ひとかけのチョコレート
ぼくは、上司との打ち合わせが少し苦手です。
緊張して、本音が言えない。
終わった後は、どっと疲れが押し寄せてきます。
そんな日は、看護職の方のところへ顔を出すことがあります。
その日も、打ち合わせを終えて少し話をして、自分の席へ戻りました。
するとしばらくして、
看護職の方がわざわざぼくの席まで来てくださいました。
「お疲れさま。」
そう言って、そっとひとかけのチョコレートを手渡してくださったのです。
値段にしたら、わずかなものです。
でも、その中には、たくさんの気持ちが詰まっていました。
「今日は大変だったね。」
「少しでも気持ちが楽になりますように。」
そんな言葉が聞こえてくるような気がしました。
人を元気にするのは、大きなことだけではないのだと思います。
相手のことを思って、自分から一歩近づくこと。
その優しさは、物の大きさではなく、そこに込められた気持ちで伝わります。
あの日にもらったのは、チョコレートではなく、「あなたのことを気にかけていますよ」という安心だったのかもしれません。
ぼくはきっと、そのチョコレートの甘さよりも、
そこに込められた優しさを忘れないと思います。
人は、誰かを支えるために特別なことをしなくてもいい。
相手を思って差し出した、ほんの小さなひとかけの優しさが、
誰かの一日を救うこともあるのだと、あの日改めて教えてもらいました。
