〜 おへその乱読1000本ノック #0061 ~DNAm GrimAge2:寿命と健康寿命予測の新たなゴールドスタンダード
第61回『おへその乱読1000本ノック』へようこそ。
前回は、DNAメチル化から死亡リスクや健康寿命に関わるリスクを推定する DNAm GrimAge を取り上げました。今回はその改良版である GrimAge2 を読んでいきます。
GrimAge2 では、従来の GrimAge に、炎症や糖代謝に関わる新たな指標が加えられています。その結果、死亡リスクだけでなく、生活習慣病や身体機能、臓器脂肪など、より幅広い老化関連の状態を反映する指標として提案されています。名前は引き続き少し怖めですが、今回も落ち着いて、中身をひとつずつ見ていきます。

要旨
DNAm GrimAgeは、DNAメチル化に基づくヒト死亡リスクのバイオマーカーとして開発され、既存のエピジェネティッククロックよりも死亡リスクや加齢関連疾患との関連において高い性能を示してきた。本研究では、DNAm GrimAgeの第2版であるGrimAge2を構築し、その性能を複数のヒトコホートで検証した。
GrimAge2では、従来のGrimAgeに含まれていたDNAm PACKYRSおよび7種類のDNAm血漿タンパク質サロゲートに加え、新たに高感度C反応性タンパク質を推定するDNAm logCRPと、ヘモグロビンA1cを推定するDNAm logA1Cを組み込んだ。GrimAge2は、10種類のDNAmバイオマーカーと暦年齢・性別から構成され、死亡リスクに基づくエピジェネティッククロックとして定義された。
GrimAge2の性能は、9つの検証コホートに由来する13,399の血液サンプルで評価された。AgeAccelGrim2は、従来版AgeAccelGrimよりも全死亡リスクと強く関連し、冠動脈疾患、併存疾患数、2型糖尿病、高血圧、炎症、肺機能、脂肪肝、内臓脂肪などの健康寿命関連アウトカムとも広く関連した。また、唾液メチル化データにおいても、代謝ストレス、高感度C反応性タンパク質、インスリン抵抗性、HOMA-IRとの関連が認められた。
これらの結果から、GrimAge2は、死亡リスクだけでなく、炎症、糖代謝、喫煙、血漿タンパク質、脂肪蓄積を含む複数の老化関連情報を統合するDNAメチル化バイオマーカーであることが示された。GrimAge2は、既存の臨床バイオマーカーを置き換えるものではなく、それらを補完しながら、寿命および健康寿命リスクの評価に用いられる指標として位置づけられる。
1. イントロダクション
1.1 DNAm GrimAgeの位置づけ
著者らはこれまでに、DNAメチル化に基づく死亡リスク指標として DNAm GrimAge を確立し、この指標が既存のDNAメチル化老化指標よりも、死亡リスク予測および加齢関連疾患との関連において優れることを示してきた。第一世代のエピジェネティッククロックが主に暦年齢を推定するのに対し、DNAm GrimAge を含む第二世代クロックは、死亡リスクや健康寿命に関わる生物学的状態を反映する指標として位置づけられる。
1.2 本研究の目的
本研究では、DNAm GrimAge の第2版である GrimAge2 を提示し、その性能を複数の加齢関連アウトカムで検証する。著者らは、GrimAge2 が従来の GrimAge よりも、死亡リスク、CT画像指標、認知機能、生活習慣因子、唾液サンプルへの適用可能性などにおいて強い関連を示すことを検討した。検証には、ヒスパニック系、ヨーロッパ系、アフリカ系祖先を含む9つのヒトコホート、約13,400の血液サンプルを用いた。
GrimAge version 1 は、7種類の血漿タンパク質のDNAメチル化サロゲート、DNAメチル化に基づく喫煙pack-years推定値、暦年齢、性別を組み合わせた複合バイオマーカーである。開発は2段階で行われ、まず血漿タンパク質および喫煙歴のDNAメチル化サロゲートを構築し、次にそれらを暦年齢・性別などと組み合わせて全死亡によるtime-to-deathを予測するモデルを作成した。年齢調整後の GrimAge は AgeAccelGrim と呼ばれ、GrimAge2 についても同様に AgeAccelGrim2 が定義される。
