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「群マネ」は、日本のまちを救うことができるのか?

 隣町にバスで行けなかったり、トイレが流れなくなったら、困りますよね?
 日本においては、サステナビリティとして考えるべき論点は、「老朽化したグレーグレーインフラ(コンクリート中心の従来型インフラ)」ではないかと思います。日本の政府セクターは、1173.5兆円の負債。GDP比ではスーダンに次いで世界ワースト2の債務規模(対GDP比率は、2024年時点で約237%=税収ならぬ経済規模の約2.4倍)を抱えている中、さらに、インフラの維持に年間約12.9兆円、今後30年間で約200兆円相当が必要とされています(なお、日本の税収・一般歳入は、75.2兆円)。
 さらに、地震国であること併せて考えると、さらに頭が痛いです。なぜならば、同じ今後30年内に「60%~90%程度以上」の確率で南海トラフ地震が発生する!とされています(その他あちこち)。メンテナンスが終わっていないインフラは大地震で同時多発的に使えなくなる恐れが高いです。こうした地震の前までに、基幹的なインフラを一定の補強を終えておかないと、震災の日が日本の都市生活の終わりの日を意味することになりかねません。すなわち、老朽化されたインフラを「税収内」で「速やかに」更新する必要があります。
 まちの終わりの日が近づいています。
 そんなインフラにおいて、国土交通省の「群マネ(地域インフラ群再生戦略マネジメント)」と、「グリーンインフラ(自然の働きを活用する社会基盤)」は、グレーインフラの維持のスピードアップに福音になるかもしれない、そんな試論を本日は書こうと思います。本日も楽しんでいってくださいね!



道路も橋も限界寸前。日本のインフラ危機を救う新発想「群マネ」

あなたが毎日使う「当たり前」が、静かに崩れ始めている

 毎日、当たり前のように渡る橋、通勤で使う道路、上下水道、子供たちが遊ぶ公園。私たちの暮らしは、数えきれないほどの社会インフラに支えられています。それらが常に安全で、きちんと機能していることは、もはや空気のような存在かもしれません。しかし、その「当たり前」が今、静かに、しかし確実に崩れ始めていることをご存知でしょうか。

 日本のインフラは、高度経済成長期に集中的に整備されたものが多く、一斉に老朽化の時期を迎えています。さらに深刻なのは、それらを維持管理する地方自治体の現場が、深刻な人手不足、特に専門知識を持つ技術者の不足に喘いでいることです。古びていくインフラと、それを見る専門家の不足。この二重苦によって、従来通りのやり方では、もはや私たちの安全な暮らしを守りきれない瀬戸際に立たされています。

 この巨大で複雑な課題に対し、今、まったく新しい発想が注目されています。それが「群マネ」(ぐんマネ)です。これは単なる効率化の手法ではなく、インフラ管理の常識を覆す新しい考え方。それは、人手不足の時代に「束」で立ち向かう、いわば新たなヒーローたちの作戦名なのです。この記事では、私たちの街の未来を左右するかもしれない「群マネ」の、驚くべき5つのポイントを解き明かしていきます。

1. 75%の橋が「50歳超え」、4分の1の自治体に「技術者ゼロ」。これが日本のインフラの現実

 私たちが思う以上に、インフラが直面している現実は深刻です。問題を具体的に示す、衝撃的なデータが2つあります。まず、2040年度には、日本全国の道路橋のうち実に75%25%、つまり4分の1の自治体には、土木を担当する技術系の職員が一人もいない「技術者ゼロ」の状態なのです。

 老朽化したインフラが増え続ける一方で、それを診断し、治療計画を立てる「医師」である専門家が地域からいなくなっている。この組み合わせが、いかに危険な状況であるかは想像に難くありません。一つひとつ問題が起きてから対処する、これまでのやり方がもはや通用しないことは明らかです。

2. 「一本ずつ」から「まとめて」管理へ。逆転の発想「群マネ」とは?

 この危機的な状況を打開する鍵こそが、「群マネ」(地域インフラ群再生戦略マネジメント)という考え方です。これは、インフラ管理の視点を根本から変えるアプローチです。これまで、行政は「この橋の修繕」「この道路の舗装」というように、インフラを一本ずつ個別に発注・管理してきました。それに対して「群マネ」は、特定のエリア内にある道路の維持、公園の清掃、橋の点検といった複数の業務を、一つの「群(グループ)」としてまとめて管理する手法です。分野や施設の垣根を越えて、地域全体を一つのパッケージとして捉え直すのです。

