〜 おへその乱読1000本ノック #0057 ~ 老化バイオマーカーに関連する137遺伝子座の同定
第57回『おへその乱読1000本ノック』へようこそ。
今回取り上げる McCartney et al. (2021) は、エピジェネティック老化指標の背後にある遺伝的基盤を大規模に解明した研究です。著者らは、4万人を超える集団を対象としたゲノムワイド関連解析(GWAS)を通じて、DNAメチル化に基づく複数のエピジェネティッククロックや関連バイオマーカーに関与する137の遺伝子座を同定しました。その多くはこれまで報告されていなかった新規のものであり、エピジェネティック老化がどのような分子ネットワークの上に成り立っているのかを具体的に示しています。特に、免疫機能や脂質代謝といった生理機能との遺伝的なつながりが明らかになった点は、老化を全身的なシステムとして捉える上で重要な示唆を与えます。
本稿ではこの論文を手がかりに、エピジェネティック老化の個人差を生み出す遺伝的要因と、その生理学的背景について見ていきます。

要旨
本研究では、DNAメチル化に基づく6種類の老化関連バイオマーカーを対象として、4万人を超える多民族集団における大規模ゲノムワイド関連解析を行い、エピジェネティック老化指標の遺伝的基盤を包括的に検討した。その結果、137の独立した関連遺伝子座を同定し、その多くが新規座位であることを示した。
さらに、遺伝子ベース解析、機能エンリッチメント解析、共局在解析を通じて、これらの指標が造血幹細胞、免疫機能、脂質代謝、転写制御と関わることを明らかにした。とくにIEAAでは、CD34陽性造血幹細胞や活性クロマチン領域との強い関連が認められ、比較的内因的な老化側面を反映する可能性が示された。
一方、GrimAge加速およびPhenoAge加速は、喫煙、肥満、教育歴、長寿など多くの健康関連形質と遺伝的に関連しており、GrimAge加速については喫煙や体組成、教育歴からの因果的影響も支持された。
以上の結果から、エピジェネティック老化指標は単一の老化尺度ではなく、異なる生物学的および生活習慣関連シグナルを反映する複合的なエンドフェノタイプであることを示した。これらの知見は、エピジェネティッククロックを一律に解釈するのではなく、それぞれが反映する老化側面の違いを踏まえて用いる必要があることを示している。
1.背景
1.1 老化の個人差と生物学的年齢
老化は、身体機能や認知機能の低下、加齢関連疾患のリスク上昇と密接に結びついている。しかし、暦年齢が同じでも、実際の健康状態や罹患リスクの上昇には顕著な個人差が存在し、その背景には環境要因と遺伝要因の双方が関与すると考えられている。この個人差をより直接的に捉える概念として、生物学的年齢が重視されている。
1.2 DNAメチル化に基づく老化指標
生物学的年齢の有力な指標として、DNAメチル化に基づくエピジェネティッククロックが注目されている。DNAメチル化シグネチャーは多様な健康関連指標と相関し、クロックが推定する年齢が暦年齢を上回る年齢加速は、全死亡や不良な健康転帰のリスク上昇と関連することが示されている。さらに、これらの指標には単一塩基多型(SNP)に基づく一定の遺伝率が認められており、その個人差を規定する遺伝要因および環境要因を明らかにすることが重要な課題となっている。
1.3 第一世代と第二世代のエピジェネティッククロック
第一世代のエピジェネティッククロックである Hannum クロックおよび Horvath クロックは、主として暦年齢を予測するように設計されたモデルである。これに対し、第二世代の DNAm PhenoAge および GrimAge は、罹患率や死亡リスクをより直接的に反映するよう構築されている。Horvath クロックから血液細胞組成の推定値を回帰除去した IEAA は、血球構成の影響を相対的に制御した指標であり、造血幹細胞の性質を反映しやすいとされている。各クロックの学習目標および入力特徴の違いをTable 2に示す。

1.4 既知の知見と本研究の課題
