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〜 おへその乱読1000本ノック #0098 ~ 疑似断食食(FMD)はヒトの老化関連リスク因子を改善する

  ようこそ、第98回 おへその乱読1000本ノックへ。今回は、Wei et al.(2017)による、断食模倣食をヒトで検証した臨床試験を取り上げます。
 前回は、断食模倣食がマウスの代謝応答、多臓器再生、健康寿命に及ぼす影響を見てきました。さらに小規模なヒト予備試験では、月5日間のFMDを3サイクル実施することで、体重、体脂肪、血圧、IGF-1などの低下も報告されました。
 今回は、その流れを受けて、断食模倣食をより本格的なヒト臨床試験として検証した研究を見ていきます。完全な絶食ではなく、食べながら断食様の状態を作るという発想は、ヒトでの安全性、実施しやすさ、継続可能性が重要になります。
 本論文では、周期的な断食模倣食が、老化や加齢関連疾患に関わるリスク因子にどのような影響を及ぼすのかが検討されます。今回は、断食模倣食研究が予備的検討から臨床試験へ進む過程を見ていきます。

要旨
 本論文では、断食模倣食がヒトの老化および加齢関連疾患に関わるリスク因子へ及ぼす影響が検討された。一般に健康な成人100名を対象に、通常食を継続する対照群と、月に5日間の断食模倣食を3か月間実施するFMD群を比較した。FMDは、低カロリー、低糖質、低タンパク質でありながら、不飽和脂肪を多く含む植物ベースの食事として設計された。
 その結果、3サイクルのFMDにより、体重、体幹脂肪、総体脂肪、ウエスト周囲径、血圧、IGF-1が低下した。重大な有害事象は報告されず、主な副作用は疲労、脱力感、頭痛などの軽度から中等度の症状であった。さらに、対照群からFMDへ移行した被験者を含めた解析では、BMI、血圧、空腹時血糖、IGF-1、脂質、CRPなどの改善は、ベースラインでリスク因子が高い被験者においてより大きかった。
 以上より、本研究は、月5日間の周期的な断食模倣食が、ヒトにおいて実施可能であり、老化や加齢関連疾患に関わる複数の代謝リスク因子を改善しうることを示した。

1.背景:メタボリックシンドロームから断食模倣食へ

1.1 メタボリックシンドロームという加齢関連リスク

 メタボリックシンドロームは、腹部肥満、空腹時血糖の上昇、血圧の上昇、血清トリグリセリドの上昇、HDLコレステロールの低下のうち、複数の異常が重なる状態として定義される。この状態は、心血管疾患や全死亡リスクの上昇と関連するため、加齢関連疾患につながる代謝リスクの集積として重要である。
 老化に伴い、血糖、血圧、脂質、炎症などのリスク因子は徐々に変化する。したがって、疾患が成立した後に治療するだけでなく、その前段階にある代謝リスクをどのように低下させるかが重要になる。

1.2 食事介入の可能性と慢性的制限の限界

 カロリー制限や食事組成の変更は、健康老化を促す介入として研究されてきた。しかし、ヒトにおいて慢性的で厳格な食事制限を長期間続けることは容易ではなく、極端な制限は栄養不足や身体的負担を伴う可能性がある。効果が期待できる介入であっても、安全に実施できず、継続できなければ広く応用することは難しい。
 このため、老化関連リスク因子に対する食事介入では、代謝指標を改善できるかだけでなく、実施しやすさ、安全性、通常生活との両立が問題になる。慢性的に制限し続けるのではなく、短期間の介入を周期的に行う方法は、ヒトで応用しやすい栄養介入となりうる。

