なぜ、ソートリーダーシップ活動にシンクタンクを使うのか?
こんにちは、国際社会経済研究所(IISE)理事長の藤沢久美です。
これまで、「ソートリーダーシップ(Thought Leadership)活動」について、経営戦略としての考え方をお話ししてきましたが、今回からは我々、IISEが実施しているソートリーダーシップ活動を紹介していきます。
そもそも、なぜ我々のようなシンクタンクが、ソートリーダーシップ活動の牽引役を担っているのか。
ソートリーダーシップ活動の核となるソートをつくる(デザインする)には、以下の要素などが必要です。
・社会課題の把握
・自社の強み(技術、知見、人的資本など)との親和性
・社会情勢および市場分析
事業会社では通常、上記のような活動は、経営企画部門や戦略部門、または各事業部の戦略部門が行うことになります。自社が保有する商材やソリューションなどを核に、狙いを定めた市場開拓や、それらの販売戦略を策定するために、こうした活動は重要です。
しかし、ソートリーダーシップ活動が前提としている、「生まれつつある市場の兆しを見つけて、新たな市場を創造していく」ためには、自らの専門領域を超えた大きな視野と視点が必要です。部門を超えた組織連携が求められる場面が、多々出てくることとなります。
部門を超えて社内外に幅広くアンテナを張り巡らし、かつ、グローバルな動きにもアンテナを立てて、日本に先んじた動きなどにも目を配っておくには、横断的な動きができるシンクタンクのような存在が役に立ちます。また、事業会社の立場での調査活動は、どうしても営業活動との紐付けをイメージされてしまいます。営業活動とは一線を画す存在であるシンクタンクが、社会のために調査・分析を担うことで、自由に幅広い方々の知見を得ることが可能になります。
加えてソートリーダーシップ活動は、未来像とその実現への戦略を示すだけではなく、実際にその未来像の実現までを行う活動です。未来像とは、単なる理想的な社会像ではありません。現在の社会構造において、社会価値と経済価値はコインの裏表の関係にありますから、経済的に循環が起きている必要があります。
つまり、未来像には市場があり、様々なプレーヤーがその市場での恩恵を受けることが不可欠です。その市場では、どのような価値が提示され、どのようなプレーヤーがそれを提供し、誰がその価値を享受するかというモデルの設計も必要です。
例えば、IISEで取り組んでいる「適応ファイナンス」というテーマのソートリーダーシップ活動では、防災投資が未来の災害規模を事前に縮小することを「社会価値」とし、防災投資をしなかった場合に比べて削減可能な温室効果ガスの発生量を「経済価値」と紐付ける未来像を提示しています。
そのためには、防災ソリューションを提供する企業、防災投資を求める自治体、防災投資の適合性や削減可能な温室効果ガスの精査を行う第三者機関、そのルールづくりを後押しする政府、防災投資への資金提供をサポートする企業など様々なステークホルダーが必要となります。
もちろん、ソートを最初に発信する時点で、全てが揃っている必要はありません。新しい社会像の提示を起点に、様々な分野の有識者等との対話を通じて、ステークホルダーを導き出し、ソートを単なる未来像から戦略案へと昇華させていきます。
つまり、こうしたステークホルダーからの「共感」を得るために提示するソートは、社会像だけではなく、経済循環の仕組みやルールのあり方なども盛り込まれている必要があります。
しかし、これら全てについての知識がある人材が一つのシンクタンク内にいるわけでもありません。有識者と連携するための仕組みや、専門性を持つシンクタンクとの連携などが組織的にも必要となります。
そのため、シンクタンクには、内外の知恵を持つ人々をネットワークし、知見を集め、戦略へと落とし込んでいく能力の高い人材が必要となります。
さて、今回は、シンクタンクがソートリーダーシップ活動の牽引役をしている理由として、ソートをつくる(デザインする)役割をお伝えしました。ですが、ソートリーダーシップ活動はこれだけではありません。次回以降はさらなる役割を紹介していきます。
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文:IISE 理事長 藤沢 久美
藤沢久美
大学卒業後、国内外の投資運用会社勤務を経て1995年、日本初の投資信託評価会社を起業。1999年、同社を世界的格付け会社スタンダード&プアーズに売却。2000年、シンクタンク・ソフィアバンクの設立に参画。2013年~2022年3月まで同代表。2022年4月より現職。
https://kumifujisawa.jp/
企画・制作・編集:IISEソートリーダーシップHub(藤沢久美、鈴木章太郎、榛葉幸哉、石垣亜純)
