「ネイチャーポジティブサミット2026」 参加者非公式ガイド
本サミットの招聘メンバーの一人として、ご説明をしている中で、「国際会議によくあるアプリみたいなガイドないの?」と質問されることが複数回ありました。そこで本サミットの歩き方、「ガイド」と「旅程ナビゲーション」を作成しました。(いずれも非公式なものであることを、ご了承ください。)
Global Nature Positive Summit 2026(GNPS2026)
会期:2026年7月14日(火)・15日(水)
会場:熊本城ホール(熊本県熊本市中央区桜町3-40)
▼満喫ナビ:現場アプリ(スマホでも見られます)・・・毎日チェック用
▼AI音声ガイド・・・聞いて理解!
ご利用ください。そして、現地でお会いしましょう!
はじめに ―― このガイドの使い方
熊本へようこそ。そして、ネイチャーポジティブという大きな航海に、ともに乗り出そうとしている皆さまを、心から歓迎いたします。
このガイドは、2026年7月に熊本で開かれる第2回グローバル・ネイチャーポジティブ・サミットを、単なる「参加した会議」で終わらせず、「行ってよかった、また来たい」と思える2日間に変えていただくためにご用意しました。プログラムの読み解き方から、会場の歩き方、休憩時間の過ごし方、そして熊本という土地そのものを味わう楽しみ方まで、まとめています。
国際会議は、油断すると「朝から晩まで会場に座り、名刺を数枚もらって帰るだけ」になりがちです。けれども、せっかく世界中からリーダーが集まり、しかも開催地が「世界一の地下水都市」と呼ばれる熊本なのですから、それはあまりにもったいない過ごし方です。セッションで得た刺激を、その日の夜に地元の馬刺しと地酒とともに反芻し、翌朝は湧水の流れる庭園を歩いてから会場に向かう——そんな2日間を、このガイドは提案します。それでは、ネイチャーポジティブな未来への航海に、いざ出港いたしましょう。

サミットの全体像をつかむ
GNPS2026とは何か
グローバル・ネイチャーポジティブ・サミット(GNPS)は、「2030年までに自然の損失を食い止め、回復へと転じる」という世界共通の目標——ネイチャーポジティブ——の実現に向けて、企業、金融機関、自治体、研究者、市民社会のリーダーが一堂に会し、行動を加速させる国際会議です。今回の熊本開催は、2024年10月にオーストラリア・シドニーで開かれた第1回に続く、記念すべき第2回にあたります。第1回には50か国以上から1,000人を超える参加者が集まり、環境大臣、企業経営者、金融機関、環境保護団体、学術関係者が活発な議論を交わしました。
このサミットが立脚しているのは、2022年に196の国と地域が合意した「昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF:Global Biodiversity Framework)」です。GBFは、2030年までに陸と海のそれぞれ30%を保全する「30by30」をはじめとする野心的な目標を掲げた、生物多様性版のパリ協定ともいえる歴史的な合意でした。そして2026年10月には、アルメニアの首都エレバンで国連生物多様性条約第17回締約国会議(CBD COP17)が開かれ、各国政府がこのGBFの進捗を本格的に評価することになっています。

つまりGNPS2026は、COP17というグローバルな節目のわずか数か月前という、きわめて重要なタイミングで開催されます。政府間交渉に先立ち、企業・金融機関・自治体といった非国家主体が「私たちはこれだけの行動を起こしている」という成果とコミットメントを世界に示す——それが今回のサミットの大きな使命です。とりわけ第2回は、企業・金融と地方自治体の貢献にスポットライトを当てる構成になっています。3000名程度が来場が見込まれます。
「共に船出しよう」というテーマ
今回のサミットには、「Setting Sail(共に船出しよう)――ネイチャーポジティブな未来への航海へ」というテーマが掲げられています。2030年という約束の期限が目前に迫るなか、ビジネス、金融、ガバナンスの各分野で、私たちが力強い航路を描けることを示す——そんな決意が込められた言葉です。このテーマは、開催地・熊本ともみごとに響き合っています。熊本は74万市民の水道水源のすべてを地下水でまかなう「世界一の地下水都市」であり、阿蘇から天草の海まで、山から海へと水が巡る土地です。水の流れは、まさに航海のメタファーそのもの。会期を通じて「ランドスケープ(陸域)」と「シースケープ(海域)」の両方が繰り返し語られるのも、この土地ならではの必然といえるでしょう。

サミットは、各階で役割が異なります。この構造を頭に入れておくと、当日の身の振り方がぐっと楽になります。
第一の層は、4Fのメインホールで行われる全体会議です。開会式、キーノート(基調講演)、ハイレベルなパネルディスカッション、Fireside Chat(少人数の座談会)などがここで展開されます。世界的なリーダーの生の声を浴びるように聞ける、いわば「幹」の部分です。
第二の層は、Room A1〜A4、Room Bといった各会場で同時並行的に開かれる分科会(並行セッション)です。金融、企業戦略、流域管理、食料システム、海洋、テクノロジーなど、テーマごとに深く掘り下げる場で、時間帯によっては5つも6つもの分科会が並走します。ここでの「どれを選ぶか」が、あなたのサミット体験を大きく左右します。サイドイベントも同様です。NGOや各種団体による多彩な催しが用意されています。
第三の層は、1階展示ホールで開かれる同時開催展示会「NATURE TECH!」です。こちらは入場無料で、サミット参加者はもちろん、一般の来場者も楽しめます。自然の損失を止め、再生へ向かうための最新技術やソリューションが、産官学の実践者によって披露されます。サミットのスポンサーは必ずブースを出していますので、聞き足りないと思った場合は、1Fへ直行することがおすすめです!