これまで、第一世代クロックについては、hTERT 遺伝子との関連や、代謝・免疫経路との共有基盤が報告されていた。一方、PhenoAge や GrimAge を含むエピジェネティック老化指標の遺伝的背景は十分には解明されていなかった。そこで本研究では、4万人を超える多民族集団を対象に、複数のエピジェネティッククロックおよび関連するDNAメチル化由来バイオマーカーについて大規模GWASを行い、エピジェネティック老化指標の遺伝的基盤を明らかにすることを試みた。
2. エピジェネティック老化指標の遺伝的基盤はどこにあるのか
2.1 解析対象と全体像
本研究では、6つのDNAメチル化由来バイオマーカーを対象にGWASが実施された。対象は、IEAA、Hannum年齢加速、PhenoAge加速、GrimAge加速、DNAm PAI1、ならびに顆粒球比率である。解析は、ヨーロッパ系34,710人、アフリカ系アメリカ人6,195人を含む計4万人超の大規模メタ解析として行われ、祖先集団ごとの解析に加えてトランスエスニックメタ解析も実施された。
2.2 同定された遺伝子座の規模
6指標全体を通して、ゲノムワイド有意水準を満たす独立した遺伝子座が137同定され、そのうち113遺伝子座は従来のエピジェネティッククロックGWASでは報告されていなかった新規遺伝子座であった。これら137遺伝子座は、ヨーロッパ系集団、アフリカ系アメリカ人集団、およびトランスエスニック解析で得られた結果を総合したものであり、各解析間には重複が含まれる。この結果は、エピジェネティック老化指標の個人差が、少数の大効果遺伝子ではなく、多数の遺伝的要因によって規定される多因子的形質であることを示している(Table 1)。

2.3 祖先集団別解析の結果
6指標全体を通して、ゲノムワイド有意水準を満たす独立した遺伝子座が137同定され、そのうち113遺伝子座は従来のエピジェネティッククロックGWASでは報告されていなかった新規遺伝子座であった。これら137遺伝子座は、ヨーロッパ系集団、アフリカ系アメリカ人集団、およびトランスエスニック解析で得られた結果を総合したものであり、各解析間には重複が含まれる。この結果は、エピジェネティック老化指標の個人差が、少数の大効果遺伝子ではなく、多数の遺伝的要因によって規定される多因子的形質であることを示している
2.4 指標間での遺伝的基盤の違いと共通性
ヨーロッパ系集団とアフリカ系アメリカ人集団を統合したトランスエスニックメタ解析(MR-MEGA)では、6指標全体で69の遺伝子座が検出され、そのうち21遺伝子座は各集団内解析では有意ではなかった新規遺伝子座であった。このことは、祖先集団をまたぐ解析によって、新たな関連を検出できることを示している。
一方で、エピジェネティック老化に関与する遺伝的要因には、共通性と多様性の両方が認められた。ヨーロッパ系集団では、IEAAで24遺伝子座と最も多く、顆粒球比率では2遺伝子座と最も少なかった。また、30の遺伝子座で異なる指標間の共局在が認められ、複数の指標が部分的に共通の遺伝的基盤を共有していることが示された。
3. 同定された遺伝子は何をしているのか
3.1 遺伝子レベルでの関連
GWASで得られたサマリ統計を用いて、MAGMAによる遺伝子ベース解析が行われた。ヨーロッパ系集団では、指標ごとに2〜46遺伝子、合計111遺伝子が、アフリカ系アメリカ人集団では9〜209遺伝子、合計264遺伝子が有意に関連する遺伝子として同定され、全体として364遺伝子がエピジェネティック老化関連遺伝子として抽出された(Table 1)。これらの一部は、先行するIEAA GWASで報告されていた遺伝子とも重複しており、本研究の結果が既存知見と整合的であることが示された。
3.2 機能エンリッチメントと細胞型特異性
ヨーロッパ系集団のGWAS結果に対する機能エンリッチメント解析では、とくにIEAAで顕著なシグナルが認められた。実際に、機能エンリッチメントの有意項目数はIEAAで193と突出しており、Hannum年齢加速の3、PhenoAge加速の1を大きく上回っていた(Table 1)。IEAA関連変異は、DNase I過敏領域などの活性クロマチン領域に有意に多く分布しており、転写制御に関わるゲノム領域との結びつきが示された。なかでも最も強いエンリッチメントは、動員CD34陽性造血幹細胞におけるDNaseホットスポットで認められ、IEAAが造血幹細胞の性質を比較的強く反映することが支持された。
