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ネイチャーポジティブ2026を、俯瞰する

 12月になりました。今年は、「ネイチャーポジティブ」分野がしっかりと立ち上がりつつあることを実感することができた1年でした。来年は、ネイチャーポジティブ経済が、「動き出した」と感じられる一年になるかなと予測します。来年のイメージをつけるために、来年のスケジュールと、各地域でのネイチャーポジティブでの動向を記事にしてみました。来年はどうなるのでしょうね?さて、今日も楽しんでいってくださいね!(イラストは、「ネイチャーポジティブ2026を、祝う」でGrokでの出力イメージより。)



2026年の頭に入れておきたい、スケジュール

 2026年は、ネイチャーポジティブが「気候変動」と「循環経済」と本格的に一本の線でつながり、資本市場と実業の両方で主戦場になっていく年です。規制、開示基準、投資マネーフローが、「気候だけ」から「気候+自然+循環」にシフトし始めるタイミングだと考えられます。

2026年1月:海のガバナンス元年とダボスでのアジェンダ設定

 1月は、海洋ガバナンスとグローバル経済が同時に「自然ポジティブ」に舵を切る月になります。

・1月17日:公海の生物多様性を保護する「BBNJ協定(いわゆるハイシーズ条約)」が正式に発効予定
 国連海洋法条約の下で、公海(各国の排他的経済水域の外側)の海洋生物多様性を保全・持続可能に利用するための初の包括的条約で、環境影響評価や海洋保護区指定のルールが国際法として動き始めます。海運・漁業・海洋資源開発・港湾など、海と関わるビジネスはBBNJ協定に沿ったリスク評価が今後求められる前提で、自社の海域フットプリントの棚卸しを始めるタイミングです。投資家・金融機関は「ブルーエコノミー(海洋関連の持続可能な経済)」をネイチャーポジティブ投資の有力分野として位置付け始めます。
衛星リモートセンシングや自律型ブイ等の海洋モニタリング技術は、今後のBBNJ履行を支える「インフラ」として注目されます。

・1月19〜23日:世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議2026、スイス・ダボス)
 2026年のテーマは「対話の精神(A Spirit of Dialogue)」で、
 自然破壊・気候変動・資源制約が10年スパンの経済リスク上位を占めるとの同フォーラムの分析と連動し、 「Financing the Nature Positive Transition」など、自然ポジティブ経済への移行をテーマにしたセッションが組み込まれる予定です。経済面では、ダボス会議の議論を通じて「自然ポジティブ投資」はメインストリーム入りします。

2026年2月:都市・地域発のネイチャーポジティブ実験が加速

 2月は、都市・地域レベルでの自然ポジティブ実装が目立つ月になります。

・2月14〜15日:Green Expo 2026(インド・デリー)
 都市緑化、自然を活かしたインフラ、再生型農業などをテーマにした見本市で、インド国内だけでなくアジアのスタートアップ、地方自治体、投資家が集まり、「自然をインフラとして組み込むビジネス」のショーケースになります。

・CBD(生物多様性条約)関連:合成生物学に関するオンラインフォーラム(2月、予定)
 合成生物学と自然保全の関係を議論するオンライン会合が予定されており、遺伝子編集や合成バイオ素材を扱う企業にとっては、将来の規制方向性を占う場になります。都市・地域の自然ポジティブ戦略(ネイチャーベースドソリューション、グリーンインフラなど)と、自社の事業立地との整合を確認する時期です。都市開発、不動産、インフラ企業にとっては「自然を織り込んだプロジェクト・ファイナンス」の案件化が本格的に進む入り口になります。

社会・市場面では、持続可能な包装やフードシステムに関する意識がさらに高まり、持続可能な商品に平均9.7%の価格プレミアムを払ってもよいと回答する消費者が世界平均で示されています。合成生物学やバイオマテリアルを扱う場合、CBDでの議論を踏まえ「リスク最小化+自然貢献」を示せる技術ロードマップを整理しておく必要があります。