なぜ熊本なのか
開催地・熊本の意味に少しだけ触れておきます。熊本は「火の国」であり「水の国」です。世界有数のカルデラを持つ活火山・阿蘇を擁し、県内1,000か所以上で地下水が湧き出る、稀有な土地です。市民の飲み水のすべてを地下水でまかなうという事実は、世界的にみても極めて珍しく、「自然と経済・暮らしが不可分に結びついている」というネイチャーポジティブの核心を、そのまま体現しています。同時に熊本は、近年の半導体産業の集積によって、地下水をはじめとする自然資本への負荷という新たな課題にも直面しています。急成長する産業と、守り継いできた水——この緊張関係は、まさに世界が向き合う縮図でもあります。サミットのプログラムにテクノロジーセクターと自然に関するセッションが組み込まれているのは、この開催地ならではの問題意識の表れです。

歴史ある城下町、雄大な阿蘇、天草の海と島々、そして清らかな地下水が育む食材の数々。熊本は、ネイチャーポジティブを「概念」ではなく「風景」として体感できる、これ以上ないほどふさわしい舞台なのです。サミットを深く味わうために、開催地・熊本の「水の物語」を、もう少しだけご紹介させてください。この物語を知っているかどうかで、2日間で耳にする言葉の一つひとつが、まったく違う響きを持ってくるからです。
熊本市が74万市民の水道水源のすべてを地下水でまかなっているという事実は、日本の大都市のなかでもきわめて異例です。多くの都市が河川水を浄水場で処理して供給しているのに対し、熊本の人々は、蛇口をひねればそのまま天然の地下水を飲んでいます。これは偶然ではありません。阿蘇のカルデラに降った雨が、火山灰土壌を通ってゆっくりと地下に浸透し、長い年月をかけて豊富な地下水脈をかたちづくる——この壮大な自然のしくみと、それを守り継いできた人々の営みの、両方の賜物です。
とりわけ象徴的なのが、水田の役割です。熊本平野の上流域では、稲作の水田が雨水を一時的にため、地下へと涵養する巨大な「天然のダム」として機能してきました。市や企業、農家が連携し、休耕田にあえて水を張って地下水を涵養する取り組みは、"官民協働による自然の再生"の先駆的なモデルとして、国内外から注目を集めています。これはまさに、サミットで繰り返し語られる「ランドスケープ・アプローチ」や「ウォーター・スチュワードシップ」の、生きた実例なのです。
一方で、熊本は近年、半導体産業の大規模な集積という新しい局面を迎えています。産業の成長は地域に活力をもたらしますが、同時に、水をはじめとする自然資本への負荷や、地下水の持続可能性への懸念という課題も突きつけます。守り継いできた水と、これから育てる産業を、どう両立させるのか——この問いは、熊本だけのものではなく、世界中の地域が直面する縮図です。サミットにテクノロジーセクターと自然をめぐるセッションが組み込まれているのは、この土地が今まさにその問いの最前線にあるからにほかなりません。
このように、熊本という舞台そのものが、ネイチャーポジティブの希望と難しさの両方を、くっきりと映し出しています。会場で「地下水」「流域」「涵養」「ウォーターポジティブ」といった言葉が飛び交うとき、それが遠い抽象論ではなく、まさに今あなたが立っている足元の物語なのだと感じられたなら、このサミットの体験はぐっと深いものになるはずです。
到着前・前日までの準備
「準備で8割が決まる」——国際会議に慣れた人ほど、この言葉を口にします。特に今回は早朝からプログラムが始まるため、前日までの段取りが2日間の快適さを大きく左右します。この章では、荷造りから前日の動きまで、押さえておきたいポイントを整理します。

何よりも「前日入場受付」を済ませる
最初にして最重要のポイントが、7月13日(月)のうちに現地での参加確認(オンサイト登録)を済ませておくことです。事前入場受付は13日の16時から20時ごろにかけて実施される予定で、熊本城ホールの2階(予定)が受付場所となります。ここで、事前登録済みであることの確認を受け、参加証(ネームバッジ)を受け取ります。理由は単純で、初日14日の朝は受付が大変混雑することが予想されるからです。しかも14日は入場時に手荷物検査と金属探知機による検査が実施される予定で、来場時間によっては開演に間に合わない可能性すらあります。せっかくの開会式を、行列のなかで聞き逃す——そんな事態は避けたいところです。海外から参加される方には、13日までに来日し、同日中にオンサイト登録を済ませることが強く推奨されています。
参加費の支払いは現地では受け付けられません。必ず事前にオンラインで登録と支払いを完了させておいてください。そして、紙に印刷したチケットを必ず持参することも忘れずに。今回のイベントでは、紙のチケットでチェックインを行う運用です。スマートフォンの画面ではなく、印刷したものを用意しておきましょう。
会場のセキュリティはしっかりしており、その分、大きな荷物の扱いには注意が必要です。初日にある、手荷物検査では、スーツケースやそれに準ずるサイズの荷物は持ち込めません。会場にはクロークがあり、スーツケースなど大きな荷物を預けられます。ただし預かり時間は、14日が8時から21時、15日が8時から20時と決まっており、この時間外の預け入れ・引き出しはできません。日をまたいでの預かりも不可で、その日に預けた荷物はその日のうちに引き取る必要があります。
そして、忘れがちですが大切なのが「余白」を持つことです。スケジュールを詰め込みすぎず、休憩や散策、人との雑談のための時間を、あらかじめ確保しておきましょう。すべてのセッションに出席することが、良い参加ではありません。心と体に余裕があってこそ、良い出会いも、深い学びも生まれます。2日間を"完走"ではなく"満喫"するために、この「余白の設計」を、ぜひ意識してみてください。
熊本城ホール完全攻略 ―― 会場を歩く
2日間、あなたの拠点となるのが熊本城ホールです。この章では、会場を快適に歩きこなすための実務情報をまとめます。
会場の構造を頭に入れる
熊本城ホールは、複数のホールと会議室を備えた大型のコンベンション施設です。サミットでは、基調講演やハイレベルパネルが行われるメインホールを中心に、Room A1・A2・A3・A4、そしてRoom Bといった会場で、分科会が同時並行的に展開されます。1階の展示ホールは、入場無料の展示会「NATURE TECH!」の会場です。
初日にまず把握しておきたいのは、(1)メインホールの場所、(2)自分が行きたい分科会が入るRoomの位置、(3)昼食会場、(4)クローク、(5)お手洗いと休憩スペース、(6)NATURE TECH!の入口、の6点です。前日の受付のついでに、あるいは初日の朝いちばんに、この6か所をざっと歩いて確認しておくと、その後の移動がスムーズになります。分科会は時間帯によって会場が変わりますから、セッションの合間の「移動時間」を計算に入れておくことも大切です。
桜町という絶好の立地
熊本城ホールの最大の魅力は、その立地にあります。桜町バスターミナルと一体化しており、空港リムジンバスや各地からの高速バスがそのまま乗り入れます。熊本城は目と鼻の先。そして繁華街の下通(しもとおり)・上通(かみとおり)・新市街・銀座通りが、すべて徒歩圏内に広がっています。
これはつまり、「昼休みや夜に、少し歩けば熊本の街の楽しみのど真ん中に出られる」ということです。会議の合間に本格的な太平燕を食べに行くことも、夜に馬刺しと地酒で一日を締めくくることも、思い立ってすぐに実行できます。多くの国際会議が郊外の巨大施設で開かれ、参加者が会場とホテルを往復するだけで終わってしまうのとは、対照的な環境です。この地の利を活かさない手はありません。

