ネイチャーポジティブで祝う、鹿島アントラーズのJ1優勝!~ずっと同じ夢を
先週末、明治安田J1リーグ最終節で鹿島アントラーズは横浜F・マリノスに2-1で勝利し、勝点76で9年ぶり9度目のリーグ優勝を決めました。2025年のJ1優勝、おめでとうございます!
僕は、千葉県柏市にも住んでいたこともあり、柏レイソルにもゆかりがあるため、鹿島アントラーズと柏レイソルのデッドヒートは、熱い思いで見守っていました。
今日は、鹿島アントラーズが実現できるネイチャーポジティブを、かなり踏み込んで描くという、形で、優勝をお祝い?!してみようと思います。
今日も、楽しんでいってくださいね!

1. 鹿島アントラーズとサステナビリティ
鹿島はサステナビリティ方針「ずっと同じ夢を」を掲げ、「未来の世代が安心してサッカーを楽しめる環境を守る」という考え方を示しています。さらに、Planet(地球)/Family(地域・パートナー)/Spirit(哲学・ガバナンス)という3本柱と、資源循環・水資源・自然と生態系・調達など7つの重要テーマを掲げています(Antlers)。鹿島アントラーズはクラブのサステナビリティを「競争力を高めるための中長期的な経営方針」と位置づけています。
Planet(地球):クラブ活動による環境負荷を最小化し、気候変動に適応した競技環境を守る
Family(地域・パートナー):地域社会やパートナー企業と連携し、地域課題の解決と持続的発展をめざす
Spirit(哲学・ガバナンス):教育や情報発信を通じて、サステナビリティへの関心と行動を広げる
ブランド価値を分析するBrand Financeのレポートでは、アントラーズはブランド強度指数(BSI)でトップとなり、クラブ運営の良さと熱心なファンを持つクラブとして評価されています。そして、アントラーズが環境サステナビリティの取り組みでJリーグクラブの先頭に立っており、その理由としてホームスタジアムでのペットボトルのクローズドループ(ボトルtoボトル)リサイクルが挙げられています。(Brand Finance)
Jリーグは、「環境は競技の前提」と言い始めており、サッカーを支えるものとして「健全な自然環境」としています。 さらにJリーグは、スポーツポジティブリーグ(Sport Positive League)への参画を決め、2030年までにリーグ全体の二酸化炭素排出量を50%削減する目標を掲げています。 (〖公式〗Jリーグ公式サイト(J.LEAGUE.jp))
スポーツポジティブリーグでは、政策・クリーンエネルギー・エネルギー効率・持続可能な移動・使い捨てプラスチック削減・廃棄物管理・水利用・植物性/低炭素食品・生物多様性・教育・コミュニケーション・持続可能な調達、といった12領域で取り組みを可視化するとされています。 要点は「環境“っぽい”活動」ではなく、クラブ経営の骨格を丸ごと評価対象にしている点です。
2. すでに動き出している「サーキュラー」アクション
鹿島のホームタウンは鹿嶋市、潮来市、神栖市、行方市、鉾田市の鹿行5市です。現在、この中心にあるのが、鹿島アントラーズです。アントラーズは、「サッカークラブ」であると同時に、「持続可能な地域・地球」をつくるリーダーシップの情熱をもって、「鹿嶋市の環境・地域戦略のハブ」としての性格を持ち始めています。実際に、アントラーズは、スタジアムや活動を通して、こんな取り組みをしてきています。
スタジアムは約4万人収容の専用球技場で、地域防災拠点や観光資源としても機能しています。鹿島スタジアムは2006年に「日本初の再生可能エネルギー100%によるサッカーの試合」を開催した実績があり、早くから気候変動に対する実験場になってきました。移動についても、ファン・選手・スタッフの移動データを把握し、公共交通・相乗り・電気バスなどへの転換を進める方針とコミットメントを公表しており、クラブとしてScope3の排出削減に踏み込んでいる点が特徴的です。(Antlers)
