日本の食料と自然を守る、スマートフードバリューチェーン
近年、世界の経済、特に日本経済は、物価高に直面しています。インフレーションが数%/年の今、日本銀行が0.75%/年へ利上げをしても実質マイナス金利です。政府が高額なローンを抱えているためか、財政リスクから債券高/円安を止められていないようです。
日本の場合、金融や経済が、地球環境よりも先に「持続不可能」になるおそれがあります。金融や経済が先に「持続不可能」になり、この結果、暮らしや自然/環境への影響を及ぼす、通常の逆のサイクルになるおそれがあります。日本で持続可能に暮らすためには、まずは食が確保できるかは大切です。輸入資材が多く、零細で高齢な事業者が多いため、経済ストレス耐性で一気に廃業が進むリスクがあるためです。
そこで、今日は、食と自然を支え続けられる仕組みにはどのようなアイディアがあるかについて思いを巡らそうと思います。
(以下の記事の続編です。)
・FoodTech成長戦略・・・フードテック日本導入ランキング(このうち、今回は4位・5位に注目)
・Dairy crisis:2030年、日本では、牛乳が毎朝、飲めなくなる・・・生産現場の脆弱性と需要側からの働きかけの重要性
今日も楽しんでいって下さいね!

食の産業を「需要」側からリノベーションする
今日は、食の産業をどのようにリノベーションするかのテーマです。
日本において、食の生産側は、高齢化/零細化/地方の劣化で出口がなくなりつつある可能性があります。今までの定常下の経済においても変化できなかった経緯がありますから、今後の実質マイナス金利/債券高/円安環境が続くとしたら、さらにネガティブになる恐れが想定されます。需給の安定や環境負荷低減を考えた時、生産現場が無数にあるサプライチェーン側を変えるよりも、フードバリューチェーン側の食品ロス(まだ食べられるのに捨てられる食品=2023年度推計で約464万トン)を、「捨てない仕組みに変える」ことの方が早そうです。
そこで、サプライサイドではなく需要サイドを見ようと思います。需要者は、今のインフレを恐れており、さらに今後もますます加速的にインフレーションが起きる前提を考えると、誰もが食料確保を考えるようになることが想定されます。また、食料の価格もどんどん上がると規格や美しさだけではなく、食べられればいい、無駄も見逃せなくなってくると思われます。お金の価値はどんどん減るわけですから、今のうちに心配いらないくらい先物への需要を消費者がしっかり買い支えフードロスになっていた食材もどんどん販売できそうです。円安に伴う経済金融危機が日本に来ることが分かっている一方で、まだ、世論はそこまで危機意識が高まっていないことです。そこで、一定の仕組みを作っておけば、世の中が危機意識を感じ始めた時にパニックにならないで済みます。
すなわち、「未来への需要を作り出し、無駄を減らして供給余力を高める」ことができます。「需要側が生産者を予約で支え、コールドチェーン(低温で品質を保つ物流網)でフードロスを減らし、結果として食料安全保障を強くする」、というインセンティブがとても合理的な解決策になりそうです。また、このアプローチは、ネイチャーポジティブの観点、特に、水資源の視点においても効果的です。国内の水使用量のうち農業用水は約3分の2を占めるとされています。つまり、フードロス削減による効率化は、単に農家のコストの話ではなく、国土・水資源の負荷低減にもつながります。
上記を実現するためのスマートフードバリューチェーンは、供給力と自然の回復力を両立させる」試みになります。
需要主導・予約型コールドチェーンで実現する食料安全保障