3.3 経路解析でみえる免疫系との接点
遺伝子セット・経路解析では、ヨーロッパ系集団では有意なGOあるいはKEGG経路エンリッチメントは検出されなかった。一方、アフリカ系アメリカ人集団では、顆粒球比率に関連する遺伝子群が35のGO項目で有意なエンリッチメントを示した(Table 1)。これらのGO項目は、適応免疫応答、リンパ球活性化、免疫系プロセスの調節、皮膚発生などを含んでおり、主として免疫関連の経路が中心であった。これらの結果は、顆粒球比率が免疫系の状態を反映するDNAmバイオマーカーであることと整合的である。
3.4 遺伝子発現とのつながり
ヨーロッパ系集団で同定された56遺伝子座について、血液eQTLとの共局在解析が行われた結果、8遺伝子座でエピジェネティック老化指標と遺伝子発現との強い共局在が認められた。この内訳は、IEAAで7、GrimAge加速で1であり、他の指標では有意な共局在は認められなかった(Table 1)。GrimAge加速ではC6orf183の発現との共局在がみられ、IEAAではATP8B4、CD46、TRIM59など、脂質輸送や免疫機能に関わる遺伝子の発現と関連していた。さらに、TRIM59、KPNA4、SMC4、CXXC4など、細胞老化、核輸送、Wntシグナル制御、腫瘍進展に関わる既知遺伝子も含まれており、IEAA関連座位が造血系のみならず、より広い細胞機能制御と関わる可能性が示された。
さらに、IEAA関連座位の一部については、血液で同定されたSNPの効果が脳においても再現されるかが検討された。その結果、エピジェネティッククロック構成CpGのmQTLであるSNPでは、血液と脳におけるIEAA効果の間に強い正の相関が認められた一方で、mQTLではないSNPではそのような相関はほとんど認められなかった(Fig. S29)。このことは、クロック構成CpGのメチル化制御に関与する遺伝子変異が、組織を超えて一貫した老化シグナルに関与する可能性を示唆している。一方で、IEAA関連の4遺伝子座は、エピジェネティッククロック構成CpGのmQTLとは独立しており、クロックを構成するCpGのメチル化そのものではなく、より上流の転写制御を介して老化指標に影響している可能性が示唆された。

4. エピジェネティック老化は他の形質とどうつながるのか
4.1 遺伝相関に基づく関連形質の同定
ヨーロッパ系メタ解析の結果を用いて、5つのエピジェネティック老化指標(PAI1を除く)と693形質との遺伝相関がLD score regressionにより評価された。とくにGrimAge加速およびPhenoAge加速において、多数の有意な遺伝相関が同定された。PhenoAge加速は、教育歴や認知機能(就学年数、知能指標)と負の相関を示し、BMI、肥満、体脂肪量、ウエスト・ヒップ周囲長などの肥満関連指標とは正の相関を示した。さらに、父親の死亡年齢などの長寿関連形質とも負の相関を示した。GrimAge加速も類似のパターンを示したが、とくに喫煙関連形質(現在喫煙など)、BMIや肥満指標、社会経済的剥奪との正の遺伝相関が目立ち、一方で教育歴や主観的健康評価とは負の相関を示した(Fig.2)。

4.2 エピジェネティック指標間の関係性
エピジェネティック老化指標どうしの遺伝相関をみると、PhenoAge加速とGrimAge加速の間には比較的高い正の相関(rg ≈ 0.66)が認められたのに対し、IEAAや顆粒球比率との間の相関はより限定的であった。たとえば、GrimAge加速とIEAAとの間の相関は rg ≈ 0.28 にとどまった。さらに、Hannum年齢加速、IEAA、顆粒球比率では、広範な外的形質との有意な遺伝相関はほとんど認められなかった。これらの結果は、第二世代クロックが生活習慣や健康状態とより強く結びついている一方、第一世代クロックや顆粒球比率はより限定された側面を反映していることを示している。したがって、エピジェネティック老化は単一の生物学的過程ではなく、造血幹細胞、免疫、代謝、生活習慣・社会経済的要因など、複数の異なる生理的軸を反映する概念であることが示唆される(Fig. 1)。

4.3 ポリジェニックスコアによる予測とその限界