移動・休憩・充電・お弁当
昼食について:両日とも、昼休みには昼食会場でお弁当が用意されます(無料・先着順・お一人様1つまで)。ただし数に限りがあり、なくなり次第終了となります。今回、大盛況であることから、おそらく、すぐなくなると想定されます。確実に食べたい方は、昼休みに入ったら早めに会場へ向かうのが得策です。いずれかの会場が昼食スペースとして開放される予定です。一方で、「せっかくだから熊本らしいものを食べたい」という方は、無理にお弁当に並ばず、徒歩圏の飲食店に繰り出すのも大いにアリです。ただし昼の人気店は混みますので、時間配分にはご注意を。
休憩と充電:早朝から夕方まで続く長丁場です。集中力を保つには、意識的に休憩をとることが欠かせません。すべてのセッションに全力で臨もうとせず、「ここは聞く、ここは休む・歩く・人と話す」とメリハリをつけましょう。モバイルバッテリーは必携です。会場のコンセントは数が限られますし、写真撮影やメモ、SNS発信でスマートフォンの消耗は思いのほか激しくなります。
言語:本会議の作業言語は英語と日本語です。サイドイベント以外のセッションでは同時通訳が提供されます。同時通訳のレシーバーが必要なセッションでは、受け取り方法を会場スタッフに確認しておきましょう。海外ゲストとの会話に備え、翻訳アプリをスマートフォンに入れておくと、休憩時間のちょっとした交流に役立ちます。
「NATURE TECH!」を楽しみ尽くす
見落とされがちですが、1階展示ホールの「NATURE TECH!」は、このサミットの主役のひとつです。入場無料で、両日とも9時30分から17時ごろまで開かれます。テーマは「自然の損失を止め、再生へ向かうための技術活用」。産官民の実践者が集い、生物多様性を回復させるための最新事例やソリューションを披露します。登壇している日本企業はほとんどブース出展しており、案内要員がいらっしゃいますのでおすすめです。
分科会の合間の空き時間や、集中力が切れたタイミングで、ふらりと立ち寄ってみてください。パネルディスカッションで「概念」として語られていた技術が、ここでは「実物」や「デモ」として目の前にあります。eDNA(環境DNA)による生物モニタリング、衛星やAIを使った生態系観測、自然資本の可視化ツール——そうした最先端が、開発者本人の口から直接聞けるのです。名刺交換の場としても、実は本会議場より話が弾みやすい、絶好のネットワーキング空間でもあります。ただし、小学生たちも多数見学に来ていますので、お気をつけて。また、個別にセッションも開催されています。こちらは、より具体的な事例が多く紹介されるセッションが開催されていますので、要チェックです!
「セッションに疲れたらNATURE TECH!へ」——これを合言葉に、1階と上階を行き来する回遊を、ぜひ2日間のリズムに組み込んでみてください。
Day1(7月14日)を味わう ―― セッション・ナビゲーション
初日は、サミット全体の「幹」となる全体会議が午前中に集中し、午後から夕方にかけて分科会が花開いていく構成です。世界的リーダーの生の声を浴び、夜には映画上映とレセプションで締めくくる——濃密な一日を、時間の流れに沿ってご案内します。