今日の提案は、発想の起点を「生産側の効率化」ではなく、「需要側が生産者を予約で支え、コールドチェーン(低温で品質を保つ物流網)でフードロスを減らし、結果として食料安全保障を強くする」、というものです。加えて、農業・水産業をフランチャイズチェーン化し、資本参加の仕組みまで組み込む。ここがポイントです。食品ロスは2023年度推計で約464万トンです。この構想の核は「無駄を減らして供給余力を取り戻す」ことです。 仮にこの1割を減らせれば、46.4万トン分の“実質的な供給余力”が生まれます。需要と物流の設計を変えるだけで取り戻せる余力です。食料安全保障を、最も早く、民間主導で強くする近道になります。
需要側が生産を支える「予約(前払い)」の考え方は、すでに社会に存在します。例えば、Community Supported Agriculture(コミュニティ・サポーテッド・アグリカルチャー。日本では地域支援型農業とも呼ばれます)は、消費者が前もって代金を支払い、定期的に作物を受け取る契約形態です。農業には一般法人でも貸借(借りる形)で参入する道があり、フランチャイズ化・資本参加は可能です。
Step1:需要側が「予約」あるいは「予約予測」で生産者の資金繰りと計画生産を支える。
Step2:予約および予測量を前提に、コールドチェーンを共同化し、フードロスを実際に減らす。
Step3:成功した運用をフランチャイズ化し、資本が入る“複製可能な供給体制”にする。
冷蔵倉庫や冷蔵トラックだけ整備しても、需要が不安定なら稼働率が上がらず、投資が重荷になります。逆に、予約で数量が固まると、冷蔵網は「稼働が読める設備」に変わり、金融も付きやすくなります。結果として、民間の資本参加が現実になります。
Step1: 需要側の「予約」で、生産を守る仕組みを作る
予約といっても、個人の定期宅配だけではスケールしませんので、2つの需要をみます。
1つは、事業者予約(大口の需要)。スーパー、外食、給食、食品メーカーが「年間の基本数量」を予約し、価格は一定幅(上限・下限)を持たせます。ここでの肝は、予約を「安く買い叩く道具」にしないことです。予約はインフレ時代における、需給の安定とロス削減の対価です。買い手側は、欠品リスクと廃棄コストが下がる恩恵を受けますから、その分を契約条件に織り込み、合理的な費用を踏まえた価格形成に寄せていきます。
もう1つは、生活者予約(小口の需要)。Community Supported Agricultureのように前払いで支える形は、すでに概念として普及しています。ただし全国展開するなら、「天候で内容が変わるのは理解するが、受け取りやすさは譲れない」という生活者の感覚に寄せる必要があります。そこで、受け取りは流通スーパーを基本にし、配送はオプションにします。これだけで物流負荷が一段下がり、冷蔵網の設計が楽になります。
予約が生産者にもたらす効用は、単なる売上の先取りではありません。「作る量が見える」ことで、作り過ぎが減り、規格外の発生も読みやすくなります。つまり、需要側が予約で支えること自体が、フードロス対策の上流になります。大手スーパーが「来季のトマトを月間◯トン予約」し、店頭では生活者向けに「予約野菜枠(受取は店)」を設定します。生産者は予約分を基準に作付けし、余剰分は加工・業務用へ回す前提で計画します。要点を言い直すと、需要側が先に必要数仮説を提示できれば、上流の計画と下流の再加工/廃棄の同時に検討しやすくなるのです。
Step2: コールドチェーンで「廃棄を減らす投資」を成立させる
次に、予約量を前提にコールドチェーン(冷蔵網)を組み替えることができます。ここでは「個社最適」ではなく「共同利用」を想定します。
1つ目は、産地側の予冷です。収穫直後に冷やして温度を落とすだけで、痛みが減り、持ちが変わります。ここは設備投資になりやすいので、単独農家ではなく、集荷場・選果場・漁港の共同設備として組むのが現実的です。
2つ目は、温度データを「取引の価値」にすることです。冷蔵は目に見えません。だからこそ、温度ログがあると、納品時の品質トラブルが減り、返品・廃棄が減ります。需要側から見ると、これは原価低減です。物流会社から見ると、これは付加価値です。結果として、冷蔵はコストではなく商品になります。