ヨーロッパ系メタ解析結果を用いて、6つのエピジェネティック老化指標それぞれに対するポリジェニックスコア(PRS)が構築され、leave-one-cohort-out法および独立コホート(Young Finns Study)で性能が評価された。その結果、各指標に対するPRSが説明する分散は平均して0.2〜2.4%程度にとどまり、単一コホートでの最大値でも約4%(PAI1)であった。したがって、エピジェネティック老化指標は遺伝的要因の影響を受ける一方で、遺伝だけでは十分に説明できない複雑な形質であることが示された(Fig. 3A, Table 1)。

4.4 ポリジェニックスコアと表現型との関連
PRSを用いたUK Biobankのphenome-wide association解析では、とくにGrimAge加速PRSが、肥満関連形質、教育歴、親の死亡年齢など多数の形質と有意に関連した。高いGrimAge加速PRSは、体脂肪率やBMIなどと正の関連を示し、教育歴や親の長寿とは負の関連を示した。これらの関連は、遺伝相関解析で観察されたパターンと概ね整合していた(Fig. 3B)。さらに本文結果では、顆粒球比率PRSがC反応性蛋白と正の関連を示し、Hannum年齢加速PRSはインスリン治療の使用歴や総蛋白低値と関連することも示されており、各PRSが異なる健康関連プロファイルと結びつくことが示唆された。
4.5 因果関係の検討
遺伝相関およびPRS解析により、特にGrimAge加速およびPhenoAge加速が多くの健康関連形質と関連することが示されたが、これらが因果関係を反映するかは自明ではない。そこで、150の形質を対象にメンデルランダム化解析が行われた。その結果、Bonferroni補正後に有意なIVW結果が得られた組み合わせは12あったものの、そのうち複数のMR手法(IVW、加重中央値、加重モード、MR-Egger)で一貫して有意であったのは、主としてGrimAge加速をアウトカムとした曝露因子に限られていた。とくに、BMI、ウエスト周囲径、ヒップ周囲径、現在喫煙はGrimAge加速を増加させる方向に作用し、教育歴は低下させる方向に作用した(Fig. 4)。

5. その関係は因果なのか
5.1 メンデルランダム化による因果関係の検証
メンデルランダム化解析では、まず生活習慣や体組成などの主要リスク因子がエピジェネティック老化指標に与える因果効果と、逆にエピジェネティック老化指標が疾患や長寿に与える因果効果とが評価された。解析には4種類のMR手法が用いられ、Bonferroni補正後のIVW有意性、複数手法での再現性、ならびにヘテロジニティやプレオトロピーの検討を踏まえて結果が解釈された。
5.2 GrimAge加速に対する因果効果
主要曝露因子として検討された喫煙、BMI、ウエスト周囲長、ヒップ周囲長、教育歴などのうち、複数のMR手法で一貫した因果効果が支持されたのは、主としてGrimAge加速をアウトカムとする解析であった。具体的には、BMI、ウエスト周囲長、ヒップ周囲長の1標準偏差増加はGrimAge加速の上昇と有意に関連し、BMIでは約0.76年分のGrimAge加速増加が見積もられた。現在喫煙も約3.4年のGrimAge加速増加と関連した一方、過去喫煙はGrimAge加速の低下と関連していた。さらに、就学年数や大学・カレッジ卒といった教育歴は、いずれもGrimAge加速を低下させる方向の因果効果を示した(Fig. 4)。なお、GrimAgeはDNAmベースの喫煙量推定値やレプチン関連指標を含んで構築されているため、喫煙や肥満に関するMRシグナルの一部は、クロックの訓練過程を反映したポジティブコントロール的側面を持つ可能性がある。
5.3 他のエピジェネティック指標に対する因果性
GrimAge以外の指標(IEAA、Hannum年齢加速、PhenoAge加速、PAI1)についても同様のMR解析が行われたが、Bonferroni補正後に有意なIVW効果が得られた曝露–アウトカムの組み合わせは限られていた。Hannum年齢加速およびPhenoAge加速では一部の曝露で有意なIVW効果が報告されたものの、多くは他のMR手法では再現されず、GrimAge加速と比較すると複数手法で一貫して支持される因果関係は少なかった(Table 1)。IEAAについては、今回の統計的枠組みとサンプルサイズのもとでは、生活習慣や体組成からIEAAへの明瞭な因果効果は検出されず、PAI1でも一貫した因果効果は示されなかった。