午前 ―― 世界のリーダーが勢ぞろいする開幕
9:00-10:05 開会式 サミットは、華やかな開会式で幕を開けます。主催者および国内外の来賓による歓迎挨拶を通じて、ネイチャーポジティブ推進のビジョンと国際的意義が共有されます。登壇が予定されているのは、高円宮妃殿下をはじめ、熊本市の大西一史市長、国土交通省の金子恭之国土交通大臣、日本経済団体連合会の筒井義信会長、生物多様性条約事務局のアストリッド・ショーメーカー事務局長、ネイチャーポジティブ・イニシアティブ主宰のマルコ・ランベルティーニ氏、国際自然保護連合日本委員会の道家哲平会長など、まさに錚々たる顔ぶれです。COP17やGREEN EXPO 2027へとつながる、本サミットの国際的な位置づけもここで示されます。前日受付を済ませ、この開幕の熱気を最初から浴びることを、強くおすすめします。
10:05-10:30 キーノート「ネイチャーポジティブとは何か」 続く基調講演では、そもそもネイチャーポジティブとは何か、なぜ生物多様性の危機に対処することが重要なのか、そしてそれを各分野・各地域でどう実践できるのかが、明快に概説されます。この30分は、2日間を通じて何度も立ち返る「思考の土台」になります。用語や概念に不安のある方こそ、ここは集中して聞いておきたいところです。
11:00-13:00 全体パネル3連続 ここから午前の後半は、ハイレベルパネルが立て続けに展開されます。まず「ネイチャーポジティブの社会・経済的意義」では、自然にプラスとなる移行が、レジリエンス(回復力)、競争力、そして幸福度といった観点でどんな価値を生むのかが語られます。開催地・熊本の大西市長や、肥後銀行の頭取、保険・飲料大手の経営層らが顔を揃えます。続く「企業の役割」では、企業が戦略・事業運営・バリューチェーン・イノベーションを通じて、いかに変革を牽引できるかが議論されます。そして「ネイチャーポジティブリーダーシップ」と題したFireside Chat(座談会)が、午前の全体会議を締めくくります。高円宮妃殿下、CBD事務局長、ランベルティーニ氏による、リーダーシップと長期ビジョンをめぐる対話は、初日の白眉のひとつです。
昼休み(13:00-14:00)の過ごし方
午前の濃密な議論のあとは、待望の昼休みです。前述のとおり無料のお弁当が用意されますが、初日の昼は「作戦」で臨みたい時間帯でもあります。
選択肢は大きく3つ。第一に、お弁当を確保して会場で軽く済ませ、午後に備えて休む——体力温存を重視する堅実な選択です。第二に、思いきって街へ出て、熊本名物のランチを楽しむ——下通の老舗で太平燕をすする、城彩苑であか牛丼をかき込む、といった贅沢です。第三に、お弁当を片手に、NATURE TECH!やロビーで意図的に人と話す——ランチ・ネットワーキングです。
初日はまだ様子見という方は第一を、熊本を味わい尽くしたい方は第二を、人脈づくりを最優先する方は第三を選ぶとよいでしょう。いずれにせよ、午後は14時開始と時間が限られています。街に出る場合は、混雑と移動時間を計算に入れ、余裕をもって戻ってください。
午後 ―― 金融・戦略・統合のパネル
14:00-15:30 午後は「金融の役割」から始まります。金融機関・投資家・保険会社・事業会社が、資本の流れを自然にプラスとなる方向へどう転換し、自然関連のリスクと機会をどう管理するのか。国連環境計画(UNEP)や大手生保、ISSB理事らが登壇し、開示基準の最前線が語られます。続く「企業のネイチャーポジティブ戦略とは」では、コミットメントや目標設定から、成果の達成と説明責任までを、いかに信頼性高く設計・実行するかがテーマです。TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)のCEOがモデレーターを務め、イオン、明治、日本生命、東急不動産ホールディングスといった実践企業が知見を持ち寄ります。
16:00-17:15 夕方前には、「ネイチャーポジティブ・ネットゼロ・循環経済の統合的推進」というパネルが登場します。自然・気候・循環経済という3つのアジェンダの相互関連を解きほぐす、いま最もホットなテーマです。そして「ランドスケープやコミュニティを核としたネイチャーポジティブ・アクション」のFireside Chatが、地域・流域スケールの実践から初日の議論を振り返ります。熊本県の木村敬知事や、COP17開催国アルメニアの交渉チーム長も登壇予定です。
夕方の分科会 ―― 5つの並行セッションから選ぶ
17時30分ごろからは、初日のクライマックスというべき並行分科会が一斉に始まります。同じ時間帯に複数のセッションが走るため、「どれを選ぶか」があなたのサミット体験を決定づけます。予定されている主な分科会は、次のとおりです。
経営層が語るネイチャーポジティブ【パート1】:イオン、サラヤ、セブン&アイ、キリンといった先進企業の経営層が、ネイチャーポジティブ経営の戦略と、それがもたらす価値・成長機会を直接語ります。「経営の視点」を求める方に。
ネイチャーポジティブを社会実装する 日本発ソリューション:市民参加型モニタリング、資金メカニズム、海洋・インフラ技術など、世界へ展開可能な日本発の実践を紹介。バイオームや大林組、JICAなどが登壇し、実装のリアルに迫ります。
テクノロジーセクターが直面する自然関連課題:AIが牽引する成長が自然資本を脅かしうるという、開催地・熊本の半導体と地下水の問題にも通じる切実なテーマ。ソフトバンク、ソニー、NEC、みずほ、TNFD、世界経済フォーラムが議論します。
「自然資本をバランスシートに」:無償とされ棄損されてきた自然資本に価値をつけ、投資可能な財へ転換する国際的な取り組み(NBI)を、日本企業とアジアの投資家が論じます。ルール形成に関心のある方に。
自然保護に向けた取り組みへの資金調達:投資可能な案件形成、革新的な金融手法、制度・パートナーシップの役割を、IUCNやEY、大手金融が実践的に議論します。
選び方のヒント:経営企画・サステナビリティ担当なら「経営層が語る」、金融・投資関係なら「資金調達」か「バランスシート」、技術者・研究者なら「日本発ソリューション」か「テクノロジーセクター」、政策・ルール形成に関わる方なら「バランスシート」——といった具合に、自分の立ち位置から一つを選ぶのが基本です。ただし、あえて「自分の専門外」を選び、視野を広げるのも国際会議の醍醐味。迷ったら、登壇者の顔ぶれで「この人の話を生で聞きたい」と思える方を選んでみてください。
夜 ―― 映画とレセプション
18:40-19:40 Film Session「Becoming Nature Positive」 初日の夜には、ネイチャーポジティブ・イニシアティブが制作した約30分の映画が上映され、その後に短いディスカッションが行われます。データやパネルとはまた違う、映像とストーリーの力で「なぜ自然なのか」を心に刻む時間です。理屈で疲れた頭に、感情から訴えかけてくる——一日の締めくくりにふさわしいプログラムです。
フィルムが終わったら、徒歩数分の下通・銀座通りへ繰り出せば、馬刺しと地酒の待つ居酒屋が、あなたを歓迎してくれます。同じセッションで隣り合った参加者を誘って、"非公式レセプション"を開くのも、忘れられない思い出になるでしょう。

このサミットで会える、注目の顔ぶれ
セッションは「テーマ」で選ぶのが基本ですが、「この人の話を生で聞きたい」「この人に会ってみたい」という動機で選ぶのも、国際会議ならではの楽しみ方です。今回のサミットには、ネイチャーポジティブをめぐる世界的なキーパーソンが数多く集います。あらかじめ主要な登壇者を知っておくと、セッション選びにも、休憩時間の声かけにも、ぐっと弾みがつきます。初日に登壇が予定されている、特に注目したい顔ぶれをご紹介します。