3つ目は、制度改正を追い風にすることです。物流効率化法は、荷主やチェーン事業者に物流改善を求め、2026年度施行の枠組みとして、一定規模以上の事業者に中長期計画等を求める流れがあります。 需要側の大手ほど対象になりやすいので、「法対応の中長期計画」の中身として、共同予冷・共同冷蔵・共同配送を位置付ければ、社内稟議が通りやすくなります。
Step3: 農業・水産業をフランチャイズ化し、資本参加を可能にする
供給体制そのものを「複製可能な事業」に変えます。フランチャイズの狙いは、農家や漁業者にとって現場の腕を奪わずに、儲かる型と品質保証と資金をセットで届けることです。農業では、農地を所有できる法人の要件として、農業関係者が議決権の過半を持つこと等が示されます。 したがって、来年から実現するには、次の二層構造が現実的です。
上位に、フランチャイズ本部(ブランド・販売・データ・資材調達・品質基準・冷蔵網の運用)を置きます。下位に、地域の運営会社(農地所有適格法人の要件を満たす形、もしくは農地は借りる形)を置きます。資本参加は、株式を握りにいくよりも、まずは「設備と運転資金」に入るのが早いです。具体的には、本部がファンド(あるいは金融機関と組成した枠)を通じて、予冷設備、冷蔵庫、選別機、加工機、養殖いけす等を保有し、地域運営会社にリースします。これなら、農地・漁業権の要件を壊しにくく、投資家には資産裏付けのキャッシュフローが作れます。最初の勝ち筋は、全国一斉ではなく、需要密度が高い都市圏と、供給がまとまる産地・漁港の組み合わせで「勝てる回路」を1本作ることです。フードロス削減は“見えない増産”です。予約と冷蔵で減らすことで、供給の余力を生めますし、増産より早く、設備投資の回収も読みやすいです。
コーディネーションの視点は以下の3つがポイントになりそうです。
第一に、予約は“安定供給の対価”として設計し、価格交渉を誤らないことです。買い手が強すぎる予約は、長続きしません。
第二に、冷蔵設備より運用を先に決めることです。共同利用は、運用が曖昧だと一気に揉めます。誰が予約を受け、誰が温度責任を持ち、返品基準をどうするか。ここを契約で固めます。
第三に、フランチャイズは「現場の自立」を壊さないことです。本部が現場を支配すると反発が出ます。現場が主体で、型と資本と販路が乗る、という順番が必要です。
需要主導・予約型コールドチェーンで食料安全保障を強くする<農業>
次に、成功するのであれば、具体的に、どの作物×地域から、着手するのが良さそうなのでしょうか? AIに調査をしてもらい、トップ9ランキングを作成してみました。前提として、 需要主導・予約型コールドチェーンの強みは、ここを「供給余力の回復」として最短距離で取りにいける点です。つまり、作る量をいきなり増やすのではなく、捨てる量を減らして、実質的な供給力を上げます。ここでいう「順番」は、有名産地から並べる話ではありません。「どこから順に始めると、早く勝てて、広げられるか」を重視しています。来年から動くために、需要側が予約しやすく、冷蔵・低温物流の投資対効果が出やすく、全国展開に横展開しやすい組み合わせから評価しています。 ランキングは、次の4点で評価しています。
食料安全保障への効き方:廃棄削減と供給安定への寄与が大きいか
需要側が予約・予約予測できるか:小売・外食・給食などが「年間の基本数量」を置けるか
コールドチェーンのレバレッジ:予冷・温度管理で品質と歩留まりが実際に改善しやすいか
面への拡張性:同じ設計を他産地にコピーできるか(リレー出荷、共通仕様、共同拠点の作りやすさ)
以下、順位ごとに「なぜ、その組み合わせから始めると勝ちやすいのか」を、需要主導・予約型コールドチェーンの観点で掘り下げました。

1位 長野県のレタス