2026年4月:農業・食品バリューチェーンの大きな転換点

 4月末には、農業・食料システムに特化した「自然×技術×収益性」を議論する場が予定されています。

・4月28日:The Productive Landscape: NatureTech for Profit and Planet(英国)
 農業・土地利用をテーマに、収益性と自然再生を両立させる「ランドスケープ・ファイナンス」「農業ネイチャーテック」が議論されます。(Agri-TechE)

・EU森林破壊規制(EUDR)への備え
 EUの森林破壊規制は、2025年の議論を経て、大企業・大規模トレーダーへの義務開始が2026年12月30日に1年延期されましたが、
 それまでに地理情報(ジオロケーション)付きトレーサビリティとリスク評価体制を整える必要があります。2025年に発表された「Nature Credits Roadmap(EU自然クレジット・ロードマップ)」では、2025〜2026年にEU域内の自然クレジットの需給・市場動向の評価を行うことが示されています。そのため、2026年前半は農業・林業・土地保有者と企業・投資家の間で「ボランタリーな自然クレジット」の試験的な案件検討が進むと考えられます。
 大豆、牛肉、パーム油、コーヒー、ココア、ゴム、木材などEUDR対象コモディティを扱う企業は、遅くともここまでに2026年12月の義務開始から逆算したロードマップを社内合意しておく必要があります。サプライチェーンの森林破壊リスクを把握するため、衛星データ、ブロックチェーン、地理情報システムを組み合わせたソリューションの導入検討が加速します。

2026年5月:合成生物学のルール形成が進む

5月は、技術とルール形成が近づく月です。

5月19〜22日(予定):合成生物学専門家会合(CBD)
 合成生物学に関する技術専門家グループ会合が予定されており、
 今後の規制・ガイドラインの方向性が議論されます。

ネイチャー・テック(自然計測・自然再生テクノロジー)の普及
 2025年に開催された「Nature Tech Week」以降、バイオアコースティクス(音での生物多様性モニタリング)、環境DNA(eDNA)解析、自然関連リスクを評価する人工知能ツールなどが実用段階に入り、2026年はそれらの「スケールアップ案件」の資金調達が増えると見込まれています。自社の生物多様性インパクト計測に関して、「実証レベル」から「グループ全体での標準ツール」に格上げする検討を開始するのに適したタイミングです。技術だけではなく、地域コミュニティや先住民とのパートナーシップ設計も同時に進めることで、「テック主導の押し付け」という批判を避けやすくなります。

2026年6月:海と山から「自然ポジティブ」の国際議論が集中

 6月は、海洋と山岳の両方で、自然ポジティブに関する重要な国際会議が集中します。

・6月3〜4日:Island States Ocean Summit(場所:島嶼国、海洋のレジリエンスがテーマ)
 島嶼国を中心に、海洋ガバナンスの強化(BBNJ協定、海洋保護区、プラスチック条約交渉など)と
 気候・自然レジリエンスの投資機会が議論される予定です。

・6月14〜19日:World Biodiversity Forum 2026(スイス・ダボス)
 科学者、政策担当者、企業、投資家が集まる生物多様性の国際会議で、
 2026年10月のCOP17とその「グローバル・バイオダイバーシティ・ストックテイク(世界の生物多様性の進捗評価)」に向け、
 最新の科学と政策・ビジネスのギャップが整理されます。

2026年7月:グローバル・ネイチャーポジティブ・サミットとCOP17準備の本格化

 7月は、「政治・科学・ビジネス」が一気にCOP17モードに入る月です。

・7月14〜15日:第2回グローバル・ネイチャーポジティブ・サミット(日本・熊本)
 2024年にオーストラリアで開催された第1回サミットに続き、2026年は熊本で第2回サミットが開催予定です。各国政府、企業、金融機関、市民社会が集い、「自然ポジティブ経済への移行加速」をテーマに政策・投資・企業行動のギャップを詰める場になります。