1.3 断食の生物学をヒトで使える形にする

 長時間の断食は、成長促進シグナルを低下させ、細胞保護機構を活性化する介入として検討されてきた。哺乳類では、この応答の一部として、血糖やインスリン様成長因子1(IGF-1)が低下する。IGF-1は、成長、代謝、発生に関わる一方、老化やがんとの関連からも注目されている。
 しかし、水だけを摂取する長時間断食は、ヒトで広く実施するには負担が大きく、栄養不足を悪化させる可能性もある。そこで本研究では、完全な絶食ではなく、必要な栄養素を供給しながら断食様の代謝応答を誘導する断食模倣食に注目した。FMDは、低カロリー、低糖質、低タンパク質であり、不飽和脂肪を多く含む食事として設計されている。
 本論文では、一般に健康な成人を対象としたランダム化第2相試験により、周期的なFMDが老化、糖尿病、がん、心血管疾患に関わるリスク因子や代謝マーカーに及ぼす影響を検討した。

2.試験デザイン:5日間FMDを月1回、3サイクル行う

2.1 対象者とランダム化

 本研究では、過去6か月以内に診断された疾患を持たない一般成人100名を対象とした。対象者は、通常食を継続する群と、断食模倣食を実施する群に無作為に割り付けられた。対照群には48名、FMD群には52名が割り付けられ、登録時点では、年齢、性別、人種、体重に大きな偏りは認められなかった(Table 1, Fig. 1)。
 試験は、完全な盲検化が困難な食事介入研究として実施された。ただし、データ収集や検体解析に関わる担当者は、群割り付けを知らされない形で評価を行った。

2.2 FMDプログラムの構成

 FMD群では、連続5日間の断食模倣食を摂取し、その後は次のサイクルまで通常食に戻した。この5日間のFMDを月1回、3か月間、合計3サイクル実施した(Fig. 1)。
 FMDは、断食様の代謝応答を引き出すことを目的として設計された植物ベースの食事である。1日目は約4600 kJで、たんぱく質11%、脂質46%、炭水化物43%から構成された。2〜5日目は約3000 kJ/日で、たんぱく質9%、脂質44%、炭水化物47%から構成された。全体として、低カロリー、低糖質、低タンパク質であり、不飽和脂肪と複合炭水化物を主なエネルギー源とする食事であった。

2.3 クロスオーバーと評価時点

 対照群では、最初の3か月間は通常の食事を継続した。その後、この群の参加者もFMDプログラムへ移行した。したがって、本研究では、最初の3か月間における対照群とFMD群のランダム化比較に加えて、対照群からFMDへ移行(クロスオーバー)した参加者を含めた解析も行われた(Fig. 1)。
 主要な評価は、FMDを3サイクル実施した後、通常食に戻って5〜7日経過した時点で行われた。また、1回目のFMD終了時には、通常食に戻る前の急性応答も評価された。さらに、3サイクル終了後の任意参加によるフォローアップも設定された。
 全体として、100名が無作為化され、そのうち71名が3サイクルのFMDを完了した。内訳は、最初からFMD群に割り付けられた39名と、対照期間後にFMDへ移行した32名であった。

Fig. 1 試験デザインと参加者の流れ 一般成人100名を、通常食を継続する対照群とFMD群に無作為に割り付けた。FMD群では、連続5日間のFMDを月1回、3か月間実施した。対照群は最初の3か月間は通常食を継続し、その後FMDへクロスオーバーした。最終的に、最初からFMDを実施した39名と、対照期間後にFMDへ移行した32名の計71名が、3サイクルのFMDを完了した。

3.安全性と実施可能性:重篤な有害事象は認められなかった

3.1 安全性は症状と血液検査で評価された

 FMDをヒトに応用するうえでは、代謝リスク因子が変化するかだけでなく、安全に実施できるかが重要である。本研究では、有害事象をCommon Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE)に基づいて評価した。CTCAEでは、症状なしをグレード0、軽度をグレード1、中等度をグレード2、重度をグレード3、生命を脅かす状態をグレード4、死亡をグレード5として分類する。
 また、安全性評価として、血糖、電解質、肝機能、腎機能、アルブミン、総タンパクなどを含む包括的な代謝パネルも測定された。これにより、FMDが短期的な自覚症状だけでなく、栄養状態や主要臓器機能に明らかな悪影響を及ぼすかが確認された。