レタスは、首都圏・関西大消費地で温度影響が大きく、予約と予冷で効果が出やすい です。長野はレタスの主産地として位置づけられ、主要産地として長野・茨城・群馬が挙げられています。レタスが最初に向く理由は、需要側の予約予測が作りやすいからです。サラダ、弁当、外食チェーンは「毎週・毎日」同じ品質の葉物を必要とします。つまり、年間の基本数量を置きやすい。ここに、収穫直後から低温を保つ物流(コールドチェーン)を組み合わせると、欠品と廃棄を同時に減らせます。さらに重要なのは「面への拡張性」です。レタスは季節で産地が移るため、長野で予約・温度仕様・返品基準を固めると、次に茨城や群馬へ同じ仕様を横展開しやすくなります。最初の勝ち方として、非常に合理的です。
2位 群馬県の夏秋キャベツ
群馬は夏秋キャベツの収穫量で全国1位(令和5年)です。群馬県首都圏・関西量が大きく「産地一体」で検討しやすいです。キャベツは単価は高くありませんが、量が動きます。量が動く作物は、1%のロス削減でも国全体の供給余力へのインパクトが大きくなります。だからこそ、冷蔵・予冷の共同化をかける価値があります。また、キャベツは季節で産地がリレーする典型で、群馬・長野の高冷地(夏秋)と、温暖地(秋冬)で産地が入れ替わる構図が示されています。 つまり、群馬で「予約契約+共同予冷+共同配送」の型ができると、そのまま別季節の別産地へ広げやすい。点を面にする起点として適しています。
3位 熊本県のトマト
トマトは令和5年産の主な産地として熊本・北海道・愛知が挙げられています。 トマトを上位に置くのは、予約予測が「計画生産」に直結しやすいからです。全国(外食・加工も含む)周年供給の設計ができ、予約=計画生産が可能です。特に施設栽培(ハウス等)は、需給が読めるほど、作付け・収穫・選果・出荷の無駄が減ります。需要側にとっても、外食・中食(弁当など)・加工用まで含めて用途が広く、予約数量の置き場が多いのが強みです。コールドチェーンは「鮮度」だけでなく「傷みの予防」を通じて、返品・値引き・廃棄の連鎖を止めます。野菜の中でも、需要側が支払える範囲で温度管理投資が組みやすい作物です。
4位 宮崎県のきゅうり
きゅうりは、大市場の入荷が季節ごとに大きく産地移行することが示されており、冬は宮崎産などの促成栽培が入荷します。
ここがポイントで、冬のきゅうりは「遠距離で、しかも需要が落ちない」ため、温度管理の効果が見えやすい。加えて、外食の定番食材でもあるため、需要側が予約しやすい。もしも、来年から始めるなら、宮崎のような冬季供給を、首都圏・関西の外食や給食の年間契約に組み込み、「最低購入量+温度ログ+規格外の行き先(加工・漬物等)」までを一気通貫で設計すると、フードロスの削減が目に見える形で出きそうです。
5位 徳島県のブロッコリー
ブロッコリーは、大市場の入荷が季節で西南暖地と冷涼地に移行し、大阪市場では徳島産の入荷が多く、周年で一定量が見られます。全国(外食・加工も含む)周年供給の設計や予測ができ、予約=計画生産が可能です。 需要主導の設計上、「周年に近い運用ができる」ことは大きな武器です。予約の設計が単純になり、冷蔵拠点の稼働率も読みやすくなります。ブロッコリーは見た目以上に品質劣化が早く、温度と時間に敏感です。つまり、予冷・低温輸送・低温保管のどこかが崩れると、すぐロスになります。逆に言えば、コールドチェーンの投資対効果が出やすい。関西の需要アンカー(大手小売・外食)を起点に、徳島で「型」を作るのが早そうです。
6位 栃木県のいちご