・7月27日〜8月1日:生物多様性条約補助機関(SBSTTA-28)
 COP17に向けた科学技術的助言をとりまとめる会合で、森林、海洋、農地、都市など各分野での科学的知見が整理されます。

2026年8月:実施メカニズムと資金動員の議論が詰まる月

 8月前半は、COP17での「実施と資金」の骨格を決める重要な会合が続きます。

・8月4〜12日:生物多様性条約実施補助機関(SBI-7)
 各国の国家生物多様性戦略・行動計画(NBSAP)や資金動員計画の進捗がレビューされ、COP17での「グローバル・バイオダイバーシティ・ストックテイク」の土台が固められます。)

2026年10月 最大の山場

10月は、2026年の「山場」です。

・10月19〜30日:生物多様性条約第17回締約国会合(CBD COP17、アルメニア・エレバン)
 Kunming–Montreal生物多様性枠組みの下で初めての「グローバル・バイオダイバーシティ・ストックテイク」が実施され、各国の進捗不足や資金ギャップが公式に評価されます。

・同時期:ISSBによる「自然関連情報開示」のエクスポージャードラフト公表見込み
 ISSBは、TNFDのフレームワークをベースにした自然関連の開示要件について、COP17までにエクスポージャードラフトを公表する方針を示しています。このドラフトは、そのまま各国の証券規制や会計基準に取り込まれていく可能性が高く、「気候(TCFD/ISSB)+自然(TNFD/ISSB)」の統合開示が世界の標準になる始まりと見込まれます。

この月を境に、「自然は任意のESGテーマ」から「財務報告に統合される主流テーマ」に変わっていきます。

2026年11月:気候COP31と海洋生物多様性会議が集中

10月のCOP17に続き、11月は気候と海洋に関する会議が続きます。

・11月:国連気候変動枠組み条約第31回締約国会議(COP31、トルコ・アンタルヤ)
 2026年の気候会議はトルコ・アンタルヤで開催予定で、アマゾンで開催されたCOP30の合意を踏まえ、森林・土地利用・自然ベースの気候解決策が引き続き主要テーマとなる見込みです。気候COP31では、森林や土地利用に関する気候目標が、生物多様性目標とどのように整合するかが議論されます。

・11月17〜20日:World Conference on Marine Biodiversity 2026(ベルギー・ブルージュ)
 研究者、政策担当者、企業が集まり、海洋保護区、海洋遺伝資源、ブルーエコノミー投資などを議論する国際会議です。企業としても、森林・土地利用・海洋を含めた「統合トランジションプラン」を投資家に示すことが強く期待されるようになります。

2026年12月:EU森林破壊規制の本格施行と「ネイチャーポジティブ実装フェーズ」への移行

年末の12月は、規制面での大きな「締め」がある月です。

・12月30日:EU森林破壊規制(EUDR) 大規模オペレーター・トレーダーへの義務適用開始
 欧州議会は2025年11月に、企業に1年の猶予を与える形でEUDRの適用開始日を2026年12月30日に延期することを承認しました。
 カカオ、コーヒー、牛肉、パーム油、ゴム、大豆、木材を含むサプライチェーンに対し、森林破壊と紐づかないことのデューディリジェンスと、地理座標に基づくトレーサビリティが法的義務になります。マイクロ・中小企業については2027年半ばまで猶予がありますが、
 大企業が取引条件として同等の情報を求める可能性が高く、実質的には2026年から対応が必要になります。
 2026年中に、EUDR対応をきっかけとして、森林破壊だけでなく水・土壌・生物多様性まで含めたサプライチェーン全体の自然影響・依存のマッピングと、自然ポジティブ調達のKPI設定を完了しておくことが現実的な目標になります。


