Photo by
uchuu_art
〔ショートショート〕誤字審査
「次の方どうぞ」
ドアが開き、私は一礼して入る。
「今日は何の記憶ですか」
「平家物語の冒頭です」
「では読み取らせて頂くので、そちらにおかけ下さい」
私は指定されたソファに座ると、頭の中で『祇園精舎の鐘の声……』と唱えた。
「有難うございました。『高き者』ではなく『猛き者』ですね。今回の誤字はここだけでした」
「そうですか。お世話になりました」
私は一文字分減額された報酬を受け取り、部屋を出る。
今は宇宙暦X年。科学は大きく発達し、知識を得るのも、意思疎通も、言葉に頼る必要はない。歌詞も活字も消え、映像と音と感覚のみが人々の頭の中を行き来する世界。
だが、言葉のない世界では、心が荒んだり病んだりする人が爆発的に増えてしまった。人々はようやくその損失に気付き、僅かに残る言葉の記憶をデータにし、正しい形で残そうと躍起になっている。
言葉が好きで時代遅れと笑われていた私が、こうして役に立てるとは。未来なんて分からないものだ。
(完・406字)
こんばんは。こちらに参加させていただきます。
たらはさん、お手数かけます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
読んでくださった方、ありがとうございます。これからもよろしくお願いいたします。