マルコ・ランベルティーニ氏(ネイチャーポジティブ・イニシアティブ主宰)——このサミット全体の思想的な牽引者です。世界自然保護基金(WWF)の事務局長を長年務め、「ネイチャーポジティブ」という言葉を世界の共通言語へと押し上げた立役者。開会式、キーノート、Fireside Chat、映画上映と、初日の随所に登場します。彼の言葉の熱量は、2日間を貫く道しるべになります。
アストリッド・ショーメーカー氏(生物多様性条約 事務局長)——世界の生物多様性交渉の司令塔ともいえる存在です。GBFの実施とCOP17を統括する立場から、国際政治のリアルな現在地を語ります。開会式と閉会式の両方に登壇予定で、サミットを国際的な文脈のなかに位置づけてくれます。
高円宮妃殿下——開会式とFireside Chatにご臨席がご予定されています。自然や国際交流への深い関心で知られ、その存在はサミットに特別な格と温かみを添えます。
トニー・ゴールドナー氏(TNFD CEO)——企業の自然関連情報開示のあり方を左右する、実務家にとっての最重要人物のひとり。初日午後の「企業戦略」パネルなどでモデレーターを務める予定で、開示の最前線を知りたい方は必聴です。
マーク・ゴフ氏(自然資本連合 CEO)——自然資本会計の国際的な旗振り役。「社会・経済的意義」のパネルをはじめ、随所に登場します。自然を"バランスシートに乗せる"という発想の核心を、彼の言葉から掴めます。
このほか、熊本市の大西一史市長、肥後銀行の頭取、経団連会長、そして海外からはインド・アーンドラプラデーシュ州首相やアルメニアのCOP17交渉チーム長など、政策とビジネスの両面から多彩な顔ぶれが揃います。「今日はあの人を見た、話を聞いた」という記憶は、資料には残らない、あなただけの財産になります。
Day2(7月15日)を味わう
2日目は、「測る・つなぐ・実装する」がキーワードです。ネイチャーポジティブをどう測定し、どう国際的な枠組みを相互運用し、どう現場に実装するか——理念から実行へと議論が一段深まります。午後は分科会が最も豊かに花開く、選択の醍醐味に満ちた一日です。また、Nature Tech!会場は 9時30分~17時なので、早く行っても見ることができません。そして、セッションを見終わっているタイミングでは終わってしまっています。ぜひ各社の渾身のブースをお見逃しなく、ご注意ください。

午前 ―― 測定・相互運用性・イノベーション
2日目は朝8時00分から開場します。前夜に街を楽しんだ方も、この日は早起きが肝心です。
9:00-10:30 午前は「ネイチャーポジティブをどう測るか」というパネルで幕を開けます。成果を信頼性高く、かつ実用的に測定する手法・経験・教訓が共有されます。キリン、積水ハウス、地球観測政府間会合(GEO)、地球規模生物多様性情報機構(GBIF)などが登壇。続く「基準・測定・指針の枠組みにおける相互運用性」では、TNFD、資本連合、WBCSD、GRIといった主要フレームワーク策定機関の協働が語られます。乱立していた開示・測定の枠組みが収斂しつつある——その最前線を体感できる、実務者必聴のセッションです。
11:00-12:15 「ネイチャーポジティブとテクノロジー・イノベーション」では、自然に良い影響を与える活動を実施・測定・スケールさせるデジタルソリューションが探求されます。NEC、PwC、アレン人工知能研究所などが登壇。そして午前の締めくくりは、ポール・ポルマン氏(元ユニリーバCEO)と石井菜穂子氏(東京大学)を迎えたFireside Chat「政治的・経済的逆風の中で」。地政学的・経済的な逆風が、ネイチャーポジティブの歩みを鈍らせているのか、それとも方向を変えつつあるのか——現実を直視する骨太な対話が繰り広げられます。
正念場の一つ:ランチタイム
12:15-13:15は、ランチタイムなのに、サイドイベントの時間です。
2日目は、サイドイベントにも絶対参加しましょう。というより、ここがめちゃくちゃ面白い内容がなぜか同じ時間帯に・・・。一つだけ選ぶ必要があります!
さらに、危険なことに、このサミットでは、終了時刻と開始時刻が同じ時間に設定されています。つまり、移動の時間がない!のです。そして、会場は、混雑・・・。
狙い澄ましたイベントに参加しないと、ごちゃごちゃしている中に埋め込まれてしまうかもしれません・・・!お気をつけて・・・。
午後 ―― 分科会の饗宴
13:15以降、2日目の午後は、このサミットで最も分科会が充実する時間帯です。同じ時間枠に、驚くほど多彩なテーマが並走します。関心に応じて、いくつかを渡り歩くことになるでしょう。予定されている主なセッションを、テーマ別に見てみましょう。
〈自然とインフラ・都市〉
「自然はインフラになる ― Nature as Infrastructure の実装戦略」:オフィス、商業施設、工場、交通、流域、土地造成に、標準装備として自然を組み込む——その効果と国際普及への道筋を考えます。大林組、国土交通省、シティ・デベロップメンツらが登壇。筆者はここでモデレーターを務めさせていただきます!ぜひお越しください。
「ランドスケープ・シースケープにおけるネイチャーポジティブインフラ」:陸域・海域にわたり、企業・金融・自治体・地域社会を巻き込みながら"自然にプラスなインフラ"をどう実現するかを定義します。損保ジャパン、三井住友FG、大和ハウス、三井物産らが参加。
〈水・流域〉
「流域で進めるランドスケープ・アプローチ」:流域治水で希少種保全と減災を両立させ、金融機関に訴求する鍵を探ります。WWFジャパン、日本コカ・コーラ、東京海上、日本工営、九州大学らが登壇。
「ウォーター・スチュワードシップの実践」:開催地・熊本の事例を中心に、流域での企業協働を紹介。サントリー、ソニーセミコンダクタらが、自社操業を超えた流域レベルの協働を語ります。
〈食料・農業・海洋〉
「ネイチャーポジティブな食料システムへ」:再生型農業、水管理、ブルーエコノミー、金融、政策を通じ、自然の回復と食料生産・地域経済を両立する道を議論。農林中央金庫、農林水産省、世界経済フォーラムらが参加。
「海のネイチャーポジティブ」「オーシャン・ポジティブな経済と社会を目指して」:海洋分野で"自然プラス"の成果をどう達成するか。日本郵船、シーフードレガシー、タイ・ユニオン、ニッスイ、笹川平和財団らが登壇します。
〈測定・開示・ファイナンス〉
「自然の状態(State of Nature)パイロット事業から学ぶ」:農業・林業の先進企業が、自然の状態を評価する指標の試行導入を報告。
「ネイチャーフットプリント」:ライフサイクルを通じた生物多様性・生態系サービスへの影響を定量化する最新成果を、早稲田大学、環境省、産総研らが共有。
「10億ドルを自然へ:ゴム産業に学ぶ企業主導の保全ファイナンス」、「規制強まるバイオ燃料、気候変動と自然保全の両立」など、サプライチェーンと金融の最前線に踏み込むセッションも豊富です。
「ネイチャーポジティブを実装するビジネスモデル」:ランドスケープアプローチを軸に、企業が世界目標に実質貢献するためのロードマップを描くワークショップ形式。手を動かして学びたい方に。
渡り歩きの作戦:これだけ多いと、一つに絞りきれないのが正直なところです。おすすめは、「午後の前半でメインの関心テーマを腰を据えて聞き、後半は少し冒険して専門外に飛び込む」という二段構え。あるいは、開始5分で会場の熱量を見て、しっくりこなければ隣のRoomへ移る——国際会議では、この"セッション・ホッピング"はごく普通の振る舞いです。遠慮はいりません。

