〜 おへその乱読1000本ノック #0108 ~ Sestrin2:ロイシン感知とmTORC1応答の構造基盤
ようこそ、第108回 おへその乱読1000本ノックへ。
前回は、Sestrin2がロイシンに直接結合し、GATOR2との相互作用を介してmTORC1へ栄養状態を伝える仕組みを見てきました。今回は、そのロイシン感知がSestrin2の分子構造によってどのように実現されるのかを掘り下げます。
今回取り上げるのは、Saxton et al.(2016)による、Sestrin2のロイシン感知機構を構造生物学的に解析した論文です。前回の論文によってSestrin2がロイシンセンサーであることは示されましたが、既知のアミノ酸結合ドメインとの配列類似性をもたないSestrin2が、どのようにロイシンを選択的に認識するのかは明らかではありませんでした。
本論文では、Sestrin2によるロイシン認識の構造基盤が明らかにされました。ロイシン感知がどのような分子構造によって支えられているのかを読み解いていきます。

要旨
mTORC1は、アミノ酸などの栄養状態に応じて細胞の成長と代謝を制御するタンパク質複合体である。中でもロイシンはmTORC1を強く活性化することが知られているが、Sestrin2がどのような構造でロイシンを選択的に認識し、その情報をmTORC1経路へ伝達するのかは不明であった。
本研究では、ロイシンが結合したヒトSestrin2の結晶構造を2.7 Å分解能で決定した。Sestrin2は、N末端ドメインとC末端ドメインがリンカーで連結されたαヘリックス主体の単量体であり、ロイシンはC末端ドメイン内の単一のポケットに結合していた。このポケットでは、Arg390とGlu451がロイシンの荷電基を保持し、Leu389、Trp444、Phe447が疎水性側鎖を収容することで、ロイシンへの選択性が生み出されていた。さらに、Thr374、Thr377、Thr386からなるlidがロイシンを覆い、Tyr375とHis86の相互作用がlatchとして結合状態を固定していた。
ロイシン結合に必要な残基を変異させると、Sestrin2はロイシン結合能を失い、GATOR2との結合状態を維持したままとなった。一方、ロイシンへの親和性を低下させるW444L変異では、GATOR2からの解離により高濃度のロイシンが必要となり、細胞内におけるmTORC1のロイシン応答も高濃度側へ移動した。また、Asp406とAsp407はロイシン結合には関与しないものの、GATOR2との相互作用には必要であった。
以上の結果から、Sestrin2は特異的なロイシン結合ポケットとlid–latch機構によってロイシンを感知しており、Sestrin2のロイシン結合親和性が細胞内におけるmTORC1のロイシン応答感度を規定していることが明らかになった。
1.イントロダクション:Sestrin2はどのようにロイシンを見分けるのか
1.1 ロイシンはmTORC1を活性化する主要なアミノ酸である
mTORC1は、アミノ酸や成長因子、エネルギー状態といった情報を統合し、細胞の成長と代謝を制御するタンパク質複合体である。細胞内にアミノ酸が十分に存在すると、Rag GTPaseの働きによってmTORC1がリソソーム表面へ移動し、そこで活性化される。
このアミノ酸の中でも、ロイシンはmTORC1を特に強く活性化することが知られている。しかし、細胞がロイシンをどのように感知し、その情報をmTORC1に伝えているのかは、長年にわたり不明のままだった。
1.2 Sestrin2はGATOR2を介してロイシン情報を伝える
ロイシンが不足すると、Sestrin2はGATOR2と結合し、mTORC1経路の活性化を抑える。逆に、ロイシンがSestrin2に結合すると、Sestrin2はGATOR2から離れ、mTORC1が活性化できる状態になる。
これまでの研究により、Sestrin2がmTORC1経路におけるロイシンセンサーとして機能することが示されてきた。しかし、Sestrin2には既知のアミノ酸結合ドメインと明確な配列類似性が見られず、どのような構造でロイシンを選択的に認識しているのかは分かっていなかった。
1.3 本研究の目的