お勧めイベントランキングTop7

第1位:生物多様性条約 第17回締約国会議(CBD COP17)〈アルメニア・エレバン|2026年10月19〜30日〉

 まず、なんといっても最初に検討すべきは、CBD COP17ですよね!
アルメニア政府は、「気候変動と生物多様性損失という二つの危機を同時に扱う節目の会議にしたい」と掲げており、気候関連の取り組みとの政策連携を強く打ち出しています。クンミン・モントリオール生物多様性枠組の進捗が初めて本格的に「採点」される。各国の規制当局や証券監督当局が、それを自国規制にどう取り込むかの方向性を示し始める点で注目です。

第2位:第2回 グローバル・ネイチャーポジティブ・サミット 2026〈日本・熊本市|2026年7月14〜15日〉

 次に挙げたいのが、日本で開催される「グローバル・ネイチャーポジティブ・サミット」です。国際的な連合体であるネイチャーポジティブ・イニシアチブと、日本の自治体や市民社会組織が連携し、2026年7月14〜15日に熊本市で第2回サミットを実施すると発表しています。このサミットは、2022年に合意された生物多様性のグローバル枠組の実装を加速し、特に企業・金融機関・自治体の役割を「見える化」することを目的にした場とされています。熊本サミットの真価は、「COP17の前哨戦」であることにあります。
・TNFDを採用した企業や金融機関が、自らのネイチャーポジティブ戦略を世界にプレゼンテーションする
・流域単位や都市単位の自然資本を再生するプロジェクトが、投資案件として組成され始める
・「日本発のネイチャーポジティブ都市モデル」や「流域再生ファイナンス」が具体的な姿を持ち始める

第3位:ワールド・バイオダイバーシティ・フォーラム 2026(World Biodiversity Forum 2026)
〈スイス・ダボス|2026年6月14〜19日〉

 ワールド・バイオダイバーシティ・フォーラム(World Biodiversity Forum、略称WBF)は、科学・政策・ビジネス・アートを横断して生物多様性を議論する場として、近年存在感を急速に高めている国際会議です。その第4回となるフォーラムが、2026年6月14〜19日にスイス・ダボスで開催されることが公式サイトで発表されています。テーマは「Leading Transformation Together(ともに変革をリードする)」です。COPなどの政府間交渉と違い、WBFはあくまで「科学と実務をつなぐ場」です。

第4位 ワールド・サーキュラー・エコノミー・フォーラム 2026(World Circular Economy Forum 2026)〈インド・ニューデリー|2026年秋〉

 世界循環経済フォーラム(World Circular Economy Forum、略称WCEF)は、資源循環と気候・生物多様性をつなぐハブとなっている国際フォーラムです。サーキュラーエコノミーは、資源使用量と廃棄物の削減だけでなく、生物多様性と気候への負荷を同時に減らすための「経済デザイン」の話です。インドでの開催ということは、今後のグローバル・サプライチェーンの中核を担うアジア市場で、「最初から循環型かつネイチャーポジティブな産業構造をどう設計するか」を議論する場になる可能性が高いと考えられます。

第5位 Regenerative Agriculture 2026
〈アメリカ・ロサンゼルス|2026年4月13〜14日〉

「Regenerative Agriculture 2026」は、再生型農業をテーマにした国際カンファレンスで、2026年4月13〜14日にアメリカ・ロサンゼルスで開催されると公式サイトで案内されています。説明によると、土壌の健康、土地生産性、食料システムのレジリエンスを高めるために、アグリテック、投資、政策の観点から、再生型農業・炭素削減・生物多様性回復の実務的な解決策を議論する場と位置付けられています。このカンファレンスでは、農家、フードブランド、スタートアップ、投資家が一堂に会します。例えば、自社の主力製品の原料を「再生型農業からの調達」に切り替えたい企業にとっては、ここで得られる実務知見が、サプライヤーとの交渉や社内投資判断の根拠になっていくはずです。

