解決策(製品、プロセス、サービス)を経済全体に提供するモデルです。
役割: これはFAOの枠組みにおいて最も特徴的かつ革新的な柱です。都市が抱える最大の課題の一つである「廃棄物」を、「機会」に転換することを目的とします。
具体的な介入には、(a) 生物廃棄物(biowaste)の資源化、(b) バイオベース産業(例:バイオプラスチック)の発展、(c) 自然生態系の回復、の3つが含まれます。
この柱の核心的な概念は、「生物学的ループを閉じる(closing biological loops)」ことです。都市で発生する膨大な有機性廃棄物(食品ロスなど)を、堆肥化、昆虫による生物転換(insect bioconversion)、あるいはバイオガス化といった技術を用いて資源化し 、それを再び(都市および農村の)農業のための投入財(肥料、飼料)として還元します。これは、都市と農村をまたぐ広範な「循環型システム」の構築を目指すものです。
FAOは、都市が「FAOグリーンシティ」としてのビジョンを実現し、将来的に認定されるための具体的な「原則と基準(Principles and Criteria)」を提供します。この枠組みは、AIPHのガバナンス診断ツールとは異なり、都市が具体的な行動を計画・実行するための「規範的(prescriptive)なロードマップ」として機能します。
データ、知識、モニタリング (Criterion 1: Data, knowledge and monitoring):
緑地および生産的な空間(UPF/UPA)の範囲と状態のマッピング、食料安全保障と栄養に関する基礎データの収集・分析、バイオマスフロー(有機性廃棄物の流れ)の評価と公表。
計画と設計 (Criterion 2: Planning and design):
UPF、UPA、およびバイオエコノミーの機会を、都市の全体的な開発計画や空間計画に「組み込む(integrate)」こと。生態学的原則に基づくグリーンインフラ・ネットワークの設計。
政策枠組み (Criterion 3: Policy frameworks):
都市は、緑地の保護・利用に関する「条例、ガイドライン、基準を採択し、施行する」。安全な食料生産を可能にする「市町村の食料戦略または政策枠組みを制定する」。有機廃棄物管理と資源化のための「明確な目標を持つ地域戦略を策定する」。
資源配分 (Criterion 4: Resource allocation):
都市は、UPF/UPA/バイオエコノミーの行動を実施・維持するために、「予測可能な財政、人材、技術資源を配分する」。具体的には、都市林業のための「年間の予算枠と職員資源を確保する」。UPAプロジェクトに対し「市町村の支援(土地、技術援助、予算インセンティブなど)を専念させる」。
意識向上と関与 (Criterion 5: Awareness and engagement):
教育、市民参加、透明性のある進捗報告の促進。ファーマーズマーケットや学校菜園の日(school garden days)を促進する。年間の廃棄物転換率(循環率)の結果を公表し、市民を関与させる。
統合された行動 (Criterion 6: Integrated action):
基準1~5の下で行われた個別の努力を、「統一された戦略的行動枠組みに統合する」。部門やセクターを超えた行動を連携させる「FAOグリーンシティ戦略またはロードマップを策定し、維持する」。
A. 事例研究(第3の柱:バイオエコノミー):アビジャン(コートジボワール)「BioDAFプロジェクト」
背景・課題:
コートジボワールの最大都市アビジャンは、600万人以上の人口を抱え、年間+3%という急激な人口増加に直面しています。この成長は、「雇用へのアクセス、廃棄物管理、食料システムの持続可能性」という深刻な都市問題を引き起こしています。
FAOの対応(第3の柱の実践):
アビジャン市が推進する「循環経済戦略」の一環として、FAOが技術支援を提供しました。プロジェクト(BioDAF)の核心は、「アメリカミズアブ(Black Soldier Fly - BSF)」の幼虫を活用したバイオエコノミーの構築です。
循環ループの構築:
このプロジェクトは、FAOの第2の柱(UPA)と第3の柱(バイオエコノミー)を高度に統合しています:
(課題)都市の市場から「生物廃棄物(bio-waste)」(食品ロス)を収集します。
(資源化)収集した廃棄物をBSF幼虫の餌として与えます。
