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#178 そこに半角スペースを

ファミレスのメニューに書かれた「320kcal」の文字。あるいは、真面目なニュースの画面に示された「50kWh」というテロップ。世間の大半の人はそれを何気なく読み飛ばすのだろうが、私はどうしてもそれを受け入れられない。

喉の奥に魚の骨が引っかかったような、あるいは、整列したタイルの1枚だけがわずかに傾いているのを見つけてしまったような、居心地の悪さ。

叫びたい。

数値と単位の間に半角スペースを空けてくれと。

もちろん、これが単なる個人のわがままや、神経質な人間のこだわりだと言われれば、返す言葉もない。数字と単位がくっついていようが離れていようが、摂取するカロリーの量も、消費された電力量も変わりはしないのは自明だ。

しかし、私はかつて、そんな曖昧さは絶対に許されないのだという論拠に出会った。大学院時代の恩師がゼミの指導の中で伝えた一言だ。

「数字と単位は、そもそも英語の省略形なんだよ。」
「one kilogramを、onekilogramとは書かないだろ?」

その瞬間、アイコンを並べ直す時のようにブルブル震えていた脳内のタイルが、スパッと整列したような感覚がした。

たとえば「1 kg」は当然「one kilogram」のことだ。英語で書くとき、私たちは単語と単語の間に、当然のようにスペースを空ける。それなのに、なぜ数値プラス単位の記号になった途端、彼らは突然くっつきたがるのだろうか。「300kcal」をその記述の通りに英語に直せば「Threehundredkilocalories」という奇妙な結合単語になってしまう。そう気づいてしまうと、やはりどうにも座りが悪い。

さらに調べてみると、恩師の教えは直感的な話に留まらず、科学の世界の普遍的なルールに基づくものでもあった。国際単位系の公式文書は、数値と単位の間のスペースについてこう定めている。「この空白は、単語と単語の間のスペースと同じ性質のものである」と。

つまり「1」という量があり、一瞬の呼吸を置いて、「kg」という単位へと滑らかに繋がっていく。世界標準の美学においても、数値と単位はそれぞれ独立した「言葉」として認められているのだ。言葉と言葉が互いを尊重し合うための、適切なソーシャルディスタンス。その思想が、1文字の空白に込められている。

現代社会は効率化の波に押され、無駄なものは徹底的に排除される傾向にある。文字数制限のあるSNSならいざ知らず、街の看板や広報誌、ウェブサイトの隅々に至るまで、その「たった1文字の空白」が惜しまれているのを見ると、少し寂しくなる。

私は、今日も心の中で密かに祈ってやまない。世界中のすべての数字と単位の間に、半角スペースがもたらされんことを。

※このルールは半角の数値を使う時に限る。全角の数値は日本語なので、このルールにはそぐわない。

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