2日目に注目したい登壇者と、渡り歩きの心得
2日目には、初日とはまた違った顔ぶれが加わります。とりわけ話題を集めるのが、ポール・ポルマン氏の登場です。ユニリーバの元CEOとして、大企業でありながら持続可能性を経営の中心に据える「ネットポジティブ」経営を実践し、世界のビジネスリーダーの思考を変えた人物です。午前のFireside Chat「政治的・経済的逆風の中で」と、閉会での「熊本宣言」に登壇予定。逆風の時代にこそ、彼の現実主義的かつ楽観的な言葉に耳を傾ける価値があります。そのポルマン氏と対話するのが、石井菜穂子氏(東京大学 グローバル・コモンズ・センター ダイレクター)です。地球環境ファシリティ(GEF)のCEOを務めた国際派で、地球規模の「共有財(グローバル・コモンズ)」をどう守るかという壮大な視座から議論を導きます。日本発の思想を世界へ発信してきた第一人者の言葉は、日本の参加者にとって特別な励みになるでしょう。
測定・開示の分野では、ギャビン・エドワーズ氏(ネイチャーポジティブ・イニシアティブ エグゼクティブディレクター)が「どう測るか」「自然の状態」などのセッションを牽引します。フレームワークの相互運用性をめぐっては、TNFD、資本連合、WBCSD、GRIといった主要機関の代表が一堂に会し、乱立の時代から収斂の時代へと向かう転換点を、当事者の口から聞ける貴重な機会です。
2日目午後は分科会が最も充実する時間帯だけに、「渡り歩き」の技術がものを言います。あらかじめ第一希望・第二希望を決めておき、開始5分で会場の熱量や議論の方向を見極め、しっくりこなければ迷わず隣のRoomへ——この機動力が、限られた時間からの収穫を最大化します。すべてを聞こうと欲張るより、「これぞ」というセッションで深く学び、残りは軽やかに渡り歩く。そのメリハリこそが、充実の秘訣です。