(新製品)成長したBSF幼虫は、「乾燥幼虫(高品質な動物飼料)」や「ダイジェステート(有機肥料)」といった、付加価値の高い農業投入財として処理されます。
(システム統合)これらの投入財は、都市・周縁部の農業(UPA)で活用されます。
(社会実装)プロジェクトは「ファーム・スクール」として機能し、訓練を受けた人々が各地域で廃棄物収集に基づく飼育ユニットを開発できるよう支援し、新たな雇用を生み出します。
この「BioDAFプロジェクト」は、FAOの「持続可能なバイオエコノミー」を完璧に具現化しています。都市の「廃棄物問題」を、「生物資源(BSF)」というソリューションを用いて「農業投入財」と「雇用」に転換し、同時に都市の「食料システム」(第2の柱)の持続可能性をも強化するという、高度に統合されたシステム工学的な解決策を示しています。
B. 事例研究(第2・第3の柱):ナイロビ(ケニア)「食品廃棄物対策」
課題:
ケニアの首都ナイロビでは、生産から消費に至る流通過程で失われる、腐敗したり売れ残ったりした農産物、すなわち「食品廃棄物」が蔓延していました。
FAOの対応(第2・第3の柱の実践):
FAOは、この食品廃棄物を「ごみ」ではなく「資源」として捉え直し、その資源化(valorization)を目指しました。
コンポスト化: 廃棄物を有機肥料に変えるための技術と手法を導入しました。
バイオガス化: 農産廃棄物を燃料に変える「バイオガス消化槽(biogas digesters)」を導入しました。
これもまた、都市の「廃棄物」(第2の柱(食料システム)の問題)を、「資源(肥料やエネルギー)」(第3の柱(バイオエコノミー)の解決策)へと転換する、FAOの循環型アプローチの実践です。
C. 事例研究(第1の柱:都市林業):ケリマネ(モザンビーク)「マングローブ再生」
課題:
モザンビークの沿岸都市ケリマネは、サイクロンや海面上昇による洪水リスクが極めて高い地域です。
FAOの対応(第1の柱の実践):
「都市・周縁部の林業」(第1の柱)の一環として、自然の防波堤として機能する1.6ヘクタールのマングローブ林を再生するプロジェクトを支援しました。
この事例は、FAOの「3つの柱」22 が、食料や廃棄物の問題だけでなく、AIPHも重視する「気候変動への強靭性(レジリエンス)」 の構築(この場合は洪水リスクの軽減)に、自然ベースの解決策(NbS)として直接的に貢献することを示しています。
2.3. FAOの「基準」 vs AIPHの「プロセス」
同じ、「グリーンシティ」のガイダンスであるけれども、FAOの「6つの基準」と、AIPHの「8つのプロセス」(推察)の枠組みを比較すると、両機関のアプローチの違いがより鮮明になります。FAOは開発機関として「何をすべきか(What to do)」を具体的に指示する行動リスト(Criteria)を提供し、AIPHは標準化団体として「どのように管理体制を整えるか(How to govern)」を問うプロセス標準(Standard)を提供しています。
この違いは、枠組みの「言葉遣い」に明確に表れています。FAOの基準3.2は「市町村の食料戦略を制定する(Enact)」2と要求し、基準4.1は「年間の予算枠を確保する(Secure)」と述べています。これらは、都市が達成すべき具体的な「タスク」や「成果物」です。
一方で、AIPH標準が支援するのは、「都市計画や予算と連携させる(Aligning)」「進捗を追跡する(Tracking)」「体系的な概要を把握する(Gaining)」 といった「プロセス」そのものです。これらは、特定のタスクの有無を問うのではなく、市政運営における「管理の質」を問うています。
したがって、ある都市が「食料戦略」を策定していたとしても(FAO基準3.2は満たす)、その戦略が他の都市計画部門と連携されておらず、データに基づいた進捗追跡も行われていなければ(AIPHのプロセス標準は満たさない)、AIPHの評価では不十分とされる可能性があります。これは、FAOが「グリーンシティになるためのガイドブック(規範的ロードマップ)」を提供し、AIPHが「グリーンシティであるかのガバナンス標準」を提供している、という明確な機能的差異を示しています。
AIPHとFAOの代表的な事例を比較することで、両者のアプローチの質的な違いが浮き彫りになります。両者の最も顕著な違いの一つは、その空間的な焦点にあります。