本研究では、ロイシンが結合した状態のSestrin2の立体構造を決定し、Sestrin2がロイシンを認識する分子メカニズムを解析した。さらに、ロイシン結合部位に変異を導入した変異体を用いて、Sestrin2の結合親和性の変化がGATOR2との相互作用や細胞内でのmTORC1応答にどのような影響を及ぼすかを検証した。 これらの解析から、Sestrin2によるロイシン認識の構造基盤と、その結合親和性がmTORC1経路の応答感度を規定する仕組みを明らかにすることを目的とした。
2.Sestrin2は二つの類似したドメインからなる
2.1 ロイシン結合型Sestrin2の結晶構造
Sestrin2がロイシンを認識する仕組みを解明するため、精製したヒトSestrin2をロイシン存在下で結晶化し、2.7 Å分解能で立体構造を決定した。Sestrin2単独では結晶化が困難であったが、ロイシンを添加することで結晶を得ることができた。
得られた構造から、Sestrin2は分子量約55 kDaの単量体であり、αヘリックスに富む球状のタンパク質であることが分かった(Fig. 1A)。
2.2 N末端ドメインとC末端ドメインは類似した構造をもつ
Sestrin2は、N末端ドメイン、リンカードメイン、C末端ドメインという三つの領域から構成されていた。N末端ドメインとC末端ドメインはアミノ酸配列上の類似性が低いにもかかわらず、立体構造は互いによく似ていた(Fig. 1B)。
また、両ドメインは広い接触面をもって結合しており、分子内で一体化した構造を形成していた。Sestrin2全体は、細菌タンパク質AhpDの二量体に似た構造を一分子内に取り込んだような形をしていた(Fig. 1C)。ただし、この時点では、この構造的特徴がSestrin2のロイシン感知機能とどのように結びつくのかは分かっていなかった。
2.3 両ドメインがロイシン結合とGATOR2結合に必要である
N末端側とC末端側をそれぞれ別の断片として発現させたところ、いずれの断片も単独ではGATOR2に結合しなかった。一方、両断片を同時に発現させると、互いに会合するとともにGATOR2とも相互作用するようになった(Fig. 1D)。
ロイシン結合についても同様の傾向がみられた。各断片単独ではロイシンに結合しなかったが、両断片を同時に発現させるとロイシン結合能が回復した(Fig. 1E)。以上の結果から、ロイシン結合部位そのものはC末端ドメインに存在するものの、安定したロイシン認識とGATOR2との結合には、Sestrin2全体の立体構造が必要であることが示された。

(A)ロイシン結合型ヒトSestrin2の全体構造。Sestrin2はN末端ドメイン(NTD)、リンカードメイン、C末端ドメイン(CTD)からなり、ロイシンはCTDに結合している。(B)NTDとCTDの構造比較。両者は配列類似性が低いにもかかわらず、よく似た立体構造をもつ。(C)Sestrin2と細菌AhpD二量体の構造比較。Sestrin2は、二つのAhpD様ドメインが一分子内で連結したような構造を示す。(D)Sestrin2断片とGATOR2との相互作用。NTDまたはCTD単独ではGATOR2に結合しないが、両者を同時に発現すると互いに会合し、GATOR2との結合が回復する。(E)Sestrin2断片のロイシン結合能。各断片単独ではロイシンに結合しないが、NTDとCTDを同時に発現するとロイシン結合能が回復する。安定したロイシン認識とGATOR2結合には、二つのドメインが協調して形成するSestrin2全体の構造が必要である。
3.C末端ドメインの結合ポケットがロイシンを選択的に認識する
3.1 ロイシンはC末端ドメイン内の単一ポケットに結合する
結晶構造をさらに詳しく解析したところ、ロイシンはSestrin2のC末端ドメインにある単一のポケットに結合していることが分かった。このポケットはヘリックスC2、C3、C7が交わる位置に形成されており、ロイシン分子をその内部に収容していた(Fig. 2A、B)。
ロイシンはポケットの奥深くまで入り込んでおり、荷電基と疎水性側鎖はそれぞれ異なる残基によって認識されていた。
3.2 荷電基と疎水性側鎖を別々に認識する
ロイシンのアミノ基とカルボキシ基は、それぞれGlu451とArg390によって保持されていた。一方、ロイシンのイソプロピル側鎖は、Leu389、Trp444、Phe447からなる疎水性の底部に収まっていた(Fig. 2A、B)。
このように、荷電基を固定する部分と疎水性側鎖を受け入れる部分が組み合わさることで、Sestrin2はロイシンを選択的に認識していると考えられた。
