上条デイズ|#6新潟県村上市|町屋の人形さま巡り
3月いっぱい、新潟県村上市では、
町屋の人形さま巡りを開催している。
世間でいう、ひな祭りだ。
上条靖之は、鮭がブラ下がっている、
きっかわにいた。
まだ先代の社長が元気なころは、
鮭の声が聞こえると有名だった。
鮭の声が聞こえるからなのか、
鮭の塩引きがとても美味しかった。
けれども、きっかわの暖簾をくぐるとき、
少し心配だった。
ここに来る前に寄った、別の町家の人形さま。
それを見た娘は、声を上げて泣いた。
古い人形が怖かったらしい。
娘の涙を取り戻したくて、きっかわに足を向けた。
にぎやかな店内に娘は、
最初はびっくりしていた。
しかし、鮭がぶら下がっているのに、
目を丸くする。
そして人形さまの前で、はしゃいだ声をあげた。
「お店の人も、お人形様も、
良い顔をしているね」
一番喜んだのは、
その顔を見た上条かもしれない。
自分へのお土産に、鮭の生ハム、
極上はらこの醬油漬けを買い込む。
きっかわの大きな買い物袋を持って、
町家を巡る。
上条は、少し誇らしくなってくる。