 例えば、これまではA通りの穴ぼこ補修、B公園の草刈り、C橋の点検が、それぞれ別の担当者によって、別々の時期に、別々の業者へ発注されていました。群マネでは、この「A通り周辺エリア」の道路・公園・橋の維持管理を丸ごと一つのプロジェクトとして発注する、といったイメージです。かつて日本が多くのインフラを新しく「造る時代」であった頃とは違い、今は膨大な数の既存インフラを、限られた人員で同時に「管理する時代」です。個別の力で立ち向かうのではなく、様々なものを束ねて課題解決を目指す。この協働の思想が「群マネ」の核心にあります。個々の力だけでは解決できない課題を、様々な“群”で解決していこうという手法です。

3. 「やり方」ではなく「成果」を求める。官民連携を変える「性能規定」という契約

 「群マネ」が革新的なのは、その契約方法にも表れています。従来、行政が民間企業に業務を委託する際は、「仕様規定」という方法が一般的でした。これは、行政側が「いつ、どこで、何を、何回、どのように」行うか、作業の仕様を細かく指定する契約です(いわば、行政によるマイクロマネジメントです)。これに対し、「群マネ」では「性能規定」という新しい契約方法が積極的に用いられます。これは、行政が求める「成果(パフォーマンス)」、つまり「道路を安全で円滑に走行できる状態に保つこと」といった最終的な管理レベルを定義し、その目標を達成するための具体的な手法は、民間の専門知識や創意工夫に委ねるというものです。

 これは官民連携における大きな転換点です。行政は「管理監督者」から「パートナー」へ、民間企業は「指示された作業をこなす下請け」から「専門性を発揮して成果を出すプロフェッショナル」へと役割が変わります。これにより、民間企業は「指示待ち」から解放され、コスト削減や新技術導入に向けた自由な発想(創意工夫)を最大限に発揮することが可能になります。

4. 「コスト削減」が第一の目的ではない

 「業務をまとめる」と聞くと、多くの人は真っ先に「コスト削減」をイメージするかもしれません。しかし、「群マネ」の最も重要な目的は、実はそこにはありません。最大の狙いは、自治体の圧倒的な業務負担を軽減することにあります。第1章で見た「技術者ゼロ」の自治体がいかに多いかを考えれば、これが最優先課題であることは明らかでしょう。包括的に業務を民間へ委託することで、日々発生する細かな修繕依頼への対応や、個別の発注業務から職員が解放されます。そうして生まれた時間と余力を、より専門性が求められる長期的な修繕計画の策定や、地域全体のインフラ戦略を練るといった、本来やるべき付加価値の高い仕事に振り向けることができるのです。
 先行事例からも、こんな声が聞かれます。包括的民間委託によって、市職員の負担は減るが、その代わりの費用はある程度必要。決して今までより少ない予算で委託できるということではない。つまり、「群マネ」は単なる経費削減策ではなく、限られた人的資源を最適に再配置し、組織全体としてのパフォーマンスを最大化するための戦略なのです。

5. 組織の前に、まず「人」がつながる。「人の群マネ」という土台

 「群マネ」には、自治体や企業といった組織レベルの連携だけでなく、もう一つ重要な側面があります。それが「人の群マネ」という考え方です。特に小規模な自治体では、技術職員がたった一人というケースも少なくありません。相談する同僚もおらず、技術や知識の継承もままならない孤立した状況で、日々の業務に追われています。このような職員にとって、組織間の正式な連携が始まる前に、まずは個人として近隣自治体の仲間とつながることが、非常に大きな力になります。経験豊富な隣の町の職員にちょっとした疑問を相談したり、同じ悩みを持つ者同士で情報交換をしたり。こうした個人的な「横のつながり」が、孤独な担当者に専門的な知見や精神的な支えを与え、スキルアップを促します。そして、この人と人との信頼関係こそが、やがて自治体の枠を越えた共同発注など、より大きな組織としての「群マネ」を実現するための不可欠な土台となっていくのです。

群マネ 入門超百科

 ということで、インフラ老朽化の脅威から、我らのまちを守る新たなヒーロー百貨、読んでみてください。めちゃくちゃわかりやすいです。

群マネ 入門超百科

 インフラメンテナンスの課題に対応するための戦略について包括的に説明すお時間がない方は、上記を元にNotebookLMから出力した、以下の、解説動画をご覧ください。

「群マネ」の解説動画(8分)

グリーンインフラも一緒に群マネ:グレーだけで戦わない、自然の性能を「契約」にする

 以下からは、本論考のオリジナルな部分になりますが、グレーインフラだけではなく、グリーンインフラも、一緒に群マネができるのではないか?ということになります。なぜならば、技術者がいないのは、グリーン分野も共通だからです。
 今回ご紹介したレポートが示す群マネの骨格――広域・多分野連携、地域維持型JV、性能規定、データの束――は、そのままグリーンの性能を扱う器として、グリーンインフラに拡張することができます。例えば、多分野連携事例を、雨庭・透水・植生帯・田んぼダムといった自然機能の維持に拡張し、性能を定義してグリーンインフラに投資を行います。資金はJFMのグリーンボンドや強靱化枠をミックスし、成果とリスクを開示することで、「予算が足りないから諦める」を「自然の力で賢く補う」へと切り替えることができるようになります。