3.3 結合ポケットの残基はロイシン感知に必須である
結合ポケットを構成する残基の役割を調べるため、Glu451、Arg390、Trp444に変異を導入した。その結果、E451Q、R390A、W444Eの各変異体は、いずれもロイシン結合能を失った(Fig. 2C)。
さらに、これらの変異体はロイシンを添加してもGATOR2から解離せず、GATOR2との結合を維持したままであった(Fig. 2D)。この結果から、ロイシン結合ポケットの構造は、ロイシンの認識だけでなく、その結合をGATOR2との相互作用の変化へつなげるためにも必要であることが示された。
3.4 ポケットの形状がアミノ酸選択性を生み出す
ポケット底部の疎水性と深さは、ロイシンの側鎖を収容するのに適した形状となっていた。荷電性や極性の高いアミノ酸はこの疎水的な環境になじみにくく、フェニルアラニンのように側鎖が大きいアミノ酸はTrp444と立体的に衝突してしまう。一方、アラニンやバリンのように側鎖が小さいアミノ酸では、十分な疎水性相互作用を形成できない。
こうした構造的な特徴によって、Sestrin2はロイシンを強く認識する一方、構造の近いイソロイシンやメチオニンとは弱く相互作用すると考えられた。なお、N末端ドメインの対応する領域は、Sestrin2自身のLeu107によってあらかじめ占有されており、外部のロイシンを受け入れられるポケットにはなっていなかった。

図2 Sestrin2によるロイシン認識と結合ポケットの構造
(A)Sestrin2のC末端ドメインに形成されたロイシン結合ポケット。Arg390とGlu451がロイシンのカルボキシ基とアミノ基をそれぞれ保持し、Leu389、Trp444、Phe447が疎水性側鎖を収容する。(B)Sestrin2表面から見たロイシン結合ポケット。ロイシンはポケット内部に深く収容され、荷電基と疎水性側鎖が異なる領域によって認識される。(C)結合ポケット変異体のロイシン結合能。E451Q、R390A、W444E変異体では、ロイシン結合が失われた。(D)結合ポケット変異体とGATOR2との相互作用。野生型Sestrin2はロイシン添加によりGATOR2から解離するが、ロイシンに結合できない変異体はGATOR2との結合を維持する。(E)Sestrinホモログ間の配列比較。ロイシン結合に関与するArg390、Glu451および疎水性ポケットを構成する残基は、進化的に広く保存されている。
4.lid–latch機構がロイシンをポケット内に固定する
4.1 lid残基がロイシンを覆う
ロイシン結合ポケットの上部には、ヘリックスC2とC3をつなぐループが位置しており、結合したロイシンに蓋をするように覆うlidとして機能していた(Fig. 3A)。
このlidにはThr374、Thr377、Thr386が並んでいた。Thr374とThr386の側鎖は主にロイシンのカルボキシ基と水素結合し、Thr377の主鎖カルボニル基はアミノ基と水素結合することで、ロイシンをポケット内に固定していた。
4.2 Tyr375–His86相互作用がlatchを形成する
lidの近傍では、C末端ドメイン側のTyr375とN末端ドメイン側のHis86が水素結合を形成していた(Fig. 3B)。この相互作用は、閉じたlidを固定するlatchとして機能していると考えられた。
ロイシン自体はC末端ドメインに直接結合するものの、このlatchの形成にはN末端ドメイン側のHis86が関わっている。つまり、ロイシンの結合にはC末端ドメイン単独ではなく、N末端ドメインとの協調が必要であることが、構造の面から裏づけられた。
4.3 lidとlatchの破壊はロイシン結合を失わせる
lidとlatchが果たしている役割を確かめるため、Thr374、Thr386、Tyr375、His86に変異を導入した。その結果、T374A、T386A、Y375F、H86Aの各変異体では、いずれもロイシン結合能が失われた(Fig. 3C)。
さらに、これらの変異体はロイシンを添加してもGATOR2から解離せず、結合状態を維持したままだった(Fig. 3D)。以上の結果から、lidがロイシンを覆い、Tyr375–His86からなるlatchがその状態を固定するという一連の仕組みが、Sestrin2によるロイシン感知に不可欠であることが示された。

図3 lid–latch機構によるロイシン結合の固定