AIPH(Intra-Urban): AIPHの焦点は、本質的に「都市内部(Intra-Urban)」にあります。都市の境界内で、植物がいかに健康、社会、経済といった「都市の質」を高めるかに着目します。AIPHの事例(ハイデラバード、クリチバ)は、すでにある程度の都市機能を持つ都市が、緑化という手段を通じて「経済的価値」や「社会的公平性」といった、都市の質を「さらに高める(価値向上型)」アプローチを示しています。
一方、FAO(Inter-Urban / Peri-Urban): FAOの焦点は、「都市間・周縁部(Inter-Urban / Peri-Urban)」に及びます。FAOは都市を孤立した存在とは見なさず、常に「農村部」との機能的な連携(食料、資源、廃棄物の流れ)の中で捉え直そうとします。FAOの事例(アビジャン、ナイロビ、ケリマネ)は、都市が直面するより根源的かつ緊急性の高い「問題を解決する(問題解決型)」アプローチを示しています。すなわち、「廃棄物管理の破綻」、「深刻な食品ロス」、「差し迫った洪水リスク」です。その枠組みにおいて「都市・周縁部(Peri-urban)」という言葉が一貫して多用されること自体が、この思想を強力に裏付けています。
AIPH標準とFAO原則は、競合するものではなく、都市の政策立案者にとって強力な補完関係にあります。両者は、都市開発の異なる側面と段階において、戦略的に活用されるべきツールです。例えば、ある都市が「都市農業と食料システム」に関する新しいイニシアチブを開始したいと考えたとします。
第1段階:設計と構築(FAOの活用)
まず、都市はFAOの「6つの基準」 を「ガイドブック」として使用します。これに基づき、「市町村の食料戦略を策定」(基準3.2)し、「バイオマスフロー(廃棄物流)を評価」(基準1.3)し、「UPAプロジェクトのための予算と土地を確保」(基準4.2)するという、具体的な行動計画(ロードマップ)を構築します。必要であれば、FAOの技術支援(例:アビジャンのBSF技術 27)を導入することも可能です。
第2段階:価値実証と投資確保(AIPHの活用)
次に、このイニシアチブを実行し、持続させるためには、議会や市民、民間投資家からの政治的・財政的支援を確保する必要があります。ここで、AIPHの「標準」 を使用します。このプロジェクトが、FAOが主眼とする「食料安全保障」や「廃棄物削減」だけでなく、AIPHが重視する多様な便益、すなわち「市民の健康コストの削減」「社会的結束の強化」「周辺地域の不動産価値の向上」「都市競争力の強化」 といった、いかに多面的な「測定可能な価値(ROI)」を生み出すかをデータ駆動型 で実証します。
このように、FAOの枠組みは「システムを構築するための規範的ロードマップ」を提供し、AIPHの枠組みは「そのシステムの多面的価値を測定し、投資を正当化するためのガバナンス・ツール」を提供します。持続可能な都市の未来を追求する政策立案者や都市計画担当者は、どちらか一方の枠組みを選択する必要はありません。むしろ、両者の強みを戦略的に統合すべきです。
まず、FAOの「3つの柱」と「6つの基準」 を用い、食料、水、廃棄物の循環を組み込んだ強靭な都市システム(特に都市・周縁部との連携)の「ハードウェア(インフラ)」と「ソフトウェア(政策・戦略)」を設計・構築します。
同時に、AIPHの「標準」と便益の分析枠組み を用い、これらのシステムがもたらす多様な便益(健康コストの削減、社会的結束の強化、経済的価値の創出)を「測定・可視化」し、持続的な政治的・財政的コミットメントを確保するための強力な根拠とします。
この統合的アプローチこそが、AIPHが目指す「競争力があり、暮らしやすい都市(competitive and liveable)」 と、FAOが目指す「包摂的で、強靭な都市(inclusive and resilient)」を、同時に実現するための最も確実な道筋となります。
3.IUCN都市自然指標(UNI)
最後に、都市の自然を測る指標をご紹介します。前の章ではFAOで構想策定を行い、AIPHで測るとありましたが、その測定ツールのアップグレード版といえるものです。国際自然保護連合(IUCN)が開発した「都市自然指標(Urban Nature Indexes: UNI)」は、地方自治体が自らの都市の生態学的パフォーマンスを科学的根拠に基づいて測定し、改善するための強力なツールとして設計されており、「ネイチャーポジティブ」という観点では、植物に限らず自然資本全般の目線であるため、お勧めです。
3.1. IUCN都市自然指標(UNI)の概要
