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潜航艇の肉

 少し祖母の思い出を。母方の祖母は健在だった頃、高知市中心部にある中種(今のはりまや橋商店街)にある呉服屋で働いていた。

 おしゃべり好きな祖母は営業もよくこなし、着物の売れ行きはとても良かったという。母も友人と連れ立って着物を畳むアルバイトに借り出されたほど、よく儲かっていたようだ。

 仕事の帰りは近くにある魚の棚(うおのたな)商店街で買い物をするのがお決まり。さあ今日はすき焼きだという日には、「今日は『潜航艇』の肉や」と皆に言いふらし、お肉を買っていたらしい。

 潜航艇の肉とは何か?潜航艇=波以下、つまり並以下の肉のことである。よくこんな言い回しをしたものだと感心する。

 当時食べ盛りの叔父2人を抱え、少しでも沢山の肉を食べさせてやりたかったのだろう。食に関してはずいぶん気を使っていた祖母のことを思い出す。

 祖母と食に関する話題は切っても切れない関係にある。家族で東北旅行に行った時、ひとりだけ興味本位でイナゴの佃煮を口にしたこと。

「見たら死ぬ団子を見た」と大騒ぎしている祖母の後ろにあったのは、「みたらし団子」の旗だったこと。「水を飲んだち太る」と言いながら、台所へ行きに帰りにつまみ食いしていたこと。

 お正月に毎年祖母が作ってくれた鮎の飴炊きは、他には無いほど絶品だった。潜航艇の肉で思い出された祖母の姿が、今はとても懐かしい。

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