3.2 主な症状は軽度から中等度にとどまった

 FMD中に報告された主な症状は、疲労、脱力感、頭痛であった。これらは軽度から中等度にとどまり、グレード3以上の有害事象は報告されなかった(Fig. S1)。さらに、肝機能や腎機能を含む代謝パネルでも、3サイクルのFMDによる明らかな悪影響は認められなかった(Table S1)。したがって、本試験の範囲では、月5日間のFMDを3サイクル行う介入は、重篤な安全性上の問題を伴わずに実施可能であった。

Fig. S1 FMD期間中に報告された自己申告有害事象の評価  FMD実施中に参加者から報告された症状を、Common Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE)に基づいて評価した。主な症状は疲労、脱力感、頭痛などであり、多くは軽度から中等度にとどまり、グレード3以上の重篤な有害事象は認められなかった。

3.3 実施可能性には脱落率という課題が残る

 一方で、FMDは通常食を続ける対照条件よりも参加者への負担が大きい。最初のランダム化比較では、対照群の脱落・除外が48名中5名であったのに対し、FMD群では52名中13名が脱落または除外された(Fig. 1)。
 対照群からFMDへクロスオーバーした参加者を含めると、FMDを1サイクル完了したのは95名中95%であり、3サイクルを完了したのは71名であった。FMD期間中の脱落・除外は、日程の都合、個人的理由、食事プロトコルの不遵守などによるものであった。脱落者は完了者と比べて年齢やBMIに差はなかったが、女性の割合が高かった(Fig. S2)。
 以上より、FMDは重篤な有害事象を伴わずに実施可能であった一方、3サイクルを完了するには一定の負担があることも示された。したがって、FMDを臨床的介入として考える際には、安全性だけでなく、継続可能性と対象者の選択も重要になる。

Fig. S2 試験完了者と脱落者の比較 試験を完了した参加者と途中で脱落した参加者のベースライン特性を比較した。完了者と脱落者のあいだで年齢やBMIなどの主要特性に大きな差は認められず、脱落は試験参加者の基本特性によって大きく偏ったものではないことが示された。

4.ランダム化比較:体重、体脂肪、血圧、IGF-1の低下

4.1 体重、体脂肪、腹囲は低下した

 最初の3か月間におけるランダム化比較では、FMD群で体重が有意に低下したのに対し、対照群ではほとんど変化しなかった。体重の変化量はFMD群で平均 −2.6 kgであり、群間差は有意であった(Fig. 2A, Table 2)。
 BMIも同様に、FMD群で有意に低下し、対照群との比較でも有意差を示した(Fig. 2B, Table 2)。さらに、総体脂肪量および体幹脂肪量もFMD群で低下し、群間差はそれぞれ有意であった(Fig. 2C, D, Table 2)。したがって、FMDによる体重減少は、単なる一過性の体重変動ではなく、脂肪量、とくに体幹部脂肪の減少を伴う変化であった。
 一方、除脂肪量の相対値はFMD群で増加傾向を示したが、群間差は有意ではなかった(Fig. 2E, Table 2)。腹囲はFMD群で平均 −4.1 cm低下し、対照群との比較でも有意差が認められた(Fig. 2F, Table 2)。以上より、3サイクルのFMDは、体重、BMI、体脂肪、体幹脂肪、腹囲を低下させる一方、相対的除脂肪量は大きく損なわなかった。