さらに、クラブの資源循環ポリシーでは、スタジアムやクラブハウスで発生する廃棄物について、徹底した分別・回収と素材別のリサイクルルート整備、使い捨てプラスチックの廃止、生分解性素材への転換を明示しています(Antlers)。具体の動きとしては、たとえばスタジアムの飲料用コップを、全25店舗で従来のプラスチックから紙に変更し、回収した紙コップをトイレットペーパーや段ボールにリサイクルしていく計画が公表されています。
この方針に沿って、パートナー企業と組んだ具体的な施策も進んでいます。たとえば化学メーカーのカネカとは、「Green Planet(グリーンプラネット)」という100%植物由来の生分解性ポリマーを用いた紙コップ・ストロー・カトラリーなどをスタジアムで導入し、それをコンポスターに投入して堆肥化し、スタジアムの植栽や花壇に戻すという実証を行っています(株式会社カネカ)。これは、試合当日に使い捨てられるはずだった食器が、数ヶ月後にはスタジアムの緑を育てる土として戻ってくるという、小さくも象徴的かつ、スタジアム来訪者が体験ができる、サーキュラーエコノミーです。また、アントラーズは、ホームスタジアムでのペットボトルのクローズドループ(ボトルtoボトル)リサイクルに加えて、2025シーズンのNIKE製ユニフォームは、100%リサイクルポリエステルを使用し、ナイキの「Move to Zero」方針(廃棄物と二酸化炭素排出ゼロを目指す取り組み)に沿った設計になっています。さらにメルカリとの協働では、クラブ30周年の巨大バナーを廃棄せず、日用品やグッズにアップサイクルするプロジェクトを実施し、「廃棄物を新たな価値に変える」循環のストーリーをつくっています(メルカリについて)。もう一つ象徴的なのが、「Fry to Fly Project」への参加です。アントラーズは、スタジアムやクラブ施設で出る使用済み食用油を回収し、それを原料にサステナブル航空燃料(Sustainable Aviation Fuel)をつくるプロジェクトに参画しています。このプロジェクトにプロスポーツクラブが参加するのは初めてとされており、使い終えた油が空の脱炭素に貢献する循環を生み出しています。
また、メルカリスタジアムの駐車場に、地元で生まれたクリーン電力の活用を前提にした電気自動車の充電器を整備し、試合がない日にも地域が使える充電ステーションとして位置づける方針が示されています(24口、6kW、料金等の条件も明記)。 これは「スタジアムを地域のエネルギーハブにする」という発想で、環境と地域利便を同時に取りにいくタイプの施策です。
3. 鹿島アントラーズと「ネイチャーポジティブ」
次に、もう一歩踏み込んで「ネイチャーポジティブ」との接続を考えます。ネイチャーポジティブとは、ごく簡単に言えば「自然資本(生態系や生物多様性)の損失を止め、回復させる方向に経済を転換する」という発想です。クラブの7つの重要テーマの中には「水資源」「自然と生態系」が明確に位置づけられており、スタジアムや練習場での水使用の最適化、地下水の活用、日常的な水の大切さに関する啓発などが方針として示されています。
ちょっとだけ妄想を膨らませてみます。
3-1. ファン・サポーターとの価値循環から、スタジアムを「循環する小さな都市」にする
サーキュラーエコノミーの観点から見ると、鹿島アントラーズは、
古いレプリカユニフォーム
応援グッズ
タオルマフラー
など、非常に感情価値の高いモノの循環を扱える、存在です。
スタジアムという空間は、資源・エネルギー・水が集中して出入りする「都市の縮図」です。ここで循環デザインを極めることは、そのままネイチャーポジティブの実験場にもなります。アントラーズはすでに資源循環の方針を掲げていますが、スタジアム全体をさらに「小さなネイチャーポジティブ都市」として、以下のように設計し直すことができるかもしれません。
自然と資源の「棚卸し」を行い、何に依存し(例:水、芝、食材、電力)、何に影響しているか(例:廃棄物、排水、移動)を整理します。
「移動」をクラブの最重要テーマに格上げします
鹿島自身も、メルカリスタジアムは自家用車利用が多く環境負荷が高いと認識しています。 (Antlers) ならば、試合日だけでなく平日も含め、公共交通・相乗り・自転車・徒歩を選びやすくする設計(導線、情報、特典、渋滞対策)を、自治体とセットで組みます。スタジアムを「循環の実験場」に固定します。紙コップのように、容器を変え、回収し、再資源化の出口まで設計する。次は食べ残し、段ボール、ユニフォームや販促物の回収へ広げます。すでに紙資源回収などのスキームを展開していることも示されています。