1.3 GrimAge version 1の概要
GrimAge version 1 は、7種類の血漿タンパク質のDNAメチル化サロゲート、DNAメチル化に基づく喫煙pack-years推定値、暦年齢、性別を組み合わせた複合バイオマーカーである。この設計は、一部の血漿タンパク質濃度がDNAメチル化レベルから推定可能であるという考えに基づいている。
GrimAge version 1 の開発は2段階で行われた。第一段階では、血漿タンパク質および喫煙歴のDNAメチル化サロゲートを構築した。第二段階では、これらのサロゲートを暦年齢・性別などと組み合わせ、全死亡による time-to-death を予測するモデルを作成した。
1.4 AgeAccelGrimの定義
著者らは、暦年齢による交絡を調整するため、DNAm GrimAge を暦年齢で回帰し、その残差を年齢調整後の指標として定義した。この指標は AgeAccelGrim と呼ばれる。AgeAccelGrim が正の値を示す場合、DNAm GrimAge が暦年齢から期待される値より高いことを意味し、負の値を示す場合は期待値より低いことを意味する。本研究では、GrimAge2 に対応する年齢調整後指標として AgeAccelGrim2 を同様に定義する。
2. GrimAge2の構築と検証デザイン
2.1 GrimAge2の基本設計
GrimAge2は、DNAm GrimAge version 1 と同じ1,030か所のCpGを用いて構築された。GrimAge version 1 は、暦年齢、性別、DNAm PACKYRS(DNAメチル化から推定した喫煙pack-years)、および7種類の血漿タンパク質のDNAメチル化サロゲートから構成されていた。GrimAge2では、これらに加えて、炎症を反映する高感度C反応性タンパク質と、糖代謝を反映するヘモグロビンA1cのDNAメチル化サロゲートが新たに作成された。
Framingham Heart Study のデータは訓練データとテストデータに分けられ、log変換した高感度C反応性タンパク質とヘモグロビンA1cを予測する2つのelastic net回帰モデルが構築された。これにより、DNAm logCRP と DNAm logA1C が得られた。さらに、全死亡による time-to-death を目的変数とするelastic net Cox回帰モデルによって、GrimAge2に組み込む変数が選択された。
その結果、従来の GrimAge に含まれていた7種類のDNAm血漿タンパク質サロゲートとDNAm PACKYRSに加え、DNAm logCRPとDNAm logA1Cが選択された。最終的に、GrimAge2は、10種類のDNAmバイオマーカーと、暦年齢・性別の計12変数から構成された(Figure 1)。

2.2 GrimAge2に追加された炎症・糖代謝指標
GrimAge2の改良点は、炎症と糖代謝に関わる2つのDNAmサロゲート(DNAm logCRP、DNAm logA1C)を導入した点である。高感度C反応性タンパク質は炎症の代表的な血中バイオマーカーであり、ヘモグロビンA1cは血糖状態を反映する臨床指標である。これらをDNAメチル化データから推定することで、GrimAge2は従来のGrimAgeよりも、炎症および糖代謝に関連する老化リスクを取り込む設計となった。
2.3 検証デザイン
GrimAge2の性能は、独立した検証データで評価された。訓練データには Framingham Heart Study Offspring Cohort の1,833名が用いられ、検証データにはFHSテストデータ、Women’s Health Initiative、Jackson Heart Study、InCHIANTI、Baltimore Longitudinal Study of Aging、Lothian Birth Cohort、Normative Aging Study など、9つの疫学コホートが用いられた。