4.2 IGF-1と血圧は低下したが、空腹時血糖は全体では変化しなかった

 空腹時血糖は、FMD群でわずかに低下したものの、対照群との群間差は有意ではなかった(Fig. 2G, Table 2)。したがって、一般に健康な成人全体を対象としたランダム化比較では、空腹時血糖の明確な改善は示されなかった。
 これに対して、IGF-1はFMD群で有意に低下し、対照群との比較でも有意差を示した。変化量は平均 −21.7 ng/mlであり、FMDが成長関連シグナルに影響することが示された(Fig. 2H, Table 2)。
 血圧については、収縮期血圧がFMD群で平均 −4.5 mmHg低下し、群間差も有意であった(Fig. 2I, Table 2)。拡張期血圧もFMD群で平均 −3.1 mmHg低下したが、群間差は有意水準に達しなかった(Fig. 2J, Table 2)。したがって、本試験のランダム化比較では、FMDは収縮期血圧を明確に低下させ、拡張期血圧にも低下傾向を示した。

4.3 脂質とCRPは全体では明確な群間差を示さなかった

 脂質指標については、トリグリセリド、総コレステロール、LDL、HDLのいずれも、FMD群で一定の変化はみられたものの、対照群との群間差は有意ではなかった(Fig. 2K–N, Table 2)。すなわち、トリグリセリドは低下傾向を示したが有意差はなく、総コレステロールとLDLは両群で低下がみられ、HDLも明確な群間差を示さなかった(Fig. 2K–N)。
 炎症マーカーであるCRPについても、FMD群でわずかな低下傾向はみられたが、群間差は有意ではなかった(Fig. 2O, Table 2)。
 以上より、ランダム化比較で明確に改善したのは、体重、BMI、総体脂肪、体幹脂肪、腹囲、IGF-1、収縮期血圧であった。一方、空腹時血糖、脂質、CRPについては、一般成人全体を対象とした解析では明確な群間差を示さなかった。

Fig. 2 ランダム化比較における代謝関連指標の変化 無作為化解析を完了した対照群およびFMD群において、第3サイクル終了後5~7日の時点で評価した各種老化・疾患関連マーカーおよびリスク因子のベースラインからの変化量を示す。A 体重。B BMI。C 総体脂肪量。D 体幹脂肪量。E 除脂肪量(相対値)。F 腹囲。G 空腹時血糖。H インスリン様成長因子1(IGF-1)。I 収縮期血圧。J 拡張期血圧。K トリグリセリド。L 総コレステロール。M LDLコレステロール。N HDLコレステロール。O C反応性タンパク質(CRP)。Δはベースラインからの変化量を示す。データは平均 ± SD。群間比較は両側2標本等分散t検定により行った。登録された100名のうち、一部の指標では採血または測定が完了しなかった参加者がいたため、各マーカーの解析には当該測定が完了した参加者のみを含めた。詳細はTable 2を参照。Abs, absolute;Rel, relative;BP, blood pressure.

5.急性応答:FMDは断食様シグナルを誘導した

5.1 1サイクル目終了時の急性変化

 FMDが設計通りに断食様の代謝応答を誘導したかを確認するため、1回目のFMD終了時、通常食に戻る前の時点で代謝マーカーが評価された。この解析では、最初からFMDを実施した群と、対照期間後にFMDへクロスオーバーした群を合わせて検討した(Table S3)。
 1回目のFMD終了時には、体重、BMI、腹囲が低下した。また、空腹時血糖、IGF-1、拡張期血圧、トリグリセリドも低下した。これらの変化は、5日間のFMDが短期間で体組成および代謝指標を動かしたことを示している。
 一方、総体脂肪量の絶対値、収縮期血圧、CRPには、この時点では明確な変化は認められなかった。したがって、1サイクル目の急性応答は、すべてのリスク因子を一様に改善するものではなく、血糖、IGF-1、ケトン体、脂質代謝など、断食様応答に近い指標を中心に現れた。