この上で、自然を増やす活動を「点」ではなく「面」で設計します。単発の清掃や植樹ではなく、ホームタウン5市で、どの自然をどこで回復させるのかを地図で示します。水辺、里地、海辺など、地域の優先領域を行政計画と接続すると、予算と人が乗りやすくなります。
例として、「ネイチャーポジティブ・マッチデー」(仮称)のイメージを一つ挙げてみます。この日は、スポンサーが、単なる看板出稿ではない「循環×自然再生×ファン参加」の統合パッケージをスポンサーします。
飲料用ペットボトルやカップは、すべてボトル・トゥ・ボトル、あるいはリユースカップに転換
食品残渣は、場内のバイオガス設備や地域のコンポストに集約し、その堆肥を近隣農地で活用して「アントラーズ・マッチデーフード」の原料を育てる
霞ヶ浦流域や周辺湿地の自然再生・農地の環境配慮(有機・環境保全型れんこん栽培など)と、スタジアムでの地産地消メニューを接続する。
ネイチャーポジティブの視点からの要点としては、
廃棄物削減を目的そのものにせず、
「回復する自然資本(森・土・水)」側から逆算して循環設計を行う
サポーターに「モノを手放す罪悪感」ではなく、「自然を再生する誇り」を感じてもらう設計
が重要になります。このような仕組みを整えると、スタジアムは単なる「ゴミを出さない場所」ではなく、ネイチャーポジティブのプラットフォームに変わります。
こうした施策を、年数回実施することで、サポーターやスポンサーにとっての「体験」と「自然資本への投資案件」の機会を創ることはできないでしょうか?
3-2. スタジアムから(さらにアイディアを)拡げる
鹿島アントラーズのホームタウンは鹿嶋市、潮来市、神栖市、行方市、鉾田市の鹿行5市です。 クラブ公式サイトでは、この地域は鹿島臨海工業地帯としての成り立ち、そして大企業工場と農村・漁村が混在する立地として説明しています。 茨城県鹿嶋市は、もともと農業と漁業の町でしたが、1960年代以降、鹿島港を核とする臨海工業地帯の開発で、日本有数の鉄鋼・石油化学コンビナートに変貌しました。県の開発計画は「農工一体の繁栄」という理念を掲げ、農と工業の両立を目指してきました。
鹿嶋市の地理を見てみると、臨海工業地帯の背後には、霞ヶ浦や利根川水系の湿地、農地、二次林が広がるモザイク状のランドスケープがあります。 すでに、鹿島アントラーズとの連携を通じて、工場と地域をつなぐ取り組みを進めています。さらに、湿地の保全・再生、農業の環境配慮、沿岸域のエコシステムベース防災など、ネイチャーポジティブの実験もできそうです。すなわち、「アントラーズ・ネイチャーポジティブ・インダストリアルパーク構想」です。
工場の緑地・屋上緑化・護岸を、生物多様性ハブとして再設計
周辺農地の土壌の質を高め、
雨水・地下水の循環を改善し、
ひいては流域全体の生物多様性を支える
ネイチャーポジティブやサーキュラーは、多くの企業の環境・社会・ガバナンス目標(環境・社会・ガバナンスの英語略称)と直結しており、「優勝クラブ×環境先進」の組み合わせは、スポンサーにとっても魅力的なパートナーシップの場になるかもしれません。地域としても、「工業地帯×世界トップクラスのネイチャーポジティブ・クラブ」という組み合わせは、投資誘致や観光にもストーリーを与えます。
ここでも鍵になるのは、すべてを「工場の負担」として語らず、「優勝クラブと一緒に世界に誇れるモデルを作る」というポジティブな物語にする
というコミュニケーションの設計です。
鹿島アントラーズの強みは、瞬間風速の企画力より、「勝つために必要な基本を、飽きずに徹底する運用力」にあります。ネイチャーポジティブも循環経済も、同じです。一度の植樹イベントや分別キャンペーンでは成果が出ません。回し続けて初めて成果につながります。
成果が出始めたら、「アントラーズモデル」として国内外に発信し、他のクラブに輸出し、クラブの国際的ブランド価値と、地域全体の魅力度を同時に高めることができそうです。