検証データは、合計13,399の血液サンプル、10,065名の参加者から構成された。参加者には、ヨーロッパ系、アフリカ系アメリカ人、ヒスパニック系の集団が含まれた。検証データ全体の平均年齢は67.9歳、平均追跡期間は13.0年であり、死亡率は39%であった(Table 1)。

3.GrimAge2の死亡リスク予測
3.1 全死亡リスクとの関連
GrimAge2の性能は、まず全死亡による time-to-death との関連によって評価された。解析では、各コホート内で人種・民族集団などに分けた15の層を対象とし、年齢、性別、人種・民族、バッチなどの交絡因子を調整したうえで、Cox回帰モデルによる死亡リスク予測が行われた。
年齢調整後のGrimAge2であるAgeAccelGrim2は、すべての検証データを統合したメタ解析において、全死亡リスクと強く関連した(Figure 2)。1年のAgeAccelGrim2上昇に対するハザード比は1.10であり、これはGrimAge2が暦年齢から期待される値より1年高いごとに、死亡リスクが約10%高いことを示す。従来版のAgeAccelGrimも死亡リスクと関連したが、統計的な関連の強さはAgeAccelGrim2の方が大きかった。

この結果は、Table 2にも要約されている。全死亡リスクに対するメタ解析では、AgeAccelGrim2のP値は3.6×10^-167であり、従来版AgeAccelGrimのP値2.0×10^-144よりも強い関連を示した。したがって、GrimAge2は、従来のGrimAgeを上回る死亡リスク予測能を示した。

3.2 喫煙状態に依存しない死亡リスク予測
GrimAgeにはDNAm PACKYRS、すなわちDNAメチル化から推定した喫煙pack-yearsが含まれるため、死亡リスクとの関連が喫煙歴だけで説明される可能性がある。そこで、解析は喫煙者および非喫煙者に分けても行われた。
Table 2では、喫煙者においてAgeAccelGrim2は死亡リスクと強く関連し、非喫煙者においても同様に有意な関連を示した。喫煙者でのハザード比は1.10、非喫煙者でのハザード比は1.09であった。従来版のAgeAccelGrimも同様に死亡リスクと関連したが、P値の比較ではAgeAccelGrim2の方が強い関連を示した。
この結果は、GrimAge2の死亡リスク予測が、喫煙に由来する情報だけではなく、炎症、糖代謝、その他の血漿タンパク質サロゲートを含む複合的な老化関連情報を反映していることを示す。
3.3 血球組成で調整した解析
DNAメチル化データを用いた解析では、血球組成の違いが結果に影響する可能性がある。このため、血球組成を追加で調整した死亡リスク解析も行われた。
Table 2に示されるように、血球組成を調整した後も、AgeAccelGrim2は全死亡リスクと強く関連した。血球組成調整後のハザード比は1.09であり、P値は5.2×10^-123であった。従来版AgeAccelGrimも有意な関連を示したが、ここでもAgeAccelGrim2の方が強い関連を示した。これにより、GrimAge2の死亡リスク予測能は、単なる血球組成の違いだけでは説明されないことが示された。
3.4 死亡リスク予測におけるGrimAge2の位置づけ
Figure 2とTable 2の結果から、GrimAge2は従来版GrimAgeよりも全死亡リスクとの関連が強い指標であることが示された。とくに、複数の独立コホート、多様な人種・民族集団、喫煙者・非喫煙者、血球組成調整後の解析において一貫した関連が認められた点が重要である。
GrimAge2は、単に暦年齢を推定する時計ではなく、死亡リスクに関連するDNAメチル化上の情報を統合したエピジェネティッククロックとして機能する。従来版に炎症と糖代謝に関わるDNAm logCRPおよびDNAm logA1Cを加えたことにより、死亡リスク予測における性能がさらに高められた。
4. 健康寿命・疾患リスクとの関連
4.1 併存疾患数との関連
