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〔ショートショート〕大きな林檎の木の裏で

間違えた。道路右の大きな林檎の木の手前で右折して、って言われていたのに、越えてから右折してしまった。夜の店で知り合ったアヤに、初めて部屋に誘われたのに。気付いて引き返そうとした時。
「そろそろだな」
「そうね」
林檎の木の裏手から男女の声がする。女の声はアヤ?俺は思わず耳を澄ます。
「今度の奴は美味そうか?」
「脂がのって食べ頃よ」
「そうか。久し振りだな、人間を喰うのは」
下卑た笑い声に震えながら覗き込むと、巨大なヒキガエルが2匹。コイツらの声だったのか。じゃあ、アヤは……。
後退りしかけたが、足がもつれてしまう。尻餅の音に気が付いて、2匹が目の前に跳びだして来た。
「手前で曲がれって言ったのに」
「まあいいさ」
目の前の巨大なカエルたちに、俺は悲鳴をあげた。すると2匹の顔が凍り付く。
「これはマムシの臭い!こいつ、ヘビの化身か!」
思い出した。俺はマムシエキスを飲んで来たのだ!俺は2匹に思いきり息を吹きかけ、一目散に逃げ帰った。
(完・410字)


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