夕方 ―― そして「熊本宣言」へ
16:45-18:45 2日目の夕方は、全体会議に再び合流します。「ランドスケープ・シースケープにおけるネイチャーポジティブインフラ」「海のネイチャーポジティブ」といったハイレベルパネルを経て、国連事務総長の海洋担当特使ピーター・トムソン氏(ビデオメッセージ)らが登壇するオーシャン・ポジティブのFireside Chatへ。
18:45-19:30 閉会 ―― 熊本宣言発表 そしてサミットは、「熊本宣言」の発表とともに幕を閉じます。2日間の主要なメッセージと成果が総括され、ネイチャーポジティブの国際的推進に向けた今後の方針と、次なるステップが示されます。ポール・ポルマン氏、CBD事務局長ショーメーカー氏、アルメニアのCOP17交渉チーム長マルガリャン氏、ランベルティーニ氏、道家氏らが、この歴史的な瞬間に立ち会います。ここで発せられる「熊本宣言」は、数か月後のCOP17へと引き継がれ、世界の議論を動かしていくことになります。
空き時間・前後泊で楽しむ熊本さんぽ
セッションの合間、あるいは前泊・後泊の時間に、少しだけ足を延ばしてみましょう。熊本の街には、ネイチャーポジティブのテーマとも響き合う、水と歴史と自然の風景が広がっています。徒歩圏から日帰りまで、時間別にご案内します。
徒歩圏 ―― 熊本城とその周辺(所要30分〜半日)
会場のすぐ隣が、日本三名城のひとつ熊本城です。加藤清正が築いた名城で、別名「銀杏城」。2016年の熊本地震で大きな被害を受けましたが、復旧が着実に進み、現在は多くのエリアを見学できます。南口から天守閣前広場へと続く、地上約6メートル・全長約350メートルの特別見学通路(空中回廊)からは、被災と復興の歩みをリアルタイムに感じられます。復旧工事期間中の今だからこそ見られる姿——これもまた、貴重な"体験"です。天守閣前広場から望む大・小天守の威容は、圧巻の一言。
城の周辺にも見どころが点在します。城のすぐそばの加藤神社は、清正公を祀り、天守を美しく望む撮影スポット。城のふもとの桜の馬場 城彩苑では、食べ歩きと歴史体験が同時に楽しめます。坪井川沿いの遊歩道長塀通りからは、日本一の長さを誇る現存城郭の塀(全長約242m)を眺められます。時間がなければ、熊本市役所14階の展望ロビーから城の全容を無料で見渡すのもおすすめ。会議の合間の30分でも、十分に熊本の歴史に触れられます。
どこで食べる? ―― エリア別ガイド
会場周辺には、目的に応じて選べる食のエリアが広がっています。
下通(しもとおり):会場から徒歩圏の、県内随一の繁華街アーケード。活気ある飲食店、居酒屋、土産店、ショッピングモールが集まり、いつも賑わっています。馬刺し、太平燕、熊本ラーメンの名店が集中しており、「とりあえず下通へ行けば何とかなる」という安心感があります。夜のはしご酒にも最適。
上通(かみとおり):下通の北側に続く、少し落ち着いた雰囲気のアーケード。おしゃれなカフェやレストラン、ギャラリー、書店が並び、文化的な散策も楽しめます。ゆっくり食事をしたい夜に。
銀座通り・新市街:下通の周辺に広がる飲食店街。馬肉専門店の姉妹店など、名店の派生店も多く、外国語対応のタブレット注文を導入した店もあるので、海外ゲストと一緒でも安心です。
桜の馬場 城彩苑(さくらのばば じょうさいえん):熊本城のふもと、江戸時代の城下町を再現した観光施設。「桜の小路」には熊本県下から選りすぐりの飲食・土産の店が軒を連ね、太平燕、あか牛、だご汁、いきなり団子まで、熊本名物を食べ歩きできます。昼のランチや、観光を兼ねた食事に打ってつけです。うにコロッケなどの名物も。
まずは押さえたい「熊本五大名物」
馬刺し(ばさし) 熊本といえば、まず馬刺しです。新鮮な馬肉の刺身は、生姜やニンニク、刻みネギといった薬味と、甘口の馬肉醤油でいただきます。「マグロと牛肉の中間のような、意外なほど食べやすい味」と表現されることが多く、馬肉に馴染みのない方でも驚くほどすんなり楽しめます。赤身のほか、霜降りの「フタゴエ」、たてがみの脂身「タテガミ」、炙った「馬タタキ」など、部位ごとの食べ比べも一興。専門店では、馬肉のユッケ、ステーキ、ホルモン焼き、燻製ベーコンといった創作料理も味わえます。
太平燕(タイピーエン) 知る人ぞ知る、熊本のソウルフードです。鶏ガラと豚骨でとったやさしいスープに、コシのある春雨(緑豆100%のものも)をたっぷり。炒めた海老やイカ、野菜が入り、特徴的な"揚げ卵(虎皮蛋=フーヒータン)"が乗ります。もともと中国・福建省由来の料理が熊本で独自に根づいたもので、「今や太平燕を日常的に食べられるのは熊本だけ」といわれるほどのご当地色。下通アーケードには1934年創業の老舗中華の名店があり、変わらぬ味を守り続けています。あっさりしていて胃にやさしく、飲んだ後の締めにも、軽いランチにも最適です。
あか牛(あかうし) 阿蘇の雄大な草原で育つ褐毛和種「あか牛」は、赤身の旨みが濃く、脂に頼らない滋味深い味わいが魅力です。溶岩焼きでシンプルに焼き上げたステーキ、あるいは丼に仕立てた「あか牛丼」が定番。城彩苑や下通周辺の専門店で、その実力を確かめてみてください。健康志向の方にも喜ばれる、熊本が誇るブランド牛です。
熊本ラーメン 博多の豚骨とはひと味違う、熊本ラーメン。とんこつベースのスープに、香ばしい焦がしニンニク油「マー油」が効いた、こっくり濃厚な一杯です。麺は中太のストレートが主流。具にはキクラゲやゆで卵が加わることが多く、博多にある紅生姜や替え玉の文化とは異なる、独自の完成度を誇ります。下通には移転を重ねながら愛される名店があり、深夜まで開いている店も。夜の締めに、ぜひ。
からし蓮根(からしれんこん) 蓮根の穴に、辛子を混ぜた味噌を詰めて衣をつけ、揚げた郷土料理。サクッとした衣、シャキシャキの蓮根、そしてツンと鼻に抜ける辛子——このコントラストが後を引きます。もとは細川家の殿様に献上された滋養食といわれ、由緒も立派。居酒屋の一品や、お土産としても人気です。
五大名物のほかにも、熊本には見逃せない味がたくさんあります。
だご汁(だごじる) 小麦粉を練った平たい「だご(団子)」を、根菜たっぷりの味噌仕立ての汁で煮込んだ、素朴で温かい郷土料理。鉄鍋で供される熱々の一杯は、心までほぐしてくれます。
いきなり団子 輪切りのサツマイモと餡を、モチモチの生地で包んで蒸した郷土菓子。素朴な甘さで、小腹満たしにも、お土産にも喜ばれます。城彩苑には専門店もあり、定番の黒餡のほか、さまざまなバリエーションが楽しめます。
一文字ぐるぐる(ひともじぐるぐる) 細ねぎ(一文字)を茹でて、くるくると巻き、酢味噌でいただく、酒の肴にぴったりの一品。見た目も愛らしく、会話のきっかけにもなります。
天草の海の幸 天草から届く新鮮な魚介も、熊本の楽しみのひとつ。100年以上続く老舗の寿司店もあり、地下水の国でありながら、豊かな海の恵みも同時に味わえるのが熊本の懐の深さです。地鶏「天草大王」のタタキも絶品です。
地酒・焼酎 清らかな水は、旨い酒を生みます。熊本は日本酒の吟醸酵母発祥の地としても知られ、上質な地酒がそろいます。九州らしく焼酎の品揃えも豊富で、100種類以上の焼酎を置く居酒屋も。桜町バスターミナルには県産の地酒を手頃に味わえる"0次会"にぴったりの立ち寄り処もあります。
お酒を飲まない方や、翌朝の早いプログラムに備えたい方も、心配は無用です。熊本には、太平燕やだご汁のような胃にやさしい郷土料理、いきなり団子のような素朴な甘味、そして何より飲んでも澄んだ地下水があります。夜の街をそぞろ歩きしながら、ソウルフードで静かに一日を締めくくる——そんな過ごし方も、また格別です。
タイプ別・2日間モデルプラン
「結局、自分はどう動けばいいのか」——ここまで読んで、そう思われた方のために、参加者のタイプ別に、2日間の過ごし方のモデルプランをご提案します。あくまで一例ですので、ご自身の関心や体力、招待状況に合わせて、自由にアレンジしてください。大切なのは、「全部を完璧にこなす」ことではなく、「自分にとって意味のある2日間を、意図をもってデザインする」ことです。