GrimAge2は、死亡リスクだけでなく、複数の加齢関連疾患をどの程度反映するかについても検証された。ここでは、加齢関連疾患の総数を表す併存疾患指数が用いられた。
AgeAccelGrim2は、従来版AgeAccelGrimよりも併存疾患指数との強い関連を示した。Table 2では、併存疾患指数との関連について、AgeAccelGrim2のStouffer P値は3.0×10^-27、AgeAccelGrimのStouffer P値は5.7×10^-22と要約されている。これは、GrimAge2が単に死亡リスクを反映するだけでなく、加齢に伴う疾患負荷の大きさとも関連することを示す。
Figure 5では、AgeAccelGrim2、AgeAccelGrim、およびGrimAge2を構成する各DNAmバイオマーカーと併存疾患指数との関連が示された。とくに、DNAm logA1C、DNAm PAI-1、DNAm logCRPは、AgeAccelGrim2よりもさらに強く併存疾患指数と関連した。これは、糖代謝、線溶・血管系、炎症に関わるDNAmサロゲートが、加齢関連疾患の蓄積と密接に結びつくことを示す結果である。

4.2 2型糖尿病・高血圧・疾患なし状態との関連
GrimAge2は、個別の加齢関連疾患や健康状態についても評価された。Table 2では、2型糖尿病との関連において、AgeAccelGrim2のオッズ比は1.07、P値は1.1×10^-30であり、従来版AgeAccelGrimのオッズ比1.05、P値2.8×10^-15よりも強い関連を示した。
高血圧やdisease-free statusについても、AgeAccelGrim2は従来版AgeAccelGrimより強い関連を示した。disease-free status では、AgeAccelGrim2の値が低いほど、加齢関連疾患をもたない状態と関連した。これらの結果から、GrimAge2は特定の疾患リスクだけでなく、加齢に伴う健康状態の低下を広く反映する指標として位置づけられる。
4.3 身体機能との関連
健康寿命を考えるうえでは、疾患の有無だけでなく、身体機能の維持も重要である。Table 2では、AgeAccelGrim2が身体機能レベルとも関連することが示されている。身体機能との関連は、従来版AgeAccelGrimよりもAgeAccelGrim2で強かった。
この結果は、GrimAge2が死亡リスクや疾患診断に限らず、加齢に伴う機能低下も反映する可能性を示している。すなわち、GrimAge2は寿命の指標であると同時に、健康寿命に関わる身体的状態を捉える指標としても評価された。
4.4 健康寿命指標としてのGrimAge2
Table 2にまとめられた結果から、AgeAccelGrim2は、全死亡リスクに加えて、冠動脈疾患、併存疾患指数、2型糖尿病、disease-free status、身体機能、炎症、肺機能、脂肪蓄積など、幅広い健康寿命関連アウトカムと関連した。これらの多くで、AgeAccelGrim2は従来版AgeAccelGrimよりも強い関連を示した。
したがって、GrimAge2は、死亡リスクを予測するエピジェネティッククロックとしてだけでなく、加齢に伴う疾患負荷や機能低下を反映する健康寿命関連バイオマーカーとしても有用であることが示された。
5. 炎症・代謝・生活習慣指標との関連
5.1 臨床バイオマーカーとの関連
GrimAge2は、死亡リスクや疾患リスクだけでなく、食事、生活習慣、臨床バイオマーカーとの横断的な関連についても評価された。解析には、自己申告に基づく食事因子、血液中の食事関連バイオマーカー、炎症・代謝・肺機能・認知機能・身体機能などに関わる臨床指標が含まれた。
AgeAccelGrim2は、炎症マーカーであるC反応性タンパク質、体脂肪分布を反映するウエストヒップ比、脂質・糖代謝関連指標、喫煙状態と正の関連を示した。一方で、肺機能の指標であるFEV1、認知機能の指標であるMMSE、白血球テロメア長、握力とは負の関連を示した。これらの関連は、多くの場合、従来版AgeAccelGrimよりもAgeAccelGrim2で強かった(Figure 6、Table 2)。

