ランドスケープ・ベースド・ソリューション(LbS)とは何か?
「自然資本を活かしたビジネスに取り組みたいけれど、どこから始めればいい?」 そう考える経営者や自治体関係者が最近増えてきました。欧米ではすでに大きな市場となり、日本でも急拡大が予想される分野が 『ランドスケープ・ベースド・ソリューション(LbS)』 です。
1.ランドスケープ・ベースド・ソリューション(LbS)とは何か?
LBSとは、地域単位で複数の自然再生プロジェクトを束ね、社会的・経済的・環境的な課題を同時解決するアプローチです。 単一のプロジェクトよりも大規模な投資を呼び込みやすく、収益性も安定性も向上します。従来の環境プロジェクトは小規模・個別対応が多く、効果も限定的でしたが、LBSは流域や地域単位で複数の取り組みを束ねることで、大規模な資金を調達し、持続的な収益を実現します。
例を見てみましょう。
2.世界のLbS先進事例5選
① インドネシア:天然ゴムアグロフォレストリーで希少動物保護🐘
“緩衝帯+商業作物”モデル:88,000 ha の劣化地をアグロフォレストリー+保全緩衝帯へ転換。保全区域を守る代わりに商業林を造成する ツートラック配置 は、野生生物保全とキャッシュフローを両立しやすい。
規模:88,000ha
資金調達:TLFFが9,500万ドルの債券発行(BNPパリバ主導)
成果:ゾウ・トラなど希少動物の回廊を確保、地域に1.6万のグリーン雇用創出
② ガーナ:カカオ産業の副産物経済化(食品ロス→収益化)🍫
“フードロス解消×副産物経済”モデル:ココアベルト(約20,000 ha)で「果肉=廃棄物」を新たな副産物経済に。既存サプライチェーンに副次的な収益源を加えると、自然破壊のインセンティブを下げられる。
規模:約2万haのココア生産地
資金調達:Landscape Resilience Fundが350万ドルを投入
成果:1万人の農家収入が30~40%増、食品ロス40%削減、太陽光モバイル工場でCO₂排出を最小化
③ ブラジル:私有地をつなげる森林ネットワーク🌳🌳
“ネットワーク型支援”モデル:17州を跨ぐ私有地レストア(目標1500万ha)をネットワークで推進。地域水源回復・固有種回帰を確認。小規模土地所有者が主体の国では、技術・苗木・資金を共通プール化するとスケールしやすい。
規模:大西洋沿岸林(アトランティックフォレスト)1500万haを再生中
資金調達:州政府資金+企業オフセット+罰金基金を統合
成果:森林被覆率が地域で10~20%増加、生物多様性と水資源が回復
④ アフリカ(サヘル):巨大な緑の壁プロジェクト🌱
“カーボン先売り”モデル:11カ国にわたる乾燥帯で 1億ha の土地回復+アグロフォレストリー。女性主導の樹木栽培協同組合が多数誕生。景観レベルでクレジットを束ね、高品質基準を担保すれば VCMプレミアム を獲得しやすい。
規模:サハラ南縁11カ国で1億ha回復目標
資金調達:世界銀行・AfDB・炭素クレジット(28億ドル規模を見込む)
成果:女性中心の協同組合が多数誕生、1,000万の新規雇用創出を目指す
⑤ ベトナム:メコンデルタの気候適応型農業への転換🌾
“公共投資+炭素バイパス収益”モデル:気候スマート農法で生計多角化。13省を統合し、潮害農地→マングローブ・塩害稲作への転換。大規模インフラ資金に“ネイチャーポジティブ副産物”を組み込み、後からカーボン収益で穴埋めする手法。
規模:メコンデルタ13省で100万haの農地改革
資金調達:世界銀行が3.5億ドルを投入、後段は炭素クレジット販売予定
成果:高潮リスク15%低減、マングローブ再生によるCO₂吸収、生計向上
https://projects.worldbank.org/en/projects-operations/project-detail/P179572
3.5事例に共通する成功のカギは?
これらの事例に共通する鍵は 「複数の収益源をランドスケープ単位で束ねる」 ことです。
複数の収益源(炭素クレジット、副産物売却、公共投資)をランドスケープ単位でまとめる
Nature Positiveのインパクト(生物多様性や地域社会への便益)を明確に定量化・可視化
資金源を多様化して、大規模なインパクト投資を可能にする
読むと、「そうだよね」、と思うものの、ついつい、面倒くさがりそうな内容ですね・・。でも、LbSでは、これが、先にファイナンスを得るために必要な工程と考えるべきようです。
4.日本での検討に向けて
日本での「里山(SATOYAMA)」が地域内に閉じた自然資本の価値の利用(ローカルなバイオエコノミー)であることに対して、ランドスケープソリューションはこれらの自然資本やサステナビリティの価値を定量化し、ローンや投資につなげて社会のソリューションとしているところが異なります。
そこで、日本でLBSを設計する際も、
① 地域課題→ネイチャーポジティブ便益 を可視化し、
② 公的補助・民間投資・クレジット を階層的に組み合わせ、
③ デジタルMRVで透明性 を担保する
――という三段設計を踏襲すれば、海外並みの大型プロジェクトを十分狙えるのではないかと思えます。
日本でも、2025年以降、企業や自治体の自然資本・生物多様性への取り組み強化が推進されており、マップ化や連携も進んでいます。さらに、投資家も環境・社会インパクトに関心を持っており、資金調達の環境は整いつつあります。先行者は、市場のリーダーシップを取ることが可能です。投資家や自治体が安心できる成果のリアルタイム可視化は、日本でも例えば、以下のキーワードを織り込むることで、自分にふさわしいケースにおいて検討がはじめられるのではないでしょうか?
環境省 「自然共生サイト支援証明書」
農林水産省「みえるラベル」
国交省 流域治水、TSUNAGU ※グリーンインフラ事例
J-クレジット、Jブルークレジット(藻場・干潟再生など)
TNFDのレポートの開示数は、世界で日本がトップ。その次は、実践です。今、そうした日本の実践事例を世界が待ち望んでいるかもしれません。
以上、ランドスケープ・ベースド・ソリューション(LBS)で注目の海外事例5選🌳でした。「Nature Positive(自然再生)ビジネスは本当にスケールするの?」 「収益性は?実際に成功している事例を知りたい!」今回の記事では、そんな質問に応えるべく、世界で実践されている ランドスケープ・ベースド・ソリューション(LBS) の注目事例を整理してみました。
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