長い写真のブランク。
ずっと長い間、写真が撮れなかった。
正直言うと写真への熱が冷めてしまった。
理由はわからない。
当初の私は写真マニアだった。暇さえあれば写真を撮り、撮った写真を眺めては飽きもせず。「あぁいいなぁ」「この影がいいなぁ」。一人でその時間を楽しんでいた。
デジタルカメラなるものが無かった時代だったので撮ったフィルムを現像しスリーブになるまでは数日かかる。他に比較する対象があれば「時間がかかる」と思っただろうけど当時はそう言うものだと思っていた。
でも、その「待ち時間」はワクワクが継続するいい時間だった。
想像をめぐらし、結果を想像する。
自分が切り取った世界が見れるまでの待ち時間を楽しんだ。
それは、デートに行く日まで心をワクワクさせる感覚に近かった。
そして、現像されたスリーブを見る。現像所には確認用のライトボックスがあった。袋から出した真っ新なスリーブをライトボックスに置き、鼻がスリーブにくっつくほど寄って息をするのも忘れて写真を見る。
心の中で一気一憂する。思わず叫びそうになるいい写真もあれば、あれ、なぜこれがちゃんと撮れていなかったのだと落ち込む写真もある。
でもこの瞬間がまたたまらないのである。
いつのまにか私の部屋はカメラとレンズと撮影したスリーブ、カメラ雑誌で溢れかえった。お気に入りの写真は引き伸ばし、額に入れてある。
根が凝り性な私は「いい写真」を求めて写真を撮るために海外まで出掛けて行った。

何枚かその当時撮った写真を紹介する。



この3枚はいづれもフィルムで撮ったもの。
その後、職業柄、照明が綺麗に撮れるいいカメラを求め始めた。
噴水のプロジェクトをそのころしていた。
現場の写真を撮るのだがシャッタースピードが遅いと絵は綺麗だが水と光がブレる。F値のいいカメラレンズを使ってもフォーカスされる箇所は限定的。ISO感度を高くすると粒子が荒くなる。
「時間よ止まれ!」本気で思っていた。
ISO感度409,000まで上げられる。
噴水の写真が撮れる!これだけで購入の価値がある。
と、ほぼ衝動買いに近い状態でSONYのα7sを購入。


ここまでカメラ熱が私にはあったのだが・・・。
理由は不明だが、全くカメラへの興味が無くなってしまった。
幼馴染で仲がいい友達がどこか知らないところに行ってしまったように・・・。
今年5月。嫁が本を出版した。その出版記念パーティの写真を撮って欲しいという依頼が舞い込んだ。
一瞬、悩んだが引き受けることにした。ここで退いていたらこの先もっと写真が撮れなくなってしまう。
パーティは6月30日。果たしてうまく撮れるだろうか?久しくファインダーを覗いたことすらなかったのだ。
約一週間、感覚を取り戻すために、妻が料理をしている時やパソコン作業をしている時に練習させてもらった。





なんとか撮れたが・・・・・。
飲食店はテーブルの上の料理のためにライティングされているので座った人の顔にはいい方向からライトが当たらない。上からの明かりが多いので、髪の毛の影が顔に出てしまっている。
撮影用のライトを持ってくるか店舗内の照明を調整して撮影ポイントを作っておくべきだった。テーブルにさりげなく光るものを置いて顔の影を消す方法もあるなぁ。テレビキャスターが使っているボトムライトの効果を出すことができるかもしれない。
反省点は沢山あるが、もっともよかったのは私自身がこのイベントを心から楽しんでいることだった。料理を作るお手伝いをさせてもらい、写真を撮る。すごく慌ただしいし忙しいし、イライラする時もあったけど。
いつのまにかあの写真マニアだったころの痺れるような撮影感覚が蘇ってきた。
いい写真を撮りに次の週末は出掛かけよう。