(A)ロイシン結合ポケットを上方から見た構造。Thr374、Thr377、Thr386からなるlidがロイシンを覆う。Thr374とThr386はカルボキシ基と、Thr377の主鎖カルボニル基はアミノ基と水素結合を形成する。(B)Tyr375とHis86によるlatch。C末端ドメイン側のTyr375とN末端ドメイン側のHis86が相互作用し、lidを閉じた状態に固定する。(C)lidおよびlatch変異体のロイシン結合能。T374A、T386A、Y375F、H86A変異体では、ロイシン結合が失われた。(D)各変異体とGATOR2との相互作用。ロイシンに結合できない変異体は、ロイシン添加後もGATOR2との結合を維持した。これらの結果は、lid–latch機構がロイシンをポケット内に固定し、その結合をGATOR2からの解離へつなげるために必要であることを示す。
5.Sestrin2のロイシン親和性がmTORC1の応答感度を決める
5.1 W444L変異はロイシン親和性を低下させる
Sestrin2が細胞内でロイシンセンサーとして働いているのであれば、そのロイシン親和性を変化させることで、mTORC1が応答するロイシン濃度も変化するはずである。この仮説を検証するため、結合ポケット底部のTrp444をロイシンに置換したW444L変異体を作製した(Fig. 4A)。
W444L変異によってポケットが深くなり、ロイシン側鎖との接触が弱まった。その結果、W444L変異体のロイシン結合量は、野生型Sestrin2の約1/6〜1/8にまで低下した(Fig. 4B)。
5.2 GATOR2からの解離に高濃度のロイシンが必要となる
野生型Sestrin2では、比較的低濃度のロイシンを加えるだけでGATOR2からの解離が進んだ。一方、W444L変異体をGATOR2から完全に解離させるためには、野生型の約10〜15倍のロイシン濃度が必要であった(Fig. 4C)。
この結果は、Sestrin2のロイシン親和性が、ロイシン濃度に応じたGATOR2との結合・解離を直接左右していることを示している。
5.3 mTORC1のロイシン応答が高濃度側へ移動する
次に、Sestrin1、Sestrin2、Sestrin3をすべて欠損させたHEK-293T細胞に、野生型Sestrin2またはW444L変異体を再導入し、ロイシン濃度に対するmTORC1応答を比較した。
野生型Sestrin2を発現させた細胞では、約20〜50 µMのロイシンでmTORC1活性が半最大に達した。これに対し、W444L変異体を発現させた細胞では、半最大活性化に約250〜500 µMのロイシンを必要とした(Fig. 4D)。
これらの結果から、Sestrin2のロイシン結合親和性は、GATOR2からの解離だけでなく、細胞内でmTORC1が応答するロイシン濃度そのものを規定していることが分かった。

図4 Sestrin2のロイシン親和性がmTORC1の応答感度を規定する
(A)野生型Sestrin2とW444L変異体におけるロイシン結合ポケットの比較。Trp444をロイシンに置換するとポケット底部が深くなり、結合したロイシン側鎖との接触が減少する。(B)W444L変異体のロイシン結合能。W444L変異体のロイシン結合量は、野生型の約1/6〜1/8まで低下した。(C)野生型およびW444L変異体とGATOR2との相互作用。W444L変異体をGATOR2から解離させるには、野生型より約10〜15倍高いロイシン濃度が必要であった。(D)Sestrin1〜3三重欠損細胞に野生型Sestrin2またはW444L変異体を再導入し、ロイシン濃度に対するmTORC1活性を解析した。野生型では約20〜50 µM、W444L変異体では約250〜500 µMのロイシンで半最大活性化に達した。これらの結果は、Sestrin2のロイシン結合親和性が細胞内のmTORC1応答感度を規定することを示す。
6.GATOR2結合面はロイシン結合ポケットの近傍に位置する
6.1 Asp406とAsp407はGATOR2結合に必要である
ロイシン結合がSestrin2とGATOR2の解離を引き起こす仕組みを探るため、Sestrin2表面の電荷分布を解析した。その結果、ロイシン結合ポケットの近傍に、Asp406とAsp407からなる負電荷の強い領域が見いだされた(Fig. 5A)。