現代の都市が直面する気候変動や生物多様性の損失といった複雑な課題に対し、UNIは政策立案者、利害関係者、そして地域社会が一体となって自然への影響を理解し、具体的な目標を設定し、その進捗を監視することを可能にします。

多様な都市のニーズに対応できる柔軟性を持ちつつ、比較可能な測定を可能にする、調和・標準化された包括的な指標システムが急務となっています。この課題に応えるべく、国際自然保護連合(IUCN)とその都市アライアンスが開発した都市自然指標(UNI)は、まさにこの戦略的必要性に応えるために設計された、診断と戦略策定のための統合システムです。
包括的な範囲: 都市の生態学的影響がその行政境界をはるかに超えて及ぶことを認識し、UNIは意図的に広い範囲を対象としています。具体的には、都市の境界内(地域内)、周辺の農地や水源地など機能的に関連する領域(後背地)、そして貿易やサプライチェーンを通じて影響が及ぶ遠隔地(地球規模)の3つのスケールを網羅します。これにより、自治体は自らの消費活動がもたらす間接的な影響までを考慮した、より全体的な評価が可能になります。
体系的アプローチ: UNIは、都市システムの動的で複雑な性質を捉えるため、「駆動要因-圧力-状態-影響-対応(Driver-Pressure-State-Impact-Response: DPSIR)」モデルを採用しています。このシステム思考の枠組みを用いることで、表面的な環境問題だけでなく、その根本原因(例:社会経済的な駆動要因)を特定し、より効果的な政策対応を策定することができます。
柔軟な適用性: UNIは、すべての都市に画一的な基準を課すのではなく、各都市が自らの目標、能力、そしてデータの利用可能性に応じて、最も関連性の高い指標トピックを選択できる柔軟な構造を持っています。この柔軟性により、貴市は政治的な優先事項、予算サイクル、そして最も喫緊の生態学的課題に合わせたオーダーメイドの診断ツールを作成することができ、導入初日から政策的妥当性の高い結果を最大化することが可能になります。
IUCN都市自然指標(UNI)は、ゼロから構築されたものではなく、環境管理の分野で確立された既存の科学的枠組みを戦略的に統合することで開発されました。このアプローチは、社会、経済、環境システムが複雑に絡み合う都市の生態系を体系的に理解し、因果関係を解き明かす上で極めて重要です。UNIの科学的基盤は、その分析の信頼性と実用性を保証するものです。
UNIの設計は、以下の2つの主要な概念モデルに基づいています。
DPSIR(駆動要因-圧力-状態-影響-対応)モデル: このモデルは、社会経済システムと環境システムの間の複雑な因果関係を明確に示すためのシステム思考の枠組みです。
駆動要因 (Drivers): 人間のニーズ(食料、住居など)を満たそうとする社会・経済的な動き。
圧力 (Pressures): 駆動要因から生じる具体的な人間活動(排出、土地利用の変化など)。
状態 (State): これらの圧力によって引き起こされる環境の変化。
影響 (Impacts): 環境の状態変化が、生態系や人間社会に及ぼす結果。
対応 (Responses): 環境の変化に対応するために社会が取る政策や行動。 UNIはこのモデルを適用することで、都市が直面する生態学的問題の根本原因を特定し、効果的な「対応」を策定するのに役立ちます。
都市バイオシェッド影響領域モデル: このモデルは、都市の影響がその行政境界をはるかに超えて広がるという現実を視覚化し、理解するのに役立ちます。都市の活動は、以下の3つの異なるスケールで生態系に影響を与えます。
地域内 (in-boundary): 都市の行政境界内の直接的な影響。
後背地 (hinterland): 都市に食料や水を供給する周辺地域。
地球規模 (global): グローバルなサプライチェーンを通じて遠隔地に及ぼす影響。 このモデルは、都市が境界外の生態系に対しても責任を持つべきであるという視点を促します。
これらの概念的枠組みに基づき、UNIは都市の生態学的パフォーマンスを多角的に評価するため、6つのテーマと、各テーマに内包される5つの指標トピック(合計30)で構成されています。決定的に重要なのは、これらのテーマと関連指標が、持続可能な開発目標(SDGs)や昆明・モントリオール世界生物多様性枠組(GBF)といった地球規模のコミットメントと直接連携するよう設計されており、都市が自らの貢献度を測定し報告することを可能にしている点です。6つのテーマは以下の通りです。