グリーンインフラは、国土交通省の政策の一部

 同じく国土交通省は「グリーンインフラ推進戦略」に基づき、主流化を進めています(MLITT)。費用対効果の面でも、グリーンインフラは、洪水や水質課題に対する自然に根ざした解決策(NbS)として、柔軟性や多重便益によりコスト効率を示す研究・政策レビューが蓄積されています。湿地・氾濫原の再生や河川の自然化は、治水と生物多様性、炭素吸収の同時達成に資する施策としても整理されています。(OECD)。また、日本の流域治水では、農地の貯留機能を生かす「田んぼダム」が公募要件や支援スキームに組み込まれ、実施地域では排水ピークの顕著な低減がシミュレーションで示されています。比較的安価な堰板の設置で下流の内水氾濫リスクを抑える実務的な手法として普及段階にあります(Ministry of Ag, Forestry & Fisheries)。資金面では、地方公共団体金融機構(JFM)が下水道・水道向けのグリーンボンドを継続発行し、国内でも調達の受け皿が整っています。環境省のグリーンボンド・グリーンローン・グリーンリストの整備も動いています(jfm.go.jp)。2025年度の国土交通省予算や国土強靱化の年次計画は、複数年の重点投資枠組みを持ち、治水・維持管理の加速化を続けています。
 したがって、グレーインフラ更新の後釜にはグリーンインフラも抱き合わせて考える余地はあるはずです。(MLITT)

なぜ「グリーン×群マネ」は安く賢いのか

  • 施工・維持の代替効果:湿地・氾濫原再生や河川自然化は、洪水低減と生物多様性回復、炭素吸収の多重便益を同時にもたらし、費用効率のレビューでも優位性が示されています。単一機能のグレーでは得にくい便益を重ねられます。(OECD)

  • 流域治水の地元資源活用:田んぼダムは、既存の農地・畦畔を活かすため初期費用が抑えられ、下流のポンプ増強や水路嵩上げを一部回避・延期できる局面があります。ピークカットの定量効果も公的資料に示されています。(Ministry of Ag, Forestry & Fisheries)

  • 調達の摩擦低減:性能規定は出来高管理の手間を減らし、複数年契約は業者側の投資判断を促します。本レポートのQ&Aと事例が具体像を示します。

  • 人手不足の補正:連携協力道路制度により、隣接自治体が互いの維持を代行可能になりました。少ない技術者を束ねて機動力を上げる制度的裏付けです。(MLITT)

 そこで、レポートの「群マネ」の骨格をそのまま用い、対象を「グリーンインフラ」の自然機能にまで広げてみることができます。

ユースケースでイメージする

 低平地の農村中心の小都市で、梅雨期に排水路がオーバーフローし道路陥没も散発する、そんな時。例えば、次のようなグリーンインフラが考えられます。

田んぼダム×側溝の浸透化
農地の貯留と道路側の浸透・雨庭を面でつなぐ。下流の排水強化を一部代替し、内水氾濫と路面損傷を同時に抑えます。

河岸の「透水・植生帯」更新
護岸の一部を多孔質化し、低水敷に在来植生の帯を設ける。小規模でも出水時の緩衝・土砂捕捉を助け、夏季の水温上昇を緩和します。(OECD)

学校・役場・病院の「雨庭+樹冠」
熱波対策を兼ねた雨庭と高木更新で、ヒートアイランドと内水の二重対策。都市部だけの話ではなく、地方の拠点施設でも効果が期待できます。

 そこで道路維持・河川水路維持・公園維持を地域維持型JVで一本化し、雨水の一時貯留は田んぼダム、道路側溝は浸透ます+雨庭、公園は一時貯留兼修景池に置き替えます。

 性能KPIについては、「降雨時の流出ピークカット率」「浸透能の下限値」「雨後24時間の滞水許容範囲」とします。契約は、総価契約×性能規定で支払い、JFMグリーンボンドを水処理更新と雨水管理に当て、国土強靱化の年次計画枠で付帯の治水改良を実施します。

 結果、下流の小河川水位上昇が抑えられ、道路補修の緊急出動が減りました。自然の力を治水性能として契約に落とし、財源と開示まで一気通貫に設計したことがポイントになります。