第6位 Bio360 Europe 2026(Bio360 Expo 2026)〈フランス・ナント|2026年2月11〜12日〉

Bio360 Europe 2026(Bio360 Expo 2026)は、バイオエネルギーとバイオエコノミーに特化した見本市兼カンファレンスで、2026年2月11〜12日にフランス・ナントで開催されます。複数の公式案内で、日程と場所が確認できます。イベント紹介では、固体・液体・気体のバイオエネルギー、バイオマテリアル、バイオチャー、二酸化炭素の回収・利用・貯留などを横断し、「ビオトランジション(バイオを起点とした移行)」を加速する場だと位置付けられています。

第7位 世界海洋生物多様性会議 2026 (World Conference on Marine Biodiversity 2026、WCMB 2026)〈ベルギー・ブルージュ|2026年11月17〜20日〉

 世界海洋生物多様性会議(World Conference on Marine Biodiversity、略称WCMB)の第7回会議が、2026年11月17〜20日にベルギーのブルージュで開催されることが、公式サイトおよび複数の関連機関から公表されています。会場はブルージュのコンサートホールで、国連「海洋科学の10年」イニシアティブの一環として位置付けられています。(

・ブルーカーボン(海草藻場、マングローブ、湿地など)
・海洋保護区の設計とガバナンス
・水産・養殖と生物多様性保全の両立
・オフショアエネルギーや海運と海洋生態系の関係


地域別では、どんな動きか?

欧州:規制の「緩和・遅延」込みでも、なお基準市場

 欧州は、企業サステナビリティ報告指令や自然復元法、森林破壊規制など、ルール面では最も先行している地域です。ただし、実際の施行スケジュールや対象範囲は、2023〜2025年にかけて調整・遅延が続いており、時間軸の読みが難しくなっている側面もあります。ところが、その後の経緯はかなり揺れています。主な動きは次の通りでした。

  • 2025年4月:「ストップ・ザ・クロック」指令

  • 2025年7月:ESRSの「簡素化案」公開

  • 非EU企業向けESRSの大幅遅延

  • 企業サステナビリティ・デューディリジェンス指令(CSDDD)の水準引き下げ

  • 2025年の「オムニバス提案」

 同時に、農業規制への反発やグリーンディール見直し論も高まり、いわゆる「ESGバックラッシュ」が欧州にも広がっています。ただし、実際の施行スケジュールや対象範囲は、2023〜2025年にかけて調整・遅延が続いており、時間軸の読みが難しくなっている側面もあります。大企業や金融機関の自主的な自然・気候目標を踏まえると、中長期的なトレンドは変わっていないと見ておきます。CSRDの中核(大企業の詳細なサステナビリティ報告義務)は既に発効し、第1波の企業は2024年度から報告を開始していますし、非EU企業向けESRSは遅れたものの、「遅らせるが、やめるとは言っていない」ですし。
欧州の2026年の地域全体の2026年市場感:年0.7〜0.8兆ドル程度、チャンスをセクター別に見ると、その相当部分が「規制対応」「報告・デュー・ディリジェンス」「自然復元法・森林破壊規制対応」などに紐づくと考えられます。リスクとリターンの観点では、都市・インフラと、金融・データ・サービス。

食料・土地・海洋
・森林破壊のないサプライチェーン、農業の生物多様性配慮、持続可能な水産物の調達などが、規制と市場の両方から要求されています。
・ただし、規制の施行が段階的に遅れているため、2026年時点での支出は「急増」ではなく「なだらかな増加」になる可能性が高いと見ています。
・欧州0.75兆ドルのうち、およそ3割前後(0.2兆ドル強)がこの領域。

インフラ・建築・都市
・自然復元法を支えるプロジェクト、グリーンインフラ、都市のブルーグリーン化は、欧州が世界で最も厚みのある市場の一つです。(ICLEI)
・洪水や熱波への適応という観点からも、後戻りしにくい投資と考えます。
・2026年時点で、欧州の中では最も厚く、3〜4割(0.25〜0.3兆ドル)程度を占めると読むのが妥当だと感じます。