5.4 因果構造の解釈
本研究のMR解析の範囲では、エピジェネティック老化指標のうち、とくにGrimAge加速が喫煙、肥満、体脂肪分布、教育歴といった外的要因から因果的な影響を受ける指標として位置づけられた。一方、IEAA、Hannum年齢加速、PhenoAge加速、PAI1では、有意なIVW効果がみられた組み合わせもあるものの、複数のMR手法で一貫して支持される因果関係は少なく、とくにIEAAでは主要な生活習慣・体組成指標からの明瞭な因果効果は検出されなかった。ただし、これらの結果はインスツルメントの弱さ、サンプルサイズや遺伝率の制約、プレオトロピーの可能性などの影響を受けうるため、外的要因との因果的関連が完全に否定されたわけではない。さらに、エピジェネティック指標を曝露として疾病や長寿をアウトカムとする解析では、いずれの指標においても一貫した強い因果効果はほとんど認められなかった。したがって、現時点ではDNAmベースの老化指標は疾病や寿命の直接の原因というよりも、生物学的老化を反映するエンドフェノタイプとして理解するのが妥当である。
6. エピジェネティック老化の統合的理解
6.1 エピジェネティック老化の多層性
本研究は、6種類のDNAメチル化由来老化バイオマーカーについて、GWAS、機能エンリッチメント、遺伝相関、ポリジェニックスコア解析、メンデルランダム化解析を組み合わせた包括的解析を行った点に特徴がある。その結果、エピジェネティック老化指標は、単一の生物学的過程を反映する単純な年齢指標ではなく、複数の異なる生物学的・生活習慣関連シグナルを反映する複合的指標であることが示された。
6.2 指標ごとの生物学的特徴の違い
IEAAでは、CD34陽性造血幹細胞における強いシグナル、広範なDNase I過敏領域へのエンリッチメント、さらにTRIM59、ATP8B4、CD46、CXXC4など、幹細胞老化、免疫調節、脂質代謝、Wntシグナルに関わる遺伝子発現との共局在が認められた。一方で、生活習慣や体組成からの明瞭な因果効果は本研究では検出されなかった。これらの結果は、IEAAが外的要因との関連が比較的限定的で、より内因的な老化側面を反映している可能性を示している。
これに対し、GrimAge加速やPhenoAge加速は、喫煙、肥満、教育歴、親の寿命など多くの健康関連・生活習慣形質と遺伝的に結びついていた。さらに、MR解析では、喫煙や体組成、教育歴といった外的要因から、特にGrimAge加速への因果的影響が示された。したがって、これらの指標は、より全身的かつ環境応答的な老化側面を反映するものと考えられる。
6.3 遺伝的要因と環境要因の統合
PRS解析で得られた説明力が平均して0.2〜2%台、最大でも数%にとどまったことは、エピジェネティック老化が共通多型に基づく遺伝的要因だけでは十分に説明できないことを示している。すなわち、これらの指標は遺伝的背景を持ちつつも、喫煙、肥満、身体活動、社会経済状態などの生活習慣・環境要因からの影響を受ける複雑な形質である。とくにGrimAge加速では、クロックの構成要素とMR・PRS解析の結果とが、喫煙や肥満の影響を一貫して支持していた。これらの結果は、エピジェネティック老化を理解するうえで、遺伝要因と環境要因を統合的に扱う必要性を示している。
6.4 エピジェネティッククロックの解釈に向けて
本研究の知見は、エピジェネティッククロックを単なる暦年齢の代理指標や死亡リスク予測スコアとして一括りに扱うのではなく、それぞれが異なる生物学的プロセスに対して異なる感度をもつ複合指標として再解釈する必要性を示している。クロック間の違いは、予測精度の優劣だけでなく、どの生理的軸をより強く反映しているかの違いを意味している。したがって、研究目的や対象とする老化側面に応じて適切な指標を選択することが重要である。さらに、複数の指標を併用することで、老化の異なる側面をより多面的に捉えられる可能性がある。
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