テーマ1:消費の駆動要因 (Consumption drivers): 住民や企業の資源(食料、エネルギー、水、物資)利用に起因し、しばしば地球規模に及ぶ都市の影響を反映します。
テーマ2:人間による圧力 (Human pressures): 都市の管轄区域内における自然生息地への人間が引き起こす攪乱(騒音、光害、水質汚濁など)を指します。
テーマ3:生息地の状態 (Habitat status): 都市レベルで自然生息地がどの程度保護、回復、連結されているかを把握します。
テーマ4:種の状況 (Species status): 種の多様性や絶滅リスク、そして自然が提供するサービスに関する指標を含みます。
テーマ5:自然がもたらす人々への貢献 (Nature’s contributions to people): 自然がもたらす多様な便益(健康、雇用、文化など)に関する洞察を提供します。
テーマ6:ガバナンスによる対応 (Governance responses): 地方自治体や法的枠組みが、生物多様性の保全を支援する開発をどのように促進しているかを理解するのに役立ちます。
これら6つのテーマと30の指標トピックが一体となることで、都市の生態学的パフォーマンスの全体像が描き出されます。
テーマ1:消費の駆動要因 (Consumption drivers)
1.1. 物質消費
1.2. 有害な採取と取引
1.3. エネルギーからの温室効果ガス排出
1.4. 持続不可能な食生活
1.5. 取水
テーマ2:人間による圧力 (Human pressures)
2.1. 都市のスプロール化
2.2. 水質汚濁
2.3. 騒音公害
2.4. 光害
2.5. 侵略的外来種
テーマ3:生息地の状態 (Habitat status)
3.1. 土地利用・保護
3.2. 生態系回復(陸域)
3.3. 海岸線と河岸
3.4. 植生被覆
3.5. 連結性
テーマ4:種の状況 (Species status)
4.1. 動物種
4.2. 植物種
4.3. 機能的多様性
4.4. 微生物相と菌類
4.5. 固有種
テーマ5:自然がもたらす人々への貢献 (Nature’s contributions to people)
5.1. 自然との接触
5.2. 自然へのアクセス
5.3. 人間の健康
5.4. 生計
5.5. 神聖な自然地域
テーマ6:ガバナンスによる対応 (Governance responses)
6.1. 計画
6.2. 法規制
6.3. 教育
6.4. 管理
6.5. インセンティブと参加
この30の指標からなる包括的なスイートは、GBFのターゲット2、3、12や数多くのSDGsといった主要なグローバル目標と直接的かつ測定可能な連携を提供し、貴市を国際舞台における主要なアクターとして位置づけます。これは、地方自治体が自らの都市の生態学的パフォーマンスにおける強みと弱点を客観的に特定し、優先順位を付けて取り組むべき分野を明らかにするための診断ツールです。
3.2. 地方自治体のためのUNI実践的導入ガイド
IUCN都市自然指標(UNI)は、単なる理論的な枠組みではなく、地方自治体が具体的な行動を起こし、生態学的パフォーマンスを改善するための実践的なツールです。その導入プロセスは、各都市の能力や状況に合わせて調整できるよう、段階的かつ柔軟に設計されています。このセクションでは、UNIを効果的に導入するための5つのステップを解説します。
ステップ1:能力評価の実施 :導入の第一歩は、自組織の能力を客観的に評価することです。UNIでは、人口、一人当たりGDP、過去の生態学的評価の経験、専門スタッフの数などに関する7つの質問からなる「能力評価アンケート」が用意されています。このアンケートに回答することで、各自治体は自らのデータ収集・分析能力を把握し、現実的な報告レベルを設定するための基礎情報を得ることができます。
ステップ2:報告レベルの決定 :能力評価アンケートのスコアに基づき、各自治体は自らの能力レベルを「低」「中」「高」「メガ」の4段階、または意欲的な都市向けの「チャンピオン」レベルに分類します。このレベルに応じて、取り組むべき指標トピックの推奨数が決まります。これにより、無理のない範囲でUNIの導入を開始し、将来的に報告範囲を拡大していくことが可能になります。
スコア/能力レベル/報告要件/指標レベル
・7–9/低 (Low)/各テーマから少なくとも1つの指標トピック/基本 (Basic)
・10–13/中 (Medium)/各テーマから少なくとも2つの指標トピック/基本 (Basic)