5.2 食事・生活習慣因子との関連
食事関連因子では、AgeAccelGrim2は血中カロテノイド濃度と負の関連を示した。カロテノイドは野菜摂取を反映する血中バイオマーカーとして用いられるため、この結果は、野菜摂取に関連する栄養状態が低いほどGrimAge2の年齢加速が高いことを示す。
一方、自己申告による果物・野菜摂取量との関連は、血中バイオマーカーほど強くなかった。この結果は、食事評価において、自己申告データよりも血中バイオマーカーの方がGrimAge2との関連を明瞭に捉えやすいことを示している。
AgeAccelGrim2はまた、喫煙と正の関連を示し、教育水準や収入とは負の関連を示した。これらの結果から、GrimAge2は生物学的な老化リスクだけでなく、生活習慣や社会経済的要因とも関連する指標であることが示された。
5.3 DNAmサロゲートごとの特徴
Figure 6では、AgeAccelGrim2だけでなく、GrimAge2を構成する個々のDNAmサロゲートと各種バイオマーカーとの関連も示された。なかでも、DNAm logCRP、DNAm logA1C、DNAm PAI-1、DNAm PACKYRSは、それぞれ異なる臨床・生活習慣指標との強い関連を示した。
DNAm logCRPは、実測CRPや炎症関連指標と強く関連した。DNAm logA1Cは、糖代謝関連指標と関連し、DNAm PAI-1は、脂質代謝や体脂肪分布に関わる指標と強く関連した。DNAm PACKYRSは喫煙関連情報を反映し、肺機能とも関連した。
この結果は、GrimAge2が単一の老化スコアではなく、炎症、糖代謝、脂質代謝、喫煙など、複数の老化関連経路を統合した指標であることを示す。
6. 脂肪肝・内臓脂肪との関連
6.1 CT画像指標との関連
GrimAge2は、CT画像から得られる臓器密度や脂肪量との関連についても評価された。CT画像では、肝臓、脾臓、筋肉などの密度をHounsfield unitとして測定できる。肝臓では、密度が低いほど脂肪蓄積が多いことを反映するため、肝臓密度は脂肪肝の指標として用いられる。
AgeAccelGrim2は、肝臓密度と負の関連を示し、内臓脂肪量とは正の関連を示した(Figure 7)。これは、GrimAge2の年齢加速が高いほど、脂肪肝や内臓脂肪蓄積が強い傾向を示すことを意味する。これらの関連は、従来版AgeAccelGrimよりもAgeAccelGrim2で強かった。

6.2 DNAm PAI-1、DNAm logCRP、DNAm logA1Cの特徴
Figure 7では、AgeAccelGrim2に加えて、GrimAge2を構成する個々のDNAmサロゲートとCT画像指標との関連も示された。なかでも、DNAm PAI-1、DNAm logCRP、DNAm logA1Cは、脂肪肝や内臓脂肪に関わるCT指標と強い関連を示した。
特にDNAm PAI-1は、肝臓密度と強い負の関連を示し、内臓脂肪量および皮下脂肪量とは正の関連を示した。DNAm logCRPも脂肪蓄積に関連する指標と関連し、炎症と脂肪蓄積の結びつきを反映する可能性が示された。DNAm logA1Cは、脂肪組織の密度など糖代謝に関連する側面と関係した。
これらの結果は、GrimAge2の改良が、単に死亡リスク予測を高めただけでなく、炎症、糖代謝、線溶・血管系、脂肪蓄積といった代謝老化の要素をより強く取り込んだことを示している。
6.3 BMIだけでは説明されない関連
AgeAccelGrim2とCT画像指標との関連は、BMIや性別などの交絡因子を考慮しても検討された。多変量解析では、AgeAccelGrim2は肝臓密度や内臓脂肪量と関連し、BMIだけでは説明できない関係が示された。
特に、BMIは体重と身長から算出される大まかな体格指標であり、脂肪がどこに蓄積しているかまでは反映しにくい。一方、CT画像指標は、肝臓脂肪や内臓脂肪のような代謝リスクに直結しやすい脂肪分布を捉えることができる。GrimAge2がこれらのCT指標と関連したことは、この指標が単なる体格ではなく、代謝的に不利な脂肪蓄積を反映する可能性を示す。
