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触れることは、心を伝えること。


「手当て」という言葉が、好きです。

手を、当てる。

ただ、そっと。

痛いところに。
つらいところに。

言葉にならない何かに。

手を添える。

それだけで、
少し力が抜けたり、

少し安心したりすることがある。

私はこれまでの人生の中で、
そんな「触れること」の力を
何度も感じてきました。

4人の子どもたちを育てる中で。

父との時間で。

そして今、
認知症の母と過ごす時間の中で。

私は、たくさん
「触れること」を重ねてきました。

でも。

父や母に触れることは、
昔から自然にできていたわけではありません。

大人になると、

親に触れることも、
親から触れられることも、

いつの間にか
少なくなっていくものなのかもしれません。

手を握ることも。

身体に触れることも。

最初はやっぱり、
少し照れくさかったように思います。

なんだか、ちょっとだけ
気恥ずかしくて。


コロナ禍より前から、
パーキンソン病を患っていた父。

関東と関西。

離れて暮らしていたこともあり、
いつでも会える距離ではありませんでした。

帰省したときには、
アロマタッチケアをしたり、
ハンドケアをしたり。

父の身体や手に、
そっと触れていました。

最初は少しあったはずの
照れくささも、

いつからだろう。

気づけば、
どこかへなくなっていました。

「触れよう」と思って
触れているわけでもなくて。

心が動くままに。

気づけば、
勝手に手が動いている。

そんな感覚でした。

父は、
コロナ禍に亡くなりました。

でも、
父に触れた感覚は、
今も私の中に残っています。

触れたのは私なのに。

そのぬくもりや、
肌に触れた感覚は、
今も私の身体のどこかに
残っている。

そんな気がするのです。


だからなのかもしれません。

今、母の手を握るとき。

手をつないだり、
身体をそっとさすったりするとき。

たとえ、
その時間が母の記憶から
すぐに消えてしまったとしても。

身体のどこかでは、
覚えていてくれたらいいなと思う。

あたたかかったこと。

安心したこと。

誰かの手が、
そっと触れていたこと。

頭では忘れてしまっても、

身体のどこかに
その感覚が残ってくれたら。

そう願いながら、

私は今日も、
母の手を握ります。


子どもたちにも、
ずっとそうしてきました。

一人目の子育ての頃から。

抱っこして。

さすって。

手を当てて。

香りを添えながら、

そのときの私にできる
小さな「手当て」を重ねてきました。

「なんだか、いつもと違う。」

そんな小さなSOSを、

触れることで
感じ取ってきたこともありました。

何か特別なことを
しているつもりはなくて。

ただ、
心が動いたら、
手が動く。

振り返ると私は、

ずっと、
手で家族と話してきたのかもしれません。

そして、不思議なのは、

相手のために
手を添えているはずなのに、

気づけば、

私の心まで
ほどけていること。

子育てで、
もう余裕がないと思った日も。

イライラしてしまった日も。

疲れきっていた日も。

子どもの身体に触れ、
ただ、そっと手を当てていると、

少しずつ、

自分の呼吸まで
ゆるんでいく。

母を安心させたくて
手を握っているはずなのに、

気づけば、

私の方まで
落ち着いていることもある。


手当ては、
誰かに何かをしてあげることだけじゃない。

触れている私もまた、
触れることで
癒されていたんだと思います。


あとになって、

アタッチメントを学ぶ中で、

触れ合いと
オキシトシンの働きについて知りました。

ああ。

私がずっと
感じてきたのは、

こういうことだったのかもしれない。

知識より先に、
身体が知っていたこと。

ずっと暮らしの中で
体感してきたことに、

あとから言葉が
ついていく。

またひとつ、

点と点が
つながったような気がしました。

言葉で伝えられないことがある。

言葉が届かないときもある。

言葉を忘れてしまうこともある。

でも、

そっと手を添えることで
伝わるものがあると、

私は思っています。

「ここにいるよ。」

「大丈夫だよ。」

「あなたを想っているよ。」

触れることは、
心を伝えること。

そして、

心を伝え合うこと。

……なんて。

ここまで書いて、
ふと気づきました。

一番そばにいる夫には、

あんまり触れてないかもしれない。笑

いや。

照れくさいんです。笑

子どもにはできるのに。

父にも、母にもできるのに。

夫には、
なんだか小っ恥ずかしい。

長く一緒にいるからこそ、
なのかな。

でも。

父や母に触れることだって、
最初は少し照れくさかった。

そう思ったら、

まずは、
一番近くにいる人から。

なのかもしれないな。

今日はちょっとだけ、

そっと手を添えてみようかな。

……たぶん。笑


触れること。

手当てすること。

ただ、そっと手を当てること。

言葉にならない心を、
静かに伝え合うこと。

これもまた、

私が大切にしてきたことの
ひとつだったんだなぁと、

今、改めて思っています。

🌿



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