〔ショートショート〕割の良いバイト
ピンポーン。
日曜の早朝、突然響くインターホン。もう、嫌な予感しかしない。聞こえないふりをしよう、と思ったのだが。
ピンポーン、ピンポーン。
「ねえ、僕だよ~。また新しい古墳見付けてさあ、来て欲しいんだけど」
やっぱりK教授だ。朝からこんな大声を出されると、他の部屋の住人の迷惑になる。俺は仕方なくドアを開けた。
「前から言ってるけど、俺は二度と古墳には行きたくないです」
「またそんなことを~。じゃ、今回はここの家賃半年分払うから。前は3か月分だったし、ランクアップするから。ね、誠意を見せてるでしょ」
「いや、でも」
「ええい!じゃあ1年分!これでどうだ!」
「……行きます」
金に転ぶ自分にウンザリしながら、手早く身支度を整え、教授の車に乗り込む。
車で2時間ほど走ると、今回見付かった古墳に着いた。
「さ、どうぞ入って!」
自分の家のように案内する教授について入る。と、すぐに目の前が暗くなった。猛烈な吐き気と寒さ、焼け付くような胃の痛み。思わず膝をつきながら、かろうじて声を出す。
「ど、毒殺です」
教授は嬉しそうに笑う。
「そっか!ここに埋葬されてる人は毒殺されたんだね。ご苦労さま、もう出ていいよ」
俺は何とか古墳から這い出して、息を整える。教授は俺の背中をさすりながら言う。
「古墳症って厄介だねえ。お陰で僕ら研究者は助かってるけど」
古墳に入ると埋葬された人の死に際を体験してしまう『古墳症』、それが俺の病気の名だ。穏やかな死に方なら良いが、腹や胸に刺されたような激痛が走ったり、いきなり高熱を出して朦朧としたり、正直たまったもんじゃない。が、そのお陰で割の良いバイトにもありつける訳で。
「そう言えばさあ、僕の友だちから君を紹介して欲しいって言われてるんだけど、どうする?彼、ピラミッドの研究をしてて」
「絶対に嫌です」
「おや、残念」
カラカラと笑う教授を軽く睨むが、この人は力尽くで言うことを聞かせたりはしない。そこだけは信頼しているのだ。そこだけは。
後日、俺の口座に1年分の家賃が振り込まれ、恐ろしく高そうな酒や肉や果物が届くのだろう。こうして俺はまた、まんまと教授に乗せられてしまうのだった。
(完)
こんばんは。文字数が倍になってしまいましたが、久々に書いたので、無理矢理参加させていただきます。
うわっ、よく見ると締切も思い切り過ぎてる!でも、せっかく書いたので、アップさせてください。
田原さん、いつもお手数かけて済みません💦こんな掟破りな参加なので、面倒ならそっとスルーしてくださいませ。
そして読んでくださった方、ありがとうございました。