栃木は令和5年産のいちご収穫量が24,600トンで、昭和43年産から令和5年産まで56年連続日本一とされています。いちごは「壊れやすい」「単価が高い」「品質差が出やすい」という特性があり、冷蔵だけでなく、荷姿・衝撃・積み方・店舗での扱いまで含めて、ロス削減の打ち手が多い作物です。その分、投資回収が速い。予約予測モデルも設計しやすいです。生活者の前払い型(定期便・店頭受取)と、需要側(洋菓子・外食・百貨店)の事前確保を併走させると、「余るから捨てる」を減らしながら、高品質を守れるかもしれません。例えば、首都圏の菓子チェーンが「来月のケーキ向けに、栃木いちごを週次で予約」し、温度管理と荷姿の仕様を統一します。返品が減り、産地は計画出荷でき、結果として廃棄が減ります。要点を言い直すと、需要側が数量と仕様を先に握るほど、壊れやすい商材ほど、ロス削減が利益に直結します。
7位 福島県のもも
ももは都道府県別の収穫量割合として、山梨31%、福島26%、長野9%、山形8%、和歌山7%で、上位5県で全国の8割を占めると整理されています。
この「集中度の高さ」が、需要主導モデルに向きます。産地を絞って制度設計しやすく、予約・品質基準・物流の仕様を統一しやすいからです。ももは短期集中で需要が動くため、需要予測が外れると、値崩れと廃棄が一気に出ます。ここに予約(外食、ギフト、加工への振り分け)と、短期ピーク対応の臨時冷蔵(共同拠点)を当てると、食料の「余力」を取り戻しやすい。福島は首都圏に近く、まずは物流設計をシンプルに始められる点も来年実装に向きます。
8位 山梨県のぶどう
ぶどうは都道府県別の収穫量割合として、山梨25%、長野19%、岡山9%、山形8%、北海道5%で、上位5県で全国の約7割を占めるとされています。 ぶどうはギフト需要が強く、予約販売(早期受注)と相性がよい作物です。また、粒の傷みや房の劣化は流通の扱いで差が出るため、低温・衝撃低減・選果基準の統一がロス削減につながります。収穫量シェアが大きく、規格・品質の共通化がしやすい点も挙げられます。もしも来年の着手としては、山梨で「温度ログ付きの予約出荷(贈答・百貨店・ふるさと納税型の受注も含む)」を標準化し、品質保証を明確にするのが効果的かもしれません
。ここで作った仕様は、長野や岡山にも横展開できます。
9位 青森県のりんご
令和5年産で青森りんごが全国の生産量の60%以上を占めています。国内供給の集中度が高く、貯蔵と計画出荷が制度設計と相性がよいです。りんごは、葉物や果実ほど「今すぐ傷む」タイプではありませんが、逆に言うと、貯蔵と計画出荷と需要予測で通年供給を設計できます。食料安全保障の観点では、こうした「平準化できる作物」をモデルに入れる価値があります。予約型にするなら、生活者向けの定期購入だけでなく、学校給食・加工(ジュース、カットフルーツ)への年間契約を組み合わせると、需給が読みやすくなります。冷蔵投資は、短期の鮮度維持より「通年の供給安定」を狙う設計が適します。
需要主導・予約型コールドチェーンで食料安全保障を強くする<海産物>
では、今度は、海産物×地域のトップ7を見てみます。海産物は、野菜よりも「傷みの速さ」が速く、同じ冷蔵でも、氷の入れ方や温度のブレ(数度)で、歩留まり(売れる量)と廃棄が大きく変わります。つまり、需要側が予約で数量を先に固め、港・産地・加工・物流・店頭までの温度の約束事を揃えた瞬間に、フードロス削減がそのまま供給力の回復になります。一方で、魚種別に「流通段階ごとの廃棄率」が公的に整理された統計は、作物ほど一律に揃っているわけではありません。そこで、来年からの立ち上げは、データを取りやすく、供給が読みやすい品目(特に養殖)から入るのが成功確率を上げ流のではないかと思われます。そこで、次の4つの観点で「順番」を決めました。
需要側が予約しやすいか(年間の基本数量を置けるか、用途が広いか)
コールドチェーンの投資対効果が大きいか(温度管理で廃棄・値引き・返品が減るか)
供給が読みやすいか(養殖中心か、季節変動が設計可能か)
点を面にしやすいか(産地が集中していて共同化しやすいか、他地域へ横展開できるか)

1位 養殖カキ×広島(瀬戸内)
