「自分は成長していない」という不安が消える、成長の定義
ダイエット、資格の勉強、あるいは将来のための資産運用。
私たちは日々、自分をより良くしようと様々な取り組みに挑戦しています。
しかし、真剣に努力を重ねていればいるほど、ある共通の壁にぶつかることがあります。
それは、「自分は本当に成長できているのだろうか?」という、実体のない不安です。
周りの人が皆、器用に一歩先を進んでいるように見え、それに比べて自分は足踏みばかりを繰り返しているように感じてしまう。
昨日までは上手くいっていたはずなのに、今日になったら急に何もできなくなったような錯覚に陥る。
「このまま続けていて、本当に意味があるのだろうか」と、暗闇の中で出口を探すような感覚を覚えたことがある方も少なくないはずです。
実は私自身も長年、この得体の知れない不安にいつも苛まれてきました。
何か新しいことを始めては、「自分には才能がないのではないか」「進歩していないのではないか」と、自分で自分を疑う日々の連続だったのです。
しかし今では、その不安を払拭することができています。
なぜなら、「成長するとはどういうことか?」という問いに対して、自分なりの明確な答えを言語化できるようになったからです。
今回は、かつての私と同じように「頑張っているのに不安が消えない」という方へ向けて、私がたどり着いた成長の正体について語りたいと思います。
成長に対する大きな誤解
そもそも、私たちは「成長」という言葉に対して、どのようなイメージを抱いているでしょうか。
一般的には、練習や勉強を通じて、右肩上がりに「自分は上手くなっている」「自分は前より賢くなっている」と実感できることだとされています。
昨日できなかったことが今日できるようになり、自分の能力が直線的に伸びていく状態。
これこそが理想的な成長の姿だと信じられています。
しかし、私の考えは違います。
こうした「自分は順調に上手くなっている」という全能感の中に浸ることは成長ではありません。
それは単なる自惚れです。
なぜなら、どんなに技術を磨いても、どんなに知識を蓄えても、世の中には必ず上がいるからです。
狭い世界の成功体験だけで満足し、自分の優秀さに酔いしれている状態は、成長が止まった最初のサインとも言えます。
逆に、上手くいかない日が続いたからといって、「自分はなんて下手なんだ」「自分は失敗してばかりで、何をやってもダメだ」と過度に落ち込むのも良くありません。
それは客観的な自己分析ではなく、ただ卑屈になっているだけだからです。
卑屈さは行動力を奪い、挑戦する意欲をそぎ落としてしまいます。
かと言って、「自分は上手くもないけれど、別に下手になったわけでもない」と、感情の波を一切排除して、淡々とやり過ごそうとするのもお勧めできません。
一見すると冷静で中庸を保っているように見えますが、それは真剣に物事に取り組んでいないから、心が何も感じていないだけなのです。
傷つくことを恐れて、安全圏から一歩も出ていない状態と言えるでしょう。
自惚れることもなく、卑屈になることもなく、かと言って無関心でもない。
では、成長とは一体何なのか?