考えるべきポイントは、こんなこと→要件としてまとめること

  • 目的:治水・安全・快適の性能目標として「流出ピーク〇%削減」「透水能〇mm/h以上」「樹冠率〇%」など、地点ごとに示します。根拠資料は仕様書添付の位置図・基盤地図・簡易モデル

  • KPIの測り方:現場簡易試験、定点観測、降雨時の一時流量計、アフター豪雨の迅速点検。支払いと紐づけます(本レポートのモニタリング手順と整合)。

  • 維持の標準:植栽管理の回数規定ではなく、被覆率・生育高・空隙率などの出来映えで管理。劣化時はJVが最小介入で復元する方針を明記。

  • 多分野束ね:道路・河川・公園の維持仕様を一式化し、地域維持型JVまたは事業協同組合のみ応札可とする地域要件を設定(事例に倣う)。

  • 財源:JFMグリーンボンドの適格性(雨水・上下水)、国土強靱化の事業区分、地方債・起債条件を表形式で整理。グリーンリスト参照を注記。(jfm.go.jp)

 では、進め方を、具体的にもう少しみてゆきましょう。

ステップ1:課題を「自然で置き換えられる」単位に分解する

 最初に、雨水処理、法面保全、河道維持、路面温熱などの課題を、自然機能で代替・補完できるかを診断します。市町村の境界でなく、地形と排水系を単位にします。(Ministry of the Environment, Japan)

ステップ2:性能規定に「自然機能の管理水準」を組み込む

 本レポートで示された性能規定の設計に倣い、数量ではなく出来映えで支払う枠組みに、自然機能のKPIを追加します。例えば、

  • 降雨時流出ピークのカット率(対象街区・小流域ごと)

  • 透水・浸透能力(簡易現場試験の合格基準)

  • 樹冠率・日射遮蔽率(街路・駅前広場の指定面)

  • 河岸の生息場多様性指数(定義したチェックリストで評価)
    この「自然KPI」は、単なる緑化ではなく治水・安全・快適性の性能を数量化します。性能規定の導入に当たり、設計・積算・モニタリングを繋ぐ「翻訳役(全体マネジメント業務)」を置くという本レポートの示唆は、グリーンでも有効です。

ステップ3:多分野連携を「地域維持型JV+事業協同組合」で束ねる

 道路・河川・公園の日常維持を同じ連合体に担わせると、排水トラブルの初動が速くなり、機材や人員を横断活用できます。林業・造園・土木・測量・農業協同組合などを事業協同組合に束ね、河岸の植生帯更新や雨庭の土壌改良まで守備範囲を広げます。レポートの事例のように、地域要件を設けて地元企業の参画を促す設計も有効です。

ステップ4:財源ミックスを設計する

  • 複数年契約と債務負担行為で維持・更新を平準化(本レポートの解説を参照)。

  • JFMのグリーンボンドを水インフラや雨水管理の更新に充当し、国土強靱化枠は治水・安全の主目的で活用。自然機能による成果を「性能規定のKPI」と「インパクトレポート」の両方で説明します。(jfm.go.jp)

  • 環境省のグリーンボンド・グリーンローン指針(グリーンリスト)を参照し、費用のグリーン性を整理します。(Ministry of the Environment, Japan)

ステップ5:モニタリングは「データの束」で一元化

 住民通報、指示、報告、点検、予算執行の情報を一つの地図ベースの仕組みにまとめ、性能KPIの達成と支払いを結びます(本レポートの運用図、p.44)。雨庭や透水性舗装の性能が落ちたら、JVが横断的に対処します。


街の暮らしの持続可能性を、「束ねて」守る合意形成を、再発明する

 「群マネ」は、単なるインフラ管理のテクニックではありません。それは、政府予算が限られる中で、巨大地震の可能性と共生しながら、かつ、人口減少とインフラ老朽化という大きな時代の変化に直面する日本で、いかにして地域社会の安全と持続可能性を確保していくかという、新しいサバイバルの実践的な知恵です。
 個々でバラバラに頑張る時代は終わり、自治体、企業、そして技術者一人ひとりが「群」となって知恵と力を束ねる。規則やプロセスを公正に進めるマネジメントではなく、サービス単位にサービスレベルを管理するマネジメント。
 社会サービスを群で捉え管理する「決まり」や「プロセス」に縛られるのではなく、「パフォーマンス」を見るマネジメントこそ、私たちの街の持続可能性を担保するデザインと思います。サービスレベルは、地震などの異常時も別途描いて準備をすることもできます。この「群」で考えるアプローチを、インフラからグリーインフラに広げ、正常系や異常系など様々なパターンを考えてゆくことで、次世代のインフラのあり方を、恐れずにもっと的確にオープンに、考えることができるようになるのではないでしょうか?

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