5.2 ケトン体とIGFBP-1の上昇は断食応答を示す

 FMD中の変化として重要なのは、β-ヒドロキシ酪酸とIGFBP-1が上昇した点である。β-ヒドロキシ酪酸はケトン体の一つであり、糖利用が低下し、脂肪酸酸化とケトン体産生が高まったことを示す指標である。FMD後にβ-ヒドロキシ酪酸が上昇したことは、この食事介入が通常食とは異なる断食様の代謝状態を誘導したことを示している。
 IGFBP-1も、1回目のFMD終了時に上昇した。IGFBP-1はインスリン状態やIGFシグナルと関わる結合タンパク質であり、FMDによって成長・栄養応答に関わる内分泌環境が変化したことを示す。IGF-1の低下とIGFBP-1の上昇は、FMDが成長促進シグナルを抑える方向に働いたことを支持する。

5.3 急性応答としてのFMD効果

 1回目FMD終了時に観察された変化は、FMD期間中の急性応答を反映している。体重、BMI、腹囲の低下に加えて、空腹時血糖、IGF-1、拡張期血圧、トリグリセリドが低下し、β-ヒドロキシ酪酸とIGFBP-1が上昇した(Table S3)。
 この組み合わせは、FMDが単なる低カロリー食として作用しただけでなく、糖利用の低下、ケトン体産生の上昇、IGFシグナルの変化を伴う断食様の代謝状態を誘導したことを示している。したがって、1回目FMD終了時の解析は、参加者がFMDに反応し、設計された断食様応答がヒトでも誘導されたことを確認する位置づけとなる。

6.リスク因子別解析:高リスク者ほど大きく反応した

6.1 正常範囲の集団では見えにくい効果

 ランダム化比較では、FMDにより体重、BMI、体脂肪、腹囲、IGF-1、収縮期血圧が低下した。一方、空腹時血糖、脂質、CRPについては、対照群との有意な群間差は認められなかった(Fig. 2G, K–O)。
 しかし、これらの指標は、ベースライン値が正常範囲にある被験者では改善余地が小さい。そこで本研究では、対照群からFMDへクロスオーバーした参加者も含め、3サイクルのFMDを完了した被験者を対象に、ベースラインのリスク因子値に基づく事後解析を行った(Fig. 3, Table 4)。

6.2 血糖、血圧、IGF-1は高リスク群で大きく低下した

 FMDの効果は、ベースラインでリスク因子が高い被験者において大きく現れた。BMIはすべてのBMI区分で低下したが、BMIが30を超える肥満群で低下幅が大きかった(Fig. 3A, Table 4)。
 血圧も同様に、ベースライン値が高い被験者で低下が大きかった。収縮期血圧は、120 mmHg以下の群では平均2.4 mmHg低下したのに対し、120 mmHgを超える群では平均6.7 mmHg低下した。拡張期血圧も、80 mmHgを超える群でより大きく低下した(Fig. 3B, C, Table 4)。
 空腹時血糖では、99 mg/dl以下の群では明確な変化は認められなかったが、99 mg/dlを超える群では平均11.8 mg/dl低下し、健康範囲に入った(Fig. 3D, Table 4)。IGF-1も、225 ng/mlを超える群では平均55.1 ng/ml低下し、225 ng/ml以下の群よりも大きな低下を示した(Fig. 3E, Table 4)。

6.3 脂質とCRPも高値群で低下した

 脂質指標でも、ベースライン高値群でFMDの効果が大きく現れた。トリグリセリド、総コレステロール、LDLは、ベースライン値が高い被験者でより大きく低下した(Fig. 3F–H, Table 4)。一方、HDLでは同様の低下パターンは認められなかった(Fig. 3I)。
 CRPも、ベースラインで1 mg/literを超える被験者では平均1.6 mg/liter低下し、多くの被験者で正常範囲に戻った。一方、CRPが1 mg/liter以下の被験者では明確な低下は認められなかった(Fig. 3J, Table 4)。
 以上より、FMDの効果は、正常範囲の被験者よりも、代謝リスク因子が高い被験者で大きく現れた。ただし、この解析は事後解析であり、高リスク集団に対する有効性を確認するには、より大規模なランダム化試験が必要である。