この2残基をアラニンに置換したDD406–7AA変異体では、GATOR2との結合が失われた(Fig. 5B)。したがって、Asp406とAsp407を含む領域が、Sestrin2がGATOR2と相互作用するために必要であることが示された。
6.2 ロイシン結合とGATOR2結合は機能的に分離できる
DD406–7AA変異体はGATOR2に結合しなかった一方で、ロイシン結合能は維持していた。この結果は、ロイシン結合ポケットとGATOR2結合面が近接しているものの、それぞれ異なる機能を担う領域として区別できることを示している。
すなわち、Sestrin2はロイシンを認識する部位とGATOR2に結合する部位を併せもち、両者が連携してロイシン情報をmTORC1経路へ伝えていると考えられた。
6.3 ロイシン結合がGATOR2解離を引き起こす構造モデル
Asp406とAsp407を含むGATOR2結合面は、ロイシン結合ポケットに近接しており、両者の間にはヘリックスC3が介在していた(Fig. 5C)。この配置から、ロイシン結合に伴うlidの動きがヘリックスC3を介してGATOR2結合面へ伝わり、Sestrin2とGATOR2の解離を引き起こす可能性が考えられた(Fig. 5D)。
ただし、本研究で決定されたのはロイシン結合型Sestrin2の構造のみであり、ロイシン非結合型Sestrin2やSestrin2–GATOR2複合体の構造は得られていない。したがって、ロイシン結合からGATOR2解離へ至る一連の構造変化については、現時点では提唱モデルである。

図5 GATOR2結合面の同定とSestrin2によるロイシン感知モデル
(A)Sestrin2表面におけるAsp406、Asp407とロイシン結合ポケットの位置関係。Asp406とAsp407は、ロイシン結合ポケットの近傍に存在する保存性の高い酸性残基である。(B)野生型Sestrin2およびDD406–7AA変異体とGATOR2との相互作用。DD406–7AA変異体ではGATOR2結合が失われた。(C)Sestrin2表面におけるロイシン結合ポケットとGATOR2結合領域の配置。GATOR2との相互作用には、NTD側のSer190とCTD側のAsp406、Asp407を含む複数の領域が関与すると考えられる。(D)Sestrin2によるロイシン感知モデル。ロイシン結合によってlid–latch機構が閉じ、その構造変化がGATOR2結合面へ伝わることで、Sestrin2がGATOR2から解離し、mTORC1経路が活性化されると提唱された。
7.結論:Sestrin2の構造がロイシン感知とmTORC1応答をつなぐ
7.1 ロイシン結合ポケットとlid–latch機構
Sestrin2は、C末端ドメイン内の単一ポケットでロイシンを認識していた。Arg390とGlu451がロイシンの荷電基を保持し、Leu389、Trp444、Phe447が疎水性側鎖を収容することで、ロイシンに対する選択性が生み出されていた。
さらに、Thr374、Thr377、Thr386からなるlidがロイシンを覆い、Tyr375–His86のlatchがその状態を固定していた。このlid–latch機構により、ロイシンは結合ポケット内に安定して保持される。
7.2 結合親和性がmTORC1の応答感度を規定する
ロイシン結合ポケットの構造を変化させたW444L変異体では、ロイシン親和性が低下し、GATOR2からの解離により高濃度のロイシンを必要とするようになった。細胞内においても、mTORC1の活性化に必要なロイシン濃度が高濃度側へシフトした。
このことから、Sestrin2は単にロイシンの有無を検出するだけでなく、その結合親和性を通じて、mTORC1がどの濃度のロイシンに応答するかを規定しているといえる。
7.3 ロイシン認識からGATOR2解離へ
ロイシン結合ポケットの近傍には、Asp406とAsp407を含むGATOR2結合面が存在していた。ロイシン結合とGATOR2結合は異なる機能として区別できる一方、両領域は空間的に近接して配置されていた。
以上のことから、Sestrin2はロイシン結合ポケットとlid–latch機構を通じてロイシンを感知し、その情報をGATOR2との相互作用の変化として伝えることで、mTORC1経路の応答を制御することが示された。本研究は、アミノ酸の認識が細胞の成長制御へとつながる構造基盤を提示した。
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