養殖カキは日本の海面養殖の中でも重要度が高く、2023年の生産量は広島県が60%、宮城県が14%、岡山県が8%という整理が示されています。さらに、近年のカキの国内消費量は17万トン前後で推移し、国内消費量が生産量を上回る局面があり、輸入で需要を補っています。カキは「国内で作っているのに、需給の波とロスで取り切れていない」可能性が高い、ということです。需要主導・予約型に最も向くのは、実はこういう品目です。予約は「欠品・廃棄・輸入依存を下げるオペレーション」に変えるべきです。コールドチェーンの設計としては、広島はむき身・生食・加熱用・冷凍・調製品へと出口が多い分、予約予測設計を二段にすると強くなります。第一段で外食・小売が生鮮向けの基本数量を予約し、第二段で加工(冷凍・調製品)が需給調整の受け皿として最低引取枠を持つ。これにより、当たり年・外れ年でも「捨てない設計」を作れます。例えば、首都圏の外食チェーンが「生食用は月間○トン、加熱用は月間○トン」を年契約で予約し、広島側は温度ログと出荷規格を統一、余剰は冷凍・調製へ自動的に回す。要点を言い直すと、予約数量と出口の優先順位を先に決めるだけで、廃棄が需給調整に変わります。
2位 ホタテ×北海道(オホーツク/根室)
養殖生産の内訳として、ホタテガイは2023年に151千トンと整理され、ノリ類、カキ類と並んで量の柱です。また北海道の海面漁業・養殖業では、魚種別構成割合でホタテガイが44%と最も多い、という整理が出ています。 ここで重要なのは、ホタテは「冷凍による在庫化」がしやすいことです。野菜や生鮮魚よりも、冷凍貝柱は品質を保ちやすく、需要側の予約に合わせて出荷タイミングを調整できます。つまり、予約型コールドチェーンの目的である「供給の安定」と相性が良い。加えて、直近の対外環境の変動は、需要主導モデルに変える理由を強くします。中国による日本産水産物の禁輸措置は、2025年11月上旬に冷凍ホタテなどの対中出荷再開が報じられた一方で、再び手続き停止が報じられるなど、不確実性が残る状況です。ここから言えるのは、輸出を否定するのではなく、「輸出の波があっても国内の需給が崩れない」構造が必要だということです。その最短の方法が、国内側の予約(小売・外食・給食・加工)を束ね、冷凍在庫の持ち方を標準化することです。
3位 ブリ類(ブリ/カンパチ)養殖×鹿児島
養殖の主要品目として、ブリ類は2023年に95千トン、生産額では1,398億円と整理されています。そして鹿児島県は、ブリ(養殖)、カンパチ(養殖)ともに収獲量全国1位、海外(米国・欧州連合など)への輸出にも触れられています。 つまり鹿児島のブリ類は、量とキャッシュフローの両方がある。予約型コールドチェーンを「採算の取れる仕組み」として最初に立ち上げるには、これ以上ない素材です。例えば、第一に、需要側の予約を“品質仕様”まで含めて固定化することです。ブリ類は、同じ魚でも、締め方・血抜き・温度管理で品質差が出ます。需要側(寿司・小売)が欲しい品質を先に定義し、産地の処理と温度ログを合わせると、値引きと返品が減ります。第二に、輸出と国内のバランスを冷蔵・加工で平準化することです。予約があると、加工場と冷蔵庫の稼働が読めるため、民間投資が成立しやすくなります。
4位 ギンザケ養殖×宮城(三陸)
宮城県のギンザケは、地域養殖の復興計画書の中で、令和5年時点で県内59経営体、生産量18,167トン、生産金額124億円と記されています。これは「供給が読みやすい養殖」であり、かつ小売・寿司・惣菜という定番需要があることを意味します。予約型・予約予測型にするなら、ここは難しく考えずに、「毎週必要な量を、毎週届ける」契約を標準化するのが勝ち筋です。産地側の投資は、海上の管理だけでなく、フィレー加工(切り身化)と冷蔵・冷凍の運用に寄せる。すると、需要側は店舗オペレーションが簡単になり、ロスが減ります。結果として、予約量を増やしやすくなります。
5位 養殖マダイ×愛媛(宇和海等)
