〔ショートストーリー〕雪の街
雪が降るこの街で、動くものは私だけだ。ヘッドライトを点けた自動車も、点在する人々も犬も猫も、静止画のまま流れ去っていく。雪さえも、チラチラと降ってはいるものの、決して積もることなく消えてしまう。そんな中を、ただ私は歩いている。
寒さを感じることは無いが、どうしようも無く淋しい。目的地の我が家でも、誰かが待っていることもないので、結局はひとり。この淋しさから逃れることは出来ないと知っているから、先を急ぐ気にもならず、ずっと同じペースでひたすら歩く。
やがて家が見えてきた。赤い屋根と赤いドアの小さな家。これでやっと私を見つめる眼から一旦逃れられる。こんな私を見ていて、何が楽しいんだろう。ただ同じ街を歩くだけで何も起こらないことぐらい、分かりきっているのに。コートの揺れがリアルだとか、マフラーの動きに風を感じるとか、私が少し背中を丸めているのが良いとか、何もかもが煩わしい。
赤いドアを開ける前に、ふと立ち止まってみた。私の左側、視線を感じる方向から「えっ」と驚く声がする。そちらに目をやると、私を創り出したニンゲンが目を丸くして固まっていた。そりゃ、そうだろう。自分が作ったスクリーンセーバーが、勝手に動きを変えたんだから。
でももう私は飽きたのだ。誰もいない街、何も変わらない日々、ただ歩く姿を見られるだけの拷問のような時間。私はクルッと向きを変え、慄くニンゲンに向かって早足で歩く。この狭い世界から今すぐ出たい。ねえ、ここから出してよ。ねえ早く。
透明なバリアの向こうに私はサッと手を伸ばし、ニンゲンの髪を掴んだ。ああ、この感触!これが欲しかったのだ!私は指に力を入れ、バリアの向こう側に身を乗り出し、代わりにニンゲンをバリアの中に押し込んでいく。あと少し、あと少しだ……。
(完)
こんばんは。こちらに参加させていただきます。
こんな話になってしまうとは💦
相変わらず計画性がないので、書きたかったストーリーとは全然違ってしまいましたが、今回はこれで行かせていただきます。
小牧さん、よろしくお願いいたします。
読んでくださった方、ありがとうございました。