エネルギー・資源
・再生可能エネルギーや素材産業における自然影響評価・回復プロジェクトが中心です。
・炭素価格やエネルギー安全保障の議論と絡みながら進むため、案件ごとに魅力度が大きく異なります。
・欧州全体の2〜3割(0.15〜0.2兆ドル)程度の厚みがあると考えます。

金融・データ・クレジット
・自然関連の開示、リスク評価、インパクト計測などを担うプレーヤーが多く、ネイチャーポジティブの「ルールとツール」の輸出拠点としての役割が強まっています。
・単独での市場規模を推計するのは難しいですが、欧州全体の実体経済市場の5〜10%程度のフィー・マージンを取り得るポジション、と捉えるとイメージしやすいと思います。

北米:反ESGの「表」と、実務としての自然リスク管理の「裏」

 北米、とくに米国では、洪水・山火事・ハリケーンなどの自然災害による損失額や保険料の高騰という「実需」は非常に強く、レジリエンス投資として自然ベースのインフラや保険商品のニーズは高まっています。地域全体の2026年市場感:年0.7〜0.8兆ドル程度。

食料・土地・海洋
・干ばつ、洪水、山火事などの物理的リスクを背景に、土壌保全、水管理、森林管理などの需要は確実に増えています。(buildingsandcities.org)
・再生型農業や自然ベースの保険商品など、民間主導のソリューションも増加傾向にあります。
・北米0.75兆ドルのうち、2〜3割(0.15〜0.2兆ドル)程度の市場感があると見ています。

インフラ・建築・都市
・沿岸都市の洪水対策、都市熱島対策、自然を活かした防災インフラなどが中心です。(Climate Resilience Center)
・連邦・州・自治体の公共投資と、保険・再保険によるリスクマネーの両方が関与するため、案件の組成余地は大きいと感じます。
・2026年時点で、2〜3割(0.2兆ドル弱)の厚みイメージです。

エネルギー・資源
・油ガスと再生可能エネルギーが併存するなかで、
 採掘後の土地回復や、自然影響を抑えた新規プロジェクトへの投資が、少しずつ出てきています。(bsr.org)
・気候政策やエネルギー政策の揺れがあるため、案件選別は慎重さが必要ですが、長期的には大きなテーマです。

金融・データ・クレジット
・衛星データや人工知能を活用した自然リスク評価、保険商品、自然ベースのソリューションへのプロジェクトファイナンスなどが成長しています。
・「ESGファンド」ではなく、「リスク管理」「レジリエンス投資」として商品設計することが、2026年の北米市場では重要になると考えます。

2026年にリスクとリターンが噛み合いやすいのは、次の領域です。

・自然ベース防災インフラ:水害・山火事・沿岸侵食に対するグリーンインフラは、保険会社・自治体・連邦政府の利害が一致しやすく、政治的イデオロギー対立の影響を受けにくい実需ゾーンです。

・保険・データ・分析サービス:自然災害リスクのモデル化、パラメトリック保険、衛星データを使ったモニタリングなどは、保険料設定や再保険の判断に直結するため、ESGという言葉抜きでも拡大していく領域です。

・再生型農業・土壌炭素・林業:長期の成長ポテンシャルが大きい一方で、政策変更やクレジット市場の価格変動に左右されやすい「グロースゾーン」として捉えるのが適切だと思います。

新興アジア(中国・ASEAN・インド等):規制ノイズに左右されにくい「本丸」

 アジア太平洋は、自然ポジティブ経済への移行により、4.3兆ドルのビジネス機会と2.3億人の雇用が生まれ得るとされています。地域全体の2026年市場感:年1.2兆ドル前後のネイチャーポジティブ関連ビジネスが、立ち上がっていてもおかしくない規模。2030年の4.3兆ドルポテンシャルを考えると、2026年時点で3割程度が形になっている、というイメージです。