海面養殖の主要品目として、マダイは2023年に67千トン、生産額は724億円と整理されています。愛媛県は、養殖マダイの生産量が1990年以降日本一で、2006年以降は全国のマダイ生産量の半分以上を生産しています。
マダイは「お祝い」など需要が偏る面があり、外食比率が高い時期ほど需給が振れます。だからこそ予約や予約予測が効きます。需要側は、活魚だけでなくフィレーや加工(切り身・漬け等)を組み合わせ、需要の谷を埋める予約設計にする。産地側は、同じ魚を「用途別の規格」に切り分けることで、廃棄ではなく用途転換で吸収できます。
6位 ノリ(養殖)×有明海(佐賀・福岡・熊本)
養殖生産量の内訳で、ノリ類は201千トンと整理され、量の最大項目です。九州の資料では、有明海を中心に行われるノリ類養殖は、佐賀・福岡・熊本の3県で全国の約50%の収獲量になる、と整理されています。さらに水産庁資料では、2024年ののり輸出実績が約41億円で、過去5年間で大きく増加した、という整理も示されています。ノリは冷蔵品というより乾製品ですが、需要主導モデルの要点は「予約で需給を安定させ、品質劣化と廃棄を減らす」ことです。おにぎり、弁当、外食など、需要が年間で読みやすいのが最大の強みです。ここは、コンビニや外食チェーンが「年間の最低購入枠」を持ち、産地側は原藻・半製品の保管と製品在庫の回し方を標準化する。冷蔵トラックよりも、むしろ品質保持(湿度・温度)と製造計画の最適化が効きます。
7位 ワカメ(養殖)×三陸(宮城・岩手)
養殖生産の内訳で、ワカメ類は50千トンと整理されています。そして、令和5年の生産地として宮城県が全国シェア51.5%(25,525トン)、岩手県が27.0%(13,410トン)という県の整理があります。ワカメは、給食や家庭内の定番需要があり、予約が組みやすい「基礎食材」です。ここでのコールドチェーンは、鮮魚のような“時間との戦い”より、湯通し・塩蔵などの一次加工を含めた低温管理の標準化が中心になります。三陸は集中度が高いので、共同の一次加工・共同保管を作り、需要側(給食・惣菜・加工)が年間枠で支える設計が効きます。
Appendix) フードテックの組み合わせ活用からのアプローチ
前章までは、需要の仕組みを作物と生産地単位で見てきました。
以下は、その他、FoodTech成長戦略で、みてきたフードテックの適用を整理してみます。
改めて、考えておくべきは、日本の基幹的農業従事者は、この約20年で大きく減り、2024年時点で111万4千人、平均年齢は69.2歳で、来年には70歳になります。担い手不足は、努力では埋まらない構造問題になっています。そこをどこでもできる簡単な方法で解決してゆく必要があり、その中でも小生が有効ではないかと思われるアイディアを整理します。
1. 要求品質の低下と、農業生産のスマート技術導入
戦略目標: 要求品質を下げて、ロボットによる参入幅を拡大、そもそも農業の負荷がかかる部分をロボットにさせて、楽にワンオペ副業できる。自動化・省力化によって負担を軽減する。
要求品質を下げることによる自動化余地の拡大:曲がっていても大きくても、虫食いでも、今まで規格外品だったものを緩和して、50%余分に市場に出せるようにする仕組み。レシピを限定すればこうした食品も用途先はあります。ロボットなど自動化したときに品質が落ちる問題を、ロボット側に負担させるのではなく、今ある技術でOKとする需要者側の了解を取り付けます。
リモート支援/AI自動対応パッケージ化での5割省力化: リモートからスマートフォンやタブレットで操作し、AIが代替もする。例えば、灌水コントロールシステムや、生育状況を遠隔監視、圃場の水位管理。暗黙知を数値化した栽培レシピを自動制御する「スマート温室」技術などができれば、新規参入者でも高品質生産を実現します。現場は、AIロボット、ドローンなどの汎用ロボティクスに普通に農業を任せます。こうした使いやすいUIによって、誰でも最新技術を抵抗なく受け入れられる環境を整えます。