7. 唾液サンプルへの応用と総合的解釈
7.1 唾液メチル化データへの適用
GrimAge2は、血液サンプルだけでなく、唾液メチル化データにも適用された。解析には、NHLBI Growth and Health Study の母親432名の唾液サンプルが用いられた。対象者は白人218名、アフリカ系アメリカ人214名から構成され、年齢範囲は36〜43歳であった。
唾液データでは、DNAm GrimAge2と暦年齢との相関は低かった。これは対象者の年齢範囲が狭いことに加え、血液データで訓練されたGrimAge2を唾液に適用した際に、系統的なずれが生じるためである。実際に、DNAm GrimAge2の平均値は61.6歳となり、実年齢よりも高く推定されるオフセットが認められた。このようなサンプル種によるずれは、切片を含む回帰モデルによって調整できるとされている。
7.2 代謝ストレス指標との関連
唾液由来のAgeAccelGrim2は、代謝ストレス、高感度C反応性タンパク質、インスリン抵抗性、HOMA-IRなどの臨床指標と有意に関連した(Figure 8)。従来版のAgeAccelGrimもこれらの指標と関連したが、関連の強さはAgeAccelGrim2の方が大きかった。
また、唾液データにおいても、GrimAge2を構成する一部のDNAmサロゲートが臨床指標と関連した。とくにDNAm PAI-1とDNAm logA1Cは、代謝ストレスとの関連においてAgeAccelGrim2よりも強い関連を示した。これは、血液データで観察された傾向と同様に、GrimAge2の構成要素がそれぞれ異なる代謝リスクを反映していることを示す。

7.3 GrimAge2の総合的な解釈
Table 2にまとめられるように、GrimAge2は従来版GrimAgeと比較して、全死亡リスク、冠動脈疾患、心不全、併存疾患、2型糖尿病、炎症、肺機能、脂肪肝、内臓脂肪など、幅広い寿命・健康寿命関連アウトカムとより強く関連した。これらの結果から、GrimAge2は単なる暦年齢推定時計ではなく、死亡リスクと健康寿命リスクを統合的に反映するDNAメチル化バイオマーカーとして位置づけられる。
GrimAge2の特徴は、従来版にDNAm logCRPとDNAm logA1Cを追加した点にある。これにより、炎症と糖代謝に関わる情報が取り込まれ、死亡リスクだけでなく、代謝異常、脂肪蓄積、身体機能、臨床バイオマーカーとの関連がより明瞭になった。
一方で、GrimAge2は既存の臨床バイオマーカーを置き換えるものではない。むしろ、個人の老化の進行速度を評価する際に、従来の臨床指標を補完するエピジェネティック指標として位置づけられる。また、若年者や唾液サンプルでは系統的なオフセットが生じるため、絶対的な年齢値として読むのではなく、適切な補正を行ったうえで、臨床指標や健康状態との関連を解釈する必要がある。
8. 結論
GrimAge2は、従来のDNAm GrimAgeに炎症と糖代謝に関わる新たなDNAmサロゲートを加えることで、死亡リスクおよび健康寿命関連アウトカムとの関連を強めたエピジェネティッククロックである。
大規模な検証データにおいて、GrimAge2は全死亡リスクだけでなく、冠動脈疾患、併存疾患数、2型糖尿病、肺機能、脂肪肝、内臓脂肪、代謝ストレスなど、多様な加齢関連指標と関連した。これらの結果は、GrimAge2が寿命リスクと健康寿命リスクの両方を反映する複合的なDNAメチル化バイオマーカーであることを示している。
一方で、GrimAge2は既存の臨床バイオマーカーを置き換えるものではなく、それらを補完する指標として位置づけられる。とくに、血液以外のサンプルや若年集団では系統的なずれが生じるため、絶対的な年齢値としてではなく、適切な補正を行ったうえで健康状態との関連を解釈する必要がある。
以上より、GrimAge2は、ヒトの老化を死亡リスクだけでなく、炎症、代謝、脂肪蓄積、身体機能を含む健康寿命の側面から捉えるための有用なエピジェネティック指標である。
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