Fig. 3 ベースラインリスク因子別にみたFMD効果 3サイクルのFMDを完了した被験者を、各リスク因子のベースライン値に基づいて正常範囲群とリスクあり群に分類し、FMD前後の変化量を比較した。A BMI。B 収縮期血圧。C 拡張期血圧。D 空腹時血糖。E インスリン様成長因子1(IGF-1)。F トリグリセリド。G 総コレステロール。H LDLコレステロール。I HDLコレステロール。J C反応性タンパク質(CRP)。BMI、血圧、空腹時血糖、IGF-1、トリグリセリド、総コレステロール、LDL、CRPでは、ベースラインでリスク因子が高い被験者ほどFMD後の低下が大きかった。一方、HDLでは同様の低下パターンは認められなかった。解析は事後解析として行われた。

7.持続性と限界:一部の改善は残るが検証は途上である

7.1 3か月後にも一部の改善は残った

 FMDを3サイクル終了した後、参加者には任意の追跡評価が設定された。追跡評価は最終FMDサイクルから約3か月後に行われ、50名が参加した。この時点でも、体重、BMI、腹囲、IGF-1、血圧などの改善は一部維持されていた。また、ベースラインでリスク因子が高い被験者では、空腹時血糖やCRPなどにも改善の持続がみられた(Table S4)。
 したがって、FMDの効果はFMD期間中だけの一過性変化にとどまらず、一部の代謝リスク因子では数か月後まで残る可能性が示された。

7.2 持続効果の解釈には注意が必要である

 一方で、この追跡評価は任意参加であり、全参加者を対象としたものではない。また、一部の高リスク群では人数が少なく、各リスク因子に対する長期効果を確定するには限界がある。
 さらに、FMD終了後の食事や運動習慣は厳密に固定されていなかった。したがって、追跡時点で残っていた改善がFMDそのものの持続効果なのか、試験後の生活習慣変化を一部反映したものなのかは明確には分けられない。

7.3 大規模試験による検証が必要である

 本研究は、一般に健康な成人を対象としたランダム化第2相試験であり、FMDの安全性、実施可能性、代謝リスク因子への影響を検討する位置づけである。疾患予防や治療効果を直接証明する試験ではない。
 また、リスク因子別解析は事後解析である。したがって、高リスク者に対する有効性を確認するには、あらかじめ対象者をリスク因子に基づいて選択した大規模ランダム化試験が必要である。
 以上より、本研究は、周期的FMDがヒトで実施可能であり、一部の老化関連リスク因子を改善しうることを示した。一方で、その長期的な持続性、疾患予防効果、治療応用については、診断済み疾患や高リスク集団を対象とした追加試験による検証が必要である。

8.結論:FMDは断食様シグナルを臨床介入へつなぐ

 本研究では、一般に健康な成人を対象に、5日間のFMDを月1回、3サイクル実施するランダム化第2相試験が行われた。その結果、FMDは重篤な有害事象を伴わずに実施可能であり、体重、BMI、体脂肪、腹囲、IGF-1、血圧などの老化関連リスク因子を改善した。
 また、1回目のFMD終了時には、血糖低下、IGF-1低下、β-ヒドロキシ酪酸上昇、IGFBP-1上昇が認められ、FMDがヒトでも断食様の代謝応答を誘導することが示された。さらに、ベースラインでリスク因子が高い被験者では、血糖、血圧、脂質、CRPなどの改善がより大きく現れた。
 以上より、本研究は、周期的FMDが、完全な絶食や慢性的なカロリー制限とは異なる形で、ヒトの老化関連代謝リスクを動かしうる介入であることを示した。ただし、本試験は疾患予防や治療効果を直接証明するものではない。今後は、診断済み疾患を有する患者や高リスク集団を対象とした大規模ランダム化試験により、FMDの臨床的意義を検証する必要がある。



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