経営企画・サステナビリティ担当の方へ
Nature Positive Summitは、TNFDのState of Natureが公式発表されるイベントです。ですので、この界隈の情報が最も提供されます。ぜひ、最新の情報を得てください。
自社のネイチャーポジティブ戦略を前に進めたい方は、「経営の視座」と「実務のヒント」の両取りを狙いましょう。初日は、午前の全体会議で「社会・経済的意義」「企業の役割」を押さえ、経営が自然をどう位置づけているかの大局観を得ます。午後は「企業のネイチャーポジティブ戦略とは」でTNFDや先進企業の実装論を吸収し、夕方は「経営層が語るネイチャーポジティブ」で経営トップの生の言葉に触れます。2日目は、午前の「どう測るか」「相互運用性」で開示・測定の最新動向を掴み、午後は「ビジネスモデル」のワークショップで自社に持ち帰れる型を学ぶ——この流れなら、帰社後すぐに社内で共有できる骨太な学びが得られます。昼食や休憩では、同業他社の担当者と積極的に情報交換を。「御社はTNFD対応どう進めていますか?」の一言が、貴重なベンチマークになります。
金融・投資・保険の方へ
資本の流れを自然へ向ける当事者である金融関係の方は、初日午後の「金融の役割」を起点に据えましょう。夕方は「自然保護に向けた取り組みへの資金調達」か「自然資本をバランスシートに」で、投資可能な案件形成と国際ルール形成の最前線へ。2日目は「相互運用性」で開示基準の収斂を確認し、午後は「ネイチャーフットプリント」「ゴム産業の保全ファイナンス」「バイオ燃料と自然保全の両立」など、リスクと機会が交錯するサプライチェーン金融の実例に深く踏み込みます。夕方の「ネイチャーポジティブインフラ」では、メガバンクや保険大手のCSuO(最高サステナビリティ責任者)が登壇予定。彼らの問題意識を直接聞ける貴重な機会です。NATURE TECH!会場では、自然資本の可視化・評価ツールを提供するスタートアップとの対話も忘れずに。
自治体・行政の方へ
地域スケールで自然と向き合う自治体・行政の方は、「ランドスケープ」「流域」「地域協働」をキーワードに動きましょう。初日夕方の「ランドスケープやコミュニティを核としたアクション」は、熊本県知事も登壇予定の必見セッション。2日目午後は「スマート流域マネジメント」のサイドイベントがおすすめ。そのほか、「流域で進めるランドスケープ・アプローチ」「ウォーター・スチュワードシップの実践」で、開催地・熊本の官民協働の実例を学べます。
小生がモデレーターを務める「自然はインフラになる」では国土交通省の担当者やシンガポールのグリーンインフラのキーパーソンも登壇予定で、政策と現場をつなぐヒントが得られます。ぜひ!
何より、13日の上江津湖散策や16日のエクスカーションに参加すれば、"世界一の地下水都市"の現場を自分の目で確かめられます。他自治体の担当者との横のつながりも、この機会にぜひ広げてください。
研究者・技術者の方へ
科学と技術で自然再生を支える方は、「測定」「データ」「イノベーション」に照準を。2日目午前の「どう測るか」「技術・イノベーション」、午後の「State of Nature」「ネイチャーフットプリント」「欠けているピース(生態系データ)」は、いずれも測定科学の最前線です。GBIF、GEO、産総研、大学の研究者が登壇予定で、学術的な議論の密度も高め。そして何より、NATURE TECH!展示会は技術者にとっての宝の山です。eDNA、衛星リモートセンシング、AIによる生態系観測——開発者本人とじっくり語り合えるこの場を、両日とも時間をかけて回ることをおすすめします。技術シーズを社会実装につなげたいなら、「日本発ソリューション」「ビジネスモデル」のセッションで、事業化の視点も補いましょう。ANEMONE、Nature Footprint、そしてBiomeさんとのコラボレーションも必見です。

初参加・若手の方へ
初めての大型国際会議で、少し緊張している方へ。まずは肩の力を抜いてください。すべてを理解しようとしなくて大丈夫です。初日は、開会式とキーノートで全体像を掴むことだけに集中しましょう。ここで「ネイチャーポジティブとは何か」の土台ができれば、それだけで十分な収穫です。午後以降は、テーマの分かりやすいパネルを一つ二つ選んで聞き、疲れたらNATURE TECH!へ避難——このリズムで構いません。勇気を出してほしいのは、休憩時間の"隣の人への一言"です。「どのセッションが良かったですか?」——たったこれだけで、思いがけない出会いが生まれます。若手であることは、実はアドバンテージです。ベテランは、熱心に学ぶ若い人を応援したくなるもの。臆せず質問し、臆せず声をかけ、そして夜は同世代の参加者と熊本の街を楽しんでください。この2日間は、あなたのキャリアの財産になります。

むすびに ―― サミットを「体験」に変える
ここまで、プログラムの読み解き方から、会場の歩き方、熊本の食と風景まで、2日間を楽しみ尽くすためのあれこれをお届けしてきました。
最後にお伝えしたいのは、たったひとつのことです。それは、このサミットを「情報を受け取る場」ではなく、「自分の航海を始める場」として過ごしてほしい、ということです。
世界のリーダーが語るビジョンは、たしかに刺激的です。けれども、そのビジョンを本当に価値あるものに変えるのは、あなたがそこで何を感じ、誰と出会い、帰ってから何を始めるか——その一点にかかっています。湧水の流れる庭園を歩いて感じた"水の国"の実感。馬刺しをつつきながら交わした、業界を越えた本音の会話。閉会の「熊本宣言」に立ち会った、あの高揚。そうした一つひとつの"体験"こそが、数か月後のCOP17へ、そしてあなた自身の仕事へと、確かに引き継がれていきます。
「共に船出しよう」——これは、遠い誰かのスローガンではありません。この2日間を全力で楽しみ、味わい、つながったあなた自身が、ネイチャーポジティブな未来への航海の、かけがえのない乗組員なのです。
熊本での2日間が、皆さまにとって実り多く、そして心から楽しいものになりますように。よい航海を。
本ガイドは公開情報にもとづき、参加者の皆さまが2日間をより深く楽しむために作成した非公式の手引きです。プログラムの時間・会場・登壇者は予告なく変更される場合があります。当日は必ず公式サイトおよび会場の案内で最新情報をご確認ください。