・14–17/高 (High)/各テーマから少なくとも3つの指標トピック/上級 (Advanced)
・18–21/メガ (Mega)/各テーマから少なくとも4つの指標トピック/上級 (Advanced)
・任意/チャンピオン (Champion)/全ての指標トピック/上級 (Advanced)
ステップ3:指標トピックの選択 決定された能力レベルに基づき、自治体は各テーマから報告する指標トピックを選択します。この選択プロセスでは、能力レベルで定められた最低数以上のトピックを選ぶことができ、地域の生態学的な優先課題や政策目標に最も関連性の高いものを重視することが推奨されます。この柔軟性により、各都市はUNIを自らの状況に最適化することができます。
ステップ4:ベースライン評価の実施 選択した指標トピックについて、初回の評価を実施します。この最初の測定が「ベースライン(基準値)」となり、将来の進捗を測定するための重要な出発点となります。このベースラインを確立することが、長期的なモニタリングと成果評価の鍵となります。
ステップ5:報告とモニタリング UNIでは、約3年ごとの報告サイクルが推奨されています。2回目以降の評価を実施することで、ベースラインからの傾向(改善、不変、悪化など)が明らかになります。報告プロセスを支援するため、IUCNはインタラクティブなデジタルプラットフォーム(www.iucnurbannatureindexes.org)を提供しています。このプラットフォームは、貴市の職員の報告負担を軽減し、他の先進都市とのピアツーピア学習を促進するために設計されています。
この実践的なガイドに従うことで、地方自治体はUNIを既存の計画・報告プロセスに効果的に統合することができます。UNIを政策サイクルに統合することで、貴市は以下の3つの重要なガバナンス改善を達成し、証拠に基づく政策決定(EBPM)を推進できます。
科学的根拠に基づく目標設定: UNIによる定期的な測定は、都市の生態学的状態に関する客観的なデータを提供します。政策立案者はこのデータを活用することで、現状の課題を正確に把握し、現実的かつ野心的な環境目標(例:「今後3年間で都市のスプロール化率をX%抑制する」)を設定することが可能になります。
透明性と説明責任の向上: UNIの評価結果を公表し、IUCNのデジタルプラットフォームなどを通じて共有することで、市民や利害関係者に対する透明性が大幅に向上します。これにより、自治体は自らの環境政策の進捗と成果を明確に示し、市民に対する説明責任を果たすことができます。
分野横断的な協力の促進: UNIは、消費、公害、土地利用、生物多様性、市民の健康、ガバナンスといった6つの包括的なテーマを扱います。これらのテーマは、環境部局だけでなく、都市計画、保健福祉、経済など、庁内の複数の部署にまたがる課題です。したがって、UNIに基づく評価と目標設定は、必然的にこれらの部署間の連携を促し、組織の縦割りを排し、統合的な政策アプローチを推進するきっかけとなります。
UNIを導入し、その指標を用いてパフォーマンスを測定・報告することは、各都市の取り組みを国際的な文脈に位置づけ、世界共通の目標への貢献を可視化する上で非常に有益です。
持続可能な開発目標(SDGs): UNIの30の指標トピックは、SDGsの多くの目標と密接に関連しています。例えば、「都市のスプロール化」(指標2.1)はSDG 11(住み続けられるまちづくりを)に、「自然へのアクセス」(指標5.2)はSDG 11.7に直接貢献します。UNIを用いて報告することで、都市はSDGs達成に向けた自らの進捗を具体的に示すことができます。
昆明・モントリオール世界生物多様性枠組(GBF): 2022年に採択されたこの新しい世界目標への貢献は、多くの都市にとって重要な課題です。UNIの指標トピックは、GBFのターゲット(例:ターゲット2「生態系回復」、ターゲット3「保護地域」、ターゲット12「都市の緑地」など)と整合しており、都市がGBFの達成にどのように貢献しているかを測定し、国レベルの報告に資するデータを提供するための強力なツールとなります。
IUCN都市自然指標(UNI)は、都市が自然との関係を根本から再構築するための戦略的な羅針盤です。UNIの独自のスコープとDPSIRに基づく診断ロジックは、都市が環境圧力の源泉から、レジリエンスの拠点、そして地球規模の目標への貢献者へと移行する道筋を照らします。UNIは、都市がより健康的で、強靭で、生物多様性に富んだコミュニティを築くための科学的根拠に基づいた優先順位付けを可能にします。
