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fukamidorin
〔ショートショート〕約束の星
「宝くじに当たったら、火星にでも行く?」
僕が言うと、彼女はベッドの上で笑った。
「いいわね!それまでに元気にならなきゃ」
僕の遅い初恋が実って、彼女と付き合うことになった時は、天にも昇る気持ちだった。まさか三年後、彼女が重い病にかかるなんて思いもせずに。
「火星に旅行できる時代なんだから、君の病気もきっと治るよ」
「そうね、それまで頑張るわ」
そう言っていたのに、病気の進行が予想外に速く、治療薬は間に合わなかった。
あれから数年。僕は万馬券が当たり、火星の「疑似体験旅行」に参加している。さすがに火星旅行は高額すぎたが、疑似体験でも僕には贅沢な旅だ。
「間もなく火星に到着します。宇宙服を着てください」
実際は動いていないロケットだが、重力も窓の景色も見事に再現されている。今ごろ外には火星の風景が広がっているはず。僕は胸ポケットに彼女の写真を入れて準備する。たとえ疑似体験でも、これが僕らの新婚旅行だから。
ほら、オリンポスが見えてきた。約束の星にやっと来れたね。
(完)
