マネージャーの仕事は夢を語ることだった — 思想が見えない上司の下で起きること

TL;DR

  • 「方向性を示す」と「夢を語る」は全然違う。「こっちに行く」だけでは思想は伝わらない

  • 思想がないのではなく、出し方の問題。固まるまで出さないことで負のループが回る

  • マネージャーは夢を語り、リーダーはそれを具体化する。この役割分担が曖昧だと組織は止まる

「これ、本当にやるんですか」という違和感

上司の振る舞いに違和感を覚えた経験は、多くの方にあるのではないかと思います。

私の場合、きっかけは自分のやり方との違いでした。抽象的なことばかり言っていて、「これ本当にやるのか」と感じたのが最初です。

やりたいことはなんとなく分かります。でも、それによって何を得るのかが見えない。その施策で組織をどういう立ち位置にしたいのか、事業の中のどこを狙っているのか。

そこが語られないまま、なんとなく話が進んでいく。

表面的には「方向性を示している」ように見えます。でも方向性と思想は違います。「こっちに行く」と言うことと、「こっちに行くとこれが手に入る」と語ることは、まったく別のものです。

「固まったら伝える」で止まっている構造

なぜ思想が見えないのか。

私の解釈では、止まっているのだと思います。ある程度固まったら具体に落とすつもりなのでしょうが、固まりきらないまま時間が過ぎて、結局何も降りてこない。

メンバー側からすると、何も見えません。何を基準に判断しているのか分からない。何を目指しているのか分からない。

結果として、負のループが回り始めます。

思想が見えない → メンバーは動けない → 成果が出ない → マネージャーは「なぜ動かないのか」と感じる → でも思想は出さない → 以下繰り返し。

実際に、同じ感覚を持っていたメンバーが転職していきました。「何を目指しているか分からない組織」には、人は残りません。

思想がないのではなく、出し方の問題

ここで大事なのは、そのマネージャーに思想がないわけではないだろう、ということです。

やりたいことはあるのでしょう。ただ、それを語らない。語れないのか語らないのか、本人にしか分かりませんが、結果としてメンバーには見えません。

マネジメントの教科書は「何をすべきか」を教えてくれます。面談をしろ、目標を設定しろ、振り返りをしろ。でも「なぜその判断に至ったか」は書かれていません。

手段は学べても、思想の伝え方は教わる機会がほとんどない。

周りにお手本となる人がいればまだいいのですが、そうでない環境では、判断の裏側にある考え方を体験的に学ぶ機会がありません。成果が見えることと、思考が見えることは、まったく別物です。

マネージャーは夢を語り、リーダーは夢を具体化する

ここまで考えて、けっこうシンプルな構造が見えてきました。

マネージャーの役割は夢を語ることです。どこに行くのか、なぜそこに行くのか、そこに行くと何が手に入るのか。これを語ることが、思想を見せるということだと思います。

リーダーの役割はその夢を具体化することです。どうやってそこに辿り着くか、何を優先するか、誰に何を任せるか。これは実行の設計です。

この2つの役割は、同じ人が兼ねることもあれば、分担することもあります。でもどちらかが欠けると組織は動きません。

私自身、同じ立場になったらゴールのイメージだけは伝えます。そこまでの過程は問わない。やり方はメンバーに任せる。

でも「この組織をどこに持っていきたいのか」「それによって何が手に入るのか」だけは見えるようにします。計画は固まっていなくていい。大事なのは方向と効果のイメージです。

つまずきポイント

  • 「方向性」と「思想」の混同 — 「こっちに行く」は方向性。「こっちに行くとこれが手に入る」が思想。前者だけでは、メンバーは「なぜその方向なのか」を理解できず、判断基準を持てない

  • 「固まってから出す」の罠 — 完璧な計画より、不完全でも方向性が見える方がメンバーにとっては遥かに価値がある。固まるのを待っている間に、メンバーは離れていく

  • 役割の曖昧さ — マネージャーとリーダーの役割分担が曖昧だと、夢も具体化も中途半端になる。自分がどちらの役割を担っているのかを意識するだけで、振る舞いは変わる

まとめ

思想を語らないマネージャーの下では、メンバーは作業者になります。手を動かすことはできても、判断はできない。判断基準が見えないからです。

マネージャーに「思想を持て」と言っても、おそらく意味はありません。思想は持っているけれど出していないだけ、というケースが多いからです。

言いたいのはもっとシンプルなことです。夢を語ってほしい。固まっていなくていい。途中でいい。「たぶんこっちに行きたいと思っている」くらいの温度感でいい。

それを受けて具体化するのがリーダーの役目であり、実行するのがメンバーの役目です。でも夢が語られなければ、具体化も実行もしようがありません。マネージャーにとって一番大事な仕事は、タスク管理でも進捗確認でもなく、「こっちに行くぞ」と旗を立てることなのだと思います。

FAQ

Q. 夢を語って、実現できなかったら信頼を失いませんか?

「計画を約束する」のと「方向性を共有する」のは違います。「こっちに行きたいと思っている」は約束ではなく意思表示です。途中で変わってもいい。むしろ「変わった理由」を共有することで、判断プロセスが見えるようになります。

Q. マネージャーとリーダーの役割は、いつも分かれているものですか?

分かれていないことの方が多いと思います。同じ人が両方を担うケースは珍しくありません。大事なのは「今、自分はどちらの役割で話しているか」を意識することです。夢を語る場面と、具体化する場面を混ぜると、どちらも中途半端になります。

Q. 自分がメンバーの立場で、上司が夢を語らない場合はどうすればいいですか?

「この組織、どこに向かっているんですか?」と直接聞くのが一番早いです。ただし、答えが返ってこない場合もあります。そのときは、自分なりに仮説を立てて「こういう方向だと理解していますが合っていますか?」と確認する形にすると、対話が生まれやすいです。

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