成長とは反復横跳び
結論から言いましょう。私がたどり着いた答えはこうです。
「成長とは、有能感と無能感の間で反復横跳びをし続けること」
ある日、何かが奇跡的に上手くいった時には、「俺はやれば出来るんだ!」「自分には才能があるかもしれない!」という、溢れるような有能感を全身で味わう。
しかしまた別の日には、些細なことで大失敗をしてしまい、「やっぱり俺って駄目な奴だ……」「何一つ成長していないじゃないか」と、無能感に苛まれる。
昨日持ち上がった自信が、今日には木っ端微塵に打ち砕かれる。
そんな激しい起伏のある日々を、何度も何度も繰り返すこと。
これこそが、人間の成長なのです。
有能感だけでは、ただの自惚れで終わります。
逆に、無能感だけでは心が折れて立ち上がれなくなります。
かと言って、その中間を狙って生きようとすれば、何の刺激もない停滞が待っているだけです。
失敗と成功を絶え間なく繰り返すこと。
有能感と無能感を、目まぐるしく交互に味わい続けること。
この反復横跳びのスピードが速ければ速いほど、そしてその振れ幅が大きければ大きいほど、私たちは多くの経験を咀嚼し、人として、あるいはビジネスパーソンとして、急速に鍛え上げられていきます。
今、あなたが「自分はダメだ」と無能感に苦しんでいるとしたら、それは次の有能感へと跳ぶための助走期間に過ぎないのです。
成長を加速させる3つの絶対条件
この「成長=反復横跳び」という定義に照らし合わせると、私たちが日々の生活の中でどのように振る舞うべきか、具体的な「成長のための絶対条件」が浮かび上がってきます。
具体的には、以下の3つの要素が不可欠です。
1. 続けるということ(継続は力なり)
どんなに優れた才能を持っている人であっても、一朝一夕で一生モノの技術や深い知識が身につくことは絶対にありません。
反復横跳びを成立させるためには、まずその場に立ち続けなければならないのです。
調子が良い日も、最悪な気分の日も、必ず歩みを止めずに続けること。
モチベーションの有無にかかわらず、淡々と机に向かったり、スクワットをしたり、投資銘柄のチェックをしたりすること。
この続けた日数が長ければ長いほど、あなたの中には誰も奪うことのできない経験値が確実に貯まっていきます。
途中で辞めてしまえば、それまでの有能感も無能感も、すべてただの過去の思い出へと風化してしまいます。
続けることだけが、過去の感情を未来の資産へと変える唯一の方法です。
2. 失敗をあらかじめ織り込んでおく
「自分は必ず成功するんだ」という強い自信を持つことは素晴らしいことです。
しかし、それが行き過ぎると自惚れや油断に変わります。
失敗の可能性を排除した自信は脆く、一度のつまずきで心がポキリと折れてしまったり、引き際を間違えて致命傷を負ったりしかねません。
ここで生きてくるのが、あらかじめ「自分は無能であるかもしれない」という視点、つまり失敗を織り込んでおく姿勢です。
「自分は無能だ、失敗するかもしれない」と思っているからこそ、事前に綿密な策を練り、安全な環境を確保することができます(リスクマネジメント)。
一方で、「自分は有能だ、やればできる」と思っているからこそ、失敗の恐怖に打ち勝って新しい一歩を踏み出すことができます(チャレンジ精神)。
自分の中に無能感と有能感を同時に同居させ、それらを高い次元で融合させること。
この一見矛盾する二つの感情のハイブリッドこそが、人を前へと突き動かす最強のエンジンになります。
3. 感情に振り回されないために記録を付ける
成長のプロセスにおいて、私たちは過去を振り返り、何が原因で失敗し、何が原因で成功したのかを客観的に反省する必要があります。
しかし、人間の記憶力というものは、私たちが思っている以上に曖昧で信用できません。
3日前のランチに何を食べたか、その時どんな感情でどんな判断を下したのかさえ、正確に覚えていられないのが人間です。
だからこそ、その時々に「何を考え、どう判断し、どう行動したのか」を、必ず後で見返せる形で記録しておく必要があります。
実際、行動経済学や心理学の分野でも、ダイエットにおいて日々の体重や食事内容をただメモするだけで、何も記録しないグループに比べて大幅に成功率が高まるという研究結果が報告されています。
記録を付けることによって、主観的な感情(「もうダメだ」「完璧だ」という一喜一憂)から一歩引き、自分の状態をデータとして客観的に見つめることができるようになります。
客観性が生まれれば、「次はここを変えてみよう」という具体的な改善のヒントが簡単に見つかるようになるのです。
反復横跳びしよう
もし今、あなたが「自分は本当に成長しているのだろうか」と不安になり、無能感に押しつぶされそうになっているのなら、安心してください。
それはあなたが真剣に行動し、成長の渦中にいる明確な証拠です。
「俺は天才だ」と調子に乗る日があってもいい。
「私はなんて無力なんだ」と涙する日があってもいい。
その激しい感情の往復こそが、あなたの器を少しずつ、しかし確実に押し広げています。
有能感と無能感の間で、今日も反復横跳びをしていきましょう。