2. ロス80%減:フードロス削減とフードテック活用の併用による食の稼働率の向上
戦略目標: 輸入原材料への依存を減らし、国内で生み出せる新たな食料生産技術を育成することで、円安下でも安定供給可能な食料システムを流通事業者共同で構築する。
食品流通における協働需要管理・アップサイクリング:消費期限切れ商品の再利用については、共同配送同様に、非競争領域としてエリア共同で再活用を行う仕組みを検討。ロス品の再導入を地域で容易にする仕組みを導入します。ジャガイモをコロッケに、野菜くずをスープスタンドにミネストローネスタンドに、キッチンカーで住宅街にお届けします。
食品製造の高度化・地域内循環: 円安時代には、原料から加工まで国内で完結するサプライチェーン構築が重要です。そこで食品製造分野のテック導入も支援します。例として、食品残渣のリサイクル(バイオコンポスターで肥料化)、発酵技術による代替調味料や培養乳製品の開発、3Dプリンタによる食品加工などがあります。政府はスタートアップとの協働で未利用資源のアップサイクル技術(例:泡盛粕から機能性食品素材化など)を支援し、地域内で資源が循環するモデルを、構築します。これにより輸入原料や飼料に依存しない食料生産が実現し、為替リスクに強い国内供給体制を作ります。
都市型農業・植物工場の展開: 為替変動に左右されず安定供給できるもう一つの柱が植物工場・垂直農場です。天候を問わず都市近郊で野菜を量産できる植物工場は、輸入に頼る葉物野菜を国産化し、輸送コストやロス削減にも寄与します。都市部では空きビルや地下空間の利活用を促進するため、規制緩和(用途地域の弾力的運用)や税制優遇を提案します。例えば使われていない倉庫や校舎を植物工場に転用する場合の改修費減税措置などです。
3. サプライチェーンの強靭化:物流DX・流通テクノロジーの活用による共同配送率50%
戦略目標: 弱体化した食品サプライチェーンのボトルネックを解消すべく、物流・流通にデジタル技術と自動化を導入し、効率的でレジリエントな供給網を共同配送の実現で再構築する。
コールドチェーンと在庫管理の高度化: 食品サプライチェーンでは低温物流(コールドチェーン)の強化が安全・ロス削減に直結します。IoT温度センサーを輸送箱や倉庫に設置し、クラウドで温度・湿度データを監視する仕組みを標準化します。異常が発生すればリアルタイムで関係者に通知し、早期に対応することで品質劣化や廃棄を防ぎます。これにより、小売店・卸・メーカー間で需給データを共有し、賞味期限切れ前に値引き販売や加工転用を図るなど食品ロスの低減につなげます。
共同物流と拠点整備: 特に地方においては、小規模出荷者ごとの個別配送は非効率なため、産地集約拠点と共同輸送モデルを推進します。地域の農協や流通業者が連携し、産地に集荷・選別・一次加工を行うハブセンターを整備。ここに先端の自動選別機やロボットピッキングを導入して人手を節約し、集約梱包したうえで大量出荷することでトラック台数を削減します(いわゆる幹線共同輸送の推進)。
物流のデジタルトランスフォーメーション(DX): 食品物流は温度・鮮度管理など高度な管理が必要ですが、人手不足や小口配送増加で非効率が生じています。そこで共同配送を前提にAIやIoTによる需要予測・配車計画の最適化を図ります。無駄のない輸送を実現します。またトラックの動態管理システム(車両の位置・温度をリアルタイム監視)を普及させ、渋滞やトラブル時に迂回・再配分を即座に行う仕組みを構築します。
自動化・省力化物流の推進: 慢性的なドライバー不足への対応策として、自動運転トラック・ドローン配送等の実用化を急ぎます。高速幹線輸送ではレベル4自動運転対応のトラック隊列走行を本格導入し、夜間の無人トラック輸送の常態化を図ります。
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