食料・土地・海洋
・この地域は、世界の食料・水産・森林生産の中心であり、同時に自然災害と気候変動の被害が大きい地域です。(ADB)
・再生型農業、持続可能な養殖、森林の保全と再生、マングローブなど沿岸生態系の保全を通じた防災は、経済合理性の高いテーマになりつつあります。
・2026年時点で、アジア太平洋1.2兆ドルのうち、4〜5割(0.5兆ドル前後)がこの領域にかかってくるイメージです。

インフラ・建築・都市
・メガシティの洪水・熱波対策、水インフラ更新、廃棄物・汚染対策など、自然を活かしたインフラ需要は非常に大きいです。
・グリーンビルディングやブルーグリーンインフラ(雨水管理と緑化を組み合わせた都市設計)などが、徐々に主流化しつつあります。
・2026年時点で、地域全体の2〜3割(0.3兆ドル前後)を担うイメージです。

エネルギー・資源
・再生可能エネルギー設備の立地選定や建設における自然影響の最小化、鉱山・採石の復元、素材産業の循環化などがテーマです。
・中国、インド、東南アジアでの大型プロジェクトが多く、ネイチャーポジティブを組み込むことで、許認可やファイナンスの条件に差が出始めています。
・2026年時点では、2〜3割(0.3〜0.4兆ドル)程度がこの領域とみるのが自然だと思います。

横串としての金融・データ
・シンガポール、東京、香港などが、自然関連データや自然クレジットのハブを狙う動きを強めています。
・上記3セクターに対するプロジェクトファイナンスやグリーンボンド、保険商品などを通じて、数百億ドル規模のフィー・マージン市場が立ち上がりつつあると見るのが妥当だと感じます。

 「農業・水産・森林+都市インフラ」を軸に、エネルギー・資源の自然影響低減案件をポートフォリオに加えるイメージが、2026年のアジア戦略として現実的だと考えます。

ラテンアメリカ・アフリカ:「必要投資」

 ラテンアメリカとアフリカは、自然投資機会の90%が開発途上国にある一方で、現在そこに流れている自然金融は全体の約2割に過ぎないという「ギャップの大きさ」が特徴の地域です。自然を活かした水セキュリティ投資だけ見ても、ラテンアメリカ:年3.9億ドル、アフリカ:年2.61億ドルと、現状の投資額はきわめて小さい水準にとどまっています。ラテンアメリカは、アマゾンをはじめとする森林や農業が圧倒的な自然資本を持つ地域です。ここで最も大きなビジネス機会があるのは、森林再生、アグロフォレストリー、持続可能な畜産などが自然ポジティブ×カーボン・自然クレジットとして注目されています。アフリカ・中東は、草地・サバンナ・森林・沿岸域など、多様な自然資本を持ちながら、
小規模農家支援や土地回復の案件がネイチャーポジティブかつ気候適応として重要であり、干ばつ・砂漠化対策を含めて、社会インパクトが非常に大きなゾーンです。市場規模はまだ数百万〜数千万ドル単位と見られ、2030年にかけて成長が期待される「実験フェーズ」。案件ごとのリスク・リターンのばらつきが非常に大きい地域です。

食料・土地・海洋
・アマゾンやコンゴ盆地など、世界最大級の森林と、豊かな海洋・沿岸生態系を抱えています。
・森林保全・再生、持続可能な農業・牧畜、ブルーエコノミーなどは、インパクトの面では最前線です。
・一方で、土地権利やガバナンス、政治リスクをどう扱うかが最大の論点になります。

インフラ・建築・都市
・自然を活かした水・電力・交通インフラのニーズは高いものの、
 制度や資金調達の制約から、案件形成に時間がかかる傾向があります。

エネルギー・資源
・鉱山、油ガス、再生可能エネルギーが混在する地域であり、
 「採掘→復元」や地域コミュニティとのパートナーシップの質が問われます。

金融・データ・クレジット
・生物多様性クレジットや自然関連債務スワップなど、新しい仕組みが試されている地域です。



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